「人を幸せにするイノベーション」2024年度大賞は資生堂「ファンデ美容液」【The 5th Japan BeautyTech Awards】
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株式会社アイスタイルが主催、2024年のビューティと関連領域をイノベーションの面で最もリードした企業・プロジェクトを表彰する「The 5th Japan BeautyTech Awards」は大賞、準大賞および特別賞を決定した。
2019年初開催の「Japan BeautyTech Awards」から5回目となった「The 5th Japan BeautyTech Awards」(以下、アワード)は、美容のほか、ファッション、ヘルスケアなどの関連領域または業界をまたがり、「人を幸せにするイノベーション」としての可能性をもつ「商品・サービス」「技術」「活動・取り組み」を表彰するものだ。
今回のアワードには61件の応募があり、そのなかから15件が一次審査を通過した。二次審査ではこの15社がプレゼンテーション・質疑応答を行い、大賞および準大賞各1件、特別賞2件が選出された。
審査は各方面で活躍する5人の審査委員によって「革新性」「事業性」「技術性」「社会性」「内発性」という5つの審査評価基準に沿って行われた。内発性は第5回から新たに加わった審査評価基準で、ほかの4つの基準の土台ともなる重要な要素として、“(この事業やプロジェクトについて)なぜ、あなたなのか?なぜ、あなたの会社なのか?”を問うものだ。
受賞企業と対象名およびその概要と審査委員講評は次の通り。
●大賞
株式会社資生堂
「彩る美容液、を新しい化粧文化へ『ファンデ美容液』」
資生堂の美容意識調査によると、日本の女性は人前では肌をきれいに見せたいと思う一方で、実はその7割※1 近くが本音では「”他人のために装う”ファンデーションをやめたい」「できればスキンケアのみで生きていきたい」と思っていることが分かったという。
こうした需要の高まりに応えて、資生堂は独自の乳化技術「セラムファースト技術」により、「ファンデーションに美容液成分を入れる」のではなく、「美容液にファンデーションを入れる」という逆転発想で、2商品「SHISEIDO エッセンス スキングロウ ファンデーション」と「マキアージュ ドラマティックエッセンスリキッド」を開発・発売。両商品の累計出荷総数は300万個※2 に達した。
そこで2024年4月、スキンケアとメイクを越境する新しいベースメイクカテゴリ―として「ファンデ美容液」という新たなカテゴリー名・コンセプトを打ち出してコミュニケーションを開始。さらなる売上拡大につながったという。
※1:ファンデーションについてのアンケートで、「人の目がなければファンデーションは使わないと思う」と答えた人の割合(資生堂調べ)
※2:「SHISEIDO エッセンス スキングロウ ファンデーション」2023年9月~2024年3月累計出荷総数と、「マキアージュ ドラマティックエッセンスリキッド」2022年2月~2024年3月累計出荷総数の合計
<審査委員コメント>
顧客ニーズを的確にとらえ、製品化への熱い思いと、美容液でファンデ成分を包むという発想の逆転。その完成度の高さと、新たなカテゴリーで市場を一気に拡大して圧倒的No.1を取った実績を評価した。テクノロジーに裏付けられた新発想が使用感に直結して、エンドユーザーの感動を呼んだ点で、まさに「人を幸せにするイノベーション」と呼べるのではないか。
●準大賞
株式会社モーンガータ
「SminkArt」
日本を含めた世界中で、生活者だけでなく、化粧品企業や小売店において、余剰となったカラーコスメやその原料であるカラーコスメバルクが廃棄されている課題がある。これに対してモーンガータは、それらを資源と捉えて買い取り、絵の具や雑貨、印刷インキ、文具、紙、内装塗料、建材などの色材へとアップサイクルする技術とその循環スキームを構築し、提供している。
<審査委員コメント>
創業6期目のスタートアップにして、競合企業同士をサステナブルな観点でつなぐ事業化スキームと、ライフサイクルマネジメントを実現するシステム作りなど、社会課題に正面から取り組む姿勢を高く評価した。自社の廃棄せざるをえないコスメ原料をパッケージに転用するなど、ナラティブを込めたブランディングの可能性が広がる。より大きな社会変革に向けた拡大を期待。
●特別賞
株式会社comvey
「シェアバッグ®︎」
株式会社comveyの「シェアバッグ®」は、ダンボール箱などの代わりとして50〜100回以上繰り返し使用できるリユーサブル梱包バッグだ。同システムを導入した企業のECサイトで商品を購入する消費者は、配送の際にダンボールなど通常の梱包かcomveyのシェアバッグ®かを選択できる。シェアバッグ®に入った商品が届いたユーザーが中身を取り出し、バッグに記載されている二次元コードをスマホで読み取ってリワードを選んだのち、バッグを折りたたんで郵便ポストに投函することで返却は終了。バッグがcomveyのもとに郵送され、回収が確認されると、ECサイトからのリワード、つまりクーポンや特定団体への寄付などが発行される。またシェアバッグ®の開封口は再生ナイロン製のセキュリティロックで閉じることで、テープ貼りが必要なく、ハサミやカッターを使わずに簡単に開封できる設計となっている。
<審査委員コメント>
難易度の高い小口物流システムにおける梱包再利用という課題を、優れたビジネスモデルで解決し成長も見込まれる。事業設計から袋のデザインまで含めた「美しい物流」という訴求も秀逸で、とくにファッションや美容分野でエンドユーザーが重視し始めた社会的価値観に、企業が向き合っていることを示す表現方法の1つとして広がり、さらなるインパクトを生み出せるものと期待する。
●特別賞
HONESTIES株式会社
「裏表のないスマートウェア オネスティーズ事業」
大阪・泉州発のアパレルD2CであるHONESTIES株式会社は、「目をつぶったままでも着られる」をコンセプトに裏表も前後もない独自のデザインのユニバーサルウェアを企画・販売する。裏表・前後がないことで、着衣を苦手とする子ども、障害者、そして介護を要する高齢者などがストレスなく着衣・脱衣でき、またそれをサポートする親や介護者の負担も軽減できる。さらに、生地の裏表を両方使用する構造であることで服自体が長持ちし、資源の有効活用にも寄与するとする。
<審査委員コメント>
前後や裏表がないという着想はシンプルであるが、日常の不便を解決するだけでなく、介護やインクルーシブな社会の実現に貢献するビジネスにまで昇華させた点を評価した。妥当な価格を維持しながら、さまざまな気付きにもとづく改善を重ねていること、その過程で発見されたホテル業界のリネン問題など、ビジネスの拡張により気づかれていない社会課題を解決してくれるという期待がもてる。
授賞式および5周年記念イベント「BeautyTech Innovation Hub 2025」開催
受賞企業は2025年1月21日(火)、Tokyo Innovation Base (TIB)で開催の授賞式で表彰される。アイスタイルは同授賞式および、同日開催するJapan BeautyTech Awards 5周年記念イベントを総称して「BeautyTech Innovation Hub 2025」と銘打ち、歴代の受賞企業や、美容業界および関連の業界でイノベーションに関わる人々を招待し、ワークショップやネットワーキングの場とする予定だ。
Text: BeautyTech.jp編集部
Top image: The 5th Japan BeautyTech Awards事務局