「リアル店舗のさらなる拡充」「美容×テックスタートアップ支援」がキーワード【海外トレンド 2022年10月-11月】
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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流を紐解く。今回は、リアルでのショッピング体験を希求する消費者意識の高まりを受け、実店舗の拡充を図るブランドの動向と、美容企業による次世代スタートアップ企業の育成を目指すアクセラレーターについて紹介する。
Glossierやセフォラはリアル店舗を拡充、YSLやキールズはポップアップを展開
★注目ポイント
外出や国内外への旅行の制限が撤廃されるなか、化粧品業界においては実店舗の価値が見直されている。実際の商品を手に取り店舗スタッフとのコミュニケーションが得られるリアルなショッピング体験が、改めて消費者から強く求められているからだ。それに伴い、店舗数の拡大やポップアップストアの開設、顧客体験の充実など、実店舗に注力するブランドが増えている。
D2Cモデルでスタートしミレニアル世代に人気の高い米Glossier(グロッシアー)は2022年に入り、ボストンやシカゴ、サンフランシスコ、ニューヨークなど米国の都市で常設の新店舗をいち早くオープンさせている。さらに、Glossierは同年の夏から秋にかけアトランタやワシントンD.C.、フィラデルフィアなど米東海岸で店舗を次々にオープン。2023年には、COVID-19のために閉店した旗艦店に代わるものとしてニューヨークで5店目になる店舗をソーホー地区に開店する予定だ。
また化粧品小売大手セフォラは17年ぶりに英国市場に再上陸することを発表。2022年10月にまず英国専用ECサイトをオープン、続いて2023年には実店舗の旗艦店を立ち上げるとしている。オンラインでの復帰を記念し、2日間限定のポップアップイベントがロンドンで開催され、著名なインフルエンサーらが集結。ロンドンキャブ、地下鉄、街角のビルボードはセフォラの広告で埋め尽くされた。だが、ファンにとっては待望のECサイトは、アクセス急増による技術的なトラブルや、在庫切れの問題などが発生し、「不具合の多いリニューアル」と批判を浴びる結果になったという。
セフォラは、アジアでもさらなるプレゼンス向上のため、店舗展開を強化していく構えをみせる。2022年9月、アジア初の「Store of Future(未来の店舗)」コンセプトをうたう新店舗をシンガポールのショッピングモール内にオープンした。426平方メートルの広さの同店舗は、「空間」「人」「テクノロジー」の3つを主要な顧客タッチポイントに位置づけ、商品を試せるインタラクティブな体験エリアとして、「プレイテーブル」「ケアテーブル」「スキンケアラウンジ」「ビューティスクール」などのコーナーが設置されている。
あわせて、「ヘアコンサルテーション」や「ドライスタイリングサービス」など、顧客各自にパーソナライズしたビューティエキスパートのカウンセリングや実際の施術もその場で提供するほか、肌分析アプリ「Skincredible」によって、ユーザーが自分の肌を理解し、スキンケアのアドバイスを受けられるなどの付加サービスも用意している。これに先駆け、セフォラは2022年4月にベトナムでも新店舗をオープンしており、今後、アジアでの店舗展開を加速させるとみられている。
ポップアップストアならではの「楽しい体験」、欧州やアジアでの試み
顧客とのダイレクトなつながりを求めて、ブランドがポップアップストアを設ける事例も増加している。
YSLはスペイン・バルセロナ空港ターミナル1に、未来的な美しさを讃えることをテーマに、ネオンライトと透明感を強調した製品ディスプレイでクリーン&モダンな雰囲気を演出した期間限定ストア「YSL Beauty Zone」を開設した。ビューティアドバイザーが常駐してYSLの主力商品を紹介するほか、ユーザーは、大型デジタルスクリーンを使った、フレグランスやメイクアップ製品の限定ギフトが当たるゲームに参加することもでき、オンラインとオフラインをハイブリッドすることで、リテールエンターテイメント要素やOMO機能を備えた体験を創出している。
キールズもゲーミフィケーション要素を加えたエンターテイメント型のポップアップストアを、2022年9月に10日間限定でシンガポールに開設した。ニューヨークの地下鉄をテーマにした内装で、来場者には地下鉄マップを模した店内ガイドリーフレットを配布したり、SNS投稿用撮影コーナーを設け、“楽しい体験”を強調するコンセプトが特徴だ。タッチパネルからキールズ製品についてのクイズに答えると記念品がもらえるゲームに加え、スキンアナリシスステーションでは、美容部員が肌診断デバイス「Derma Reader Pro」を用いた肌分析にもとづいて、各自にあった製品を提案。体験者には無料サンプルキットを配った。
シンガポールには、クラランスもラボをイメージしたポップアップストアを2023年1月まで開設している。成分抽出ラボ、ミクソロジールーム、カラーゾーンなどのテーマ別コーナーを通じて、クラランスのベストセラーと主要な植物成分を紹介。来場者は製品を試すほか、限定品の購入や写真撮影、クラランスのビューティコーチによる無料コンサルテーションも受けられ、スキンケアサンプルセットがプレゼントされる。
ドランク エレファントは、フランスでは初めてのポップアップストア「House of Drunk」を2022年10月に、3日間限定で開催した。ポップなモチーフで彩られた2フロアにわたる4,500平方メートルの会場では、ドランク エレファント独自の生体組織に親和性があるバイオコンパーチブル処方の製品を、自身の肌や髪やボディで試す体験を提供。さらに、自分に合うようカスタマイズしたスキンケアスムージーの作り方を学ぶセッションが開かれた。また、一般公開に先駆けて、インフルエンサーやジャーナリストを招待し、創業者でチーフアーティスティックオフィサーのティファニー・マスターソン(Tiffany Masterson)氏に会うクローズドイベントも開かれた。
資生堂はブランドの150周年を記念し、2022年10月初旬、英国では初となるポップアップイベントをロンドンで開催した。製品のお試しや購入に加え、更年期の肌をテーマにしたトークショーやパネルセッション、専門家による各種マスタークラスが催され、その模様はライブストリーミングで配信された。そのほか、ミニスパ体験や撮影スポットを用意し、護身術や書道など、ビューティの分野にとどまらないクラスも開かれた。イベント参加費用は1人25ポンドだが、チケットは資生堂の商品と交換ができ、来場者にはもれなく資生堂製品を詰め合わせた「グッディバッグ」がプレゼントされた。
資生堂UK&アイルランドのカントリージェネラルマネージャーであるシャルル・ドゥ・モンタリヴェ(Charles De Montalivet)氏は、「150周年の記念すべき年に、お客さまに、没入型かつ感覚的なブランド体験をしていただくためポップアップを開催した。消費者が参加して、楽しみながら資生堂のユニークな世界を発見できるよう、今後も刺激的で知的なイベントや専門家のマスタークラスを開催していきたい」と述べた。
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