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韓国オンライン接客は肌診断やAIレコメンドを積極導入、各ブランドが方向性を模索

◆ English version: South Korean Beauty brands move beauty counseling services online as pandemic hinders face-to-face sales
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新型コロナウイルス感染症がいまだ収束の気配をみせないなか、世界各国と同様に、韓国の美容業界でもオンラインによる非接触カウンセリング&診断の重要性が注目されている。これまで訪問販売が強かった韓国で起きている変化は、まずはECに肌分析などのツールを導入しながら既存の美容部員にオンライントレーニングを行っている。同市場のオンラインカウンセリングの全体像を分析する。

直接対面販売が難しいなかで肌診断導入を進める大手

百貨店や免税店などのオフラインショップやEC販売網もさることながら、アモーレパシフィックLG生活健康など韓国大手化粧品メーカーの売上を支えていたひとつが、カウンセラー(美容部員)による「訪問販売」だった。

コロナ以前の2019年の段階では、アモーレパシフィックの訪問販売カウンセラーは約3万人おり、その顧客数はおよそ250万人にのぼっていた。訪問カウンセラーによる売上が年間約1,700億円(2016年)を記録したこともある。しかし、新型コロナウイルスの到来とともに、訪問カウンセリングおよび販売は原則禁止となる。対面接客のノウハウを教えるトレーニングの多くは中断され、社内カウンセリングアプリやオンラインシステムを使いこなすための教育が、集中的に行われるように変わった。

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アモーレパシフィックの
カウンセラー募集ページ
出典: アモーレパシフィック公式サイト

一方、約2万人の訪問カウンセラーを擁するLG生活健康も、オフライン教育の割合を減らす方向に舵を切り、かわりにスマートフォンやSNSを使ったオンライントレーニングが積極的に奨励されている。韓国ではこれら大手2社以外にも訪問販売を売上の柱としていたメーカーやブランドが少なくない。リアルに人と接触できない市況が続くなか、カウンセリングをオフラインからオンラインにシフトしていく流れが加速しているのは明らかだ。

韓国において、非接触のオンラインカウンセリングツールとしてトレンドになりつつあるのは、AIを使った「肌診断システム」や関連ソリューションだ。その多くはユーザーがパーソナルデバイスや店頭備えつけの端末でセルフ診断を行い、アドバイスから製品レコメンドまでアプリのみで完結するタイプだ。

サムソン電子のスピンオフ企業であるlululabは、AI肌診断システム開発の世界的なトップランナーのひとつとしてすでに有名だが、最近では後発の韓国ビューティスタートアップ・LILLYCOVERが「Muilli」というプロダクトをCES2021にも出展して話題を集めている。

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Muilli
出典:LILLYCOVER公式サイト

Muilliはユーザーの皮膚データを取得・解析して、リアルタイムでアドバイスを表示するオンラインカウンセリングソリューションで、専用デバイスおよびスマートフォンアプリで構成されている。質問事項に回答してデバイスのカメラ部分で肌を撮影すると、敏感度、しわ、油・水分、毛穴などの状態をチェックし、40種類の肌質タイプのどれに該当するかを診断。それにもとづき、スキンケアに関するアドバイスや、LILLYCOVERが自社開発したスキンケア商品の提案を行う。ユニークなのは、デバイスが情報取得や分析のみならず、フェイシャルマッサージにも使える点だ。また取得されたデータはログとして残り、LILLYCOVER側とユーザーの双方が肌の状態の変化を把握・追跡できる。

現時点での情報を総合すると、lululabのプロダクトは外部ブランドの商品を推薦・販売するプラットフォームとして、Muilliは自社商品を販売するためのツールとして、それぞれビジネスモデルが構築されている。LILLYCOVERは今後、オフライン店舗を設け、店頭で分析後ただちに、各自にパーソナライズされた商品をその場で製造して販売するサービスも検討中だとしている。実現すれば、肌診断とスマートファクトリー的な要素を組み合わせた、新たなビジネスモデルの先駆けとなりそうだ。

各社が模索するオンラインカウンセリングの“新常識”

韓国では、肌診断やカウンセリングシステム専門のスタートアップやサービスが登場する一方で、各ブランドが独自に新たなタイプのオンラインカウンセリングサービスを始めるケースもみられる。

2020年7月、アモーレパシフィックは自社のECサイトであるAPMALLに、「スキンファインダー」というモバイル専用の肌診断機能を装備した。こちらは、約20項目の質問に対する回答から顧客の肌タイプと悩みを解析する、問診タイプのオンラインカウンセリングシステムだ。

スキンファインダーは、独自の計算式や解析方法を用いて問診結果を算出するという触れ込みで特許出願もおえている。問診後、悩みにひもづいたティップスや情報コンテンツ、関連商品が推薦される仕組みである。リリースから1ヵ月経過時点の利用者数は約9,000人とされる。また、アモーレパシフィック傘下のブランドIOPE(アイオペ)も公式サイト上でオンラインカウンセリングを提供しており、こちらも問診タイプのサービスとなっている。

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アモーレパシフィック
「スキンファインダー」
出典: アモーレパシフィック公式サイト

ブランド独自のオンラインカウンセリングサービスとしては、ダーマコスメブランド「Dr. G」を運営するコウンセサンコスメティックも注目されている。同社は2016年にリリースした「My Skin Mentor」というオンラインカウンセリングサービスを、2021年にはさらにグレードアップする計画だ。My Skin Mentorにはすでに約33万人の肌ビックデータが集積しており、今後はそれらをベースにAIカウンセリングサービスの拡充をしていくとする。

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コウンセサンコスメティックの
「Mentor G」
出典:Dr.G公式サイト

コウンセサンコスメティクスは2020年9月に、AIチャットボットサービス「Mentor G」もリリースしている。公式サイトのキャラクターアイコンをクリックすると起動する仕組みで、肌の悩み相談のみならず、バウマンスキンタイプテスト、ライフスタイル別の商品キュレーション、スキンケア提案、商品問い合わせ・注文・配送まで、アプリのチャットを通して一貫して行える機能となっている。なお、バウマンスキンタイプテストとは、米国の皮膚科医であるレスリー・バウマン博士が提唱した肌タイプ診断で、皮脂分泌、敏感度、色素、しわの要素を各4つに分類し、合計16タイプのなかから自身の肌がどの類型なのかを知ることができるテストだ。

2020年12月末には、MISSHA、nuncなどのブランドを運営するABLE C&Cが、ビューティカウンセリングコマースという新しいコンセプトで「ビューティトーク」というアプリケーションサービスのβ版をリリースした。これはAIではなく、店頭スタッフと1対1でチャットができる仕組みで、自身の肌悩みや商品に関する質問など自由に相談できる。もちろん、商品が気に入ればアプリからそのまま購入も可能だ。

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ビューティトーク・チャットアプリ
出典: ABLE C&C 公式サイト

移行期にある韓国オンラインカウンセリング

このように韓国では、たとえばHeroなどのように多くのブランドが共通して使用するオンラインカウンセリングや販売プラットフォームはまだ浸透しておらず、 lululabなどがその地位を狙っている、もしくは各ブランドやメーカーが独自のアイディアをもとに施策にチャレンジしている段階といえる。またカウンセリングの方法としては、AI完結型の肌診断および問診と、リアルな人間とのコミュニケーションを仲介するツールを用いて現場スタッフのリソース活用という、2つの方向に分かれ始めている。

専用デバイスなしに、アプリのみで肌診断やオンラインカウンセリングを行うサービスは、韓国ではまだそれほど市民権を得ていない。2020年に登場した肌状態の記録&管理サービスには「PLINIC APP」などがあるが、いずれも専用端末などとセットになっている。肌診断&カウンセリング×スマートフォンという領域にプレイヤーがいないわけではないが、多くのブランドが利用している目立ったサービスというのは、今のところ存在しないというのが実情のようだ。

例外としては、LG生活健康が買収したAVONが、YouCamで知られるPerfect Corp.のサービスを導入した。AVONのWebサイト上には、ユーザーの肌トーンに合った色味のメイクアイテムをレコメンドするカウンセリング機能が実装されている。この先、数年以内に、国内で同領域のベンチャーが登場する、もしくは海外サービスが浸透していく過渡期にあると考えられる。

冒頭で触れたように、韓国では「自分をよくわかってくれている信頼できる人から買う」という直接販売の文化が広く浸透してきた。そのため、コロナ禍による影響は大企業の存続を揺るがすほどのダメージをもたらしている。韓国の化粧品のEC化率は20.1%とされ、オンラインでの購入が着実に増えてきているなか、コロナが沈静化したとしても、以前のままにコネクションに頼るダイレクトな対面販売を推進するべきなのかという議論も、業界内では起きてきているようだ。その穴を埋めるほどのオンラインカウンセリング、そしてそれを支える技術についても、今後、新たな競争が生まれる領域となりそうだ。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: Pond Saksit via Shutterstock

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