見出し画像

YouCamのパーフェクトがアリババと電撃提携、 “ポストARメイク”の世界

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

ARバーチャルメイクアプリ「YouCamメイク」や、コスメブランドおよび百貨店、ドラックストアなどリテーラー向けにARメイクアップソリューションを提供するパーフェクトが、中国最大の電子商取引企業・アリババとの提携を9月末に発表した。今後、Tモールやタオバオなど、アリババ系列のECサイト上に出品しているブランドは、パーフェクトのARメイクツールや関連ソリューションを利用できるようになった。提携の裏側にあるパーフェクト社の戦略と技術、そして今後の目標を聞いた。

アリババと提携することが決まったパーフェクトは、アプリ「YouCamメイク」などコンシューマー向けのサービスに加えて、同社プラットフォームを使いブランドがバーチャルメイク体験をオムニチャネルで展開できる企業向けサービスを展開している。顧客企業と直接契約を交わし同社の提供するサービスすべてにアクセスできる「YouCam for Enterprise」と、オンライン上のサブスクリプションでサービス利用(※一部制限あり)できる「YouCam for Web」である。

パーフェクトのこれらのサービスは、全世界で200ブランド以上に提供され、中国においても、大手メッセンジャーアプリWeChatのミニプログラム上ですでに提供されている。今回、アリババと提携を結ぶことにより、中国デジタル市場でより存在感を放つことになった。

アリババが評価したフットプリント&エコシステム

ARメイクの領域では、アマゾンにARメイクツールを提供するなど密な協力関係を持つロレアル傘下のModiFaceほか、グーグルやYahoo! などのグローバルIT企業が互いにしのぎを削る状況が続いているが、中国に大きな経済圏を築きあげたアリババは、なぜパーフェクトとの提携を選んだのか。今回、その“提携事情”について、パーフェクト株式会社(日本支社)の代表取締役社長・磯崎順信氏に話を聞いた。

「アリババとの提携が実現した理由は2つ。まず、弊社が築きあげることに専念してきた業界内の“エコシステム”、そして再現性・ナチュラル性といった“技術力”」にあると磯崎氏は明らかにする。

パーフェクトは本国台湾にて2015年の起業から数年間、フットプリント(システムが稼働する際の占有領域の多さ)を広げることにまずは専念してきたという。自社アプリやサービス上だけでなく、ブランド側が各EC、ブランドのウェブサイト、オフライン店舗、百貨店・ドラックストアなど、どこにおいてもクライアントがシステムを効率的に利用でき、またユーザーが同じ体験をできるよう下準備を進めてきたというのだ。

画像1

アリババグループのECに実装される
ARツールのイメージ

というのも、ここ数年間の業界勢力図を振り返ると、アマゾン、グーグル、ヤフーなど、大手IT企業がARメイクに強い関心を示し、提携や自社開発を相次いで発表した。彼らが本気で技術開発にのりだしたとしたら、新興企業としては不利な立場におかれてしまう。そのため、まずフットプリントを広げることで競合企業に対して“障壁”を生み出すというのが、パーフェクトの重要な戦略だったという。そしてその戦略は功を奏した。

「色データの提供は各ブランド側に行ってもらうが、一度これを終えて我々のサービス上にのせてしまえば、店頭でも、自社HPやECサイト、我々のアプリ、またメディアなどの記事広告を出す際にも、効率的にどこでもアウトプットが可能になる。加えて、昨年頃からは百貨店やドラックストアなど、リテーラーとも色データを共有できるエコシステムを作り上げることができた。その弊社のプラットフォーム、ブランド、リテーラー、ユーザーをまたぐエコシステムが、弊社の最大の強みだ。技術力もさることながら、(他社が)この仕組みに追いつくことが難しい状況を整備しつつある」(磯崎氏)。

画像2

パーフェクト株式会社
磯崎順信代表取締役社長

中国においては、「toC」、つまりユーザー向けのARバーチャルメイクアプリや自撮りアプリの分野でのプレゼンスでいえば、競合であるMeituが圧倒的に強いと磯崎氏は分析する。しかし、対ブランドへのプレゼンスではパーフェクトが築いた仕組みは盤石であり、またそのようなエコシステムの中で築かれた、ARメイクの「再現性」、「ナチュラル性」も、競合他社ツールより一歩先をいっていると自信を見せる。

また、日本をはじめ、中国を除く各国にはAWS上でサービスを展開しており、中国でもそれをそのままアリクラウドに移すことで、すでにグローバルでYouCamのサービスを利用している各ブランドは、契約さえすればすぐに中国でも使えることになる。実際にエスティ ローダーなどの有力ブランドが、すでに使用をスタートしているという。事実、「アリババグループからも技術面のクオリティの高さ、パートナーの多さ、そして培ってきたエコシステムを高く評価されて契約が実現した」と磯崎氏は話す。

現在、Tモールのプラットフォーム上では、約30のブランドがパーフェクトのARメイクシステムを採用している。グローバル市場と足並みを合わせ、「中国でも200社以上のブランドに採用してもらうのが直近の目標」(磯崎氏)だという。

画像3

パーフェクトARメイクシステム
イメージ図

ARの次はAIで効率的な絞り込みを実現へ

パーフェクトは今後も世界のARバーチャルメイク市場獲得に注力していくとする一方で、“ARメイク以降”も見据えて、新たなソリューション開発にのりだしている。

2018年までのパーフェクトの目標は、AR技術を使ってバーチャルメイクアップ機能を提供することにより「ユーザーの選択の自由を極限まで広げる」ことだった。言い換えれば、一色でも多くトライしてもらう、他の商品と組み合わせて新たな消費を誘発するなど、ユーザーの“冒険”を手助けすることが目標だった。

しかし、そのフェーズは、このARメイクがいわばインフラのように当たり前になることで終わりに近づいていると磯崎氏は示し、「現在、たとえば百貨店で利用されている端末には、1台でさまざまなカラーアイテムを含め2,000色ほどのカラーバリエーションが試せる。だが、ユーザーがその色数すべてを試すことは現実的に難しい。そのため、ブランドやリテーラーとしてのレコメンドを効率化できるAIツールの開発を進めている」とする。

パーフェクトが新たに開発を進めているAIツールのひとつに、「AIスマートシェードファインダー」がある。これはスキントーンを詳細に検出・分類することで、ユーザー個々人に適したファンデーションなどコスメの選択肢を的確に絞るためのAIツールだ。AIスマートシェードファインダーは、約9万通りのスキントーンを検出できる。これは、人間の目で判断できる肌の領域のRGBの色の組み合わせすべてを網羅したものとなる。

画像4

AIスマートシェードファインダー
イメージ図

磯崎氏は「我々のツールで解析したユーザーのスキントーンのデータを顧客企業に提供できれば、各企業は、ブランドの持ち味を生かした色や価格帯、カバー力など、1人ひとりのユーザーに適した商品を提案できると思っている。我々はいわば“ディテクション(肌の検出や分類)”を行い、各ブランドで行うパーソナライズや付加価値の創造を支援していきたい」と語る。

パーフェクトは自社をテックカンパニーとしてしっかりと線引きしたうえで、ビューティーカンパニーとの立ち位置を明確にしていく方針は崩さない。AIスマートシェードファインダーを例に取るならば、ディテクションは行うが、パーソナライズや具体的な商品レコメンデーションといった、ブランドやリテーラーの事業領域には踏み込まないということだ。

これは、テックカンパニーがパーソナライズの細部にまで踏み込むことで、業界内の商品の画一化が起こる可能性を危惧しているからだ。パーフェクトは、ビューティー業界において、あくまで顧客の購入体験の向上、またクライアントのデータドリブンな競争力を高めるためのサポートをするテックカンパニーとしての立場を守っていくとする。

スマホ1つで正確な結果を得るための技術力

AIスマートシェードファインダーを支えるAI技術のひとつに、「環境補正」がある。撮影された環境によってファンデーションや肌の色の映り方は異なり、当然、その写真によって解析結果も変わってくる。「我々はスマートフォンのカメラとAIだけで、環境を正確に補正する方法を追求している。別のカメラなどアイテムを用意したり、撮影条件を整える必要があるなど、使い方が煩雑になればなるほどサービスは使われなくなり、競争力が落ちる。試すプロセスが複雑なためにユーザーの心が折れてしまっては、何度も気軽に使ってもらえないからだ」と磯崎氏は説明する。

そして、「テックカンパニーとして、ARだけでなくさまざまな最先端テクノロジーで業界内のエコシステムに寄与していく、またスマートフォン上でのユーザー体験を最大化していくというのが、今後のパーフェクトの挑戦になる」と意気込みをみせる。

同社では、冒頭でも示したように、AI関連のソリューションに加え安価かつサブスクリプションで利用できるWebブラウザ向けプラグインサービス「YouCam for Web」のリリースも開始した。このサービスでは、小規模なブランドもリーズナブルにARバーチャルメイクをWebブラウザ上で実装できる。そのほかにも、「さまざまなソリューションを準備している」と磯崎氏は話し、11月以降には新たな発表も用意しているとする。本社CEOのアリス・チャン氏がいう美容3.0によるユーザー体験の最先端の姿は、そのとき明らかになるはずだ。

Text: 河鐘基(Jonngi HA)
画像提供: Perfect Corp.

ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
12

BeautyTech.jp

美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp

テクノロジー

BeautyTech.jpでテクノロジーに関する記事をまとめたマガジンです。
3つ のマガジンに含まれています