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サムスン電子C-Lab、美容やヘルスケアテック企業も輩出するスタートアップ育成プログラム

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世界のイノベーションを牽引する企業が一堂に会した「CES2024」。会場には韓国企業も数多く出展していたが、なかでも注目を集めたのが総勢15社、23件のイノベーションアワードを受賞したサムスン電子のスタートアップ育成プログラム「C-Lab」出身のスタートアップ群だ。C-Labはこれまで、ビューティテック企業をはじめ、さまざまな分野に特化したスタートアップを数多く輩出してきた。C-Labの概要と、さらなる伸びが期待されるスタートアップを紹介する。


サムスンが発見・事業化をサポート、スタートアップのエコシステムの活性化に寄与する「C-lab」

「C-lab」はCreative Labの略称で、韓国では「創意開発センター」とも呼ばれている。プロジェクトの始まりは2012年末で、サムスン電子社員のアイディアを実現すること、あわせて、革新し続ける企業カルチャー醸成を目的とする社内ベンチャー育成プログラムとして運営開始された。

CES2024に参加したC-lab関連スタートアップ
出典:サムスン電子ニュースルーム

C-labプログラムへの参加を認められた社員には、通常業務から1年間離れる時間的猶予と、アイディア実現に集中するための勤務環境が与えられる。また、仮にC-labを通じて生み出されたプロダクトやサービスをサムスン電子が採用する場合、発案者にはインセンティブが支給される制度となっている。これまで同プログラムに参加した社員数は1,622名。対象となったアイディア・育成課題は397件にのぼる。

一方、有望な事業性を認められたアイディアについては、「C-Lab Spin off」というプログラムを通じて、スタートアップとして独立する機会も与えられている。同スピンオフ制度が開始されたのは2015年だ。サムスン電子は対象社員に独立資金と、起業後5年以内であれば失敗・廃業しても再入社可能という条件を提供。失敗を恐れずに挑戦できるよう後押ししている。

これまでC-Labからスピンオフしたスタートアップは合計62社にのぼり、なかには、AI肌診断ソリューション企業lululab、モバイルタトゥープリンターを製造・販売するPrinkerなど、ビューティテック企業も複数社含まれている。

サムスン電子は2018年に、社外のスタートアップに対するインキュベーションプログラム「C-Lab Outside」もローンチしている。以降、既存の社内プログラムは「C-Lab Inside」という呼称で区別されている。

肌診断からヘアケアまでビューティテック企業を複数輩出

では実際にどのようなスタートアップがC-Labから誕生してきたのだろうか。まずビューティテック分野のスタートアップとしては、前述のlululab、Prinkerのほかに、S-SKINBeconBlack Parrot、JOYBROの4社がある。

⚫︎S-SKIN

ナノバイオ技術を活用し、IT専門家で構成されたS-SKINは、現在、「DR.PLINUS」というスキンケアブランドを運営している。クレンザー、トナー、クリームなどの商品ラインナップを展開しているが、なかでも強みを持つのがマイクロニードルパッチだ。

S-SKINのマイクロニードルパッチ
出典:S-SKIN 公式サイト

S-SKINのマイクロニードルパッチには、化粧品有効成分の浸透率を高める作用がある。既存の一般的なパッチと比較して、浸透率が約50倍アップしたことが実証されたというのがS-SKIN側の説明だ。

マイクロニードルパッチは、洗顔後、基礎化粧品を塗った肌に貼って使用する。温度によって色が変化し、皮膚に適切に付着したかどうか目視で確認できるのも同社マイクロニードルパッチの特徴だ。

S-SKINはもともと、肌状態をチェックするデジタルデバイスもセットで開発していたが、現在は具体的な開発の進捗は報告されていない。公式Webサイトによれば、マイクロニードルパッチの製造やブランド運営を中心としたビジネスにフォーカスしているようだ。

⚫︎Becon

2021年にスピンアウトしたBeconはヘアロス(抜け毛・薄毛)治療にフォーカス。世界初となるAI頭皮分析スキャナー「Scalp & Skin AI Scanner」を、主に美容整形クリニック向けに製造・販売している。

Beconの「Scalp & Skin AI Scanner」
出典:Becon 公式サイト

スキャナーは撮影(頭皮画像および近紫外線画像)と同時に、センサーとAIを活用して頭皮の水分、油分、温度、角質、匂い、敏感度、毛囊(毛を取り囲む組織層)の密度および毛囊あたりの毛髪、毛髪の太さなどを正確に測定することができる。Beconはそれら測定データを活用し、ヘアロスの進行率診断、頭皮の状態の精密な把握、施術前後の比較分析、頭皮の変化記録などを分かりやすく可視化するソフトウェア「Becon Salon」もパッケージで提供している。

⚫︎Black Parrot

2022年にスピンアウトしたBlack Parrotは、「習慣化された不便の解決」を目標に掲げる小型家電スタートアップだ。同社は現在、「どんな髪でも3分30秒で乾かすことができるヘアドライヤー」というユニークな商品の実現、そして正式ローンチに向けて開発プロジェクトを進めている。

商品プロトタイプを紹介するBlack Parrotのメンバー
出典:サムスン電子ニュースルーム

⚫︎JOYBRO

2019年にスピンアウトしたJOYBROは、顧客ごとにカスタマイズした商品を提供するフレグランスブランド「CLAEL」を運営している。JOYBROは約30年の歴史を持つ香料メーカーおよび調香師と協業し、肌や環境に優しいオリジナルフレグランス29種類を開発。設問へのユーザーの回答から、それらフレグランスを調合し各顧客に合った商品を届けるというビジネスモデルを展開している。

ウエルネスやコマースなど幅広い領域で活躍するC-Lab出身企業

⚫︎Yellosis

C-Labからスピンオフした企業のなかには、ウエルネス分野に注力するスタートアップも多い。代表的な企業としては、慢性疾患のリスクを診断する尿検査キットおよび、健康管理のためのAIアプリケーションを提供するYellosisがある。

Yellosis「Cym702 Boat」
出典:Cym702公式Facebookアカウント

同社が開発するスマート尿検査キット「Cym702 Boat」は、キットに尿を含ませたのちにアプリで撮影するという利用方法だ。採尿から診断結果が表示されるまでにかる時間は約60秒。診断項目は潜血(炎症管理)、タンパク質(腎臓の健康管理)、ブドウ糖(糖尿管理)、pH(体内恒常性管理)、ケトン(体脂肪分解管理)の5種類となっている。検査キットはインターネット上で一般消費者向けに提供されており、2~50回用のパッケージ商品が販売されている。

Yellosisは、CES2024では「Cym702 Seat」というスマートトイレのプロジェクトを展示していた。ユーザーが用を足すと便座が自動でデータを取得。アプリと連動して健康状態を分析してくれるというソリューションだ。トイレで流してしまう尿から重要な体内情報を取得し、ユーザーに届けるというのが本プロジェクトの目的だ。

Yellosisのスマートトイレ「Cym702 Seat」
出典:Red Dot Award 公式サイト

⚫︎STUDIO LAB

CES2024には合計で15社のC-Lab出身スタートアップが出展したが、なかでも最も注目を集めたのがベストオブイノベーションを受賞したSTUDIO LABだった。同社は生成AI技術に強みを持ち、小売業をサポートするコマーステック企業で、コンテンツ生成技術や、画像から衣類の種類や特徴をラベリングする技術を保有している。

具体的なソリューションとしては、「Seller Canvas」と「Brand Canvas」の2つがある。前者は服の写真を撮影すると、生成AIが30秒で商品紹介用テキスト、ページ画面のデザイン、商品の仕様の詳細ページなどを生成してくれる。後者はブランドに関する簡単な説明を入力するだけで、AIがビジョン、ロゴ、キャッチコピーなどを生成。ブランドアイデンティティやブランド戦略の策定を支援してくれる。

またSTUDIO LABでは、商品を自動撮影するための自律走行型ロボット「Photo-bot」および関連ソリューションも開発している。ソリューションの全体像としては、人間が棚に商品を並べてさえおけば、ロボットが巡回しながら宣材写真の撮影作業を代替してくれるというものだ。

STUDIO LABの「Photo-bot」
出典:ITBizNews

外部スタートアップの育成や投資にも積極的

今回は主に社内からスピンオフした企業を紹介したが、サムスンでは外部のスタートアップの育成・投資にも注力している。2017年に「C-Lab Outside」がローンチされて以降、投資やプログラムが実行された数は合計475社にのぼる。CES2024に出展した企業だけみても、AI演算用NPUチップのDEEPX、シニア用スマートベストDolbomdream、スマートウィンドウVsion、再生エネルギー発電量予測&管理ソリューション60Hertzなど、そのポートフォリオはとても多彩である。

C-Labがこれまで社内外のスタートアップに投資した金額は、約1兆4,000億ウォン(約1,540億円)を突破した。今後も投資は継続されるものとみられており、韓国のスタートアップ・エコシステムを語るうえで、C-Labは資金力、サポート力ともに存在感を示している。

Text: 河鐘基(Jonggi HA)
Top image & photo: BeautyTech.jp編集部撮影

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