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日本のフェムテック急成長へ。CICTokyoや伊勢丹新宿店1階でのイベントが物語ること

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2021年も3月8日の国際女性デーにちなみ、
フェムテックや女性エンパワメントの
トレンドを積極的に紹介します
(フェムテック過去記事はこちら

3月は、国際女性デー月間にちなんで、フェムテックに関するさまざまなイベントが開催された。ルナルナやfermata、SOMPOひまわり生命保険、三菱総合研究所、そして女性投資家など、フェムテック市場を牽引するメンバーは日本でのフェムテック市場の成長を示唆し、伊勢丹新宿店1階ではフェムテックポップアップが開催され、たくさんの人が足をとめて見入った。美容企業とも親和性の高いフェムテックの可能性を改めて考察する。

CIC Tokyoが主催。企業がどうフェムテック領域に関わるか、意味深いセッション

2020年10月にオープンしたCIC Tokyoは、女性起業家の支援やこれから注目すべき新しい市場として、フェムテックに焦点をあてたイベントを2021年3月8日に開催した。オンライン視聴者と会場への来場者であわせて100名以上が参加し、女性だけでなく男性の参加者も多く、新たな市場・ビジネス領域への関心の高さがうかがわれた。イベントは二部構成で、スタートアップ企業や新たなイノベーションを推進する大企業から、それぞれの視点でフェムテックの可能性が語られた。

日本のフェムテック市場は4合目。法規制の壁を乗り越えたい

第一部の「これから発掘すべき潜在マーケットの可能性 」をテーマにしたセッションでは、フェムテック市場のこれまでの発展と現状が語られた。

今年20周年を迎え、ブランドリニューアルをしたフェムテックサービス「ルナルナ」は、2020年に1,600万DLを突破(2020年11月時点)した月経管理アプリだ。近年、医療連携の強化を進めており、ルナルナで記録したデータを診療時に医師のPCやタブレットなどのデバイスで閲覧できる「ルナルナ メディコ」が、900を超える医療機関に導入されているという。2020年は感染症対策でオンライン診療や医療現場のDXが進み、導入医療機関が増加した。

株式会社エムティーアイ ルナルナ事業部 ルナルナ副事業部長 那須理紗氏は、「日本人女性の婦人科受診率が低いという社会課題を解決するために、産婦人科の医師を巻き込みながら、我慢せずに適切な医療を受けられる仕組みをつくり、女性の生きやすさに貢献していきたい」と語った。

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左から株式会社Yazawa Ventures
代表 矢澤麻里子氏、
株式会社エムティーアイ ルナルナ事業部
ルナルナ副事業部長 那須理紗氏、
CIC Japan 会長 梅澤高明氏
提供:CIC Tokyo

個人がよりよく働くためのイノベーションを起こすスタートアップへの投資を掲げている株式会社Yazawa Ventures 代表 矢澤麻里子氏は、日本で「働く」をテーマにしたときに、女性の働きやすさへの課題は大きく、「妊娠、出産を経て、女性が生涯を通じて働きやすい環境を整えていくうえで、フェムテックとの親和性は高い」と話す。

モデレーターを務めたCIC Japan 会長 梅澤高明氏の「日本のフェムテック市場は、例えていえば、いま何合目まできているのか?」の問いに対して、「3合目、4合目といった感じではないか」と語る那須氏。矢澤氏も同様に、「スタートアップ界隈でも、最近やっと知られてきたという感覚がある。日本では法規制が障害となり、すぐに実現が難しいサービスもあるが、働く女性の課題解決のために立ち上がり、法規制を変えていくようなスタートアップが今後どんどん増えていくことで、市場も拡大していくのではないか」と期待をのぞかせた。

消費者のフェムテック認知率は低いものの、知らずにサービス活用は26.4%

日本社会におけるフェムテックの認知度については、SOMPOひまわり生命保険株式会社 事業企画部 サービス企画グループ 主任 蓮井智子氏から興味深いデータが示された。同社が全国の女性1,000名に実施した日本のフェムテック市場の可能性に関する調査によると、「フェムテックの認知率は1.9%で、昨年から0.4%増と大きな認知拡大はみられなかった」という。一方、フェムテックを理解したあとでの期待は58.7%と昨年に引き続き高く、フェムテックと意識せずに「女性のからだ・健康の悩み」に対応するサービスを全体の26.4%が使用しており、悩み解決をテクノロジーに求める行動は一般化しつつあることがわかった。

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出典:SOMPOひまわり生命保険株式会社

同社は、保険機能(インシュアランス)に健康を応援する機能(ヘルスケア)を加えた「インシュアヘルス®」を新たな価値と位置付け、2018年4月から「じぶんと家族のお守り」「Linkx Pink」をはじめとした7つのサービスを提供している。また、女性の人生のライフイベントと健康の交わりに着目したフェムテック関連サービスを検討中で、働く女性を対象にインタビュー調査も実施している。蓮井氏は、「インタビューでは、気になる月経症状がありながらも病院を受診できていない方、不妊治療や更年期症状に悩まれている方など、切実な声を聞くことができた。SOMPOひまわり生命保険では、ライフステージで生じるさまざまな課題を解決するためのサービスを検討し、フェムテック市場拡大に貢献していきたい」と語った。

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SOMPOひまわり生命保険株式会社
事業企画部 サービス企画グループ
主任 蓮井智子氏
提供:CIC Tokyo

日本は海外に比べて遅れているわけではない、という指摘の理由

fermata株式会社CEO 杉本亜美奈氏は、「Femtech最前線〜タブーが市場を創り出す〜」をテーマに、海外と日本の市場動向の違いについて知見を述べた。

グローバルでみると、2012年以降、欧米ではフェムテック市場への投資額、企業数、対象範囲が急増しており、2019年は、40億円以上の資金調達を実現する企業が5社も登場するなど「フェムテックイヤー」と呼ばれた。

日本では、2018年頃からフェムテック関連のスタートアップや企業が増えはじめ、2020年春の51サービスから、同年秋には約100サービスへと倍増している。

「フェムテックという言葉は、もともとは起業家と投資家のあいだで使われていた造語だが、日本では、女性の体や心にまつわる固定観念や“こうあるべき”という考えを変えて、生きやすい世界にしようというムーブメントになっている。女性の健康課題を解決するテクノロジーだけでなく、フェムケアとよばれるケアアイテムも含んだ広義の意味でのフェムテックが広がっている」と杉本氏は分析する。

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fermata株式会社
CEO 杉本亜美奈氏
提供:CIC Tokyo

みんなが当事者意識をもてば、50年後フェムテックという言葉はなくなっている。

このムーブメントともいえる動きは、日本ではどこまで広がっていくのか。

第二部のパネルディスカッションは、BeautyTech.jp編集長 矢野貴久子のファシリテーションのもと、「50年後、フェムテックはどうなっているか?」という議論からスタートした。株式会社三菱総合研究所 未来共創本部 主任研究員 鈴木智之氏は、「テクノロジーの進化によって、いま困っている課題のほとんどが解決できるようになるだろう。問題は、生活者がそれを使いたいと思うか、規制や制度の仕組みを変えられるかにある」と述べ、「こうなったらよいなという理想的な状態を“社会のゴール”として生活者に共有し、それを目指したいという気持ちを醸成すること、そして、一人ひとりにその当事者であるという意識を持ってもらうための啓発活動を継続的に行っていくことが大事だ」と述べた。

一方、fermata 杉本氏は、「10年後には、おそらくフェムテックという言葉がなくなり、ヘルスケア分野に統合されていくのではないか」と指摘。また、「日本が男性社会だからフェムテックサービスがこれまで生まれてこなかったという考え方は間違いである。各国の医療制度の違いも大きく影響しているため、決して日本が欧米に比べて遅れているわけではない。フェムテック製品は新しい価値観を持つからこそ、既存の規制の枠組みに当てはまらないものが多いため、それが安全かどうかや商品自体の品質を国が審査し、承認するプロセスが整っていないだけだ」と強調した。

実際、fermataが六本木に実店舗をオープンした際に、ゴールデンタイムのテレビニュースで女性用バイブレーターが紹介された。そのことを海外のフェムテック関係者に話したところ、「海外では文化や宗教的に絶対にありえない」と非常に驚かれたという。

「日本では、そもそも文化や宗教的に根付いているタブーはない。性について語り合うことの恥ずかしさがあるだけ。“女性が自分の体を知る権利”がもっと広がれば、フェムテックは爆発的なムーブメントになる可能性を秘めている」と杉本氏は締めくくった。

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第二部のパネルディスカッションの様子
提供:CIC Tokyo

イベントの最後には、本イベントの共同企画者であるGlobal Brain株式会社 Investment Group Director 皆川朋子氏より、フェムテックコミュニティ新設が発表された。フェムテック関連のビジネス、プロダクト、サービスを推進していくための情報共有とネットワーキングを目的としたコミュニティで、今後スタートアップ、大企業、投資家、アクセラレーター、アカデミア、医療・法律などの専門家メンバーを広く募集していくという。

伊勢丹新宿店本館1階ではフェムテックポップアップストア、人生100年時代へ広義のテクノロジー

2021年3月17日から4月6日まで、伊勢丹新宿店 本館1階で、植物療法士 森田敦子氏キュレーションのフェムテックポップアップストアが開催されている。

以前記事で紹介したライフスタイルブランドWaphytoの創設者でもある森田敦子氏は、仏国でフィトテラピーとセクソロジー(性科学)を学び、帰国後はデリケートゾーンケアを中心とした女性のパーツケアブランド「INTIME ORGANIQUE(アンティーム オーガニック)」を自ら開発。プライベートゾーンケアの重要性の啓発と市場開拓を日本でいち早く行ってきた人物でもある。2013年、伊勢丹新宿店でデリケートゾーンケア商品の取り扱いをはじめたときの担当者であった、株式会社三越伊勢丹 クロージング&アクセサリー I グループ マーチャンダイジング部 永野友香氏からの依頼で、今回のフェムテックポップアップストアが実現した。

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フェムテックポップアップストア
提供:株式会社サンルイ・インターナッショナル

キュレーションにあたり、森田氏が考えるフェムテックの本質は「ただ女性特有の悩みや課題を解決することだけではない」という。人生100年時代といわれる今、女性が健康かつ愛を持って、それぞれのライフステージを幸せに生きるための広義のテクノロジーであり、それをサポートするすべてのモノ・こと・人とのリレーションシップも含まれる。そのためには、機能性を求めるだけでなく、女性がより心地よく、気分を盛り上げながら、自分自身と向き合うためのアイテムが必要だ。こうした思いから、フェミニンケアやサニタリーケアなどのケアアイテムだけにとどまらず、ゲランのフレグランスやクリスチャン ルブタンの口紅、ラペルラの下着など、気持ちやセンシュアリティ、コミュニケーションにアプローチする42ブランド、155アイテムが取り揃えられた。

アイテムの選定においては、海外のフェムテックブランドの輸入代理をつとめる有限会社アジュマ代表 北原みのり氏をはじめとした専門家が協力しているという。

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CES2020でも話題になった
プレジャートイブランド「LoraDiCarlo」
日本初上陸の商品も
提供:株式会社サンルイ・インターナッショナル

会期中は、さまざまな関連イベントも開催されている。店内の一角には、紗栄子氏や辺見えみり氏、野宮真貴氏がセレクトした厳選アイテムを週替りで展示するコーナーを設置するほか、センシュアリティをテーマに、新しい時代のフェムテックをオープンに語るInstagramライブや、森田氏と産婦人科医師 松峯寿美氏によるオンラインセミナーも開催(野宮真貴氏のInstagramライブは2021年4月1日(木)20:30~、森田氏(@atsuko1705)と野宮氏(@missmakinomiya)のInstagramアカウントより配信予定)。

森田氏は、「伊勢丹新宿店の本館1階という人通りの多いこのスペースで、フェムテックポップアップショップを開催するというのは驚くべきことであり、容易ではなかった」と振り返る。「日本では、性について話すことはタブー視され、自分ひとりで課題を抱えてしまいがちだが、今回のような取組みを通して、パートナーや家族とともに体と心について聞ける・伝える・話し合うことの大切さを提唱していきたい」(森田氏)

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森田敦子氏
提供:株式会社サンルイ・インターナッショナル

フェムテックポップアップについては、2019年11月に大阪・大丸梅田店にオープンした“女性のリズムに寄り添う”新ゾーン「ミチカケ」を皮切りに、同店で店舗を構えたフェムテック専門店「MOOND by LPC」、伊勢丹新宿や銀座三越でポップアップショップを開催したfermataなど、百貨店での開催が相次いでいる。2021年3月26日には、ラフォーレ原宿内に、アジュマ 北原氏が運営するストア「LOVE PIECE CLUB」の初の常設店もオープンした

女性の課題をオープンに話せる場が増え、百貨店というアクセスしやすい場所で気軽に商品を手にとる機会が増えることで、フェムテックの垣根は今後さらに低くなっていく。森田氏がキュレーションしたポップアップストアのように、気持ちやセンシュアリティ、コミュニケーションにアプローチするうえで美容やファッションとも切り離せない分野として認知されていくはずだ。

Text: 小野梨奈(Lina Ono)
Top image:KAORUKO/提供 株式会社サンルイ・インターナッショナル

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