SK-IIのスマート・ポップアップストアがさし示す、接客のパーソナライズ化という未来

◆ English version: SK-II’s latest pop-up smart store, AI and robots attend to customers
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2018年より「ラーニングラボ(実験場)」と位置付けたスマートストアを、ポップアップの形で次々に発表しているSK-II。その最新バージョンが原宿に開店した。よりコンパクトになったAI肌測定、アイトラッキングを活用したテスターエリア、そしてロボット美容アドバイザーなど、テクノロジーを駆使したインタラクティブな体験を提案する意図は、ショッピングの場をコントロールする力を顧客に渡すことにある。

2019年6月7日から8月12日までの期間限定でスキンケア・ストア「SK-II Future X Smart Store 」がオープンした。そのコンセプトは、訪れた客の一人ひとりにフィジカルとデジタルが交錯する環境を自由に行き来してもらうことで、自分のペースで楽しめるストレスのない買い物体験をつくりだすというものだ。

セルフで完結する全自動AI肌測定機器

デジタルツール満載のストアの一番の目玉は、AIを活用した肌測定「マジック スキャン」だ。デバイスを肌に触れさせる必要もなく、鏡の前に座るだけの3分間で、肌の状態や肌年齢を測定し、結果に応じたおすすめ商品の紹介まで、このスキャン1つで完結する全自動肌測定機器である。AIコンピュータビジョンによる肌のエントロピー解析にもとづき、目、頬、口の3つの主要ゾーンに分けて、ゆらぎがあるのはどのパートかなど、肌の安定度が一目でわかるように視覚的に表示する。

販売店では一般的に美容部員が肌測定を行うが、マジック スキャンは肩乗せスピーカーの音声ガイダンスに従うセルフスタイルで、肌年齢や分析結果を他人に知られたくないという、プライバシーを重視する声に応えるものだ。

AI肌測定マジック スキャンのコーナー

前回、2018年11月のポップアップストアではブース型だったこの肌測定は、今回から小さなスペースですむドレッサー型になり、大幅にコンパクトになったのも特徴だ。早い時期に店頭へ設置することが現実味を帯びてきたといえる。

スマートミラーやロボットのデジタル・ビューティアドバイザーが接客

インターネットやソーシャルメディアが発達・普及した今日では、多くの人々が興味のある商品に関して事前に十分な下調べをしている。こうした顧客があえて実店舗を訪れるのは、購入する前に実際の製品を手に取り、ボトルサイズやテクスチャーなどを実感して確認するためだ。販売スタッフから商品の説明を聞くのは二度手間なので避けたいであろうし、まずは目的の商品を好きなようにトライしたいという欲求が強い。それに対応して開発されたのが、アイトラッキング技術を搭載した「マジック ミラー」を備えるテスターエリアだ。

マジックミラー 画像提供:SK-II

鏡の前に並べられたテスターの1つを持つとマジック ミラーが反応し、商品説明や使用法、お試しの際の適切な量ややり方が表示される。次のステップに進みたいときはミラー上の指定のポイントに目線を動かすだけでよく、顧客は自分のペースで必要な情報が必要なだけ手に入れられるというわけだ。タッチパネルと違い、いちいち画面に触れないので、両手がフリーで試し塗りがしやすく、衛生的でもある。

また、今回のポップアップで初めて披露されたのが、ロボット美容アドバイザー「Yumi」である。手前のスクリーンに示された、乾燥、小ジワ・ハリ、シミ・くすみ、毛穴といった肌悩みから該当するものを選ぶと、Yumiがロボットアームを動かして後方の棚から各自にあった商品を取り出して目の前におき、商品の特徴や役割をスクリーンに表示しながら紹介してくれる。

ロボット美容アドバイザーYumi
画像提供:SK-II

デジタルが叶える顧客ペースのショッピング

こうしたデジタルツールからみえてくるのは、SK-II が意図する“スキンケアの買い物の主導権を顧客に戻すこと”への挑戦だ。もちろん、マジック ミラーにしろ、ロボットにしろ、人間の美容部員にとって代われるレベルではなく、まだまだ、物珍しいデジタルアトラクションの域を出ない。数回利用後は飽きられる可能性もあり、商品説明やレコメンドに限るなら、生身のスタッフが対応するほうがはるかにスピーディで、フレキシブルだ。ただし、SK-IIが考えているのは「デジタルツールを人間に近づけて磨き上げることではなく、一番の目的はむしろ、デジタルの導入により、販売と接客の現場に顧客の選択肢を増やすことにある」と、一連の取り組みを統括するSK-II グローバル フューチャーエクスペリエンス ディレクターの荒尾麻由氏は説明する。

今回のポップアップには、SK-II製品の根幹をなす、自社開発の天然由来成分ピテラ誕生の物語を、専用スマートフォンを通してカラフルな動くアートで紹介するARウォールも設置されている。さらに、「SK-II フェイシャル トリートメント エッセンス」限定デザインボトルに表現された、紙吹雪に包まれているかのようなショート動画が高解像度カメラで撮影できるセルフィーブースや、購入した商品をただ袋に入れて渡すのではなく、限定デザインボトルが完成する過程をイメージしたディスプレイ付きベンディングマシンを利用するなど、“遊び”の要素がいろいろと盛り込まれている。

これらもまた、顧客が自らアクションを起こすことで楽しめる体験型の仕掛けだ。つまり、販売スタッフの説明を聞いたり、誘導されるのを待つのではなく、顧客が意識的に参加するショッピングのあり方をこのポップアップはみせているのだ。

セルフィーブース 画像提供:SK-II

百貨店の化粧品売場でポップアップを展開

SK-IIでは今回のストアに先立ち、4月24日から30日の7日間限定で伊勢丹新宿本店の化粧品売場に、ほぼ同じコンセプトと設備を持った小規模ポップアップストアを開設した。上海やシンガポールでもポップアップをオープンしているSK-IIだが、百貨店の化粧品売場というセッティングは初めての試みだったという。

伊勢丹新宿本店で実施した
ポップアップのイメージ
画像提供:SK-II

ECサイトやコスメ専門ショップなど、小売のチャネルは増えているが、日本では今も百貨店の化粧品売場での購入を選ぶ人が相当数いる。より多くの、そして、幅広い消費者層にデジタル化した体験型ショッピングを知ってもらうにはぴったりの場所だろう。

またその狙いについて、荒尾氏は、“デパートコスメ”というブランド力や、期待されるラグジュアリーな接客に憧れつつも、「敷居が高い」「対面の会話が苦痛」「買わなければいけないプレッシャーを感じる」と苦手意識を持つ、主に若年層の消費者がいると説明。そして、「こうしたお客様に向けて、デジタルの活用により、販売スタッフを気にせずにマイペースで肌測定や商品ガイドが利用できることを伝えたい。SK-IIが、そんな新しい体験を提案するブランドであると知っていただきたいと考えた」と明かす。

目標はデジタルと美容部員がペアになったパーソナライズドサポート

今後、肌測定などのデジタルデバイスが店頭に置かれると販売スタッフの役割は大きく変わる。だがそれは、人間の役目が縮小することでは決してない。

機器を用いて自分なりのペースで商品選びをしたい顧客には、質問があったときに応えるなど、あえて一歩下がった対応をし、一方で、対面での丁寧な説明や1対1で寄り添うアドバイスを求める顧客にはじっくり時間を割くこともできる。デジタルと販売員がペアになることで、これまで店頭に足を運ばなかった層を取り込めるとともに、一人ひとりにパーソナライズした接客が可能になるのだ。そして、これこそがまさに、SK-IIが実現化を目指していることだ。

SK-IIでは、こうした新しい役割を担う美容部員を「ビューティ・インフルエンサー」と名付け、ポップアップストアにも配置している。彼らには、買い物客と適度な距離感を保ちつつ、デジタルデバイスの利用をサポートするとともに、商品以外のことでも気軽に質問ができるよう、より親しみやすい応対でショッピング体験を後押しすることが期待されている。

デジタルデバイスと人間が肩を並べる未来を垣間見させるSK-II Future X Smart Storeは、8月12日まで公開中だ。

Text:そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image: SK-II Future X Smart Store (画像提供: SK-II)


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