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@cosme TOKYOが目指すもの(1) - 「探しやすい」場所から「出会いやすい」場所へ

前々回前回とアイスタイルのco-store戦略について書いてきました。私たちはそれを具体的に実践する店舗として@cosme TOKYOを2020年1月に原宿にオープンしています。改めて、@cosme TOKYOが具体的に何を目指して、いま何ができているのか、そしてこれから何を実現しようとしているのかについてお話していきたいと思います。

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デパコスからセルフ、D2Cブランドまでが揃う店舗

まず何よりも一番最初に取り組んだことは、すべての化粧品が揃う大型店舗を作ることでした。

これまで体験が大事だという話をしてきましたが、何より一番大事なのは、ユーザーが店舗に行ったときにいろいろな化粧品を試せる、買える、これを実現することだと考えています。そのためには、デパコスからセルフ、D2Cブランドまで可能な限りすべての化粧品が揃う店舗を実現する必要があるのですが、これが化粧品というカテゴリーにおいては非常に難しいことでした。

以前書いたように、商品によって流通経路が異なりますし、また同じエリアに自社ブランドを扱う店舗が並ぶと価格競争が発生してしまう可能性があるので、そのブランドを取り扱いたくても、後発で店舗を構えても取り扱える商品には限りがあります。

その中で、どうやったらすべてのブランド・商品を取り扱える店舗を作れるのか? 考えた結果、近くに化粧品店、とくにデパートがない地域に出店するしかありませんでした。なので私たちは最初から、デパートがなくて一番ユーザーに足を運んでもらえる場所=「原宿」と狙いを定めて出店先を探していました。最初に原宿の議論を始めてから7〜8年近く経っていたと思います。大きな店を出すために「各ブランドが参加できる可能性のある環境を整える」というところから@cosmeTOKYOは始まっています。いろんなご縁があっていまの場所と出会い、co-store戦略のスタート地点に立つことができました。

出会いの機会をつくる

原宿のいまの場所にご縁をいただいても、実際に店舗を構えるとなると現実は難しいものです。そもそも、どのブランドに参加してもらえるのかも決まっていませんでしたし、何より「400坪を超える店をどんなブランド、アイテムで埋めるんだ」と多くの方に心配されました。「旗艦店である@cosme TOKYO」とは言っても、いままでのお店との違いをイメージすることは難しく、おそらく皆さんの頭の中では、商品がずらっと棚に並んだだけのイメージだったんじゃないかと思います。

実際のところ、ただ商品が並んでいるだけでは、ユーザーにとって魅力的で手にとってもらう機会は増えません。やはり一番のポイントは、いろんな商品との出会いが生まれるための仕組み・仕掛けを作っていく→ 店頭の「編集」をしていく必要があります。

例えばランキング。ランキングは、いままで知らなかった商品と出会う一番わかりやすい仕掛けです。普段の店頭の商品陳列では考えられない商品同士が並び合うことによって新しい商品を知ってもらう機会を作っていく。知らない商品と出会うためにも、ランキングだけではなく、たとえばデパートコスメとセルフコスメを横に並べることもあれば、同じ商品でもテーマや切り口によって複数の棚に陳列することもあります。同じブランドでも、いろいろな切り口、見せ方によってユーザーと出会いのシーンをたくさん作っています。通常のお店であれば「商品を見つけやすく並べる」ということが根底にあると思いますが、私たちは「出会える」ことを根底においています。これによって、空間を商品で埋めるのではなく、出会いの場をどう作るかという視点で@cosmeTOKYOの店頭を編集しています。

店舗はネットの世界へのゲートウェイ

これまでにない大きな店舗を作っていくにあたって最初にみんなで決めていたことは「@cosmeの世界への入口、ゲートウェイにする」ということです。ネットで気になった商品を、お店に来て購入して終わりなのではなく、店頭ではまだ知らなかった新たな化粧品と出会い、@cosmeでクチコミや商品詳細をチェックして…とサービスを使っていくきっかけにしていく。そのために@cosmeTOKYOでやっているのは、商品を並べて出会い作っていくことに加えて、店頭からまたネットへとつないでいくことです。

商品だけでなく、@cosmeのコンテンツとの連携を強化し、たとえば編集や特集の切り口を連携させていくことで、よりいろんな出会いも増えてきます。コンテンツもネットだけでなく、店頭自体がコンテンツを作り発信していく場所になっていて欲しいとも考えていました。そこで@cosmeTOKYOの店頭には、昔のラジオ放送のライブのように、コンテンツが収録できる情報発信基地も作りました。収録中にお客様が集まってくることもありますし、「オンライン美容部員」という形で、美容部員の人が商品を紹介したり、カウンセリングのサポートをしたりというようなコンテンツもつくっています。3階もユーザー参加型のリアリティコンテンツを作っていく場所として位置づけています。

ただ、2020の1月に@cosmeTOKYOをオープンしてから、すぐにコロナ禍になってしまったこともあり、この店頭からコンテンツを発信していくという試みは改めてスタートしたばかりです。さまざまなトライアルをしながら、店頭をコンテンツ化していくということに挑戦しています。

次の回では、このコンテンツの発信ということにもっと触れていきたいと思います。

次回予告:@cosme TOKYOが目指すもの(2) - コンテンツの発信基地へ


<著者プロフィール>

吉松徹郎
株式会社アイスタイル 代表取締役社長 兼 CEO


東京理科大学基礎工学部卒業後、アクセンチュア株式会社入社。1999年7月に有限会社アイスタイル(現:株式会社アイスタイル)を設立し、代表取締役社長に就任。同年12月、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」をオープン。2012年、東証一部上場。現在は「Beautyの世界をアップデートしながら、多くの人を幸せにしよう」をミッションとして事業を拡大、アジアを中心にグローバルにビジネスを展開。また、公益社団法人 経済同友会東京オリンピック・パラリンピック 2020 委員会副委員長、公益社団法人 経済同友会幹事を務めるほか、公益社団法人アイスタイル芸術スポーツ振興財団を設立し、理事長として現代アートの制作・展示への助成支援やスポーツイベント開催活動への助成支援を行うなど、活動の幅を広げている。「第6回ニュービジネスプランコンテスト」優秀賞(1999年)、ICS「第14回 ポーター賞」(2014年)、「EY Entrepreneur Of The Year Japan 2018」 Growth部門 特別賞(2018年)など、受賞歴多数。