ポーラAPEX、7度目のリニューアルで「楽しい肌分析」と「高リピート率」を支える体験設計が深化
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ブランド誕生から35年の2024年7月1日、7度目のリニューアルをした新生「APEX(アペックス)」がリリースされた。1カ月で10万人が肌分析を体験し、初月の売上は前年比2.6倍を記録するなど好調なスタートを切った。顧客が肌分析を楽しいと思い、日々のケアを通して変化を実感できることを目指すパーソナルブランドとして、今回のアップデートがもたらす顧客体験の全容をAPEX開発チームを率いた菅生純平氏に聞いた。
一人ひとりの肌の個性を理解し、将来の変化の兆しを捉えるポジティブな肌分析
7度目のリニューアルでAPEXはこれまでと比較して何が変わったのか。株式会社ポーラ ブランドクリエイティブ部 APEX開発チーム リーダー 菅生純平氏は、今回のアップデートについて肌分析の進化、パーソナライズ処方の進化、アプリサポートという3つの柱があると話す。
「肌分析サービスでは、細胞の機能レベルでの分析によって、今の肌状態とともに、これから現れやすい肌の変化の“兆し”をとらえることができるようになった。プロダクツにはタンパク質の分解機能に対する新知見を活かし、同時にパーソナライズ処方をより進化させることで機能性を向上させた。このことで、ユーザーはより効果を実感しやすくなり、アプリ連携によって、肌分析結果を記録して肌状態を振り返ることができるほか、アプリ内キャラクターとの会話などで楽しくケアを継続していただける」(菅生氏)
店頭における肌分析は動画と静止画の撮影を掛け合わせ、ポーラの独自技術「モーションスキャンテクノロジー」を用いて肌状態をスコア化する。最初に店頭のビューティーディレクターによるカウンセリングののち、タブレットでユーザーが「あうあう」「いういう」と発声する際の口周りの肌表面の動きを約14秒の動画として撮影。肌三層(表皮、真皮、皮下組織)の状態を推測する。静止画840枚に相当するこの動画からは、肌の動きの速さ、方向などの特徴を細かく区切って抽出し、約170万個の情報が引き出せるという。動画撮影後、肌カメラでの撮影を行い、ニキビのできにくさ、コラーゲン、キメの乱れ、毛穴状態など、今回のリニューアルで再考された分析項目で、今後の肌に現れる変化の可能性を推測する。集積されたデータから一人ひとりの肌の個性を解き明かすとともに、肌の特徴を9つの肌タイプに分類する。動画・静止画の撮影から分析結果が出るまでにかかる時間は約3分だ。
「肌分析は、肌の課題を浮き彫りにするからちょっと怖い、やりたくないと感じている方が相当数いらっしゃる。しかし我々は、APEXの肌分析とはお客様が自分の肌の個性を知って発見を楽しみ、自分の肌を愛おしく思ってもらえるような体験であるべきだと考えている。分析は肌の弱点を指摘するのではなく、今の状態と将来起こりうることを正しく把握し、より良い未来につながるポジティブなケアを行っていくきっかけにしてほしい。そのため、肌タイプの名称も“おおらか肌”や“はつらつ肌”など、肌を性格のように表現してより親しみやすく、かつそれぞれの方の肌の個性と強みをひと言でいいあらわすものにしている」(菅生氏)
APEXの肌分析のもう1つの大きな特徴は、これが実店舗でのサービスであるところだ。分析にはビューティーディレクターが立ち会って分析プロセスをリードし、顧客のなりたい自分や今の悩み、生活習慣などをたずねるカウンセリングを行い、分析結果とあわせて、スキンケアの選び方や各自の肌状態や好みに沿うおすすめの商品などのアドバイスを行う。「リニューアルに際してはオンラインのみでの肌分析も行えないかを考えた」と菅生氏は明かすが、外出に心理的な制限があったパンデミックを経て、オンラインの利便性が一般に広まった一方で、生身のコミュニケーションを特別な体験と考える顧客が増えたこと、また、一人ひとりがなりたい肌や思いなどをデジタルだけでは投影させにくいことから、店頭でのサービスに限定することを継続したとする。
「あまたある化粧品のなかから、本当に自分に合うものを見つけるのは難しいとお客様は感じている。そのため、オンラインでの解析よりも、その場で相談にのってくれるプロに(分析)して欲しいという、お客様がリアルな体験をより重んじる傾向にあることは弊社の調査でも表れている。肌分析そのものは無料とし、商品を購入する義務もない。ただ、肌分析を受ければ受けるほどお客様の購入単価が上がる傾向がある。ビューティーディレクターが寄り添うことで、お客様との深く長い関係が生まれるのは明らかだ」(菅生氏)
肌分析にもとづく6品目75種類のパーソナライズ処方の進化と新成分の配合
APEXでは各ユーザーの肌分析の結果を受け、現在の肌状態に合わせて個別に処方設計や美容成分をパーソナライズして製品の提案をする。そのバリエーションは688万通りにのぼるという。たとえば、「アペックス フルイド<美容液・化粧水>」では、ハリキメ、毛穴、シミ、くすみの項目のスコアをもとに処方や成分を組み立て、ゆらぎタイプ別の3つのベースにうるおいバランスを掛け合わせた全36種類のなかから、顧客にとって心地よく肌なじみのいいテクスチャーを選んで、ユーザー一人ひとりの肌に合わせた1本を紹介する仕組みだ。同様に「アペックス クレンジング」全6種類、「アペックス ウォッシュ<洗顔料>」全6種類、「アペックス エマルション<乳液・クリーム>」全24種類が基本のコレクションとして用意されており、加えて、日焼け止めやバランシングオイルなどがある。
ポーラはまた研究開発において、細胞が持つメンテナンス機能「プロテアソーム」に着目している。プロテアソームとは、細胞増殖の停滞やタンパク質の産生が遅くなるなどの原因とされる細胞内に蓄積された不要なタンパク質を、選択的に分解するタンパク質分解酵素複合体で、不要タンパク質のユビキチンに反応して分解し、再利用できるアミノ酸を生じる働きを持つ。ポーラでは、プロテアソームが真皮だけではなく、表皮、皮下組織の美容関連因子にも影響を与えていることを発見。この知見を活かして4つの保湿成分をポーラオリジナルで組み合わせた「PRO-APエキス」を開発し、APEXのフルイド、エマルション、バランシングオイルに配合している。
チャットボットとの会話など、日々のケアに寄り添うアプリ
あわせて、今回のリニューアルでは、ユーザーの自宅での日々のケアに伴走するパートナーとしてポーラのアプリ「肌ログme」とAPEXが連動した。アプリでは過去2年の肌分析結果を記録し、ユーザーは分析結果やアドバイスを振り返り、肌の変化の過程を確認することができる。加えて、肌分析によりセレクトされた各自のアイテムの特徴や使い方などのコンテンツをみたり、肌のためにユーザー自身が何をすると良いのか、生活習慣や栄養面での提案も受けられる。また、アプリ内キャラクター「マーク」との会話を通して、ケアへのモチベーションを高める工夫もされている。
「オンラインストアで質問があるときなどに利用するQ&Aタイプのチャットボットとは違い、『最近お肌の調子はどうかな?』など、マークの方から積極的に語りかけるのが特徴だ。友だち同士のような会話を楽しみながら気づきや役立つ情報が得られる、いわば“ポケットに入れられるビューティーディレクター”として利用してもらえたらと考えている」(菅生氏)
季節や生活環境など外的な変化によって肌状態も変わるため、APEXでは3カ月ごとに肌分析を受けることを推奨している。アプリはユーザーの自宅ケアの期間に寄り添うサービスで、肌に良い生活を日常化するサポートになることが期待されている。
ポーラではすでに35年にわたり蓄積した2,070万件(2023年12月末現在)の肌分析データを持ち、これをAPEXの製品マッチングやパーソナライズした提案にも活用している。ユーザー側からみれば、肌分析を通じて自身の肌データを預けることで、より自分に適した処方や成分の組み立て、なりたい肌の目標達成に有効なアドバイスが受けられることを意味する。
1カ月で10万人が体験した肌解析、男性の体験者数は月間で3.6倍に
新生APEXの初動は順調だ。「発売開始から1カ月で約10万名のお客様に肌分析を体験いただいた。また、初月の売上は前年比2.6倍となった」と菅生氏は話す。さらに、基本的に30代がボリュームゾーンのAPEXだが、2024年7月に関しては40〜50代が増えたといい、ポーラの他ブランドの顧客で、今まで肌分析にはあまり関心がなかった層の興味をひくことに成功したと考えられる。さらに同月は、20代を中心に男性が約3,000名、肌分析を受けた。これまでの男性の体験者数は1年間で1万人程度なので、月間に換算するとこの数字は通常の3.6倍にあたる。
このような初動について菅生氏は、インフルエンサーなどと提携し、肌分析とは何をするのか、どのような体験ができ、分析結果としてどんなことがわかるのかなど、InstagramやYouTubeで体験を丸ごと紹介する投稿を積極的に展開するマーケティングが奏功したとみている。「開かれたAPEXというイメージがより多くの人に伝わり、その良さがわかりやすくなったのではないか」(菅生氏)
体験者数が増加するにつれ、ユーザーが自発的に肌分析や製品について語るオーガニックな投稿も増えた。「SNS上に投稿されるコメントでは、自分の肌は〇〇タイプだったとか、どの製品だったなどの報告にも、“楽しかった”という感情的な表現が入っていることが多かった。まずは肌分析を楽しいと感じてもらい、そこから製品を使ってみたいと思ってもらおうという我々の企画の狙い通りのお客様の声が聞けた。肌分析の結果にもとづきパーソナライズする製品なのだが、その前の行程の肌分析で自分の肌を知るというところがすごく大事とのメッセージがきちんと届いて、肌分析を受けていただいたお客様の心に何かを残せた意味でも、良い手応えがあった」と菅生氏は振り返る。
一人ひとりの肌や細胞にも個性があるとの考えをもとに、1989年に個々の肌にパーソナライズ対応するブランドとして立ち上げられたAPEXは、顧客の求めるものの変化やテクノロジーの進歩に伴ってリニューアルを繰り返すことで、常に時代の要請に応えられるブランドであり続けようとしている。
「ポーラには『B.A』や『リンクルショット』などネームバリューがあるブランドがいくつかあるが、APEXが実はリピート率が一番高いブランドだ。今回のリニューアルでは、顧客体験が拡張したことでお客様の裾野が大きく広がったと感じている。今後は現在のリピート率を維持したまま、お客様数を増加させていきたい。ポーラのフィロソフィーが詰まったAPEXをより多くの方々に知ってもらえるよう、マーケティングの強化やビューティーディレクターの育成にも力を入れていく考えだ」(菅生氏)
Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image and photo: 株式会社ポーラ