サティス製薬とCCI協業の本質、D2Cブランドにおけるデータドリブンな意思決定
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サティス製薬とCCI協業の本質、D2Cブランドにおけるデータドリブンな意思決定

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「バルクオム」「MEDULLA」など成長著しいD2CブランドのOEMを手掛けるサティス製薬は、デジタル領域全般のマーケティング支援を展開するCARTA COMMUNICATIONS(以下CCI)との協業を発表した。両社の協業では、ワンストップで化粧品D2Cブランドをサポートするほか、ブランドが考えるユーザー体験をブレることなく実現するための、データドリブンな意思決定を支援する。これは、製品開発において感覚値に頼りがちな部分をより可視化する試みでもある。800以上の通販・D2Cブランドの支援実績を持つ、株式会社サティス製薬 代表取締役 山崎智士氏にその意図するところを聞いた。

ブランドとユーザーの絆づくりに必要な“情報”と”体験”の一貫性

数多くの化粧品D2Cブランドの支援を行っているサティス製薬は、約2年間休止していたOEM受託の新規受付を再開するとともに、EC領域のマーケティングや広告プロモーションで多数の実績を持つCCIとの協業をスタートさせた。

CCIは2020年9月に、D2Cブランドの新規立ち上げ支援サービス「Commerce Container」をリリースしており、美容に限らず、D2Cブランドの各ECモールへの出店支援、クリエイティブや広告運用での集客支援などを手がけてきた。今回は、そのサービスにCCIグループのもつ知見やノウハウを寄せ、化粧品に特化してブランド戦略立案から商品開発、製造、集客、物流までをワンストップでプロデュースする。このなかで商品開発から製造のパートを手がけるのがサティス製薬だ。

CCI×サティス製薬の化粧品カテゴリーに
特化したD2Cブランドプロデュース
サービス全体像
出典:CCI プレスリリース

しかし、これはパズルのピースをつなげただけの協業ではない。CCIとサティス製薬が組む意義は、新興D2Cブランドの立ち上げをスムーズに行い、リピート率やLTVを上げて成長を加速させていくことにある。これを実現するのは、両社がもつデータにもとづきターゲットユーザーに向けて提供する、最適な「体験」だ。

その意味で、山崎氏は「CCIと我々はD2Cブランドを支えるうえで、何を大事にするのかの考え方が一緒だった」と説明する。それは、山崎氏によれば、情報と体験の間で起こる「ずれ」に起因するものだ。ブランド側のトータルなプランニングのなかでは、ときに意図せず「ユーザーへ伝える情報」と「その先のユーザー体験」がずれてしまうことがある。それをCCIとサティス製薬の協業で払拭しようと考えたという。

「まず、『ブランドからユーザーに正しい情報が伝わっているのか』がひとつ。ただ、たとえブランドの伝えたいことがユーザーに正しく伝わっているとしても、ブランドが想定する体験とユーザーの実体験にブレがある場合がある。そのときは、伝え方を修正するか、もしくは処方で調整することによって、ずれを直し、一貫性をもたせる必要がある。CCIと協力し、より精度の高い課題抽出をしたいと考えている」(山崎氏)

CCIとは集客、Webサイトでの、ユーザー調査や行動分析など各種データを共有したうえで、そのずれを、コミュニケーションまたは処方で改善する取り組みを行うという。

株式会社サティス製薬
代表取締役 山崎智士氏

ここでいう“体験”とは、クリエイティブやサービス関連だけではなく、製品のもつ機能性もベースにある。つまり、もともとの製品自体が持つ良さが十分にユーザーに伝わり、その期待通りの体験ができれば「次も使おう」という意欲が湧く。この一貫性こそがD2Cとユーザーの絆づくりの鍵であり、LTVに直結する重大テーマだと山崎氏は話す。

この考え方はサティス製薬の経験値に根ざしている。かつて支援したブランドのなかに、当初プランニングしていたターゲットや機能性、体験価値を「20代、30代の働く女性」とおいたにも関わらず、デジタル広告のABテストを繰り返すうちに、訴求内容が「50代以降のシワ対策」へと乖離してしまったケースがあった。これでは、製品のもつ機能性がまったく異なった層に伝わってしまっていたことになる。

サティス製薬のサポート領域は、ブランドの思想を製品の機能として落とし込むだけでは終わらない。それをブランドが“情報”としてユーザーに正しく伝え、ずれがあれば処方に落とし込んで修正するサイクルづくりまでを担う。この修正を、感覚値だけではなくデータで判断する。そこまで支援しないとD2Cブランドの成長はどこかで止まってしまうという問題意識を持っていたと山崎氏は明かし、それを解消するための提携だったとする。

“体験”を正しく伝えていればF2転換率とLTVがあがる手応え

この“体験”と“情報”をサティス製薬がチューニングした具体的な事例として「USS by papawash(アス・バイ・パパウォッシュ)」の取り組みがある。

USSは、山崎氏が代表を務める株式会社イー・エス・エスが手掛けるブランドで、酵素洗顔の先駆けである「パパウォッシュ」を前身としている。そのリニューアル第一弾として2021年2月に発売したのが、酵素洗顔料の「USS by パパウォッシュ バブル」だ。

「USS by パパウォッシュ バブル」
出典:イー・エス・エス
プレスリリース

「世の中に、酵素入り洗顔が山ほどあるなかで、『酵素らしさ』と『毛穴をキレイにする』という体験をさらにユニークなものとして届けるにはどうすればいいのか。そこで考えたのが、酵素濃度を高めた、水を加えるとマイクロバブルという細かい泡になる剤型の処方だ。ただし、その処方を施していることを知らないと、『泡立ちが悪い』というマイナス評価になる懸念もある。そこでユーザーにはあらかじめランディングページや動画で、これこそが“酵素らしい洗顔体験“だとわかるよう、説明している」(山崎氏)

どう「酵素らしい体験」なのか。上記の動画にもあるが、それは感触と音だ。ユニークな処方を、徹底的に伝えることにこだわった。

「この商品は、洗顔によって炭酸がはじけるようなシュワシュワした感覚を肌のうえで味わえる特徴があり、パチパチはじける音もする。ただ、その音が小さく普通に洗顔してしまうと気づきにくい。なので、使用法の説明の際には、すぐにすすがずに数分間顔にのせパックをするようにして『耳をすませてほしい』と、泡がはじける音を意識するよう伝えて、ユーザーが酵素ならではの洗顔体験を楽しめるようにした。製品で設計した“体験”をユーザーに実際に体感してもらうには、このような“伝え方”の配慮が必要になる」(山崎氏)

ブランドオーナーとしては、酵素はそもそものブランドの成り立ちでもあり、絶対にはずせない要素だった。そのうえで、酵素のもつ機能性をどのように高め、その体験を競合商品とどのように差別化して伝えるのかを考案するところまでを、サティス製薬が担当していることになる。

「なぜユーザーが2回目購入に至らないかという要因のひとつに、先行指標の設定の仕方がある。確かな製品力があったとして、獲得系の広告を回してCVRばかり見ていても、その製品がどんな効果や体験をもたらすのかをユーザーに提示できていなければ、一度は買ってもらえても商品の本来の良さが見過ごされリピートにつながらない。一方、いま挙げたような“伝え方”のチューニングができれば、F2転換率(新規顧客のうちで、2回目の購入につながった顧客の割合)をはじめCPA、LTVといった指標は伸ばすことができるという手応えを感じている」(山崎氏)

このことはD2Cブランド側にとっても大きな意味を持つ。F2転換率が改善しLTVが伸びれば利益も増え、その分多くの広告費を投下できる。さらに広告投下量が増えリーチの絶対数が増えれば、より多くの顧客の獲得が見込め、競合他社への競争力につながるためだ。

それゆえ、これまでもD2Cの成長においてF2転換率とLTVに着目して、サービスの標準化を目指す「アジャイル開発プロジェクト」に取り組んできた。2021年中に、この手法をプロトタイピングから実装段階に進め、さらに2022年以降、CCIとの協業から得る知見を活かして取り組みを加速させたいと話す。

さらに、同社は、“伝え方”の一助として「機能性体験シート」の拡充に取り組んでいる。「機能性体験シート」とは、モニターによる5段階評価で、製品使用の時間軸に沿って行動と感情がどのように変化したかを可視化するものだ。製品の“体験”を伝える取り組みの一環として「この瞬間に、こんな体験があるというユーザーからのフィードバックも参考にしながらコンテンツにし、製品や体験の特徴を伝えやすくなるように支援している」(山崎氏)とする。

「継続購入意欲」の谷は30日前後、データの厚みを増しその改善へ

提供した製品において、ブランドとサティス製薬が想定する体験と、ユーザー体験がマッチしているのかどうかは、前述のとおり広告の反応からの集客、リピート率、LTVなどの数字となって現れる。

「協業の誘いがあった当時、CCIがいっていたのは、ブランドオーナーやマネージャーの属人的な感覚がいかに優れていたとしても、それだけではなく、ユーザーとのコンタクトや得られたデータをもってブランド事業の方向性を決定すべきだという主張だった。それは我々も同じ考えで、経験や感覚による判断ではなく、マーケティングデータとモノづくりのデータを総合して意思決定の精度を上げたいと考えていたことから、協力することになった」(山崎氏)

現状では、両社が支援するブランドの顧客IDに紐づいたデータを共有している段階で、この先さらにブランド数や取得するデータの種類を増やしていき、そこから得られる知見をアジャイル開発プロジェクトとして活用する方針だという。

将来的に解析できるようにしたいと考えているのは、ブランドを横串でみたときの商品単価や商品カテゴリーごとに算出したF2転換率のデータだ。たとえば、ユーザーは、そのブランドが出す情報からの期待値と、購入して体験した結果が一貫していれば、“いい買い物”をしたという肯定の気持ちを持つが、時間が経つにつれその肯定感や商品を使うモチベーションが下がっていく。これまでのデータ分析から、この継続購入意欲の谷が30日前後にあることはわかっているが、ではどんなアプローチやコミュニケーションをすればその意欲が上がるのかといった実態をしっかりつかむには、データの厚みが必要だと山崎氏は話す。

「価格帯やカテゴリー別の精緻なF2転換率が出せれば、そのデータをもとに体験設計やコミュニケーションに活かすことができる。それによって、クライアントの製品ごとに“偏差値”を明らかにできれば、データから問題を把握し、改善のアクションにつなげることがより容易になる。これまでもデータを活用してD2CのPDCAを回す取り組みは行ってきたが、我々がもつデータだけでは物足りなさがあるのは否めない。今後、CCIと協力してデータを意思決定に活かす取り組みをさらに推進させたい」(山崎氏)

Text: 清水 美奈(Mina Shimizu)、編集部
Top image and photo: サティス製薬 

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