2024年振返り: 編集部が選ぶ、2025年も注目したいトピックランキング10
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2024年最後の記事は、BeautyTech.jp編集部がこの1年を振り返り、2025年も注視すべきトレンド・トピックを10個選出、ランキングとして紹介する。
第10位 A-Beauty、アフリカ美容市場の成長
米国で活動する歌手リアーナ氏がLVMHと組んだ美容ブランドのFenty Beautyが多様な肌の色に対応する50シェードのファンデーションを発売し、化粧品における包括性が一気に注目された。それから約7年、有色人種やアフリカ系、アフリカ諸国の人々のための化粧品に熱い視線が注がれるようになり、アフリカ美容市場は年10%超の成長率で拡大している。アフリカにルーツを持つ市民も多い米国やアフリカ大陸と地理的に近い欧州のスタートアップだけではなく、今後はアフリカからもたくさんの美容ブランド、小売やマーケティング分野での有望なスタートアップが誕生することは想像にかたくない。
第9位 中国スキンケアブランドの世界進出
なかなか不況から抜け出せない中国市場で、伸びている企業・ブランドはどこか。そんな視点からは、「スキンケア」「バイオテクノロジー」「R&D」というキーワードが浮かんでくる。たとえば、中国発の人気スキンケアブランドのPROYAやWINONAはその品質の高さで支持され、加えて、サステナビリティやエシカルなマーケティングにも真摯に取り組んでおり、それが消費者にもしっかり伝わっているのだろう。PROYAはロレアルのようなグローバル企業を目指していることを共同創設者の方玉友氏は明言している。すでにカラーコスメでは一定の評判と地位を得ているC-Beautyだが、スキンケアもグローバル市場での普及は、マーケティングとかみあいさえすれば時間の問題だろう。
第8位 パーソナライズはどう進化するのか
ビューティテックの大きなテーマのひとつであるパーソナライゼーションについては、2024年は市場や消費者の間で受け入れられ着実な成長をした新ソリューションやサービスの存在が薄かった印象だ。そんななかでも、パーソナライズコスメの草分けのポーラ APEXが、テクノロジーを随所に取り入れ、店頭で行う肌分析などの体験そのものをアップデートし続けており、パーソナライズコスメとしての独走態勢を整えた感がある。また、CES2024で発表されたロレアルの対話型生成AIアシスタントは”ポケットのなかの美容部員”とも表現されたが、各ユーザーにあわせてどんなに深化したアドバイスや提案ができたとしても、一企業、一ブランドだけを扱う取組みでは、ユーザーにとって限られたサービスになってしまう。2025年は業界を横断した取組みに期待したい。
第7位 なぜあなたなのか。あなたの会社なのか
アイスタイルが主催するJapan BeautyTech Awardsは2024年で5回目を迎えた。今回から新たに加わった審査基準である「内発性」は、審査委員のひとりであるWWDJAPAN.com村上要編集長の提案からだった。創業者、あるいはプロジェクトリーダーの内なる動機、「私(たち)だからこそ、我が社だからこそ(できる、やりたい)」という強い思いがあることによって、さまざまな困難があってもイノベーションを生みだし、かつ続けていくことが可能だとの考えにもとづく。事実、ファイナリストも受賞者も、内発性を感じさせるプロジェクトが並んだ。不確実性の高い時代に、「やりたい」「好きである」という内発性がイノベーションには必要だという考え方は、新規事業のアサインなど現場にも浸透してきている。
第6位 リテールの新しいスタイル
体験型ストアという言葉がそれほど珍しくはなくなった2024年。小売はさまざまな楽しみ方ができる場所になった。Yodobloom(ヨドブルーム)やMaison KOSÉハラカド、自動販売機による韓国コスメショップaiicosmeなどがその代表格だ。あわせて、オルビスの無人店舗などのように、無人であるからこその体験づくりなど、これからリテールのあり方を示唆する事例がたくさん出てきた。体験重視のポップアップショップも米国・韓国・日本などで盛り上がっている。2025年も新しいリテールの形が示されるのが待ち遠しい。
第5位 韓国美容企業の上場・M&A
2024年も韓国の美容業界から目が離せなかった。化粧品輸出は過去最高、ユニコーン級に成長するスタートアップも複数あり、古参スタートアップの上場、あるいはM&Aのニュースも相次いだ。第三次K-Beautyブームともいえるいま、韓国が隙なく積み上げてきたグローバル戦略が奏功している。また、時流に応じての戦略転換もすばやいのが韓国の特徴だ。2025年も引き続きこの勢いは続くと予想されるが、2025年は国内外の政治情勢によっては不安材料も出てくるかもしれない。
第4位 多様な美容プラットフォーム、そのデータの意味
ユーザーが自分の好きな化粧品の紹介動画を作成してSNS投稿すると報酬が受けとれるプラットフォームosinaの勢いが増している。「愛用品登録」という新機能では、ユーザーが手持ちのコスメなどを登録し、その愛用度などの情報も入れることで件数に応じた報酬が得られる。これが意味するのは、購入後に実際に商品がどのように使われているかのデータが取得できるということだ。保有コスメが100点を超えるヘビーユーザー向けのコスメ管理アプリFu-cosmeも、ニッチではあるがユーザーの切実なニーズから生まれている。ブランド側にとっては、商品を購入後にどういう人がどう使っているか、リピートしているのかのデータはこれからの化粧品マーケティングに大きな意味をもつと考えられる。
第3位 異業種からのコスメ参入
ファッション、食品、ウエルネス、医療など、化粧品と親和性の高い領域は多い。その境界線が溶けはじめていることは、2017年にBeautyTech.jpをスタートして以来、毎年強く感じている。2024年に印象に残ったのは、異色のアパレル企業、yutoriが手がけるカラーコスメminumだ。若いスタッフの感性を最大限に引き出して商品開発に反映させる手法をコスメにも応用しつつ、同時にアパレルとは異なるビジネス手法を素早く咀嚼し早くも軌道にのせている。一方、吉野家ホールディングスは「第四の肉」としてオーストリッチを自社農場で育てながら研究を重ねた結果、オーストリッチ由来の美容成分を抽出し化粧品に配合して商品化。さまざまな異業種からのユニークなアプローチを2025年も期待したい。
第2位 日本の「唯一無二」なR&D
資生堂のファンデ美容液、花王のファインファイバーは、どちらも、グローバルでも聞いたことのない独自の技術・アプローチだ。こうした唯一無二の発想や技術を所有する大手化粧品企業やOEM/ODM企業はたくさんあり、これからも日本発のイノベーティブな商品が生まれてくるだろう。そこで思い出したいのは韓国発のクッションファンデだ。同イノベーションは世界を席巻するブームとなり、世界各地で多くのブランドがクッションファンデを自社ラインナップに加えたが、さまざまなグローバルブランドが「やはりクッションファンデを作るなら韓国が一番質が高い」と評価して、韓国OEM/ODMと提携している。この例のように自国の素晴らしい技術を海外でいかに浸透させ、結果、日本の化粧品の存在感やシェアをあげていくかの戦略が必要とされているように思う。
第1位 未利用資源と藻類が化粧品原料主流になる日
欧州では美容業界に限らず、脱石油・脱炭素化が政府主導で進み、化粧品や食品領域では石油由来成分を植物由来原料に置き換える強いニーズがある。早晩、この流れは日本でも起こるはずだ。すでにファーメンステーションが手がける植物性の未利用資源(食品工場で出る残渣など)を使用し、発酵技術で化粧品や食品原料を生み出す技術は、すでに欧州スタンダードに合致するところまできている。一方で、サステナブル資源としてラストフロンティアといわれる藻類にも注目だ。アルガルバイオは、100種に及ぶ藻類のライブラリーを持ち、カラーコスメ向けの色素や代替機能性成分の可能性を示している。
Text: 矢野貴久子(Kikuko Yano)
Top Image: simbos_croatia via Shutterstock