見出し画像

卵子凍結などへの助成が、美容業界においても女性の選択肢を大きく広げる切り札へ

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

画像1

2020年も3月8日の国際女性デーにちなみ、
フェムテックや女性エンパワメントの
トレンドをBuzzFeedとともに積極的に紹介します
フェムテック過去記事はこちら)

女性の働きやすさ、人生の選択肢を広げる手段として、「産みどき」を自分で決められる卵子凍結への助成は、先進国の大手企業の福利厚生として脚光をあびている。本人、そしてパートナーや家族のメリットだけでなく、企業にとってもスタッフが安心して働ける場となる恩恵は大きい。日本でいち早くそこに切り込んだのが、スタートアップのステルラだ。越えるべき課題はあるが、日本でも卵子凍結への支援の有無が、選ばれる企業の基準となる時代がすぐそこまできている。

卵子の数は産まれたときに決まっており、年齢とともに数は減少し、その質は低下していく。「卵子の老化」がメディアで大きくいわれはじめたのは、ほんの10数年前のことだ。女性の妊孕力(妊娠する力)は24歳前後がピークで、キャリア形成と妊娠適齢期が重なってしまうため、妊娠・出産によって多くの女性がキャリアを中断したり、ペースダウンしたりを余儀なくされてきたことが、長年、日本の女性活躍の妨げになってきた。

そこに風穴をあけようと、卵子凍結という選択肢を企業の福利厚生パッケージとして提供する「Stokk」を立ち上げたステルラ株式会社代表取締役 西 史織氏は、卵子凍結を企業が支援する意義をこう語る。

「いつかは子どもを持ちたいけれども、今はキャリアや別のことを優先したい。そんなときに、卵子を凍結保存するという選択肢があることで、未来への備えができるだけでなく、女性自身が産みどきを選び、人生の見通しやキャリア計画を立てやすくなる」

それでなくてもジェンダーギャップ指数121位の日本では、「女性が働きながら子どもを産むことはハードルが高すぎる」と多くのミレニアル世代の女性たちが感じている。そのなかで、個人的にも卵子凍結を試みようという女性が増えている。

法整備が進まない卵子凍結の現状

しかし、日本では卵子凍結はまだ身近なものではなく、その歴史も浅い。日本生殖医学会がガイドラインを発表し、不妊治療中の女性や健康な未婚女性が、将来の妊娠・出産に備えて卵子を残しておくための「社会的適応」として未受精卵子の凍結を認めたのは、2013年のことだ。それまでは、未受精卵子の凍結保存については、がん治療などで卵巣機能が低下すると予想される場合の「医学的適応」に限り容認されていた。

その一方で日本産科婦人科学会は、依然として「健康な女性を対象とする卵子凍結保存は推奨しない」との見解を示しているため、現在も卵子凍結に関する法整備が進まず、あくまで個人が自己責任のもとに行うこととなっている。採卵料、凍結作業量などを含めた初期費用は約50万円、卵子1個につき凍結保存料は年間約1万円かかるといわれており、個人で負担するのは容易ではない。

そこで、自治体や企業が卵子凍結費用の一部を補助する動きが2015年にうまれた。不妊治療をする女性や未婚女性の卵子凍結保存をサポートするプリンセスバンク株式会社が立ち上がり、千葉県浦安市が順天堂大学浦安病院やプリンセスバンクと連携して自治体として初めて卵子凍結保存の助成を行った(3年間で30名を助成、2018年度で終了)ほか、民間企業として初めて株式会社サニーサイドアップが福利厚生として卵子凍結補助制度の導入を発表した。しかしそれ以降、卵子凍結の助成は日本では広まっていないのが現状だ。

国内初、卵子凍結を福利厚生パッケージで提供するStokk

こうした状況を受けて、卵子凍結・不妊治療を福利厚生パッケージとして企業に提供するサービス「Stokk」が2019年11月に誕生した。西氏は、友人の不妊治療をきっかけに、「将来、子どもが欲しいと思ったときにできない可能性もある」ことに危機感を持ち、ちょうどそのときに卵子凍結という選択肢を知った。

「自分で産み時をコントロールできる、とても合理的な選択肢であり、女性にとって大きな武器になる」と感じたという。そして、卵子凍結に関する情報へのアクセスのしづらさを解消し、女性に卵子凍結を身近に感じてもらうことで、女性のライフイベントにおける選択肢を増やしたいと思い、起業を決意した。

画像2

出典:Stokk

日本では、不妊治療や、産休や育休など出産前後の支援制度は整っている企業が多いが、妊娠前の女性のライフプランとキャリアプランの両立について真剣に向き合い、支援している企業はまだ少ない。

「人材不足が叫ばれる今、企業にとっては、優秀なミレニアル世代の人材をどう囲い込むかが鍵となる。米国で卵子凍結費用の一部を助成する福利厚生をいち早く導入したFacebook社では、制度導入後に女性社員のエンゲージメントが増加傾向にあるという調査結果を発表しており、海外では優秀な人材確保のために、検討すべき支援制度のひとつになっている」(西氏)。

画像3

Facebook社の従業員数の男女比の推移
出典:Statista

「Stokk」の具体的な支援内容としては、管理職や従業員向けに妊活や女性のヘルスケアや、不妊治療と仕事の両立に関する啓発セミナーを実施し、卵子凍結を希望する女性社員には情報提供や提携クリニックとのマッチング、アフターフォローを行うほか、卵子凍結を利用しない従業員にも、日頃の体調不良や不妊治療中の体調を相談できるオンライン窓口を提供する。

Stokkの導入費用は、企業の規模やニーズに合わせてカスタマイズしているため一律ではないが、「優秀な社員損失コストと、あらたに人材を採用・教育するコストを合わせた金額よりも安く導入できるように設定している」と西氏。 2020年2月10日には、スカイマーク株式会社がStokkの試験導入を発表し、現場でのニーズをヒアリングしながらベータ版の構築を進めていくという。

画像4

株式会社ステルラ
代表取締役 西 史織氏

女性の「妊孕力」の知識啓発を行うUbu

卵子凍結以前の問題として、女性の妊孕力に着目してサービスやプロダクトを提供するスタートアップも登場した。ウーマンウェルネスブランド「Ubu」だ。

Ubuを手がけるMEDERI株式会社 代表取締役 坂梨亜里咲氏は、高校生の頃から生理不順で婦人科に定期的に通っていたにもかかわらず、26歳の時に受けたブライダルチェックで早発閉経を発症していることがわかり、そのとき初めて自身の妊孕力の低さを知ったという。早発閉経では卵子凍結という選択肢がとれないことから「一人でも多くの女性が自身の妊孕力を早く知り、後悔のない人生を歩めるようにサポートしたい」という思いで、Ubuを立ち上げた。

第一弾として、将来妊娠を望む女性に向けて、妊娠期に必要なラクトフェリンや葉酸などの栄養素を厳選したサプリメント「Ubu Supplement」の先行予約販売をCAMPFIREでスタートしたところ、公開後24時間で目標金額を達成した。今後は、膣内フローラを自宅で採取して自身の妊孕力に興味を持つきっかけを与えるチェックキットの販売なども予定している。

画像5

Ubu Supplement
提供:MEDERI株式会社

米国では家族計画を支援するスタートアップが急増

米国では、ミレニアル世代の68%が、家族計画支援に関する福利厚生制度がある会社に転職したいという調査結果もあり、企業には、妊娠前から産後までトータルで社員のワークライフを支援する姿勢が求められている。2019年にIFEBP(International Foundation of Employee Benefit Plans)に所属する677社を対象に行った調査結果によると、500人以上の社員をもつ企業の31%が、卵子凍結を含む生殖関連の福利厚生を提供しており、2016年から7%も上昇していたことがわかった。

こうした背景には、2019年10月にNASDAQに上場したProgynyをはじめとし、Carrot FertilityCelmatixFuture Familyなど、家族計画支援の福利厚生サービスを提供するスタートアップの台頭が大きく影響している。直近では、20の専門分野にわたる1,700社の事業者と連携し、母乳の輸送、ドゥーラと呼ばれる出産に関するアドバイスや支援を行うスタッフの派遣、卵子凍結、不妊治療、代理母、養子縁組などのサービスを提供する「Maven」が、ナタリー・ポートマンなどの著名人や機関投資家から50億円を追加調達したことを発表し、話題となった。

画像6

出典:Maven

日本でも、少子化対策や女性活躍の基礎づくりをするならば、リプロダクティブ・ヘルスの考え方が不可欠だ。卵子凍結のみならず、女性の選択肢を広げ、自分らしく生きるための支援を包括的に行う必要がある。この恩恵は、女性だけではなくパートナーや家族の働きやすさ、生きやすさにもつながっていく。この観点にもとづいた企業の福利厚生制度の充実は、企業が人材不足やダイバーシティ問題を改善し、優秀な社員を獲得して定着させるために、今後、欠かすことのできない施策となるはずだ。

Text: 小野 梨奈(Lina Ono)
Top image: New Africa via shutterstock

ありがとうございます!メルマガで隔週で更新情報配信中。ぜひご登録を!
20
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp