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「デジタルツインなどオムニチャネルを進化させるテクノロジー」【GW Special その2】

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世界的にアフターコロナのフェーズを迎えた現在、フィジカルな交流をもたらす実店舗の価値が見直される一方で、ここ数年で一気に加速したデジタル化の流れが後戻りをすることはない。AIをはじめとするテクノロジーを、この先、人間がどのように使いこなしていくのかが問われるなか、2023年のゴールデンウィーク、BeautyTech.jpではこの半年ほどの美容業界の動きを追うキーワード3つを選出して、関連記事をまとめて紹介する。第2回は「デジタルツインなどオムニチャンネルを進化させるテクノロジー」だ。

オムニチャネルとは、実店舗やアプリ、ECサイトなど、企業と顧客のタッチポイントや販売経路をすべて統合し、総合的に顧客へアプローチすることを指す。オンラインとオフラインの境界を融合させ、購入以外のブラウジングやSNSへの投稿といった顧客行動も、包括的かつ双方向的に捉えることで、顧客理解をより深め、ブランドのLTV(ライフタイムバリュー)を高めるのにつなげられる。

それは言い換えるなら、消費者が各自の気分や状況にあわせて、オンでもオフでも好きな場を選択して、商品を探したり、試したり、購入することがシームレスにできる環境を提供することを意味する。米国最大手の化粧品小売チェーンのウルタ・ビューティやLVMHグループなどは、すでに2021年からオムニチャネル化を推進し、パーソナライズされた検索エンジンや、ARを活用したバーチャルトライオン、店舗でもインタラクティブな体験コーナーを設けるほか、オンライン決済などを実装。顧客が求めている商品を見つけ出すことや新しい商品との出会いをサポートすることで、購買意欲を促進させる施策をとっている。

アジア初の“Store of Future”コンセプトをうたうオムニチャネル店舗「Sephora@Raffes City, Singapore」
出典:Inside Retail

また、従来、販売チャネルやブランドごとに提供していた会員サービスを1つのIDに統合することで、オンとオフを一元化する動きも活発だ。加えて、適切な在庫管理やルーティングで原料や製造過程の透明化に寄与するRFIDや、リアルタイムでのパーソナライズやシナリオ設計したコミュニケーションで、オン/オフでの購買を促すカスタマーズエンゲージメントプラットフォームなど、オムニチャネルを裏側から支えるツールも登場している。

そして、2023年、進化したオムニチャネル戦略を実現するツールとして注目を浴びるのが、デジタルツイン技術だ。これは店舗内各所に設置したカメラで収集した顧客行動データや店舗スタッフの動き、店内レイアウトなどをもとに、仮想空間に実店舗をそっくりそのまま再現し、客数やその滞在時間、購入内容、あるいは置いている商品といった設定をバーチャルで変更させるなど、さまざまな状況下をシミュレーションすることにより、売上やコスト、需要を予測し経営判断に役立てられる。

同時にデジタルツイン技術は、実際のサプライチェーンのバーチャルコピーを作成し、ロジスティックの状況をシミュレーションして、気象条件や燃料費などの外的要因が変化した場合の影響を測ることで、サプライチェーンの弱点や非常時の対処法などを知ることも可能だ。また、ロート製薬のようにサイバー空間に製造工場を再現するといった活用例もある。たとえば、急に売れ筋になった商品だけを増産したいなど、フィジカルな工場ではすぐに対応が難しい場合も、そのために必要な資材、人員配置、適切なタイミングを仮想でシミュレーションして、現場に素早くフィードバックするといった利用法が考えられる。

▼ 関連URL

● 実店舗とデジタル空間をシームレスにつなぐオムニチャネル

● オンとオフのハイブリッド化を背後で支える施策と技術

● フィジカル空間とサイバー空間を一体化させるデジタルツイン技術

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image: eberhard via Unsplash