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2020年の韓国コスメ、激戦から生まれる注目トレンド&ブランドをGlowPickに聞く

◆ English version: Top picks by GlowPick for 2020: South Korean brands and trends to watch out for
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2020年、韓国ブランドはどう動いていくのか。韓国の人気クチコミアプリ「GlowPick」を運営するGlowdayz Inc. 最高経営責任者コン・ジュンシク(Kong Junesik氏へのインタビューを通じて、そのトレンドと、注目ブランドについて俯瞰する。

韓国では2019年は、中小の新興ブランドの活躍が目立った。大きな理由のひとつに、オリーブヤングなどのH&Bストアや、シコールといった化粧品専門店がここ数年、中小新興ブランドの育成と販促を積極的に展開している点があげられる。こうした韓国のトレンドを俯瞰的にウォッチしてきているGlowdayz Inc.のコン氏によれば、2020年は「多くのブランドがしのぎを削る状況」だという。

Glowdayz Inc. が見つめてきた韓国化粧品市場

Glowdayz Inc.は、企業やブランドの大小に関係なく、化粧品など美容アイテムの公平な評価を下す仕組みをつくりたいという、コン代表らのモチベーションによって、2013年に設立された企業だ。


コン氏は新聞社に勤めていた経験から、広告宣伝やメディアの力で人気商品が生み出される構造をよく理解していた。そこで、バイアスに左右されない正直な意見や感想を取り入れるべく、レビューの星の数を重視したアルゴリズムを用いて、ユーザーにリアルタイムで情報を提供するアプリGlowPickを開発した。現在、そのダウンロード数は330万以上にのぼっている。

これらのレビューを同社では定期的に分析しているが、コン氏はまず、現在の韓国化粧品市場について、数多くのブランドが誕生して互いにしのぎを削る状況にあるとみている。

「韓国では力のあるOEMメーカーが揃い、アイディアと数百万円規模の資金があればすぐにでも化粧品ブランドを立ち上げられる状況にある。実際に、脱サラして個人がブランドを立ち上げるパターンも増えている。一方で、簡単にブランドがつくれるため、その絶対数も著しく増加傾向にある。現在、韓国国内には約3万ブランドがひしめく状況だとの分析もある」(コン氏)。

そのような激しい競争のなかで、各ブランドは成分やコンセプトなどを工夫し、新しい流行を生み出すためにあの手この手で奮闘しているというのがコン氏の率直な印象であり、それこそが韓国市場をみるうえで有益な観点になるという。

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ここ数年で外資に買収された
韓国ブランドの3CE や
ドクタージャルト(著者撮影)

とくに韓国の消費者は化粧品成分に対して関心が高いという特徴があり、少し前までなら競争力となり得た成分も、しばらくすると優位性を失ってしまう。ブランドが乱立しているうえに、成分面におけるクオリティの底上げが行われていくことで、各ブランドが差別化を図ろうとした結果、ありとあらゆるタイプの商品が市場に溢れ返っているのが現状なのだ。

コン氏は「昨今の状況は、新しい突出した製品が生まれるというよりも、厳しい競争のなか、各ブランドが生き残りをかけて知恵を絞り、試行錯誤を繰り返している。それが韓国市場の実態だ」と説明する。

たとえば現在、韓国市場では乳酸菌(プロバイオティクスなど)を配合したスキンケア商品が増加しているという。春先くらいには、さらに多くのラインナップが登場してくるだろうとGlowPickでは予想している。とはいえ、乳酸菌がトレンドとなり、ゆくゆくはひとつのカテゴリーにまで成長するか否かは現状では不透明であるとする。

同様に、肌に優しいとされる成分を含んだ商品が数多く登場しているが、「過去にシカ(肌再生)クリームなどは、小さなブームから業界のトレンドとなり、そしてカテゴリーとして定着した。そのようなヒット成分が今年生まれるかどうかは本当に判断が難しい」として、コン氏はいまの状況ではどれが定着していくかの予測は困難であると明かす。

韓国でもヴィーガンコスメがトレンドになるか

コンセプトとしては、2020年はより「ヴィーガン」や「オーガニック」を標榜したブランドが増えてくるとコン氏は考えている。ヴィーガンコスメはグローバル市場で注目されるトレンドだが、韓国国内でも新たな需要を取り込もうと競争がにわかにはじまっている。

具体的には「ヴィーガンを名乗るブランドが増えるとともに、実際にヴィーガンの認証を受けるためのブランド側の努力も顕在化している。こうした認証には韓国のほか、中国、フランスなど各国の機関が発行しているものがあるが、とくに基準が厳しいのは英国だとされる。そこで、しっかりとブランド構築を進めようとするブランドは、英国の基準に合致する生産体制づくりに動いている。2020年は、マーケティングレベルでヴィーガンを強調するブランドと、国際的により信頼度の高い認証取得に動き、哲学を持って製品を開発するブランドが分かれていく分岐点になるのではないか」とコン氏は指摘する。

韓国のヴィーガンコスメのトレンドには、一方で課題もある。まずひとつが、安全性の問題だ。ヴィーガンコスメは動物実験を行わないクルエルティフリーをひとつの価値とするため、人間の身体にとって安全かどうかを判定する作業に時間がかかる。ふたつめは製品の有効期限だ。一般的に、市販されている非ヴィーガン製品には約3年の使用可能期間があるが、植物由来成分のみで構成されるヴィーガンはおよそ1年、長くても1年半というタイムリミットがある。そのため、在庫リスクが従来に比べ高く、小売店など流通チャネル側に受け入れてもらうハードルも高くなる。

「使用可能な成分が限られるヴィーガンは、使用感や香りなどの面で既存の製品を越えられていないとの現状もある。トレンド化への期待は大きいが、クリアしなければならない課題は多いだろう。とはいえ、MEMEBOXの元スタッフが創業したMelixirのように、シコールで展開が決まった新興ブランドもある。韓国では化粧品だけでなく、食生活などの面でもヴィーガンを選択するライフスタイルが注目を集めてきており、美容業界においても波が来るかに注目している」とコン氏は語る。

競合ひしめくなかで、2020年注目のブランドは?

成分、コンセプトのトレンドに続き、気になるのはどのような中小新興ブランドが成功を収めるかだ。コン氏は注目するブランドとして、「hince」と「FEMMUE」の名を挙げる。コン氏は両ブランドにはマーケティング面での共通性があると指摘する。

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出典: FEMMUEホームページ

「最も大きい共通点として、両ブランドは自らのブランドイメージをしっかりと浸透させることをマーケティングの起点としている」とコン氏。前述したように韓国で中小ブランドの競争が過熱しているなかで「ブランドの多くは即座に売り上げにつなげるための性急なマーケティングを展開しがちで、ブランド価値がすぐに棄損してしまうサイクルに陥りやすい」が、その点、両ブランドは異なる。その洗練されたブランドイメージで、消費者からも大きな反響や人気を得ているのだ。

韓国では中小ブランドをサポートし、販売を加速させてくれる流通チャネルのひとつに、H&Bストアがあるのは前述したとおりだ。その最大手がオリーブヤングで「同じ業界の2位から10位まで合わせた金額よりも同社の売り上げのほうが高い」と韓国の美容業界関係者はいう。

そのため、同社の流通網にのると販売額は増えるのだが、ストアとして独占的な立場にあるため、ブランド側は価格の値引きを迫られる。結果、ブランドイメージが棄損してしまうという構図があることも否めない。しかし、hinceなどコン氏が注目するブランドは、その構造を理解し、自社製品を安易にその流通網にのせることをしない。あわせて、独創的な世界観や価値観を磨いて発信することに注力して、それが消費者からの支持につながっているという。

こうした新しいタイプのブランドは、「当初からK-Beautyという括りの中で語られることを避けたり、グローバル市場で通用するようなブランドコンセプトのブラッシュアップに力を入れている。そうなると、時間もかかり、投資をしっかり行っていく必要性もある。そこまでできるブランドは数あるなかでも限られてくるだろう」(コン氏)。韓国ブランドという認識や枠組みを超えたところで勝負できる新たなブランドの登場に期待がかかる。

コン氏はそのほかにも、「Dear Dahlia」「ROMAND」「TIRTIR」などを、さらなる成長の可能性を秘めたブランドとして挙げる。

「TIRTIRは、もともとインフルエンサーが個人で始めたブランドだが、現在は投資も受け、企業としての基礎を固めた。日本にもファンが多く、中国にも進出している。今後も伸びていくと思う。韓国国内では、中小新興ブランドの数が大きく増えたため、アモーレパシフィックなど大手メーカー、ブランドも危機感を持っている。そんな“戦場”でどのようなブランドや商品が生き残るか。消費者の声に耳を傾けながら、注視していきたい」とコン氏は話す。

中小ブランドが外資系大手メーカーに巨額で買収される事例が続くなど、はためからみると“バブル”のようにも映る韓国の美容業界だが、その実、国内では今日ひとつのブランドが生まれ、明日にはひとつのブランドが消えるという苛烈な競争が繰り広げられている。ポジティブに捉えるならば、常に新しいものが出てくる新陳代謝に優れているともいえるだろう。競争を勝ち抜き、新たなグローバルサクセスストーリーを手にすると目されるブランドのひとつとして、hinceについての詳細はまた後日レポートする予定だ。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)

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