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美容業界が「未来の消費者」に愛されるために。WGSN Futures New York 2017 レポート vol. 2

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世界的な未来トレンドを予測するWGSNのカンファレンスFutures。前回のレポート「未来の消費者たち」の全体的なトレンドから一歩進んで、そういった消費者たちに企業やブランドが期待されていることは何か、という視点でのトピックを紹介したい。 大きなキーワードはWellbeing 2.0。(ウェルビーイング2.0)この概念をしっかり理解し、消費者とともに考えていくことが美容業界でも2018年の大きなテーマになるだろう。

写真はWGSNマネージングディレクターのKevin Silk氏。

「未来の消費者」についてブランドがまず気づくべきこと

 消費者が孤立していく先には、分断された個人が際立っていくのだろうか? という問いをもつ人は少なくない。が、今回の登壇者は、誰もが「そうではない」と暗に示唆していた。

人々は、モノそのものに価値を見出すのではない。WGSNによると「モノが持つ意味や現実の体験を求める」のだ。また、つながりを求める未来の消費者に対して「ブランドは、コミュニティの感覚を人々が持てるよう後押しすべきだ。人口統計に基づいた世代別の切り口に加えて、彼らの行動に焦点を当てた手法で、心理的な特性も考慮したアプローチが求められるようになる」と解説している。

ビジネス上、そのような消費者のマインドセットを把握するのは、「テクノロジーがより進化し、クリックだけですべての物事が進んでも、それを操作しているは常に人間だということに他ならない」。

そして、WGSNが提示していたもう一つの視点で、会場全体がはっとされられたのは、「未来はフィーリングである」という主張だ。「オンラインか実店舗に関わらず小売店での体験や商品そのものに対して、消費者がどのような感情を持つのか?つながりを感じられるのか?自社店舗や商品・サービスに対してそれらを深く考えるのが未来の消費者に対峙する」ということだという。では、具体的には、消費者から今後求められるのはどういうものだろうか。

55%の人々が政府よりもブランドが社会問題の解決を手助けする立場にあると答えた調査結果(EdelmanによるEamed Brand 2016-Global Results)が示すように、ブランドへの期待は高い。

一方で人々はChange.orgといった社会問題の提起と解決のための参加も活発で、個人の力が原動力となっている。つまり、ブランド側は、社会をよりよくすることを考え活動する人々とつながり共に行動することによる変革を起こしやすくなっているのだ。それは裏を返せば、ブランドや製品に社会的な意義があること自体が、人々を惹きつける。ブランド側は、彼らのビジネスとして意味のあるやり方でコミュニティと関わり、社会課題への解決に結びつけられるのだ。

Wellbeing 2.0から見えてくるのは「Me」から「We」

ブランド戦略とイノベーションのコンサルティングを手掛けるAlain Sylvain(アラン・シルバン)氏は「Wellbeing(ウェルビーイング・生きがいがあり、幸福な状態)」を起点に、時代背景と未来の消費者のきざし、そしてブランドへのアドバイスを披露した。

彼は、政治の混迷、社会の分断、自然環境破壊、人々の働き方まで様々な観点から今の時代背景を説明した。例えば、2014年に100万部売れたAdult coloring book(大人向けのぬり絵)が、翌年2015年には1200万部が売れたという。この大人のぬり絵の急激な売上増は人々のストレスの増加の表れでもあるという。

また、彼はウェルビーイングにまつわる人々の認識や行動の考察についてもふれている。現状では、ウェルビーイングは、人々が静かに穏やかで現実のストレスから離れることを意味するものとなっている。#Selfcareで検索すると、スパに行って美味しいものを食べて誰にも気兼ねせずに自分のケアをする姿が見て取れるが、これが一般に言う内面からみたウェルビーイングである。自分を見つめるマインドフルネスも含め、こういった状態がウェルビーイング1.0と定義されている。

しかし、次の、いやいま起こりつつあるウェルビーイング2.0は、全く別の軸へと移っていく。我々は世界各地の戦争、難民、テロなど、ネット上で世界の理不尽な現状を目の当たりにしている。さらに加速する環境破壊や世界の分断などにより、「新しい社会に対する責任感」が特に若い女性を中心に芽生えている。このような環境がウェルビーイング2.0を生み出しているのだ。

「ふわっとした幻想ではなく、現実に関わり、他人と一緒に行動することでそれを変えていくことがウェルビーイング2.0だ。それは自分をケアするだけではない、他者へのケアでもある。それは、音楽はじめポップカルチャーの変化からも見て取れる。2000年代前半はレディ・ガガも表層的なスローガンを掲げただけ的だったかもしれないが、今やその音楽や活動に非常に具体的なメッセージを込めており、多くの人々がそれに影響を受けている。#metooの動きも新たなウェルビーイングの一つの兆しだ、とシルバン氏は言う。

他人と一緒に行動するという意味において、彼の会社では、気落ちしている人には、スパに行ってリフレッシュすることをすすめるだけでなく、ボランティアの紹介や、新しいコミュニティや、面白そうなイベントに参加などを勧めるようになってきた」。彼によると、ウェルビーイング2.0で重要なのは、「私」ではなく「私たち」について、外向きに考え、また受け身ではなく積極的であることだ。

#meetoで検索した画像集

未来の消費者の期待に応える「ブランドがすべき5つのこと」

では、そんなウェルビーイング2.0のムーブメントの中で、今後ブランドには何が期待されるのだろうか?シルバン氏はその現状と今後の考察も踏まえて、ブランドは社会を変えるための、具体的なツールであるべきだ、という。

「人々は自分たちは社会に関わることで、変えていけるという実感を持ちたいのだ」と自論を展開する。たとえば、社会的な課題に対して、自分たちの理想を明確にするなどだ。テスラが環境問題に対しての自分たちの考えとして、電気自動車の開発をしているなどがひとつの例だ。

そしてブランドや企業が今後考えるべき課題について、以下の5点を挙げた。

1)組織の中からの変革。

例えば社員を大切にしていくこと。配車サービスのウーバーの競合のリフト社は、社員が一生懸命働き、楽しむときは存分に楽しむ、だからこそお客様にもいいサービスを提供できるという考えを明確にしている(写真)。一時はウーバーの勢いにおされて身売り説まで出ていた同社CEOがずっと守ってきた、社員と運転手を大切にすれば顧客もハッピーであるという考えだ。

2)行動を起こすことを後押しするための、実際に使えるツールや場を提供

2010年、スーパースターのビヨンセは母親とともに、薬物やアルコール中毒患者の治療を専門とする施設を米国に展開するNPOのフェニックスハウスに、美容の職業訓練センターを作った。そこでは、コンピューターの使い方から美容知識、接客について7ヶ月のコースとして学べ、実際に職に就くためのスキルを身につけることができる。彼女のようなセレブリティが手の届かないファンタジーを語るのでなく、現実に人々が社会に関わるきっかけを作り行動を起こすことをサポートしている、というのもひとつの例だ。

3)企業がリーダーを通して立場を明確にしていく

米国政府が特定の国の出身者の入国禁止令を発表した際に反対を表明した153社のうち、84%はその企業のトップからの直接の声明だったという。彼らは皆ビジネス上でも成功を導いている人々で、例えば自社ビジネスの急成長を率いたマイクロソフトCEOのSatyya Nadella(サティア・ナディラ)氏もそのうちのひとりで、共感と穏やかな対話でも有名だ。

4)企業自体が戦略的にコラボレーションする

コミュニティという考え方を示し、人々が参加意識を実際に感じるためには断固としたポリシーを持って社外との取り組みをおこなっていくべきである。だ。リーバイスとGoogleが協働するジャカードプロジェクトでは、10年前には考えられないテクノロジーとファッション企業のパートナーシップにより、スマートディバイスと接続する生地を使ったいわゆるウェアラブルジャケットを販売している)。あるいは、動物愛護の立場を取りたいのであれば、それを訴える協会と提携することもひとつだ。


出典:Jacquard by Google

5)具体的な結果をもたらすための圧倒的な本質を体現する

例えばAirbnbは、家のオーナーと宿泊したい人を結びつけて双方のニーズが合致した。そして利益はAirbnbとオーナーで分配する、もがハッピーになる仕組みだ。そしてこの新しい考え方は、Airbnbがユニコーン企業と言われるまでに人々の支持を得ている。

この5つの原則をブランドが実践していけば、Wellbeing つまり「Being Well」(良い状態)でいることの定義は変わっていく。自分自身が誰かと関わりを持ち、そして自分だけではない我々のために世の中を良くしていくこと。それが未来の消費者の行動のベースにある。

ブランドは、そこをくみとって彼らと社会問題の解決への意識を共通にもち、彼らの目ざすことへのサポートをしていくことが、ブランドへの信頼を得るために欠かせなくなってくる。それは、テクノロジーの多用によってばらばらになっていく個人を再び繋ぐという意義のある社会貢献に違いない。

日本の美容業界では、未来の消費者に何をすべきか?

急激な世の中の変化で、人々の行動も変わってくる。その背景となる感じ方や価値観の変容を見極めることが第一だ。一方で、自社やブランドの核となる価値観(ブランドバリュー)に関わるターゲットに伝えたいメッセージは何なのか、を理解して明確にしなければ何も始まらない。

今回「Modern Love」というセッションでは、「Love has no Labels」(愛することは自由である)と題する広告が紹介された。制作を担当したデジタルコミュニケーションエージェンシーのR/GAのチーフ・クリエイティブ・オフィサーのNick Law(ニック・ロー)氏は、「行動していくことが、感じ方を変えていく」と信じて「この動画を見た人々が、先入観にとらわれることなく多様性を認めていくことに気づいてもらえたら嬉しい」と語った。この動画では、未来の消費者の姿として特徴的な「We」そして「Connected(つながる)」ということについても考えさせられる。

この動画は、人々が変化を起こそうとする後押しをし、より良い生活つまりウェルビーイングな社会を目指して活動するNPO、AdCouncilの広告である。

ここで紹介した事例の数々については、先の5原則にかなっているのか、改めて深く考えていきたい。これらは米国企業のケースだが、日本の企業やブランドとして、未来の消費者にどのように向き合っていくべきか、具体的にどのような視点で貢献することができるのか、どうしたら共に社会に変革を起こせるかを考えてみたい。その中に、中長期的なビジネス構築に向けてのヒントが見つかるに違いない。

Text&Photo: 望月奈津子(Natsuko Mochizuki)

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