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超パーソナライズ化へ、DNAレベルで化粧品マッチング。米EpigenCareなどの挑戦

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米国における個人向けDNA検査薬と受託検査サービスを合わせた2014年度の市場は約600億円といわれており、美容関連分野でも次々と登場しはじめている。昨年、美容に特化したサービスをリリースしたスタートアップ、EpigenCareをはじめとする美容関連のDNA検査サービスをみていく。

2018年9月に開催されたBeautyTech MeetUp NY(現FaB Community)にも登場した「EpigenCare」は、エピジェネティクス・スキンケアテストのSKINTELLIを用い、肌状態を遺伝子レベルで解析し、AIによって最適なスキンケア製品を提案するスタートアップだ。Johnson & Johnson Innovation が主催するコンペティションの受賞者でもあり、その後、JLABS(Johnson & Johnsonのインキュベータープログラム)のプレゼンテーションでは、エピジェネティクス、AI、そしてデータのプライバシー保持のためにブロックチェーン技術も活用していることが発表された。

エピジェネティクスとは、遺伝子制御の仕組みをさす。肌でいえば、同じ遺伝子でも、加齢や病気、食事、運動、紫外線や化学物質にさらされるなどの要因によって、遺伝子が発現したりしなかったりというスイッチのオンオフのようなことが起こる。ライフスタイルなどで大きく変化するエピジェネティクスを明らかにし、同社がもつ、市販スキンケアの成分データベースとのマッチングアルゴリズムで、どのスキンケアアイテムを使えば、肌を最適な状態にもっていけるのかを消費者に提案する。

利用者はSKINTELLIのサイトで家庭用検査キットを申し込み、専用の接着テープで皮膚細胞を採取して送り返すと、肌のエイジング、はり、うるおいといった、肌質と関係が深い遺伝子の状態を知ることができる。また、結果を受け取った消費者はEpigenCareのマッチングプラットフォームにアクセスし、何千種類という既存のスキンケア製品の中から、自分の肌状態に適した成分を含むアイテムを見つけることができる。

現在、SKINTELLIはβ版として公式価格399ドル(約4万4,000円)で限定発売されている。パイロット研究が終了したとの発表が2019年9月にあり、2020年には、公式リリースをめざすとしている。EpigenCareが収集するデータは化粧品各社へも提供されるとの報道もあり、検査キットの発売以外にデータ提供のビジネスモデルが考えられる。

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出典:EpigenCare

一方、DNA検査キット大手の「Orig3n」では、筋肉の強さなどを知るフィットネス系から、ストレス耐性など自分の行動や心理面について知ることができる検査まで、多種類のDNA検査キットを取り揃えている。その中のビューティ部門にあるのが、肌や髪の遺伝子検査を行うキット「BEAUTY」(99ドル)だ。

採取した唾液サンプルから、通常よりもエイジングのサインが早く現れやすいか、肌の弾性を保ちやすいか、紫外線反応が出やすいかなど、遺伝子レベルで各自の肌の個性を探っていく。DNA検査の結果はスマホで確認することができ、「エイジング」「弾力」「外観と健康状態」「UV感度」の4つのカテゴリーで表示され、「adapt(ケアが必要)」「normal(普通)」「gifted(優秀)」の3段階で遺伝子を判定する。これまでに遺伝子検査を受けた人の結果と比べることも可能だ。そして最後には、診断結果にもとづいて商品提案も行われる。たとえば、セルライトが多くつきやすい傾向の人には、セルライトを減らすための美容液やサプリ、スクラブなどが提示され、そのまま購入もできるようになっている。

肌や髪の遺伝子検査を行う
Orig3nのキット「BEAUTY」

Orig3nと同様に、唾液サンプルから遺伝子解析を行い、商品選びの提案まで行うのが「HomeDNA Skin Care Test」(99ドル)だ。コラーゲンのクオリティ、肌の弾力、しわ、肌の敏感度レベルなど7つの項目にわたって遺伝子検査をする。そして、その結果にあわせて、どういった成分が入っているスキンケアアイテムやサプリメントを選んだらよいかのアドバイスや効果的なスキンケア方法が提案される。

いずれのDNA検査キットも、料金は100ドル前後。検査キットの注文から結果通知まで(EpigenCareに関してはおすすめ商品の購入まで)すべてスマホひとつで完結しており、遺伝子レベルで自分に合ったビューティケア方法を気軽に試すことが可能だ。

米国でDNA検査キット人気が爆発した背景

米国で遺伝子検査キットの市場が広がった背景には、遺伝子解析にかかる時間とコストが、2000年代に大幅に短縮されたことが大きい。1990年代のヒトゲノム計画では、1人の人間のゲノムを解析するのに13年という膨大な時間がかかっていた。これが、現在では18~21時間程度に圧縮され、費用に関しても、2001年9月の時点で約9,526万ドル(約104億8000万円)かかっていたゲノム解析のコストは、2015年10月には1,245万ドル(約13億7000万円)にまでさがっており、遺伝子解析が医療分野などに広まっていった*。

*米国におけるデータを活用した医療をめぐる動向 (JETRO)より
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/92401b375768f85a/ny201609.pdf

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Image: B-D-S Piotr Marcinski via Shutterstock

また、移民国家である米国では、さまざまな人種が混ざった“混血”の人が実に多い。そのため自分にどんな血が流れているのか正確に把握している人は少なく、自分のルーツを知ることができるDNA検査キットは、たちまち米国民を魅了し、遺伝子検査のブームが起きていったのだ。

米国のDNA検査キットの大手「アンセストリー(Ancestry)」「23andMe」の2社を含め、DNA検査キットを利用した人の数は、2019年はじめには2,600万人以上に達したとみられる。2017年には500万人未満だったことからも、ここ数年で利用者が急激に増大していることがわかる。

このような背景から、DNA検査キットと同じようなプロセスで、自分の健康状態や栄養摂取状態などをチェックできるセルフ検査キットにバラエティが出てきたのは自然な流れだった。DNA検査キットやセルフ検査キット拡大の一因には、米国の高額な健康保険料や医療費制度の問題もある。入院や手術をすることになれば1万ドル(約110万円)は軽く超えてしまうような医療体制のなか、わずか100ドル(約1万1000円)程度でDNA検査から病気のリスクや栄養レベルなどを気軽に知ることができるのは、大きなアドバンテージのひとつになっていることは間違いない。

化粧品業界におけるDNA検査キットやセルフ検査キットの可能性

グローバルで見てみると、DNA検査キットを含めたセルフ検査キットの市場は、2017年の47億8,000ドル(約5,126億円)から年平均成長率3.98%で伸び、2025年までに65億3,000ドル(約7,090億円)に到達すると予想されている。

そして、遺伝子検査キットのサービスで収集された遺伝子データには、前述のEpigenCare同様、医療や製薬、化粧品などの業界から熱い視線が注がれている。2018年には、23andMeが英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)との提携を発表。GSKは23andMeに3億ドルの出資を行い、23andMeが持つ膨大な遺伝子情報を新薬開発に活かしていくとみられている。

日本にはまだ、EpigenCareのようなブランドの壁を越えた美容DNA解析サービスは出てきていないが、パーソナライズ化の加速とあわせ「何が自分にいちばん合っているのか」を知りたいという消費者のニーズはこれからもますます高まっていくはずであり、大きなポテンシャルのある分野であることは間違いない。

Text:佐藤まきこ(Makiko Sato)
Top image: nevodka via Shutterstock

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