P&G、コティ、資生堂。2018年上半期デジタル施策総まとめ

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化粧品売上規模4位~6位企業の2018年上半期のデジタル施策。前回の1位~3位企業と同じく、各社ともテクノロジーで新しい顧客体験を作り出すことを目的にしてきているが、なかでもコティの攻めの姿勢が目立った。

※ランキングは、BeautyPackaging のTOP20 GLOBAL BEAUTY COMPANIESより

前回の1位〜3位企業であるロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダーに続き、今回はグローバルでの化粧品売上が4位〜6位企業であるP&G、コティ、資生堂の上半期の動きを紹介する。

デジタル技術と企業倫理のバランスのとり方で、各社の個性があらわれている。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は企業倫理を重視し、デジタルよりも透明性や情報開示などに技術を使っている。コティは積極的にデジタル技術を使った新しい顧客体験作りに挑みながら消費者が求める多様性に対して敏感に反応しプロモーションを実施したが、そのこと自体が新たなブランド体験として位置づけられた結果となった。資生堂は、世界を見据え、ブランド横断のパーソナライズを実現するためのデータ統合や技術を獲得するプロセスに入っている。こういった動きの一方で、1位〜3位企業で顕著だった、ナチュラル領域への投資に関する目立った発表はなかった。


4位 プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)
透明性と質の高いデジタルマーケティングに注力

ブランドを守るために、ユニリーバと同じくマス向けのデジタル広告への支出割合を下げることを発表。高品質のデジタル広告への投資は続け、SK-IIの「Change Destiny(運命を変えよう)」などのキャンペーンにフォーカスしている。またOlay(オレイ)のスキンアドバイザーアプリなどでパーソナライゼーションによる顧客体験を高める施策を取っている。さらに、次世代体験型店舗を実験的に運用するなど、顧客の利便性を追求したデジタル投資の姿勢を取っている。ユニリーバと同様に、情報開示を積極的に行うことで、企業の透明性をアピールしているのも特徴だ。2月のCAGNYカンファレンスでデビット・テイラーCEOが、顧客が求めるナチュラル志向への対応についてもアピールしている。

P&Gのデジタルでの主な動き

● 4月26日 SK-II初「FUTURE X Smart Store by SK-II」を東京 原宿CASE Bに期間限定でオープンし、顔認証技術やAIなどのテクノロジーを使った次世代体験型リテールストアの実験を開始。

P&Gの事業開発の主な動き

● 4月12日 2月のCAGNYカンファレンスでデビット・テイラーCEOがリーンイノベーションを活用して、ファブリーズワン、パンパースピュアなどを立ち上げてきたと語り、すべてのカテゴリでナチュラル商品を検討・実現していくことを語ったブログ記事をアップ

● 4月19日 独製薬大手メルクの一般用医薬品など消費者向けヘルスケア事業買収を発表

P&Gの倫理性へのアクション

● 5月21日 SmartLabelを使用して、消費者が3500以上の製品の成分や使用法などの詳細情報にアクセス可能と発表


5位 コティ
テクノロジー活用だけでなく多様性へのアプローチも

コティは、よりシームレスな顧客体験を創造するために、デジタル領域で、様々な挑戦を試みている。自社開発だけでなく、新興企業とのアライアンスも積極的に行い、次々とサービスをリリースしている。2017年~18年は、AI、皮膚分析、カラー、DNAベースのパーソナライゼーションに重点を置いているが、今後はAR、音声、3D印刷などのテーマもアプローチしていくという。2017年に成功を収めたアクセラレータープログラムを今年も開催し、自社に必要な技術等を発掘・開発する場にしている。6月に発表したアクセラレーター プログラムでは、カスタムスキントーンマッチング技術のNudest、DNAベースのスキンケア製品・ヘルスケア製品のパーソナライズドサービスを提供するSkingenie、顧客にリアルタイムの皮膚分析、スキンケア製品の推奨、皮膚のパフォーマンスの追跡を行うGlamtechの3社が受賞。現在のサービスや今後のローンチするサービスへの応用を狙う。

デジタル領域だけでなく、世界的に透明性や多様性への対応が求められる中、コティの昨年秋にローンチしたキャンペーンが話題となっている。昨年秋にローンチしたCOVER GIRLの” I Am What I Make Up”キャンペーンで、イメージキャラクターに歌手のケイティ・ペリー、アンバサダーにブラック系アメリカ人のイサ・ラエ、ヒジャブのブロガー ヌラ・アフィア、10代のメイクアップアーティストでユーチューバーのジェイムス・チャールズ、69歳のモデルのメイ・マスク(イーロン・マスクの母)等がキャスティングされた。多様な年齢も人種も性別のモデルたちが、「ありのままの自分、なりたい自分になる」を訴求。さらに一歩進んで、このコンセプトを体現できる旗艦店を今年秋にニューヨークでオープンする。未発表のデジタル体験ができるプレイルームも予定されていて、新たな顧客体験をどう作りだすのか注目を集めている。

コティのデジタルでの主な動き

● 1月17日 Amazon Echo Show用に特別デザインされたパーソナルビューティーアシスタント”Let's Get Ready" を公開。髪、目、肌の色など個人的な属性にあわせた2000以上の組み合わせがあり、Facebookと連携して将来のイベントからどんなメイクをしたらいいかをレコメンデーションし、ショッピングもサポートする。

● 2月7日 COVERGIRLが2018年春コレクションからウォルマートにおけるARを使ったメイクトライアルを開始

● 2月21日 2017年に続き、デジタルアクセラレータープログラムを実施し、AIに関する優勝者は現金で最大10万ドルの賞金を出すと発表

● 4月20日 ブルジョワ パリの新しいパリの店で、PERCHと共同開発したマジックミラーを使用し、バーチャルメイクアップ体験を提供すると発表。

● 6月11日 デジタル アクセラレーター スタートアッププログラムの勝者発表

● 6月11日 COVERGIRLがニューヨークのタイムズスクエアに初の旗艦店をこの秋にオープンすると発表


6位 資生堂
オープンイノベーションへの取り組みに注目

資生堂は新3カ年計画を発表し、グローバルビューティーカンパニーへの成長を加速させることを発表した。デジタル化やデジタル周辺での新事業開発を加速させるという計画の内容は、顧客データの統合やCRMの強化を中心にしており、上位5社の背中を追いかける状況となっている。1月にグランドオープンしたフラグシップとなるSHISEIDO THE STOREは自社製品を幅広く体験できる既存の店舗の延長線で、今後のスマートストアへの取り組みに期待したい。一方、若年層セグメント獲得に向けたオープンイノベーションの取り組みなどの動きは非常に興味深く、今後も注目を集めるだろう。また、化粧品業界全体のサステナビリティ活動を牽引する活動に積極的にかかわるなど、グローバル全体で起きている企業倫理性を問われる動きに対応している。

資生堂のデジタルでの主な動き

● 3月5日 資生堂は「 新3カ年計画」(2018年~2020年)で、プレステージブランドを軸に、デジタル化を加速させ、グローバルビューティーカンパニーへ成長することを発表。デジタライゼーションの加速・新事業開発やイノベーションによる新価値創造を進めていく。

資生堂の事業開発の動き

● 1月11日 資生堂 米国ベンチャー企業Olivo Laboratoriesのシワやたるみを瞬時に隠す人工皮膚形成技術セカンドスキン事業を取得

● 1月16日 社内組織「イノベーションデザインLab.」と女子高校生が共創するオープンイノベーション型プロジェクト「POSME」を開始。第一弾商品は、目もとや頬などに使えるマルチユースのカラーアイテム「Play Color Chip (プレイカラーチップ)」。今後は、化粧品の枠にとらわれず、スイーツ、文具やファッション小物などの商品展開を予定。

● 2月19日 若年層の市場トレンドを捉えた期間限定ブランドの開発プロジェクト「COSMETIC PRESS(コスメティック プレス)」を開始し、第一弾としてメイクアップブランド「アイスクリームパーラーコスメティックス」を発売。市場トレンドや流行の兆しをタイムリーに捉えるため、商品特長や世界観などを毎回構築するので、期間限定・売り切り型でスピーディーに開発していく点が特徴。

資生堂の倫理性へのアクション

● 3月8日 2017年4月から日本企業として初めてUN Womenと契約を締結し、日本においてジェンダー平等を推進するリーダーとして活動することになった資生堂が「ジェンダー平等啓発ワークショップ2018」でジェンダー課題について学び、問題解決のためのアクションプランを提案する参加高校を募集。資生堂は、性別を問わずすべての人が自分の人生を選択し、能力を発揮できる社会の実現を目指している。

● 5月21日 日本企業として初めてSPICE(Sustainable Packaging Initiative for CosmEtics:化粧品のための持続可能なパッケージングへの取り組み)に参加し、エコデザインのパッケージや容器などの環境に配慮した技術の評価手法の開発や推進の枠組み構築を目指し、化粧品業界全体のサステナビリティ強化を図る。

<まとめ>

前回、そして今回とグローバルビューティ企業上位6社の比較をすると、デジタルではコティのアグレッシブな姿勢がうかがえる。メインブランドのCover Girl(カバーガール)などのブランド刷新をしながら、積極的なデジタル投資と技術応用で新たな顧客体験を作るトライアルを猛スピードで続けている。2017年1月に60%の株式取得をしたソーシャルセールスブランド(P2P形式で化粧品を売る)Unique(ユニーク)が利益率に貢献しており、また彼らが持つデジタルマーケティングのノウハウやスムーズな決済方法も取り込めるようになっている。顧客体験だけでなく、販売フローのデジタル化についても、コティの動きは要チェックだろう。

ミレニアルやZ世代へ向けた動きでは、資生堂のオープンイノベーションも気になる。ビューティだけでなく、世界中のマーケットがミレニアル市場獲得を目指す中、資生堂は女子高生と共にアイテムを化粧品に限定せずに商品を共同開発していく先に何を見ているのだろうか。今後の動向を見守りたい。

最後に、企業倫理の在り方が問われる時代に、グローバル企業各社の情報開示や多様性への支援活動などCSRが活発化している。これはビューティだけでなく、すべての企業に対して求められていることだ。

Text: 秋山ゆかり(Yukari Akiyama)
Top Image: optimarc via Shutterstock

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