フランス「Station F」、国籍や障壁なく世界中の有望起業家を集める巨大施設
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前回はViva Technology、フレンチテックを例に、フランスが国家レベルでスタートアップ大国になるための取り組みについて紹介した。しかし、スタートアップを応援しているのは、国や自治体だけではない。個人レベルでもフランスを世界の中心にすべく、若い起業家をサポートしている投資家がいる。その代表的な人物が、2017年6月にパリ市内にオープンした世界最大級のインキュベーション施設「Station F(スタシオン・エフ)」の創立者グザヴィエ・ニエル(Xavier Niel)氏だ。
※2019年10月6日にグザヴィエ・ニール氏のカタカナ表記をグザヴィエ・ニエル氏に改めました。
グザヴィエ・ニエル氏
Photo by Jean-Francois Robert
ニエル氏は、フランスのインターネット・携帯電話など通信事業の「Free(フリー)」を設立した起業家であり、2009年~2015年にかけて、個人で230件のエンジェル投資を行ったフランスで最も有名な投資家のひとりでもある。CB insightsのリポートによれば、2018年第2四半期、フランス国内でアクティブな投資家第3位に選ばれている。
Station Fは、2017年にパリ13区の開発地区にできた幅58m、長さ310m、3万4000平方メートルの巨大なインキュベーション施設。コンクリート造りで天井と側面をガラスにしたこの施設には3000のデスク、60の会議室、370人を収容できるオーディトリアムを備えている。また、1000人を収容できる巨大なレストランも併設し、会員は365日24時間使用可能だ。その中では30のシャワーブースも完備しているが、現在、自転車で15分の距離に600人収容できる住居施設(居住タワー3棟)を建設中だ。
写真 : 左はコンテナのような形のミーティングルーム
右は大型レストラン「La Felicita」(Station F提供)
2017年6月29日に行われたオープニングセレモニーには、スタートアップ支援に力を入れているマクロン大統領や、パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏も駆けつけた。グザヴィエ・ニエル氏が作ったこの施設が、国やパリ市にとって、いかに重要な存在かがわかる。
オープニングセレモニーの様子(Station F提供)
中に足を踏み入れてみると、とにかく巨大で、ここまでのインキュベーション施設はフランスではおそらく初めてだろう。創立者のグザヴィエ・ニエル氏は、アメリカの大学(キャンパス)のように広大な敷地に、ワークスペース、レストラン、住居空間など、すべてが集まった場所をフランスに作りたかったのだという。一つ屋根の下にスタートアップに必要なプログラムや設備のすべてが備わり、世界中からアントレプレナーが集まる象徴的な施設だ。その壮大なプランを実現するために、2億5千万ユーロ(約320億円)を投じたという。
その場所として選ばれたのは、1920年代から貨物列車用の駅として使用されたコンクリート造りの建物。取り壊しを阻止するためにパリ市が歴史的建造物に指定して保護したもので、2013年にグザヴィエ・ニエル氏がパリ市から購入、世界最大級のインキュベーション施設として命を吹き込んだ。名称に「Station(駅)」という名がついているのはその歴史からきている。また、語末に添えられた「F」はFrance、Freedom、Fun、Fabulous、Funding、Freyssinet(もとの駅舎の設計者名)など、さまざまなワードを想起させ、人によっていろいろな意味に解釈ができる。
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