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メナードが考える人工皮膚研究の目的地、リアルな皮膚の再現は究極のパーソナライズ

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細胞や遺伝子、生命活動に関わる物質を研究するバイオテクノロジーは、その成果を医療や創薬のみならず、美容領域で幅広く応用できることが期待されている。なかでも、動物実験の代替となり化粧品の安全性や効能の検証に欠かせないツールとしてや、再生医療の普及というビューティとウエルネスの双方の観点から注目が集まるのが人工皮膚テクノロジーだ。三次元培養皮膚モデルで世界をリードする日本メナード化粧品の人工皮膚研究開発担当者に、現在進めている研究の成果と他社の動向を含めたR&Dの現在地を聞いた。


メナードが目指す、見た目も機能も生体に限りなく近い人工皮膚

日本メナード化粧品株式会社(以下、メナード)は、2012年にiPS細胞で京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞して幹細胞研究が一躍脚光を浴びる以前の2003年から、皮膚の再生メカニズムを解明するための幹細胞研究に着手。2005年には、幹細胞特有のタンパク質「p75NTR(CD271)」を指標に、皮膚の細胞から幹細胞だけを効率的に分離することに成功して特許を取得した。

2018年に特許庁が発表したヒト幹細胞関連技術の特許出願数世界トップ50のうち、メナードは世界で13位、日本国内では京都大学に次いで2位となっており、幹細胞研究においてトップクラスの技術をもつ。2021年には、三次元人工皮膚モデルにゲノム編集技術を組み合わせることで、さまざまなレベルのバリア機能を持つ人工皮膚モデルを開発し、「Japan BeautyTech Awards 2021」で大賞を受賞した。人工皮膚研究の分野で、その先進性と研究開発技術力が高く評価されている企業だ。

「私たちがいま目指しているのは、人工皮膚を生体の皮膚に限りなく近づけたいということだ。人工皮膚の作成には2つの方向性がある。組織構造や弾力などの肌が持つ機能性の再現と、もう1つがキメ、シミ、シワなど肌の“見た目”の再現だ」。こう話すのは、メナードの総合研究所で皮膚の幹細胞研究と三次元培養皮膚モデルの開発など、人工皮膚関連の研究を専属で担当している宮地克真氏だ。

人工皮膚とは生体外で人工的に作成した皮膚組織のことで、現在では、実際の生体の皮膚と同じように、表皮層と真皮層があり、各層には角質細胞と線維芽細胞が存在し、ヒトの組織と同じような状態ができている。これをよりリアルな人工皮膚とするためには、機能性と見た目の両方の再現性の向上が重要だが、化粧品メーカーとしてメナードでは、生身の肌と同じようなキメや色味といった肌表面の見た目を持つ人工皮膚を生成するところに、とくに注力していると宮地氏は話す。

なぜなら、バリア機能が低下した肌や、シミが多い肌、あるいはキメが整った健康な肌など、さまざまなコンディションの人工皮膚を作ることで、化粧品成分がどんなタイプの肌にどのように作用するのかといった各種の検証や、パーソナライズへの応用、外的刺激への反応や安全性の確認、また、肌の老化のメカニズムの解明などにつながることが期待できるからだ。

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