2019年BeautyTech浸透のキーパーソンたち、「HHユーザー」を知る
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2019年は、美容感度もテック感度も高い「HHユーザー」がさらなるBeautyTech普及のキーパーソンになる。2018年11月28日にリリースしたBeautyTech度調査から、編集部ではそう確信した。アーリーアダプターかつ、インフルエンサー的なそのHHユーザーの姿を、調査に関わった編集長として仮説や個人的な興味もまじえて考えてみた。
美容に対する関心度と、アプリやテクノロジーツールなどに対する関心度を数値化し、BeautyTech度という新しい指標をつくったこの調査から、ビューティ度もテック度も一番高い(High)層をHHと設定した。前回の調査に関する記事では、編集部スタッフを中心に分析して話を進めたが、今回はHHユーザーの全体像をとらえてみたい。@cosmeユーザーの9,176名の調査中、このHHユーザーは約7%。642名だ。
さて、HH層がどういうユーザーなのか詳細は調査結果を見ていただくとして、その一部をざっと紹介するとこんな感じである。
・10代から40代までどの年代もHH層の割合が一定である
・月に自由に使えるお金は高め
・友人・知人などに美容についてよく相談される
・自分の情報をシェアして人の役に立つとうれしい
・クチコミ投稿件数が他の層と比べると多い
・クチコミが購入動機になる割合が高い
・美容機器を他の層と比べて持っていない
・オーガニックコスメ好きの傾向がある
・高級コスメも好きである
・雑誌は『美的』を読んでいるユーザーが多い
などである。想定外な結果もちらほらあった。オーガニックコスメ好きなどの「意外性」については、情報に敏感で収集もうまいため、世界的な潮流となっているオーガニックやボタニカルコスメにも興味を持っている、といった具合に仮説もたてた。
次の機会にHHユーザーに検証のデプスインタビューも行ってみたいが、想像するに、年代にかかわらず好奇心が強く、スマホには複数の美容関連アプリがあり、情報収集を怠らない。自らも情報発信を活発に行い、常に「自分にとって何がいいのか」を能動的に探し、購買の最後の決め手はクチコミか友人知人の評価だ。そしていいと思ったものは喜んで情報をシェアする。
Image: Dean Drobot via shutterstock
つまり、このHHユーザーたちが納得したアイテムやツール、サービスは、彼女たち自らが情報発信し、広まる可能性が高い。意識しているかどうかは別として、インフルエンサー的役割をになっているといえよう。また、美容度は中程度だがテック度が高いMHユーザーもHH層と行動がさほど変わらないのではとも考える。美容度が中程度でテック度は高め。情報収集はおこたらない姿がみえる。HHの7%とMHユーザーの8%を合わせると全体の15%になり、さらに母数が増えることになる。
HHユーザーが評価するもの、しないもの
どのブランドやサービスにもファンの中にこういった活動的なHH層は、多かれ少なかれ存在するはずだ。HHユーザーとのコミュニケーションを密にとり、彼女たちが何を評価して、何を評価しないのかを探ることは、さまざまに有益であるに違いない。
HH層は、さまざまな美容コミュニティ、動画含むメディア、アプリを幅広く見たり使っていると思われるが、これだけのデジタルコンテンツやコミュニティがあるなかで、自分にとっての新しい発見をどこで見つけているのかを深く聞いてみたいとも思う。
クチコミが最後の判断の決め手であることは調査でもわかったが、その入り口、新しいブランドやアイテムに出会う場面はかなり多様化しているはずだ。そしてそれは年代よりも、価値観で選ばれているものであるだろうし、さらに言えばそれぞれ、HH層の心が動くトリガーがなんであるかを知りたく思う。個人的にもコンテンツに深く関わっている側として、大きく興味をひかれる点だ。
それは媒体やコミュニティの信頼性や特性なのか、人なのか、クリエイティブなのか。ブランドによってどこでどのように見つけてもらうとより心が動くのか。そこに何らか共通点はないのか。ブランドがもつ軸と、HH層に響く伝え方をどうすりあわせていけばいいのかなど探るポイントもいくつかありそうだ。
最大数のMM層にはどうすれば浸透するのか
このHH層を知ると同時に、最大のマジョリティであるMM層に情報やサービスがどう浸透するのか、あるいはどうアプローチすべきかということも考えてみたい。MMユーザーは、HH層に比べるとやや受動的な面も目立つ。HH層が使いこなすアイテムやサービスは、HHユーザーの言葉が響き、MM層の心も動くのだろうか。もしくはまったく別のアプローチが必要なのか。
HH層を知ったあとに、MM層をしっかりとらえていく必要もある。もしかしたら、あるブランドやサービスにとっては、最初からMMユーザーの指向性のほうがぴったりはまるということもあるだろう。
今回、残念ながら美容アプリでキャズム(使用率16%)を超えたものはなかったが、こと美容で使う「アプリ」という面でいえば、あらゆる層にもっとも幅広く使われ、浸透していると思われるのがメルカリ(化粧品・美容関連アイテムを売買するという使い方で)ではないか。今回の調査では対象に入れなかったのだが、その他のアプリは、HHユーザーが積極的に使う傾向にある。が、メルカリにはHHユーザーからLLユーザーまで幅広く存在しているのではないかと、結果を見て気づいた。
メルカリがテック度をあげる?
使いかけたが途中でやめてしまい、捨てるには惜しいアイテムが現金もしくはポイントに変わる。逆に欲しかったが高額で諦めていた、もしくはトライアルだけしたいが、サンプルをもらいにいく手間を省きたいユーザーにとっては手軽に中古の現品もしくはサンプルを手に入れられるツールだ。資金がおぼつかない場合は、何か手元にあるもので売れるものを探してお金に換えればよい。
メルカリは実利があまりにもわかりやすく明快であるがゆえに、テック度がそれほど高くないユーザーも心ひかれてやっているはずだ。ユーザーコミュニティ のメルカリサロンでは、60歳以上限定の会も実施された。実際、筆者はBeautyTech度がおそらくMMかLMくらいと思われる50代の友人があまりに楽しそうに語り、いろいろなノウハウを教えてくれたことから始めてみた。始めるきっかけを失っていたところに、そんな友人に教えられたというのがとても面白い。
初心者でも、「収入が入る」メリットにひかれ、やってみたら思うよりも簡単で、いろいろコツをつかむとさらに使うようになる。そうしたユーザーが、まだ未経験のユーザーを誘って熱心に伝えるる例はかなり多いだろう。またメルカリをきっかけに、テック度が高まっていくユーザーもいるに違いない。
美容アプリで今回の調査でも一定のユーザーがついているLIPSやnoin、HowTwoといったユーザーは、HHユーザーもしくMMユーザーが多いのか、メルカリのようにバラエティに富んでいるのか。アプリのサービス内容とユーザーの傾向を知るうえで、こちらも仮説検証してみたい。
BeautyTech度調査をリリースした5日後に、12/3に、この調査をもとに識者を招き、初の編集部主催のBeautyTech.jpカンファレンスを行った。その2つのパネルディスカッションの様子も近々記事化する予定である。さまざまな立場の美容やイノベーションの専門家たちの意見からの学びも多かった。ひとりのユーザーの興味が多様化し、とらえることがどんどん難しくなっている。その中で我々は何を見ていくべきか、そのヒントのつまったパネルであった。
Text: 矢野貴久子(Kikuko Yano)