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LUSHなど美容ブランドも続々参戦、ポッドキャスト人気は日本にもくるのか?

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音声番組を配信するポッドキャストが欧米で静かなブームだ。マスメディアが続々と独自のポッドキャストを開設し、女性向けメディアも新たな広告手段として注目する。そして、美容ブランドもブランディングとして、あるいはニッチな消費者層にダイレクトにアプローチするマーケティングツールとしての活用をはじめている。

スマートフォンやタブレット、AIスピーカーなどの登場により、世の中の情報入手デバイスは過去10年ほどで大きく多様化した。その流れに沿って、デバイス上で閲覧・視聴されるメディアも、デバイスや利用形態に合わせた進化を遂げているが、なかでも今、海外で注目されているのはポッドキャストだ。

日本では「ポッドキャストが流行っている」と言われてもピンとこないかもしれない。だが、海外では大手メディアが既存コンテンツをポッドキャスト化したり、著名ブランドがオリジナル番組を発表したりするなど、定番メディアのひとつに成長しつつある。現在ポッドキャストが実際どのように利用されていて、どんなコンテンツがあるのか、以下にまとめていきたい。

美容がテーマの人気番組も次々と登場

美容をテーマにしたポッドキャストとしていろいろなものが立ち上がっている。たとえばFat Mascaraは、ハーパースバザーやマリクレールなどの美容エディターによる人気ポッドキャストだ。週1回更新で、セレブリティやメイクアップアーティスト、人気美容外科医などへのインタビューや化粧品レビューで構成されている。登録者数などは公開されていないが、これまでにミランダ・カーやボビイ・ブラウン、クリスチャン・ルブタンなどの著名人がゲスト出演しており、業界内でも評価されていることがうかがえる。

また「breaking beauty」も、ベテラン美容エディターのカーレーン・ヒギンズ(Carlene Higgins)とジル・ダン(Jill Dunn)がホストのポッドキャストだ。ベストセラーコスメの開発者や著名メイクアップアーティストへのインタビューが中心となっていて、サクセスストーリーの裏側に光を当てている。ほかにも、英国の美容エディターがホストを務める「Emma Guns Show」、ヘアメイクアーティストによる「Full Coverage」、美容化学の専門家がリスナーの質問に答えるBeauty Brainsなど、ビューティの分野でも、さまざまな角度から番組を発信する人気ポッドキャストが生まれている。

出典:Full Coverage

これらのポッドキャストを聞いていると、いろいろな形で広告が入っていることに気づく。たとえば「今回のスポンサーはXXです」といった形でブランド名を出したり、ホストが生CM的に商品をおすすめしたり、ディスカウントコードを提供したりという具合だ。ポッドキャストの前後などに、ラジオCM的な決まった形の音源を入れることも可能だ。MidrollPodGridなど、ポッドキャストを束ねる広告プラットフォームも出てきている。企業にとっては、広告媒体としてポッドキャストを試してみる環境が整いつつある。

出典:Midroll

ブランド自身でもポッドキャスト番組を制作

こうした流れを受けて、美容ブランドもポッドキャストに積極的に取り組みはじめている。たとえばセフォラは、ビューティポッドキャスト番組「Glowing Up」のライブ収録をニューヨークやシカゴの店舗内で開催するほか、口紅のリリースに合わせてポッドキャスト「#LIPSTORIES」のスポンサーになるなどしている。

セフォラのシカゴでのライブ収録の様子
出典:セフォラ公式サイト 

百貨店のSaks Fifth Avenueも、ビューティフロアでポッドキャスト「Where Brains Meet Beauty」のライブ収録イベントを開催した。同社のビューティ担当幹部はBusiness of Fashionに対し、「ポッドキャストはより長く、親密なストーリーを伝えられる」と語っている。

外部メディアに頼らず、自社独自のコンテンツに力を入れているのはLUSHだ。「LUSH LIFE」「LUSH KITCHEN」など動画を含めた計6チャンネルを「LUSH PLAYER」と位置付け、その一環でポッドキャスト番組も公開している。そこでは商品の話題は最小限にとどめられ、サステナブルへの取り組みや開発者の考え方など、ブランドとしてのLUSHを伝えるものになっている。

出典:LUSH公式サイトより

また英ロレアルも、英国のThe Prince's Trustというチャリティ団体と共同で独自のポッドキャストシリーズを制作し、女優のヘレン・ミレンなどとの啓発的な内容のインタビューを公開している。また2017年から2018年にかけては、ロレアル内の技術や戦略、人材育成といった舞台裏のストーリーを「L'Oreal Inside Out」としてポッドキャスト化しており、こちらもブランディングを目的としているようだ。

米国では32%が月1回以上利用

このように熱い視線を浴びるポッドキャストだが、実際にどの程度利用されているのだろうか。Edison Researchの調査によれば、米国ではポッドキャスト利用者は2014年以降増加傾向にあり、2019年には32%の人が月に1回以上、22%の人が週1回以上利用しているとされる。週1回以上利用する人の場合、週平均7件のポッドキャストを聞いており、マジョリティではないものの、活発な利用状況がうかがえる。

Musicoomphによれば、番組数は全世界で70万以上にのぼり、人気のあるカテゴリーとしては、ニュースやビジネス関連の話題のほか、社会・文化、コメディ、健康などである。米国の大手メディアでは自社の持つコンテンツを何らかの形でポッドキャスト化するのが一般化しており、たとえばCNNやFOX、英国のBBCといった放送局では20以上の番組を持っているほか、ニューヨークタイムズ紙やワシントンポスト紙のような文字ベースのメディアでも、ニュースのサマリーや人気連載を音声化して複数の番組を運営している。

日本でも米国ほどではないが、ユーザー層は広がりつつあるようだ。Reuters Instituteとオックスフォード大学が出したDigital News Reportによれば、ポッドキャストを月1回以上利用する人は日本のネットユーザーの23%に達しているという。2017年の米国でのポッドキャスト利用率が24%だったことを考えると、日本も数年後には現在の米国のようにポッドキャストが広がっていく可能性がある。

スマートスピーカーやワイヤレスイヤホンが後押し

では、米国でのポッドキャストの成長を後押しした要因は何だったのだろうか。いくつか考えられるが、ひとつはAIスピーカーの急速な普及があげられる。米国では2018年時点で41%の世帯がAIスピーカーを所有しており、この数字は伸び続けている。カナダで行われた調査では、AIスピーカーはポッドキャストを聞くデバイスとして、スマートフォンに次いで2番目に利用されていた。

またデバイスという意味では、AppleのAirPodsのような小型のワイヤレスイヤホンの登場で、移動中でも家の中でもシームレスに何かを聞き続けることが可能になったのも、ポッドキャストにとっては追い風といえる。ニューヨークタイムズでも、ミレニアル世代の記者がワイヤレスヘッドホンやポータブルスピーカーを駆使して生活全般のシーンにポッドキャストを取り入れていることを伝えている。

さらに音楽ストリーミングサービスのSpotifyやPandoraでもポッドキャストが聞けるようになっているので、それぞれのユーザーである延べ1.5億人ほどがポッドキャストに簡単にアクセスできる状態にある。前出のEdison Researchの調査によれば、12〜24歳のSpotifyユーザーの間では、53%が月1回以上ポッドキャストを聞いているという。

“ながら聞き”を可能にするポッドキャスト

なぜそこまでポッドキャストが人気なのだろうか。前出のニューヨークタイムズの記事では、なんといっても「ながら聞き」ができることをあげている。移動中や家事作業中など、目や手はふさがっているが耳は空いている状態で、それでも何らかの情報を取り入れたい場合には、ポッドキャストは最適というわけだ。

こうした意味では従来のラジオと同じだが、公共の電波を使って配信するわけではないので、誰もが安価に発信することができる。また、ユーザーからみると、よりニッチで自分に合ったコンテンツを選び取れる利点もある。しかも家庭や仕事場で情報を共有する手段としてはじまったラジオと違い、ポッドキャストはあくまで個人で聞くものであり、そのせいかリスナーはポッドキャストのホストに対し強い親近感を抱くことが多いという。

この状況を広告主側の視点からみると、ポッドキャストの魅力とは、比較的ニッチな層にリーチして、ナノインフルエンサーといってもいい「濃い」ファンとつながりを持てる点にある。また制作コストも動画に比べれば安く抑えられるので、トライアルとして自社コンテンツを立ち上げるのも比較的ハードルが低い。またInstagramやTwitterほどのリーチはないが、ソーシャルメディアのように友人同士のつながりには使われないので、他のフィードのなかに埋もれにくいのも特長といえるだろう。

普及初期こそできる試行錯誤

ポッドキャストは現在、今まさに普及が広がりつつあるという段階で、とくに日本ではまだ市場が小さく、企業としては取り組みにくい面があるかもしれない。だが、ニッチなコンテンツを“ながら視聴”できるというメリットはほかにないユニークな特性であり、巨大メディアに成長することはなくても、定着はしていくものと考えられる。

前述したように、ポッドキャストのメリットのひとつは、比較的手軽に制作可能なことであり、そのため早いサイクルでトライアル・アンド・エラーを重ねることができる。今後ポッドキャスト利用が定番化していくのだとしたら、企業としては早期からその活用法を試行錯誤しておけば、将来的には他社に先んじてその恩恵を受けられるのではないだろうか。

Text:福田ミホ(Miho Fukuda)

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