LVMHブース風景2

LVMHは決済から声のコミュニティまでスタートアップと連携強化【Viva Technology2019】

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前回のロレアルに引き続き、今回はパリで開催されたViva Technology(以下VivaTech)におけるLVMHのブースを紹介する。

ロレアル同様、Station Fのプログラムなどで、スタートアップの支援に力を入れるLVMHは今年もLVMH Innovation Awardを開催し、授賞式ではベルナール・アルノー会長兼CEO自らがスタートアップを表彰し、テクノロジーをイノベーションにつなげる活動への高いコミットメントをしている。

同グループの強みは、クリエイティブで希少性を保ちながら70ものメゾンの価値を最大限にしていくことだ。そこにデジタルシフトがどう貢献するのかの試行錯誤を重ね、多方面で戦略的にイノベーションを取り入れている。2018年には過去最高の468億ユーロ(約5兆8,550億円)の売り上げを記録したラグジュアリー業界最大手が提案するリュクスなデジタル体験とはどのようなものだろうか。今回はビューティとファッション、それぞれの分野での展示をレポートする。

セフォラが変える4つの顧客体験

昨年と同様、500平方メートルという広大なブースを構え、LVMHグループのメゾンとともに、LVMH Innovation Awardのファイナリストに選出されたスタートアップ30社が、AI、AR、顧客サービス、決済システムなど、さまざまな分野のテクノロジーを紹介した。また、ブース中央のステージでは、LVMHブランドの担当者やスタートアップが開発背景やデジタル戦略を具体的にシェアするなど、取り組みの本気度と自信が伺えた。

2018年にLVMHのSephora Accelerate
参加したBeautyMix, Ho karan, Abhati
トークセッション(提供:BeautyMix)

まずは、美容に関するイノベーションから紹介しよう。
デジタルをいち早く取り入れている世界最大級のコスメセレクトショップ「セフォラ」では、4つの顧客体験が披露された。1つ目は、スマートホームディスプレイ「Google Nest Hub」を使ったメイクアップのチュートリアルだ。

小型ディスプレイに登場する女性をお手本に、6種のメイク方法を学べる。「Googleアシスタント」内蔵で、音声で指示を出せるためメイクの手を止めることなく学べる。この体験はVivaTech会期中にオープンしたパリ西部のLa Défense店で5月28日から3週間のみ展開予定。「Google Nest Hub」がなくても、スマートフォンに「Googleアシスタント」をインストールすれば、自宅でも利用できる。


スマートホームディスプレイによる
チュートリアル

チュートリアルの一例

2つ目は、AR技術を使った美容体験に特化したVoir.Incが開発するバーチャルメイクアップだ。独自のフェイストラッキングシステムにより、目、口、眉、肌の動きを正確に捉え、顔を動かしてもずれることなく、実際にメイクをして鏡の前に立っているような感覚をバーチャル体験できる。メイクアップ商品の特徴である色合い、質感もリアルに表現できるのが、同社の強みだ。

どんなに動いても自然に見える
Voir.Inc技術が紹介されている
(出典:Voir.Inc公式サイト

リップのシェードを変えるなど単品ごとのバーチャル体験はもちろん、あらかじめ組み合わされたファンデーション、アイメイク、リップのコーディネーション例を選ぶことも可能だ。LVMH傘下のゲランでは、2019年4月に発売した口紅「ルージュ ジェ」の発売にあわせ、店舗にてこのAR体験がスタートしている。

ViorのAR技術でリップを試す著者

3つ目は、NEDDによる、どこでもドア型の仮想ブティックだ。スマートフォンのアプリであるSephora Collection Experience上で仮想のドアを出現させ、実際に歩きながらそのドアをくぐると、商品情報を確認したり、購入できる。2018年のクリスマスにあわせてフランス、イタリアで実施された。

下記は、Sephora Collection Experienceにて、クリスマスシーズンにあわせたセフォラのバーチャル体験を紹介している動画だ。

4つ目は、決済システムでも新たな試みがスタートしている点である。LVMHのStation Fの支援プログラムを受けているスタートアップNEOSが開発したアプリケーションは、商品のバーコードをスキャンすると、その場で即座に決済ができる。また、会員カードをスキャンしなくても、自動的に購入履歴やポイントが加算され、レジに並ぶことなく、シームレスな購入を実現する。現在、フランス国内のセフォラ9店舗で実装中だ。

現段階では、盗難と勘違いされるのを防ぐためセフォラの店員の目の前で使用する必要があるが、将来的にはよりスムーズに決済できるようになるという。この決済方法は、LVMH傘下の高級デパート「ボンマルシェ(Le Bon Marché)の食品館「ラ・グランド・エピスリー・ドゥ・パリ(La Grande Epicerie de Paris)」でも活用されている。

そして、過去のCESで注目を浴びた企業のブース出展も見られた。ホテルなどBtoBでデジタルミラーを提供する「Care OS」は、昨年は仏大手ホテルチェーンAccorグループのブースでVivaTechに出展したが、今年はLVMHのブースで参加。最高のホスピタリティを提供するといわれる高級ホテル「シュヴァル・ブラン(Cheval Blanc)」を抱えるLVMHグループにとっても、デジタルミラーには関心が高い。シュヴァル・ブランは2020年春にパリにオープン予定で、そこでの導入も考えられるだろう。

また、韓国のサムスン電子からスピンオフした、AIスキンケア・アシスタント「LUMINI」を開発する「Lululab」もLVMHブースで出展した。専用デバイスで顔面をスキャンするだけで、素肌年齢や「しわ」「色素沈着」「紅潮」「毛穴」「皮脂」「ニキビ」などを即時に分析し、最適な商品をレコメンドする。すでにドバイにて大手デパート「ギャラリー・ラファイエット」で期間的に導入されており、2019年末までに日本にも進出したいとLululabのCEOは語っている。

VivaTech 会場で「LUMINI」を体験し、
毛穴のケアが必要と診断された著者

ゲランは、「声」のコミュニティをスタート

そのほか、ゲランでは、音声で指示や操作ができるGoogle Homeを使って、好みの香水を見つけ出すサービスを2018年11月に開始している。また、香水好きが集まるコミュニティを作ることを目的に、香りの感想や思い出などエモーショナルな体験をシェアするPodcastのアプリ「Olfaplay」もスタート。インスタグラム、Youtubeなどビジュアルや動画ではなく、ボイス(声)を使ってコミュニティを広げていくチャレンジだ。「香り」という目には見えない商品の良さを伝えるミレニアム世代に向けた新しい試みで、すでに150の感想がシェアされているという 。

音声による体験を披露したゲランの香水コーナー

以上のように、ARだけでなく、音声の可能性を追求した体験が複数紹介された。また、Eコマースのシームレス化だけでなく、リアル店舗でのスムーズな決済方法を導入するなど、顧客目線のイノべーションが進んでいる。

次回は、LVMHが披露したファッション業界における革新的なプロダクトと顧客体験を紹介する。

Text&photo: 谷 素子(Motoko Tani)

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