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フェムテックが切り込む「女性ホルモンの変化」、QOLの劇的向上への期待

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2020年も3月8日の国際女性デーにちなみ、
フェムテックや女性エンパワメントの
トレンドをBuzzFeedとともに積極的に紹介します
フェムテック過去記事はこちら)

女性はこころと体、またその一生を女性ホルモンに振り回されるといっても過言ではない。思春期に始まって、妊娠と出産、後には更年期と各ライフステージで、また毎月の月経でも頭痛や下腹部痛などの形でそれを実感させられる。2025年までに500億ドル(約5兆4,000万円)の規模が見込まれるフェムテック業界では、これまで妊娠や不妊のテーマで賑わっていたが、米国を中心に女性ホルモンの動きに特化したサービスが台頭してきている。その状況をレポートする。

”She is hormonal” や “It’s the hormones talking” (意訳:ホルモンのせいの言動だ)といった、冗談半分で使われる表現には、女性のムードスウィング(気分の変化)や感情的な様子を、ホルモンの影響だと軽くあしらうニュアンスがある。2015年に実施された調査では、回答者の54%が「職場における女性の態度は、ホルモンによって支配されている」と答えた。

ところが、張本人の女性ですら、自分の体で今ホルモンがどう働き、影響しているのかを把握できていないことが多い。単純に、それを知るための手頃かつ手軽な手段がなかったからだ。女性ホルモンの状態をオンライン診療や生体データから把握し、妊娠、避妊、更年期の課題解決に役立てる海外のサービスの現状を俯瞰しつつ紹介する。

避妊ピルのサブスクサービスが登場

北米女性(15〜49歳)の約65%が、何らかの避妊法に頼っており、一般的に、彼女たちは40歳までに3種類以上の避妊法を試すといわれる。避妊法の上位は、卵管をしばる避妊手術が18.6%、避妊ピルが12.6%、長期間作用する子宮内避妊器具(IUD)などの可逆的避妊法(LARC)が10.3%を占める。

小さな器具を子宮内に装着するIUDの避妊率は99%以上で、種類によって3〜12年効果が持続する。ただし病院に通う必要があり、装着時に(人によっては以降も)出血や痛みを伴うため好んでは選ばれない傾向にある。

避妊ピルの避妊率は同じく99%だが、あくまで毎日同じ時間にピルを服用することが前提だ。飲み忘れなど習慣を徹底できなかった場合もあるため、ピル服用者の100人に9人が妊娠しているが、米国では保険によって無料で入手できることもあって多くの女性に選ばれている。

避妊ピルの定期購入サービスとして、2019年1月に、シリーズBで5,100万ドル(約55億7,000万円)を調達したのが「Pill Club」。一言で避妊ピルと言っても薬によって副作用が異なり相性もあるため、避妊ピルだけで150種類、そのほかに腟内リングと避妊パッチを取り揃える。保険が効けば避妊ピルは無料で、送料も無料で入手することができる。

保険に非加入の場合、ナース・プラクティショナー(診療看護師)による1回15ドル(約1,600円)のカウンセリングで処方箋を出してもらえる。産婦人科の診断料35〜250ドル(約3,800〜2万7,300円)に比べて破格の値段だ。類似サービスに、「Nurx」や「hers」がある。

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出典:Pill Club

新たな避妊法を編み出そうとする試みもある。ブリガム・アンド・ウィメンズ病院とマサチューセッツ工科大学(MIT)が開発する、一度の服用で1ヶ月間効果が持続する避妊ピルがその一例だ。現在は動物実験の段階で、2019年にはビル&メリンダ・ゲイツ財団から1,300万ドル(約14億2,000万円)の資金援助を受け、臨床試験に向けて動いている。

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6つのアームを持った星型デバイス
カプセル内に6つのアームが
折り畳まれており、
胃の中で溶けるとアームが広がり、
胃の中に留まって
薬効を発揮し続ける仕組み
出典:MIT NEWS

ちなみに新しい避妊法については、非ホルモン性の手法も出てきている。

2014年に設立され、上記の避妊ピルと同じくビル&メリンダ・ゲイツ財団から資金援助を受けるオレゴン恒久的避妊法研究センターは、手術を伴わない非ホルモン性の避妊法の開発に挑む。下肢静脈瘤治療に用いられるポリドカノールフォーム(米国食品医薬品局認可)を使うことで、動物実験では高い確率で避妊効果が確認された。主に途上国での使用を視野に入れている。

上場企業のEvofem Biosciencesは、2020年に市販化を予定する「Amphora」という非ホルモン性の避妊ジェルを開発。また、カリフォルニア大学バークレー校出身の研究者らが立ち上げた「YourChoice Therapeutics」は、ユニセックスの非ホルモン性避妊薬の実用化に取り組む。

自宅用女性ホルモン検査が妊娠・不妊をサポート

従来の不妊検査は、避妊ピルの服用を数ヶ月間休み、1ヶ月のうち特定の日に産婦人科に出向くなど計画性を伴う面倒なものだった。手軽かつ手頃な自宅用ホルモン検査の登場に、ミレニアム世代を中心に多くの女性が関心を示している。

Modern Fertility」や「Lilia」、「Egg-Q」、「Let's Get Checked」は、いずれも妊娠や不妊にまつわる自宅用ホルモン検査キットである。Modern Fertilityは、指先から採血した血液で、卵巣予備能を知る指標のAMH(アンチミューラリアンホルモン)など9種類のホルモンを調べ、検査結果と生活習慣などをかんがみて、妊娠しやすさを示す”妊娠スコア”が導き出される。検査キットは、159ドル(約1万7,000円)と比較的リーズナブルだ。

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提供:Modern Fertility

これまで一般的だった基礎体温ではなく、ホルモン値から妊娠力を測るのが「Mira」だ。専用の使い捨てスティックを手のひらサイズのトラッカーに挿入することで、妊娠に必要な黄体形成ホルモン値を朝の尿から調べる。連動アプリでは、独自アルゴリズムが妊娠しやすさを1〜10の数値で明示し、使い続けることで妊娠しやすい時期が見えてくる。

ベルリン発の「Inne」もまた、黄体ホルモンのレベルを検査するアプリ連動の自宅用デバイスだ。Inneは尿に代わり唾液で検査する。所要時間はわずか10分ほどで、決まった3時間枠(毎朝、毎晩など)で検査を繰り返してデータを溜めることで、ホルモン値マップができあがっていく。現在予約受付中で、2020年中に出荷予定だ。

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出典:Inne

孤独な更年期を遠隔治療で過去のものに

女性ホルモンの分泌が、再生産年齢(出産可能な年齢。一般に15~49歳とされる)時のわずか1%にまで低下することで起こる更年期障害。症状には、ほてりや寝汗、腟乾燥、気分変動、体重増加、不眠症、記憶障害など200種類以上あるとされる。また更年期障害は、心血管疾患や認知症などのリスクを高めることもわかっている。

北米女性が更年期を迎えるのは平均51歳で、症状は一般的に4〜5年ほど続く。約75%が何らかの症状に見舞われるにもかかわらず、42%はかかりつけ医に一度も相談しない。また治療を求める4人に3人は、中高年のヘルスケアに強い専門家不足による適切なサポートを受けられずにいる。

2025年までに、世界人口の12%にあたる10億人の女性が更年期を経験するという。世界中で高齢化が進むにつれて、たとえば英国では「企業は、妊娠や出産と同様に更年期をフォローするべきだ」とする専門家による議論もはじまっている。

これまでフェムテック市場の60%は生殖・授乳・妊娠をテーマにしてきたが、女性の更年期(メノポーズ)ケアに好機を見出す企業が出てきている。

北米に4,300万人いると推定される45〜64歳の女性を主なターゲットにした遠隔医療サービス「Rory」では、ほてりにはパロキセチンや抗欝剤ベンラファキシン、膣ケアにはエストロゲン含有クリーム剤、他にもまつ毛育毛剤などを処方する。コンサルテーションは15ドル〜、処方薬品は月額20〜60ドル(約2,200〜6,500円)ほどだ。

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出典:Rory

Curie MD」もまた、女性の更年期に特化した遠隔医療サービス。認定専門医による20分間39ドル(約4,300円)のビデオコンサルが受けられる。医師が必要と判断すれば、低下する女性ホルモンを補うために錠剤や膣ケアのクリーム(アメリカ食品医薬品局認可取得)などが処方され、自宅に届く。

Jango.Bio」は、従来のホルモン補充療法ではなく、幹細胞を使用することで生殖ホルモンのバランスを正す療法の確立に取り組む。「KaNDy Therapeutics」は、更年期症状を和らげる非ホルモン剤「NT-814」を開発。約200人の女性を対象とした12週間に及ぶ臨床試験では、ほてりの回数を平均8回減らすことに成功している。

女性の心身の変化を支える包括的サービス

症状が出てから対処するのではなく、日常生活レベルで女性ホルモンと向き合うための包括的なサービスもある。

月経時に痛みなどのトラブルが伴うことは、ホルモンバランスが崩れている証拠。アプリ「MyFlo」は、月経の症状を参考に、食生活改善など自然な方法でホルモンバランスを整える。「排卵時はエストロゲンの影響で脳の言語機能が高まるため、交渉ごとに向く」など、女性ホルモンの活かし方を提案することで女性のウェルビーイングを後押しする。類似サービスには「Moody Month」がある。

2016年創業の「Binto」は、月経から妊娠、更年期に応じてパーソナライズ化された独自開発のサプリメントを提供する。ウェブ問診に回答すると、日ごとに個別梱包されたサプリメントが月額20ドル(約2,200円)から届く。また、サプリと妊婦用ビタミン剤などがセットになって届く妊娠用定期購入ボックス(45ドル/約4,900円)などもあり、女性の各ライフステージをサポートする。

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出典:Binto

副作用があるとされる合成化学物質を使わない、ホルモンバランスと月経不順を整えるための自然食品「Food Period」の原材料は、フラックスシードやパンプキンシードなど6〜8種のオーガニック種子だ。排卵前の卵胞期と、排卵後の黄体期の2種類ある定期購入パックは、1ヶ月分各75ドル(約8,200円)。ユーザーには、過度のトレーニングで月経不順に悩むアスリートなどもいるという。

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提供:Food Period

機能性医療(薬の力に頼らず、生活習慣の改善による治療を目指す)で、女性のウェルビーイングを全面的に支える会員制「Parsley Health」。従来、薬の処方で終わる平均13〜16分の診察を、機能性医療の専門医師が50分かけて丁寧に行うことでパーソナライズされた治療を施す。現在、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスにクリニックを構え、月額会員費用は150ドル(約1万6,000円)だ。

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提供:Parsley Health

女性ホルモンを知ることは、女性特有のこころと体を知ることにほかならない。十分なヘルスデータが集まり、教育やサポートが充実していけば、女性ホルモンに“振り回される感”は過去のものになるかもしれない。

Text:三橋ゆか里(Yukari Mitsuhashi)
Top Image:  Africa Studio via shutterstock

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