見出し画像

韓国lululab、AI肌分析×レコメンド精度の高さで市場をリード。CEOに聞くその背景

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

サムスン電子からスピンアウトした韓国スタートアップの「lululab」。わずか2年あまりで世界から注目を集め、AI肌分析と化粧品マッチング技術のトップランナーと言われる理由は、肌データ収集のためのデバイス、分析アルゴリズム、化粧品データの収集とマッチングアルゴリズムを一貫して自社で行っていることにある。その道のりをチェ・ヨンジュン代表に聞いた。

顔の画像データを人工知能(AI)で解析し、個々人に適した化粧品をレコメンドする。世界的なトレンドである「肌分析と化粧品マッチング」を牽引するベンチャー企業がある。韓国のlululab(ルルラブ)だ。

同社は2019年に化粧品メーカーやリテール企業などに向けてソリューションの提供を開始。2020年夏には、消費者向けにも卓上型スマートミラーを市場に投入する計画だ。韓国ビューティテック業界屈指の成長株として注目を集める同社は、その肌分析技術に定評がある。今後、どのようなサクセスストーリーを描こうとしているのか。創業者でありCEOを務めるチェ・ヨンジュン(Yongjoon Choe)代表理事に話を聞いた。

ユーザーが簡単・正確に使える肌分析ソリューション

lululabは、サムスン電子の社内ベンチャープログラム「C-Lab」からスピンアウトした企業の1つだ。肌の解析から診断、化粧品のレコメンドまで、約10秒間という短い時間で実現するAI皮膚診断ソリューション「LUMINI」を開発・展開している。(※関連記事 「サムスン電子が次世代の美容&ヘルスケア事業を開拓、スタートアップの育成、連携も」)

米ラスベガスで開催される世界最大級の電子機器見本市コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)では、2年連続でイノベーション・アワードを受賞(2019、2020年)。過去には、LVMHのスタートアップ支援プログラムである「Luxury Lab」にも参加した経歴を持つ。同プログラムは、LVMHが自社と相性が良さそうな潜在力のある企業30社を選定して、国際的なIT展示会「VivaTechnology」で紹介するというものだ。

LUMINIには2つのタイプがあり、その詳細は後述するが、基本的には3つの要素から構成されている。ひとつはデータを取得する「デバイス」(ハードウェア)、次に皮膚データを解析する「AIアルゴリズム」(ソフトウェア)、そして最後に取得したデータを可視化する「データ管理システム」だ。lululabではそれら3つすべてを自社開発しており、自社のポジションを現段階では「AIビューティテック企業」と定義している。

写真001

lululabのチェ・ヨンジュンCEO

チェ氏は米コーネル大学で生命工学を専攻。スマートフォン事業からヘルスケア事業へのシフトチェンジを公言したサムスン電子に惹かれて入社し、しばらく海外営業マーケティングの業務に従事した。その後、C-Lab の存在を知り、2015年末よりアイディアを練り、最終的にITとビューティを融合させた事業モデルを打ち出して、2017年3月に公式にlululab創業を果たした。

「もともと、大学ではDNAから疾病を分析・予測する技術を研究していた。しかし、DNA検査は限られた人、また限られた疾病しか予測できなかった。ガンや心臓疾患など、人々を悩ます病気は多いが、多くの人が手軽かつ有効にさまざまな病気を察知し、人生の質を高めることができる検査方法はないかをずっと考えていた」(チェ氏)

チェ氏がサムスンに入社したのも、ヘルスケアへの注力を打ち出していた同社で、自分が得た専門知識をベースに病気を分析・予測する方法をより広範囲に確立・活用できるはずだと考えたからだ。そして、C-Labに提出する企画を考えていた際、ひとつのアプローチに辿りつく。それは皮膚データが人々の健康の指標になりうるということ、そして皮膚データをベースに病気を予測するソリューションを生み出せば、ヘルスケアの領域でイノベーションが起こせるとの考えだった。

だが、「当時、病院などにアプローチしてみたのだが、当然あるはずだと思っていた皮膚データがどこにもないということを知った」チェ氏は、まずは顔の映像を分析して皮膚データを管理できるソリューションを提案することでスピンアウトが実現したと明かす。

ただし、lululabが焦点を定めた市場はメディカルやヘルスケア分野ではなく、ビューティ市場だった。というのも、メディカル分野は規制が多く複雑で、また、ユーザーが医療行為に関連する検査に拒否感を抱く可能性も高い。ベンチャー企業が渡るには非常に“危険な橋”である。そこで、率先してソリューションを利用してくれるような顧客のいる、成長中の産業はどこかとチェ氏は考え、最終的に美容市場という答えに行き着いた。

チェ氏は「技術があっても使ってもらえなければ意味がない。その点、ビューティ市場のユーザーの需要は明確だった」と話し、自分の肌の状態はどうか、肌を向上させる製品が何かを効率的かつ正確に知りたいと考える美容ユーザーに向けたソリューションを展開することにしたという。

この、まずユーザーが皮膚診断を使いたがる市場を選んでこそ、皮膚データを集めることが可能になるという「ユーザーファースト」を哲学とするチェ氏らの考えは的中する。創業から2年半が経過したが、社員数は毎年2倍で増加。現在、11カ国でソリューションを展開するまでに成長した。

2019年の春に企業向けのソリューションをリリース。まずは、欧州や中東に注力し、続いて日本では広告マーケティング会社(株式会社オプティマイザー)とジョイントベンチャーを設立。2020年は注力する国を追加で選んでいく予定で、日本ではすでに百貨店などリテール企業への営業活動を開始したほか、東南アジアや南米への進出を考えている。

オフラインスペースを“AIストア化”するソリューション

lululabの企業向けソリューションにはキオスクタイプ(自立型小型情報端末)の「LUMINIキオスク」と、プロコンサルタントタイプの「LUMINI」がある。いずれも、スキャン・分析・レコメンドの3段階の機能を持つ。スキャンが終了すると顔のデータを7項目で可視化。どのようなコスメ、もしくはスキンケア商品を使うべきかを瞬時に推薦する。

写真002

lululabのキオスクタイプの
「LUMINIキオスク」

分析の参照となる皮膚データはLUMINIの各ソリューションを通じて得られたもので、マッチングされる商品はクライアントから提供を受けたものだ。チェ氏によれば「クライアント側は、販促したいこともあり、データを正確に提供してくれる」とのことだ。加えて、国の機関や化粧品協会からも化粧品データを取得。日々アルゴリズムを強化している。

lululabのソリューションの強みはなんといっても「分析の正確さ」だ。初期開発段階で、基準となる健康な肌の状態をソウル大学の専門医と共同研究。また、進出している各国のソリューションから獲得したデータを使って、基準を継続的に補完しているという。

また、lululabのソリューションの正確度は、臨床機関の専門家の肉眼による診断とも結果が一致。あわせて、照明の明るさや室温など外的環境が違うところで分析しても同じ結果がでるという点も優れている。これまでにも肌を診断するシステムは各種存在したが、肌の一部をポイントで計測する手法が一般的で、肌全体を分析した際、どのような条件でも同じ結果を取得するということが難しかった。その点、lululabのソリューションは結果の正確さだけでなく、“再現性”(平均90%)も高い。

連続性を持って肌のケア方法をレコメンドするためには、診断の正確性と再現性が生命線だが、そのためlululabでは、スマートフォンではなく専用のスキャン端末(ハードウェア)も自社開発している。

写真004

プロコンサルタントタイプ
「LUMINI」

キオスクタイプは、いわば、プリクラのブースのようなスタイルだ。小規模スペースにも設置可能で百貨店など小売店での活用に向いている。たとえば、百貨店の化粧品売場のエントランスに設置し、そこでユーザーが自身の肌を分析。レコメンド商品がリストアップされて各ストアに誘導する動線が作れる。

一方、プロコンサルタントタイプはハンディ端末を使う小型のソリューションだ。ビューティーサロンや皮膚科、エステティックサロンなど対面コンサルティングをする売り場に有効である。

LUMINIのサービスを平均すると30~40代の利用率が最も高い傾向があるが、キオスクタイプは10代~30代の利用率が高く、40代以上はプロコンサルタントタイプの利用率が高いという。

「肌診断のあと売り場内にある化粧品をレコメンドするキオスクタイプは、それ自体を“ビューティAIストア”という位置づけができる。実際にソウルやドバイでは百貨店の化粧品専門売り場付近に設置されている。一例だが、AIストアの月平均の訪問客は約4,000人で、そのうちの半数が各コスメストアを訪れて、結果をもとに追加で美容部員への相談をする」とチェ氏は利用の実態を語る。

写真003

LUMINIキオスクを利用するユーザー

その意味でこのビューティAIストアは送客率も高く、オフラインスペースを有効活用する1つの選択肢だ。将来的には、カフェなど化粧品販売店以外の場所に設置してオンラインやECと連携するのも可能なはずだ。その意味で、オフラインとオンラインを繋ぐ施策ともなりうる。また、lululabの企業向けソリューションの利用料金は、どうカスタマイズするかにより金額が異なるが、基本的に月額制となっており、売上金額にかかわらず固定である。

「我々が海外にAIストアを構える際は、ソリューションだけでなくK-beauty企業の製品とともに進出することも多い。肌分析と紐づく製品情報は変えられるのでJ-beauty AIストアなども構築できる」とチェ氏。パートナーやクライアントの方で準備しなければならないものがほとんどないというのもビューティAIストアの強みで、すぐに実装可能だ。

AIベースの肌分析の第一人者を自認

コスモプロフやCESなど世界各国の国際見本市や展示会などに参加し、各種テックアワードの受賞歴も豊富なチェ氏は、ビューティテック市場の動向についても多角的に分析している。

2018年までのビューティテック市場では、皮膚データにもとづくソリューションや製品はあまり存在せず、いわゆる美顔器など「ホームケアデバイス」と呼ばれる家電モノが主役だった。しかし2019年頃から「パーソナライズ」が重要なキーワードだと認知されはじめ、メイクアップにしろ、スキンケアにしろ、各ユーザーに適した製品を生みだすことが“正解”だとの機運が生まれた。それでも「まだまだ市場には正確な皮膚データが少ない。そのためパーソナライズの方法に各社が悩んでいるのが現在の状況だ」とチェ氏は指摘する。

大手コスメメーカーがパーソナライズとうたう際にも、「肌にぴったり合う」製品というよりは、「皮膚の状態をもとに、シミやシワなどの課題点を上手く隠したり目立たなくしたりするレベル」であり、皮膚データを真に活用する段階にいたるのはこれからだというのがチェ氏の考えだ。

「現段階では、我々のレベルの顔認識AIベースのビューティテックソリューションはほとんどない。しかし、2~3年の間には競合も増えてくるだろう。その時にリーディングカンパニーのポジションを築いていられるよう、ユーザーファーストという原点をいつも意識したい。なぜなら、端末を使ってもらえなければデータは集まらず、データが集まらなければ最適な分析・予測はできないからだ」とチェ氏は近い未来を見据えて語る。

写真005

2020年夏頃に発売される
消費者向け製品「LUMIMI HOME」

lululabでは今夏、スマートミラータイプのソリューションを投入する。「ユーザー、クライアントに喜んでもらえるようソリューションの質を高めていきたい。そして将来的には、皮膚データからコスメやヘルスケア製品だけでなく、健康やライフスタイルまで提案できるソリューションをつくりあげていきたい」とチェ氏は意気込む。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
画像提供:lululab


ありがとうございます!メルマガで隔週で更新情報配信中。ぜひご登録を!
13
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp