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コティの救世主となるか。KYLIE SKINは米国らしい憧れとトレンドでできている

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「KYLIE SKIN(カイリースキン)」は、SNSを駆使したマーケティングにより欧米で大ヒットしたカイリー・ジェンナーのブランド「Kylie Cosmetics」のスキンケアラインだ。そのベーシックアイテムを実際に試用した使い心地や成分の製品レビューを通して、コティ傘下でグローバル展開を狙う同セレブブランドの思惑を探る。

KYLIE SKIN(カイリースキン)」は、米リアリティ番組「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ(Keeping Up with the Kardacians)」で知られる、セレブリティ一家の最年少メンバーであるカイリー・ジェンナーが、2015年に立ち上げたビューティブランド「Kylie Cosmetics(カイリーコスメティクス)」のスキンケアライン。2019年5月、スキンケア8品、ボディケア3品でローンチされた。

「Kylie Cosmetics」はわずか3色のリキッドリップとリップライナーのセットから始まったブランドだが、オンラインのみのスタート時から自らをアイコンにSNSを駆使して18ヵ月で累計4億2,000万ドル(約447億円)の売上をたたき出し、2018年には年間で3億6,000万ドル(約383億円)を売り上げている。起業家としてのカイリー自身も、21歳にして世界最年少で2019年版「フォーブス」誌の長者番付にランクインするなど大成功を収めた

2019年11月に、株式の51%を6億ドル(約638億円)でコティに売却、経営権を譲った。だが、カイリーは今後も製品開発やPRのイニシアティブを取っていくという。コティグループは日本で知名度のあるブランドこそ少ないが、カバーガールやリンメル、ウエラ、マックスファクター(日本からは撤退。SK-Ⅱは現在P&Gグループ)などのブランドを擁する、世界6位(BeautyPackaging のTOP20 GLOBAL BEAUTY COMPANIESより)の美容関連企業だ。近年ではデヴィッド・ベッカムやビヨンセなどセレブの名を冠したブランドにも力を入れている。

コティは現在、経営不振からの脱却を目指し、ヘアケアなどプロフェッショナル部門の売却を含めたブランドの再編を行っている最中にある。グローバルなビューティ企業がこぞって狙う若い世代に圧倒的な影響力をもつKylie Cosmeticsを、グループ再生に向けての切り札にしたい思惑もあるのではないか。では、そのKYLIE SKINのアイテムを詳しくみていこう。

マットピンクで統一、気分が上がるパッケージ

KYLIE SKINの価格帯は20~30ドルと、メインターゲットの25歳以下のZ世代にとってはやや高価な印象。少し背伸びをして手に入れるスキンケアとしてはちょうどいい設定かもしれない。

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ヴィーガン、パラベンフリー、サルフェートフリー、グルテンフリー、動物実験は行わず、皮膚科医によるテスト済みと、今のスキンケアブランドに求められる「クリーンビューティ」的な要素は最低限揃えている。保湿など有効成分には植物原料も用いられているが、成分の産地・製造方法などまでは言及されていない。

容器は薄めのピーチピンクで統一され、マットな仕上げでチープさを感じさせない。外箱や配送用ダンボールの内側、緩衝材までがピンクで統一されており、箱を開けた瞬間気持ちが上がるようにできている。機能面はわかりやすく「保湿」がメインで、ターゲット層にとっては過不足のないものだ。泡で出てくるポンプタイプの洗顔料やワンタッチで開けられるキャップのローションなど、手軽に使える容器デザインを採用しているのもポイントである。

ほとんどのアイテムにココナッツとバニラのような甘い香りがつけられ、一瞬「コパトーン」を思い起こさせる。日本人にとっては、顔に使うにはやや強めに感じる向きもあるかもしれない。

こういった点から考えると、エシカル、オーガニックといった作り手のステートメントが表れる要素はもたず、若い女性が直感で「好き!」と思えるもの、楽しんで使えるものを追求したという印象だ。キュートすぎず、シンプルでスタイルのあるパッケージやサイトデザインも、安っぽくない「セレブ感」を漂わせる。

自身が10代のときにローンチしたメイクアップライン「Kylie Cosmetics」よりもやや落ち着いた印象を与えるデザインは、20歳で第一子を出産、大人の女性として新たな一歩を踏み出したカイリーの今現在を反映しているようにみえるとともに、スキンケアプロダクトとして受け入れられやすい方向性を選んだとも考えられる。

ベーシックアイテム5品を製品レビュー

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♦︎Forming Face Wash(フォーミング・フェイスウォッシュ)
ポンプタイプである程度キメ細かい泡が出て、なめらかに洗うことができる。メイクも落ちるという記述があるが、国産メーカーの一般的なリキッドファンデーションは落としきれなかった。あくまで洗顔料の範囲と考えた方がよいだろう。アミノ酸系洗浄成分がベースでマイルドな洗い上がり。ビタミンC・E、キウイシードオイルといった抗酸化成分も配合されている。

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♦Vanilla Milk Toner(バニラ・ミルクトナー)
わずかにとろみのある、白濁した乳化タイプのローション。日本人のイメージする保湿化粧水と異なる「トナー」の位置づけ。欧米のスキンケア習慣に沿って、洗顔後コットンにとり、ふき取るように使用。アボカドオイル、キウイシードオイルなどの植物性オイルが配合されているためか、肌がやわらかくなるのが感じられる。肌表面のベタつきを抑えるためか、やや膜感の残る点は好みが分かれそうだ。

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♦Walnut Face Scrub(ウォールナッツ・フェイススクラブ)
微粒子のクルミ殻パウダー入りのフェイススクラブ。クリーミーなベースに配合されたホホバ、アプリコットカーネルなどの植物オイルが肌をやわらかくし、オレンジ、レモンエキスがマイルドなピーリング作用を与える。使用感はかなりマイルドで、洗い流した後のつっぱり感も残らない。テストした5製品中、この製品だけが無香料。

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♦Vitamin C Serum(ビタミンCセラム)
ビタミンC配合の美容液では珍しい、軽めの乳化タイプ。さっぱりと肌になじむ。肌の炎症・赤みを抑えて透明感を与え、コラーゲン生成促進をうたう。ビタミンC誘導体、ビタミンE誘導体、フェルラ酸を配合しているが、これは「スキンシューティカルズ」の「Vitamin C+E Ferulic Serum」や、資生堂による大型買収がニュースになった「ドランクエレファント」の「C-Firma™ Day Serum」などにもみられる、いま“鉄板”の処方。成分のトレンドがしっかり押さえられている。

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♦Face Moisturizer Hydratant(フェイスモイスチャライザー・ハイドラント)
朝晩兼用の乳液。ポンプノズルで手軽に使える。軽いテクスチャーで肌表面にベタつきを残さない仕上がりは、幅広い肌タイプに好まれそうだ。朝のメイク前にも向いている。シアバター、スイートアーモンドオイル、オーツ麦エキス、アロエエキスなど、比較的ベーシックな植物性保湿成分を配合。

カイリー自身の“今”を映し出すブランド展開

カイリーはインスタグラムだけでも1億6,000万人のフォロワーをもち、10代を中心に熱狂的なファンがいる。自らのブランドについてもYouTubeなどさまざまなSNSをフル活用して製品や使用法を紹介している。

カイリー自身は過去のインタビューで、あまり表に出るのを好まないと語っているが、ブランドのフロントパーソンであり広告塔として、積極的にメディアの前に姿を現し、発信を続けている。幼少時とは別人のような昨今のカイリーだが、2007年から続くTV番組で幼いころから広く顔を知られているという背景は大きい。親族はなにかとゴシップネタを提供することが多く、決して好感度だけが高いわけではないが、良くも悪くも“ひっかかる”存在であることは間違いない。

大人世代は「お騒がせセレブ」に眉をひそめるが、10代はカイリーたちのゴージャスなライフスタイルに憧れを抱き、同時にSNSを通じてカイリーが直接語り掛けてくることで親しみも抱いているのだ。

環境問題にはかなり意識が高いが、それにがんじがらめになるのはイヤ。都市生活をアクティブに楽しみデジタルメディアも活用する。自分が生きていくためのお金は自分で稼ぎ、大きなビジネスにしたい。Kylie Cosmeticsは、カイリー自身も含めた米国の若い世代の志向を具現化したブランドであるともいえる。

昨年からNetflixと提携して番組を制作して話題になったグウィネス・パルトロウが手掛ける「goop 」は、やや古いデータではあるが2016年の売上が1,600〜2,000万ドル(約17〜21億円)といわれる(雑貨などライフスタイルカテゴリーも含む)。グウィネス本人の掲げる美容理念や商品がかなり“クセが強い”こともあるが、「セレブが手掛けるビューティブランド」として「Kylie Cosmetics」のブランド規模がケタ違いであることがわかる。

コティへの株式の過半数を売却でグローバル市場への展開も視野に入ったが、本人の知名度が国外でどれほど通用するのかが問われてゆくだろう。「セレブ感」と「親近感」の巧妙なバランスをとりながら、メイクアップ、スキンケアとカテゴリーを広げてきた「Kylie Cosmetics」だが、昨年出産を終えたばかりのカイリーが今後年齢を重ねてゆくなかで、ブランドがどのように変化していくかにも注目したい。

最近では、2歳になった娘のストーミと“コラボ”しストーミの名前を冠したメイクアップコレクションや、「TRUE MAMA」という色名のハイライターなど、自身の「リアル」を存分に反映した製品が登場している。さらに「Kylie Baby」という名称の商標登録を出願したという報道もあり、今後はコスメ以外の分野にも積極的にブランドを広げていこうという意図がうかがわれる。

「自分自身」がブランドであることが「Kylie Cosmetics」最大の武器。その姿勢をコティ傘下でどれだけ貫けるか、これからが正念場だ。

Text : 弓気田みずほ(Mizuho Yugeta)

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