サムスン電子が次世代の美容&ヘルスケア事業を開拓、スタートアップの育成、連携も

◆ English version: Samsung spins off next-generation beauty, healthcare businesses
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韓国を代表する財閥企業・サムスン電子は、強烈なカリスマリーダーとして知られたイ・ゴンヒ会長後の成長戦略がうまく描けず、競争激化のスマートフォンや半導体の低迷で業績不振に苦しむ。次のビジネスを模索するなかで、美容・ヘルスケア事業への開拓も進めている。サムスンの社内ベンチャープログラムからは、ITとビューティをテーマに据えた有力な新興企業も登場してきている。

出典 Revieve HP

韓国大手メーカー・サムスン電子と化粧品大手・アモーレパシフィックがコラボレーションしたのは、2018年3月のこと。両社は当時、ギャラクシーS9、S9+という新製品のリリースに際してメイクシミュレーションができるARサービスを搭載。韓国国内で「雪花秀」「ラネージュ」「IOPE(アイオペ)」など9つ、また米国と中国では「ラネージュ」と「イニスフリー」などのブランドを、ユーザーがスマートフォン上で体験できるようサービスを提供した。サムスンが開発したAIの「Bixby Vision」という機能を使うと、ARメイク機能が使える仕組みだ。

そのサムスン電子が2019年5月に、日本でも発売が予定されている新製品「Galaxy S10」に、「肌診断サービス」を搭載するとして韓国国内で話題となっている。同サービスは、サムスン電子とフィンランドのビューティーテック企業「Revieve(リビエブ)」の協業によって実現する。サムスンの画像AIアシスタント機能 Bixby Visionと、RevieveのAIビューティーアドバイス機能の組み合わせによって、ユーザーはスマートフォンから手軽に肌の健康状態を確認できるようになる。

Revieveは2016年創立のベンチャー企業で、その専門分野は「ビューティテック」「人工知能」「AR」「肌診断」「パーソナライゼーション」「製品レコメンド」と紹介されている。2017年には約7,000万円の資金を調達済み。現在、すでにスキンケアやメイクアップをアドバイスするAIツールおよびソリューションを製品化している。

今後は、Galaxy S10のカメラに顔を認識させると、連動したRevieveの技術で肌診断サービスを受けることができる。また皮膚の状態によって、最も適切な化粧品が推薦される予定だ。Galaxy S10の肌診断サービスは米国・韓国でまずリリースされ、その後、化粧品小売メーカーが製品を順次アップデートできるようになるなど、販売経路拡大、マーケティング用途での利用が見込まれている。

サムスン電子は、「S9」「S9+」など以前のバージョンから、画像認識機能やARを使ったエンターテイメント機能を強化してきた。例えば、「ショッピング」「グルメ」「ワイン」「場所」「メイクアップ」などのカテゴリーのうち1つを選択し、カメラで対象物を撮影すると、名称などの情報がリアルタイムでスマートフォンに表示されるという具合だ。また、テキストモードでは、外国語で書かれたメニューを撮影すると、翻訳されたり、料理の画像がみられる機能もある。

出典: lululab HP

サムスンから巣立ち、世界から注目されるビューティテック企業

スマートフォンや半導体の話題が先行するサムスンだが、意外というべきか、ビューティテック関連のベンチャー企業とも縁が深い。たとえば現在、韓国内屈指の成長株と注目を集めている「lululab」は、サムスン電子の社内ベンチャープログラム「C-Lab」からスピンアウトした企業のひとつだ。

同社は、肌の解析・診断・化粧品のレコメンドまでを行うAIスキンケア・アシスタント「LUMINI」を開発している。CEOを務めるチェ・ヨンジュン氏は米コーネル大学で生命工学を専攻。ヘルスケア産業への注力を発表したサムスン電子に惹かれて入社後、ITとビューティーを融合させた事業モデルを打ち出し、スピンオフを果たした。CES2019にも出展しており、2019年夏にはセフォラでの取扱いがスタートするという報道もある。

ちなみに、lululabは現在、LVMHのスタートアップ支援プログラムである「Luxury Lab」にも参加している。同プログラムは、LVMHが自社と相性が良さそうな潜在力のある企業30社を選定して、国際的なIT展示会「VivaTechnology」で紹介するというものだ。lulu-lab がCES2017に出展した際に、まだ製品がなかったのにもかかわらず、コンセプトやアプローチに惚れ込んだLVMHのCTOが、直接コンタクトを取ったという。サムスンから巣立ち、世界的なラグジュアリー・コングロマリットから“求愛”されるという珍しい事例となっている。

C-Labからスピンアウトした他の例としては、「S-SKIN」というベンチャー企業もある。同社の主力製品は、独自開発したマイクロニードルを利用して有効成分を皮膚の奥底まで浸透させるスキンケア用のパッチ「FILLinCELL」と、肌の状態を読み込み解析するソリューションだ。ナノ・バイオ専門家の技術力とIT技術を融合させ、K-Beautyの新しいパラダイムを切り拓くことをミッションとしている。

数自体はそれほど多くないが、サムスン電子はサムスン・ベンチャーインベストメントという投資系グループ会社を通じて、ビューティテック関連の企業への投資も行っている。その1つである「NOOM」という企業は、ビッグデータ解析をベースにしたヘルスケアおよびダイエットのための食習慣管理サービスを提供する会社だ。代表は韓国人のチョン・セジュ氏だが、米国に本社があり、韓国や日本でサービスを展開している。ユーザー数は、2019年4月の段階で約4,800万人にまで拡大している。

なお、サムスン系列のグループ企業は多岐にわたっており、各社がそれぞれ独自のベンチャー支援を行っているのも特徴だ。サムスン系列の証券会社・サムスン証券も、内情までは明かしていないが、ヘルスケア、ビューティ企業の発掘・支援をするプログラムを発表している。

サムスンはベンチャー支援のみならず、自社ビジネスにおいてもヘルスケア事業を強化しようとしている。今年5月に韓国特許庁が発表した「医療機器類型別特許出願動向」(韓国国内)によれば、2009年から2018年の10年間で、最も多く特許を出願した企業・団体として、1位にサムスン電子、2位にサムスン・メディシンが名を連ね、ランキングトップを系列会社で独占した。また、「サムスン・ヘルス」など、スマートフォンやスマートウォッチを通じたヘルスケアソリューションに加え、ヘルスケア用ロボットの開発も進めている。

その成果のひとつとして、今年のCESではウェアラブル歩行補助ロボット「GEMS」を公開した。さらに今年5月上旬には、ヘルスケアの新しいアイデアを募るため、MITとともに「Hacking Medicine Grand Hack2019」というハッカソンイベントも開催。ハード、ソフトの開発を進めながら、人材およびアイデアを世界規模で囲い込もうとしている。

このように、ヘルスケアや美容を含む、企業成長を牽引するビジネスを模索するサムスン電子。今後、どのようなビューティテック企業を育成・協業しビジネスを育てていくのか。世界的にも業界の主要なプレイヤーの一角になる可能性が非常に高いだけに、その動向に注視していきたい。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: Mahony via shutterstock

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