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いま、ブランドに起きていること(1) - 増え続けるデジタル投資コスト
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いま、ブランドに起きていること(1) - 増え続けるデジタル投資コスト

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前回まで、小売店舗側の視点から、新しいビジネスモデルにDXあるいはBXしていくために必要な投資の難しさを考えてみました。今度はブランド側の視点で、現状をひも解きながら考えていきたいと思っています。

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ECが補完的販売チャネルから主たる販売チャネルの一つに

前回、これまであまり積極的ではなかったブランド側のECがこのパンデミックによって大きく伸長することになったと書きました。ネットビジネスに身をおいているものからすると、成長性のあるECになぜこれまで入ってこなかったのか?と不思議に思われる方も多いのかもしれませんが、これには理由があります。ECを伸ばすということと既存の販売チャネルを壊すということが同時に起きてしまう、というイノベーションのジレンマがここにはあったからです。

しかし、このイノベーションのジレンマに囚われずに、自由にオンラインで販売できるのが、D2Cブランドと呼ばれる新しくダイレクト販売を始めるブランドでした。世界でも、人気ブロガーにより立ち上がったGlossierや、2019年に資生堂傘下に入ったドランク エレファントといった成功ブランドが出てきたおかげで、日本でもこの数年でかなりの数のD2Cブランドが立ち上がっています。

こういったブランドはSNSを始めるとするデジタルコミュニケーションが非常に上手ですし、何よりお客様と直接繋がっているからこそできるコミュニケーションや製品へのフィードバックの早さによって、今までのブランドとは違う信頼関係をユーザーと構築してきています。結果、小売店での流通を主体としてきた既存ブランドからすると、無視できない規模に成長してきました。

そこに今回のパンデミックによってリアルの小売店流通が止まったことにより、リアル店舗流通を主体としていたブランドも本格的にECへの参入が加速するということになりました。今までの補完的販売チャネルだったECが、小売店チャネルと並ぶ主たる販売チャネルの一つとして確立し、もうこの流れは止めることはできません。

増え続けるデジタルコストとデジタル情報

これはある意味ブランドにとっても良い変化です。なぜならば、それまで小売店流通を介してでないと難しかった「お客様情報を取得する」ということがダイレクトにできるようになったからです。実はこの簡単そうなことが、できていませんでした。SNSで繋がっても、その方々が本当にお客様かどうかが購買データと紐づいていなかったので、ポイント会社の仕組みを使うとか、商品にキャンペーンナンバーをつけてユーザー自身に登録してもらうなど、ブランド側でもなんとか購入者を把握しようということが行われていました。

そこにECが本格的なチャネルになったことで、デジタルシフト環境が整いました。ユーザーがブランド情報へ接触する方法がスマホをはじめとするデジタルにシフトしたこと(これについてはまた別途、生活者の変化というパートで書こうと思います)によって、デジタルへの投資コストはさらに増え続けることになります。

このデジタルの世界は、まだまだ爆発的に広がっています。従来のECチャネルの構築だけではなく、AIの活用やソーシャルとの連携、あるいはメタバースにおけるブランドの世界観の構築など進化の真っ最中です。これから5年、10年先、ブランドがユーザーに対して発信するデジタル情報は増え続けていくことは間違いありません。

デジタル投資コストが売上に直結しないジレンマ

しかし、最近いろいろな取り組みを進めているブランドさんからは、「SNSもやっているけど、全部本当にやらないといけないのだろうか?」「デジタル投資は増えているけど、本当に売上に繋がっているのだろうか?」というお話を伺います。確かにWebサイトから始まり、アプリやECにCRMの仕組みなど構築していくものが増えていますし、SNSもTwitterから始まりインスタやYoutube、Tiktokにと運用する範囲も終わりがありません。やらなければいけいないことが増え続けています。

また、まだまだ実験的な取り組みではありますが、「バーチャルの世界に顧客接点を設けたが、生活者の方々にどう見てもらうのか、どう体験してもらえばいいのだろうか」とご相談を受けることもあります。当然ながら、立ち上げるだけでは何も生まれません。つくってはみたものの、認知と集客、そして高い顧客満足度の維持に課題があるのが現状です。

大事なのは、デジタル投資コストと収益性が見合わなくなっているのかもしれないことです。小売店に配慮してECを進めにくかったブランドが、今度はデジタルコストが増えても売上に直結していない、という新たなジレンマに直面しています。

次の回では、引き続きブランドの立場から、どうしたらブランド体験をより促していけるのか、小売店とのパートナーシップを軸に書いていきたいと思います。

次回予告:いま、ブランドに起きていること(2)- 知ってもらうことの難しさ

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<著者プロフィール>

吉松徹郎
株式会社アイスタイル 代表取締役社長 兼 CEO

東京理科大学基礎工学部卒業後、アクセンチュア株式会社入社。1999年7月に有限会社アイスタイル(現:株式会社アイスタイル)を設立し、代表取締役社長に就任。同年12月、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」をオープン。2012年、東証一部上場。現在は「Beautyの世界をアップデートしながら、多くの人を幸せにしよう」をミッションとして事業を拡大、アジアを中心にグローバルにビジネスを展開。また、公益社団法人 経済同友会東京オリンピック・パラリンピック 2020 委員会副委員長、公益社団法人 経済同友会幹事を務めるほか、公益社団法人アイスタイル芸術スポーツ振興財団を設立し、理事長として現代アートの制作・展示への助成支援やスポーツイベント開催活動への助成支援を行うなど、活動の幅を広げている。「第6回ニュービジネスプランコンテスト」優秀賞(1999年)、ICS「第14回 ポーター賞」(2014年)、「EY Entrepreneur Of The Year Japan 2018」 Growth部門 特別賞(2018年)など、受賞歴多数。


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