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いま、私たちが考える「ミライの店舗」

BeautyTech.jp

仕入販売モデルからユーザー獲得支援モデルへ

ここまで、小売店とブランドそれぞれに起きていることとその課題、また生活者の変化をお話してきました。この連載の中で一番の大きなポイントは、DXへの対応など、誰が小売店舗の進化・発展のために投資し続けていくのかということです。改めて小売店・ブランド・ユーザーの置かれている状況を振り返ってみたいと思います。

※バックナンバー一覧はこちらから↓

小売店には以下のような課題がありました。
(1)リアル店舗で購入する顧客数は確実に減っていく
(2)自社ECには相当なコストがかかり、競争も激しい
(3)集客のために、ブランドからの協力が得られなくなっている

一方ブランドは、以下の状況に直面しています。
(1)増え続けるデジタルコスト
(2)知ってもらうことの難しさ
(3)ブランド体験を自社のみで提供するのは限界がある

そして生活者は、このように変化しています。
(1)いつでもどこでも自由にモノを買いたい
(2)ただし、失敗はしたくない
(3)つまり、信頼がますます大事になっている

皆さんそれぞれに課題を抱えながら、この大きな環境変化の中で次の一歩を踏み出しています。ですが、実際には小売店自身が店舗のDX等に投資するのが厳しく、かつブランド側も減少傾向にある小売店舗への投資は難しい状況です。

そもそも年々人口が減少し、EC市場の拡大、ブランドによる直接販売などが進む中、化粧品の小売店舗の売上は減少していく傾向にあります。きちんと向き合うべきは、小売店にとっては「仕入れて売る」という従来のビジネスモデルだけでは立ち行かなくなりつつある、ということです。

ではどうすればよいのか。

以前書いたように、リアル店舗の重要性は変わっていません。というより、「失敗したくない」ユーザーの行動変容からより重要性が増しています。ポイントは、ユーザーにとって「購入する場所」に加えて「出会えて試せる場所」としての重要性が高まっているということです。

ということはブランドも小売店側もユーザーの「購入」金額→販売規模に依存した収益構造から、「出会えて試せる」ということも加味した収益構造に変換していくことこそが大事なのではないでしょうか。

求められる化粧品大型店舗

「いや、すでに店頭ではたくさんのサンプルも置いているし、店頭コーナーのような販促場所も作っているよ」という方もいると思いますが、実現すべきなのは、販促としてのサービスではなく、「出会えて試せる」→ブランドにとってはユーザー獲得の場所としてのサービスを提供していくということです。(※ここはまた後ほど詳細について書きたいと思います)

また、「出会えて試せる場所」となると、それなりの空間・スペースが必要になります。以前こちらで書いたように、化粧品は仕入れによるボリュームディスカウントがない商材なので、小売店が大型化するインセンティブが働かないと書きました。しかし、これはあくまでも「販売」をベースにしているビジネスモデルだからです。

今回、「出会えて試せる場所」にしていくのであれば、小さなところよりも大きな場所のほうがスケールメリットがでます。仮に広告を出してユーザーに来店してもらった場合、小さな場所より大きな場所の方がブランド数が多いので、1人当たりのブランドへの接触コストも安くなりますし、ユーザーにとっても1回の来店でたくさんのブランドと出会えるようになります。

「仕入・販売」のビジネスモデルは、販売量の大きさに依存したうえに、仕入単価を下げることがキーになりますが、「ユーザー獲得支援」サービスであれば、ユーザーとブランドの接触数がキーになるので店舗が大きい方がコスト効率は良くなるのです。実際に体験をベースにしたビジネスモデルということでは、家電量販店がそのモデルを実現してくれています。新宿や渋谷のような一等地にどんどん大型化する家電量販店は、その場で販売することだけを目的としたモデルではありません。最終的にユーザーに対してはオフラインでもオンラインでもどこで買ってもらっても構わない、ということに立脚したビジネスモデルになっています。

今まで化粧品業界においては大型店舗はありませんでした。@cosme TOKYOをオープンした時も、多くの方に「あれだけ広いスペースをどうやって埋めるの?」と言われましたが、私たちが目指していたのは、十分な品揃えと同時にコンテンツ発信基地としての@cosme TOKYOでした。なによりユーザー体験が大きく変わっていくことは、@cosme TOKYO現地を見ていただければご理解いただけると思います。

co-store戦略とは

とはいっても、@cosme TOKYOもビジネスモデルの転換ができているかといえばまだまだ始まったばかりです。とくにビジネスモデルを変えていくためには、ブランドの方々と一緒に新しい小売店舗のあり方を検討していかなければなりません。

そこで私たちアイスタイルが新しい小売店舗のあり方として提案したいのが「co-store戦略」です。その名の通り、コワーキングスペースのように大型店舗をブランド同士でシェアしていくのです。

これは一見、現状の百貨店に複数ブランドが出店している状況と同じに思えるかもしれませんが、箱としての小売店の役割が「商品の販売」に留まらず「ユーザーとの出会いの場」も提供している点で大きく異なります。

たとえば、コワーキングスペースには、単なる貸し会議室やオフィス賃貸と違って、講演会などを積極的に開いたり、そこに集う会社とのコミュニケーションが発生するイベントがあったりとファシリテートする仕組みがあります。co-storeの中でも、単に商品を並べておくだけではなく、積極的にブランドの方自身にユーザーとコミュニケーションを取ってもらったり、YouTuberが店内を自由に歩いて商品を試して動画を撮ったりと、ブランド1社だけでは難しい動きをお店に組み込もうとしています。販売もその場で直接ブランドサイトから購入してもらっても構いません。

収益構造も、ネットと同じようなユーザー1人あたりの獲得単価で考えてはどうでしょう。店頭において、あるお客様がその場でブランドサイトで購入したとしても、店舗側はその顧客獲得単価さえもらえれば問題ありません。大事なのは、「どっちで購入するか」ではなく「ブランドの商品を購入してもらうためにユーザーとどう出会ってもらうのか」なのですから。

この「co-store戦略」ですが、私たちアイスタイルは@cosme TOKYOを実践する場として、いろいろなトライアルを始めているところです。

これは本当に三方良しの仕組みで、ユーザーからすれば大型店舗で短時間にたくさんの商品に出会い、気になった商品を実際に試すことができる場所として、ブランドからすれば、自社だけで行うDXコストを削減し、小売店営業とマーケや販促が一体化して「出会い」を強化することで、Webの販促だけでは難しかったリアルに試せる機会が増えます。その結果、新規顧客獲得や休眠顧客の活性化などにつながるのです。小売店にとっては、商品の販売だけではなく、場の編集、ファシリテートを通して「出会いの価値」を高め、新しいビジネスモデルを確立することになります。

次回以降、この「co-store戦略」の詳細な仕組みを紹介していきたいと思います。

次回予告:co-store戦略とは(1) - ブランドからの視点


<著者プロフィール>

吉松徹郎
株式会社アイスタイル 代表取締役社長 兼 CEO


東京理科大学基礎工学部卒業後、アクセンチュア株式会社入社。1999年7月に有限会社アイスタイル(現:株式会社アイスタイル)を設立し、代表取締役社長に就任。同年12月、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」をオープン。2012年、東証一部上場。現在は「Beautyの世界をアップデートしながら、多くの人を幸せにしよう」をミッションとして事業を拡大、アジアを中心にグローバルにビジネスを展開。また、公益社団法人 経済同友会東京オリンピック・パラリンピック 2020 委員会副委員長、公益社団法人 経済同友会幹事を務めるほか、公益社団法人アイスタイル芸術スポーツ振興財団を設立し、理事長として現代アートの制作・展示への助成支援やスポーツイベント開催活動への助成支援を行うなど、活動の幅を広げている。「第6回ニュービジネスプランコンテスト」優秀賞(1999年)、ICS「第14回 ポーター賞」(2014年)、「EY Entrepreneur Of The Year Japan 2018」 Growth部門 特別賞(2018年)など、受賞歴多数。


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