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AR/AI搭載スマートミラーの多機能化で、境目のないユーザー体験【CES2020】

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CES2020レポートの4回目は、「ハイテク・リテーリング・セミナー」シリーズでも注目の、AI/ARを活用したリテール・スマートミラーの最先端を検証。あわせて、Perfect Corp.が目指す、すべてのタッチポイントで消費者に対し一貫したサービスを提供するオムニチャネル化を考察する。

ARバーチャルメイクの第一人者Perfectの次のステップ

CES2020では、大手ブランドのシニアエグゼクティブらが、自社の事例や今後の展望についてセッションで語る、ハイテク・リテーリング・セミナーがいくつも開催された。その1つでPerfect Corp.が主催した「Beauty Tech 360: AIとARによるパーソナライズド・ソリューション」の内容に即して、リテールの現場で使用するAI/AR搭載スマートミラーの現況をみていこう。

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左よりモデレーターを務めた
Perfect Corp. US CMO の
アダム・ガム(Adam Gam)氏、
アリス・チャン氏、
ジェイ・アンダーソン氏、
ナターシャ・ハウブリーチ氏、
ジャマイラ・ジョンソン氏

「ビューティテック360: AIとARによるパーソナライズド・ソリューション」には、Perfect の創業者兼CEOのアリス・チャン(Alice Chang)氏と、同社のYouCamテクノロジーを導入しているエスティ ローダー、Sally Beauty、ニュートロジーナの各代表者が登壇した。

チャン氏は「ARの利用は、店頭やモバイル、ECサイトなど全てのセグメントでブームになっている」として、バーチャルメイクやトライオンにARが幅広く活用されるのが当たり前になり、「ハイパー・パーソナライゼーションの解決策となるビューティAI」の搭載も進む今、この先の課題として「オムニチャンネルでの一貫したサービスの提供」をあげる

いまや「顧客はブランドのECやリアル店舗だけでなく、全てのタッチポイントにおいてAIのデータがシームレスに連動し、自分にパーソナライズされた対応を受けることを期待している」とチャン氏は語る。それはつまり「それぞれのタッチポイントで違う分析やレコメンデーションが行われると、サービス自体の信頼が失われる」と言い換えることもできる。Perfectがオムニチャネル化を推進するゆえんである。

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現在の消費者は、AR搭載のスマートミラーやバーチャルメイクアプリを使うことで、口紅などこれまでにない数の色味を、瞬時に自分の顔上で試すことができる。トライアルにかかる時間や手間、肌へのダメージを心配する必要もない。一度染めてしまうと簡単に元に戻すことができないヘアカラーの場合はとくに恩恵がある。スマートミラーは、リスクフリーで気軽にさまざまな色を試すことを実現してくれるのだ。

このように、ARがトライアルのフリクション(摩擦)を取り除いたことで、消費者はより多くの商品を試し、満足する商品を見つけている。実際、エスティ ローダーは店頭にバーチャルメイク用ミラーを設置したことで、購入に至るコンバージョン率が2.5倍に増加したという。

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さらにAIの搭載により、顧客は自分の好きなものをトライアルするだけではなく、最適商品のレコメンドを受けることで、より短時間で自分好みの商品にたどり着くようになった。一方、メーカー側は、AIが蓄積する顧客データから消費者が求めている商品やインサイトを知ることで、嗜好に合う商品を提供することができる。AI/ARはブランドエンゲージメントの強化に大きく貢献するものだ。

エスティ ローダーは、早い段階からPerfectのAI/ARソリューションを活用しており、30種類の口紅をわずか30秒でバーチャルに試せるスマートミラーの導入数は、8,000台を超えている。店頭以外に、オフィシャルサイト上でもパソコンやモバイルから利用が可能だ。また、グループのM・A・C、クリニーク、トム・フォード、アヴェダなど複数のブランドにおいてもAI/ARソリューションを導入しており、展開地域は46カ国に及ぶ。

2019年には、8万9,969シェードの肌トーンを検出するPerfectの「AI Foundation Shade Finder」を採用した「iMatch Virtual Shade Expert」をローンチした。これはAIが店頭のスマートミラーを通して顧客の肌を分析し、ベストセラー商品「ダブルウェア・ステイインプレイス・メークアップファンデーション」の55種類以上のシェードの中から、各自にマッチした製品の提案を行うものだ。最適とされたファンデーションを使用した時の印象もミラー内でバーチャルに確認できる。あるいは、店舗ならではのサービスとして、ビューティアドバイザーが指定のカラーを使って実際にメイクを施すなどの利用法も考えられる。

テクノロジー導入による顧客満足度の向上を目の当たりにするエスティ ローダー・グローバルブランドテクノロジー・シニアVPのジェィ・アンダーソン(Jay Anderson)氏は、「ビューティはソーシャル・プロダクトである」ことが、顧客に支持される背景の1つだと話す。Z世代を中心とした若年層は、店頭での体験や商品情報の共有はもちろん、タブレットでバーチャルメイクを試してSNSにアップし、意見や感想を求めるなど、オンライン、オフラインを問わずビューティを介して多くの人と繋がっている状況を指摘した。

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CES2020ソフトウェア&アプリ部門革新賞を
受賞したPerfect Corp.の「YouCam」

CES2020レポート(1)で紹介したSkin360にPerfectの技術を使用しているニュートロジーナからは、Neutrogena for J&J Consumer Halthのナターシャ・ハウブリーチ(Natasha Haubrich)氏が登壇。ほかの業界に先駆けて、美容業界でAI/ARが幅広く活用されユーザーに浸透している理由として、「ビューティ関連の顧客は常にnext thing(次のステージのモノ)を求めており、自分に合うものを見つけるためにはエクストラのステップをいとわず、気に入ったものがあれば発信する」からだとする。そして、skin360は「こうした科学をベースに、かつ自分にパーソナライズした情報が欲しいという消費者の声を聞いて生まれた」と明かした。

ヘア業界のスマートミラー戦略

一方、ヘア関連製品をメインに取り扱う美容専門小売店チェーンSally Beauty も、PerfectのYouCam AIヘアカラーテクノロジーを搭載した「ColorView」を導入している。「ColorView」は、約600の実店舗のキオスク(自立型の情報端末コーナー)に加え、Sally Beuatyのモバイルアプリでも利用可能だ。バーチャルに好きなヘアカラーを試すことはもちろん、後ろやサイドなど360度からヘアカラーの見え方を確認できるのも特徴だ。

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また、Sally Beautyのデジタル&イノベーションVP ジャマイラ・ジョンソン(Jamira Johnson)氏によれば、「AIにより、Sally Beautyで取り扱う千を超えるシェードのヘアカラーから顧客の髪の根元の色にぴったり合うなどパーソナライズされたレコメンドができる」。

ジョンソン氏は「ヘアカラーはとてもパーソナルなもの。顧客にとって色を選ぶことは大きな決断」だと語る。膨大な数のシェードから顧客が自分にぴったりのカラーを選ぶのは至難の業だ。好きな色が似合う色とは限らない。髪にダメージを与えることもなく気軽にトライでき、選択の的を絞ってくれる効率的な提案が得られるこのサービスが、強く支持されている理由である。

さらにCESが開催された前の週には、Perfectの「AI Hair Curliness Analysis」を活用した、顧客の髪質を分析してヘアケア商品をレコメンドするサービスも店頭に導入した。こちらも近々、専用アプリに搭載されてスマホからも利用できる予定だ。


Coty、CareOSとの共同開発で、PerfectのYouCam AIヘアカラーテクノロジーを採用したスマートミラーを発表したのはウエラプロフェッショナルである。

ヘアサロンでの利用を想定し、顧客の顔認証、ヘアカラーのバーチャルトライアル、過去のヘアスタイルの保存と閲覧のほか、一人ひとりにパーソナライズしたヘアカタログの表示、全てのアングルから仕上がりを確認し、保存やSNSシェアができる360度ビデオ、さらには、スタイリストとのコミュニケーションが取れるサロンアプリとの連動といった多機能を持つ。タッチパネルではなく、指差す動作だけでコマンドを出せる方式で、鏡が汚れることもない。

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画像提供:Wella Professionals 

顧客管理の一元化に加えて、顧客とスタイリストとのコミュニケーションの強化を念頭に開発された製品で、事前コンサルティングの充実や、顧客の要望を正しく理解し誤解を回避するなどの役割が期待される。また、アンケートやアプリと連動させることで、ヘアケア商品の販売告知や次の来訪を促すなどマーケティングにも力を発揮する。

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画像提供:Wella Professionals

ARによるコスメのバーチャルトライを当たり前のものにまで普及させた貢献者であるPerfectが、すべてのタッチポイントで顧客情報を一元化し、顧客をいわば「360度カバーしてサポートし取り込む」エコシステムを推進していくパートナーに、スマートミラーの技術で1つ頭が抜けた感のあるCareOSと組んだところが興味深い。

同時に、リテールの現場で、販売スタッフが介在し、ビューティテックによるパーソナライズした顧客体験を顧客とともに作り出していく方向性が、より鮮明になってきたことが感じられる。

<そのほかのCES2020レポートはこちら>
(1)P&Gやロレアルが明示、ハイパー・パーソナライゼーションの時代
(2)アモーレパシフィックが店頭での3Dプリントパーソナライズマスクを実現
(3)CareOSやHiMirror、ホームユース・スマートミラー元年を導く
(5)サムスンやP&Gが競うビューティルーティンを変える最新デバイス

Text & photos: 東リカ(Rika Higashi)

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