@cosme TOKYOが目指すもの(3) - リアル店舗がハブになる
前々回、前回と、@cosmeTOKYOで目指していること・やっていることとして、場所の作り方やコンテンツ発信のお話をさせていただきました。3回目は、そのコンテンツを生かしたネットとリアルの連携についてお話したいと思います。
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購入前のユーザー状況を可視化できる仕組み
店舗として、コンテンンツを発信したりユーザーとの出会いを創出したりしても、最終的にそのこと自体をビジネスモデルとして成立させるためには、それぞれのユーザーがいまどんな状態であるかを把握できる仕組みが必要です。そのキーファクターとなるのが、顧客台帳でありブランドオフィシャル(BO)です。
もちろんいままでも、店舗でお客様の情報を把握する、ということは顧客台帳をベースにされてきていました。これはお客様のカウンセリングの情報を店頭で記録し、小売店側とブランド側で共有するものです。ただ、この顧客台帳はあくまでも店頭での顧客とのコミュニケーションしか把握できませんでした。何より台帳が紙ベースであったことと、この台帳が店舗に紐付いていたために、店舗をまたいでしまうと情報の共有ができませんでした。
しかし、大事なのは顧客台帳を単にデジタル化することではなく、ユーザーにとって商品選ぶうえで本当に必要な情報を蓄積していくことです。
顧客台帳で把握していたカウンセリング情報やサンプルの取得履歴・購入履歴を、店舗を横断して活用するだけでなく、オンラインと顧客IDを一元化し、ブランドをまたいだイベントへの参加や、動画などのコンテンツ接触情報など、店頭だけでなくネットも含めたユーザーのアクションがわかるようにしていく必要があります。
こう書くと、「各ブランド主導で同じような方針のもと『顧客台帳のデジタル化』や『OMO』『CRMツール』が進んでいるよ」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それはひとつのブランドの情報です。ユーザーはたったひとつのブランドだけを購入するわけではないのです。これから先、リアル店舗ビジネスを考えたときに一番重要なのは「すべてのブランドを横断した購買・使用・参照情報がわかる」ことです。これこそが、たくさんのブランドを一同に扱う小売店舗にしかできないことです。店頭での顧客台帳をデジタル化し、オンラインでの行動まで含めたユーザー行動を把握できるようになっていくのが私たちアイスタイルがサービスとして提供しているブランドオフィシャル(BO)です。
いま、@cosme TOKYOはもちろん、全国の@cosme STOREやオンラインの@cosme SHOPPING、そして@cosmeでのオンライン/オフラインのアクションまで含めて、ブランドをまたがったユーザーの購買・行動把握ができるように進めています。
外部ECとの連携は「どこで買ってもよい」から
あわせて、私たちはこの8月に、米Amazonと業務資本提携を結び、Amazon.co.jp上に「@cosme SHOPPING(仮)」という領域をつくっていくことになりました。現在、すでに@cosme SHOPPINGというECサイトも運営しているので、その上でなぜアマゾンさんと組んだのか、とよく聞かれます。
この提携も私たちが考えているco-store戦略がベースにあります。@cosme TOKYOに足を運んでいる方が、そこでは商品を手に取って試したあと、@cosme SHOPPINGで購入いただくこともあれば、アマゾンの@cosme SHOPPING、あるいは楽天で購入いただくこともあるかもしれません。もちろんブランドの直営ECサイトでの購入もあるでしょう。
前提にあるのは、以前書いたように「ユーザーは買いやすいところで買っていただければいい」のです。「小売店」として「店舗のレジ通過金額を増やす」、つまり売上だけどKPIとして設計してしまうと、「どこで買っても」といった考え方は難しいと思います。ですが、@cosme TOKYOというリアル店舗のビジネスモデル自体を「店舗は体験や購入の接点の場」と捉えて設計しているので、リアル店舗以外で購入いただいてもかまわないという発想です。だからこそ、この提携に至っています。
データ収集の最終目的は豊かなユーザー体験
そして、僕が強調したいのは、店頭での商品の並び方を変えたり、コンテンツを発信できたりすることがco-store戦略ではないということです。今後、リアルだけではなくネットも含めて、ユーザーが何の情報に接触し、どのサンプルをいつ手にしたのか、どのイベントにいつ参加したのがわかるようになります。ネット/リアルにかかわらず、その情報を繋いで可視化していくことができるようになったからこそ、小売店舗も「商品を売る場所」から「商品と出会う場所」に進化していくことができるのだと思います。
ここまで書くと、「ユーザーの情報を@cosme側でためて、ブランドが活用することが目的なの?」と思われてしまいますが、そうではありません。ユーザーの情報が蓄積・可視化されることによって、実は一番提供できる価値であり最終的なゴールは、ユーザー体験をより豊かにすることだと思っています。
@cosmeのアプリは、いま「My@cosme」として進化しようとしています。My@cosmeでは、過去に自分が購入したアイテムだけでなく、投稿したクチコミを確認・編集したり、“Like”をしたブランドを登録したりすることができます。
大事なのは、上記で話してきたユーザー行動の可視化が、ユーザー体験を豊かにしていくためにも必要だということです。たとえば、無印良品などもそうだと思いますが、アプリを通して消費者がどの店舗で何をいつ購入したか、それがオンラインなのか店舗なのかといったことが分かるようになっています。同じように@cosmeでも、詳細な購買情報・状況がわかりますし、どのブランドのサンプルをもらったか、イベントに参加したかも確認できます。オンライン、あるいはオフラインで美容部員が相談にのる際にも、その情報がインプットとしてあれば、いちいちたずねなくても顧客の状態をその場で把握し最適な接客を提供することができます。
ユーザーにとって豊かな体験とは、何を買ったか使ったかだけではなく、購入前に新しいブランドや商品との出会いが増えるも含まれます。その出会いを増やすためにも、ブランド側がとことんユーザーの理解を深めることが大事になってきます。
いま@cosme TOKYOは、ユーザーとブランドを繋ぐ具体的な実現の場として、多くのトライをしています。まだ構想している中で実現に漕ぎつけているのはほんの一部ですが、ユーザーとブランドにとってより良い出会いをサポートできるよう@cosme TOKYOをリアルのハブとして進化させていくつもりです。
次回予告:小売店とブランドの協業は必至 - 「co-store戦略」のまとめ
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