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BeautyTech.jp著者&編集部による2019年に注目したい分野、コト、モノ

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あけましておめでとうございます。今年も美容業界をはじめ、近隣領域のファッション、ヘルスケアなどのイノベーションを深掘りしていきたいと思います。年初にあたり著者と編集部メンバーに、今年注目したいトピックについてそれぞれ聞いてみました。ビジネス面では海外での存在感が増すばかりのフランスや韓国の戦略、そしてメンズコスメやD2Cブランドが躍進。サイエンス分野ではセカンドスキンの普及が期待され、クリーンビューティトレンドはさらに広まり、テクノロジーではパーソナライゼーションが引き続き2019年も注目を集めそうです。

■国家戦略である「フレンチテック」、世界でどうイニシアチブをとるか
 谷素子氏/フランス在住ライター

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Image: xtock via shutterstock

「Tech for Good」をテーマに、国家をあげてデジタル大国を目指すフランス。2019年はフレンチテックの枠組みで新たな査証制度を発表し、有望な外国人起業家がさらに働きやすいエコシステムを整える予定だ。国だけでなく、自治体、企業、個人投資家などの取り組みで、フランスがどのように欧州および世界でイニシアチブをとっていくかを追っていきたい。また、ロレアルをはじめ大手企業の動きはもちろん、以前記事でも紹介した複数のアクセラレーターから支援を受けるBeautyMix(コスメDIY)Beautigloo(コスメ専用のミニ冷蔵庫)の製品発売など、スタートアップの動向にも注目したい。


■韓国発ヴィーガンコスメで、世界でK-Beautyのプレゼンスが高まる
 尹 美晶氏/株式会社PRIN代表取締役

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Image: Anna Ok via shutterstock

2019年、韓国では独自のオーガニック認証制度が始まる。これによって認証取得のハードルが下がり、動物性原料を使わないヴィーガンコスメブランドが数多く誕生する予定だ。そのブランドの多くが、企画段階から、欧米市場への展開を視野に入れた商品開発を行っており、欧米のとくにミレニアル世代の間で高まるクリーンビューティの波にのって、K-Beautyのプレゼンスが世界的にさらに高まっていくのではないか。個人的には、一早く米国進出を果たし、前年比約60%の売上増を達成した「rootree」や、アモーレパシフィック傘下の「LANEIGE」「GAONDODAM」などの躍進に期待したい。


■デジタルネイティブの支持を集めるD2Cブランドの登場
 納富隼平氏/合同会社pilot boat 代表社員CEO

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Image: DisobeyArt via shutterstock

昨今のグローバルの流れとして、ファッション、音楽、そして美容分野などのライフスタイル分野では、EverlaneやGlossierなど、ストーリー性をもったデジタルネイティブブランドが消費者の支持を集めている。日本でもD2Cやサブスクリプションなどの新しいビジネスモデルと合わせて、こういった共感を集めるブランドが登場してくるだろう。またNoverahealthServerのようなIoTで消費者データを収集し、ビッグデータを活かしてパーソナライゼーションを提供するIoTの登場・成長にも期待したい。


■ハイパー・パーソナライゼーションによる新たな顧客体験
秋山ゆかり氏/事業開発コンサルタント・株式会社Leonessa代表取締役

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Image: Zapp2Photo via shutterstock

2019年は、AI, AR, VRなどの技術をどのようにリアルとバーチャルでのショッピングに各社が使用し、顧客体験を作りこんでいくかに注目している。AIによりハイパー・パーソナライゼーションがさらに進化することは必至だ。AIカメラ付き店舗も実装される中、人でしかできない接客は何か、モノやサービスを売るだけでなく売る過程、そして、買った後の体験をどのように作りこみ顧客を満足させるかが、企業の成長のカギとなる。グローバル市場だけでなく、日本でも着実に変わりつつあるテクノロジーを使った新しい消費体験を今後もフォローしていきたい。

■ AI開発の巻き返しと東南アジアでのスマートシティ化協力への期待
 河 鐘基氏 / 株式会社ロボティア代表

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Image: GaudiLab via shutterstock

2018年まで、人工知能関連のトレンドは米国、中国を中心に発信されてきたが、日本も政府が人工知能に関する原則を発表すなど、自治体、企業などが一丸となり巻き返しを狙っている。日本政府はまた、東南アジアの環境都市構築に積極的に協力する旨も発表。これは、ITやAIの力で各都市のスマート化に尽力するという趣旨だが、日本および国内企業にとっても人口が多い同地域で技術をブラッシュアップする契機になる。ECや小売などでも潜在力を持つ東南アジアだが、日本のテクノロジー発展の行方を占う重要な流れのひとつになると思われる。


■セカンドスキンがメイクの概念を覆す
 小野梨奈/BeatyTech.jp編集部 ブースト担当

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出典:WWD JAPAN

サイエンス分野では、塗るだけで瞬時にシワやたるみを目立たなくすることができる第2の肌「セカンドスキン」の動向を引き続きウォッチしていきたい。パナソニックが開発中の「スノービューティーミラー&メイクアップシート」や、11月に花王が発表した極細繊維で積層型の極薄膜を形成する"ファインファイバー技術”などのテクノロジーによって、メイクという概念そのものが変わってしまう可能性も秘めていると思う。そのほか、日本でのメンズコスメ元年となりそうな2019年、ミレニアル世代だけでなくその他世代の男性たちにスキンケア、ひいてはメイクアップの習慣をどのように浸透させていくのか。大手ブランド・新興ブランド各社の戦略にも注目したい。


■ラグジュアリーブランドも無視できないクリーンビューティ
 そごうあやこ/BeautyTech.jp英語版副編集長

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Image: faithie via shutterstock

「クリーンビューティ」というのは範疇が広く、明確に定義するのが難しいが、基本的には、1)体に有害な化学物質を排除し、天然由来成分が主成分の製品 2)クルエルティフリー、フリートレードなどエシカルな製品 3)海洋汚染や土壌汚染の軽減を目指す環境に配慮した製品の、3つを総称する言葉だと思う。化粧品市場を牽引するミレニアル世代、Z世代は、欧米を中心に、こうしたソーシャルグッドに対する意識が高く、企業側にも、迅速に対応していかなければ消費者にそっぽをむかれてしまうというビジネス的な動機がある。シャネルが、サスティナブルな原料と技術を開発するフィンランドのスタートアップに出資するなど、ラグジュアリーブランドがクリーンな方向に舵を切りはじめた今、2019年はクリーンビューティ・マーケットがさらに拡大&加速するのではないだろうか。


■スマートミラーに向かう17分間に潜むビジネスチャンス
公文紫都/BeautyTech.jp副編集長

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Image: David Pereiras via shutterstock

1周年に寄せて」でもピックアップしたが、2019年もスマートミラーに注目したい。「Hi Mirror」の開発企業は、スマートミラーで取得できるデータの有効性を開発理由に挙げる。米国人女性は朝と夜で計17分、スキンケアやメイクに時間を費やすという。人口約7,000万人(※18〜45歳)とされる米国人女性が17分、鏡に向かっている間のデータを取得できたら、そこにどれだけのビジネスチャンスが広がるか。「超パーソナライズされたデータ」を基に最適な商品やスキンケア方法が提案できれば、購買に紐づくユーザーの動機や行動は大きく変わることだろう。2018年、日本でもポーラ・オルビスホールディングスが出資したことでも話題を呼んだ「Novera」が登場したが、2019年スマートミラーがどこまでユーザーの日常に溶け込むだろうか。


■リアルタイムデータをより早くモノやサービスに生かすこと
 矢野貴久子/BeautyTech.jp編集長

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Image: Montri Nipitvittaya via shutterstock

2019年は、パーソナライゼーションの奥行が広がるだろう。IoTやARによるバーチャルメイク、チャットボットなど、ユーザーのリアルタイムのデータを集められる仕組みづくりがさらに進むと思われるからだ。これらのデータのちょっとした特異点が、ユーザー体験をさらに豊かにしたり、まったく新しい商品づくりに活かせるネタの宝の山であるはずだ。また、美容業界ではサービスもさることながら、よりプロダクトそのものも注目を集めそうだ。Z世代による新たなD2Cブランドがいくつか立ち上がっていくと思われるが、こういったスタートアップたちが最初から「リアルデータ」を活用できるビジネスフレームを作れれば、既存ブランドの脅威となる可能性もおおいにある。

Coordination:小野梨奈(Lina Ono)
Top image: D_Darmawan via shutterstock