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インドネシアでも突出する美容スタートアップ、SociollaとERHA.DNAのユニークネス

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前回のインドネシア美容市場の記事でもふれたように、インドネシアで初のビューティテック系ユニコーンになるかと期待される化粧品専門ECサイトの運営企業 Social Bellaと、肌情報やDNAのAI解析にもとづくパーソナライズした商品提案を行う ERHA.DNA。躍進めざましいインドネシア発祥のスタートアップのサービスを紐解く。

インドネシアは「東南アジアのテックハブ」として知られ、ECとフィンテックを中心にテクノロジー領域のスタートアップへの投資が盛んに行われている。ビューティテック系の有望なスタートアップやブランドも生まれており、新型コロナウイルス感染拡大にともなう消費者の購買行動の変化を成長につなげる努力をしている。

同国最大の美容化粧品専門ECの運営企業と、オンライン問診、肌情報、DNA情報をAIで解析し、個々の消費者に最適の自社スキンケア商品を提案する新興ブランドに、事業戦略やパーソナライゼーションの仕組みを聞いた。

ECからブランド支援まで包括的エコシステムを構築

インドネシアはユニコーンの数が東南アジアで最も多いとされ、CB Insightsによると、7月半ば時点でEC大手のTokopediaとBukalapak、配車サービスを手掛けるGojekなど5社を数える

同国初のビューティテック系ユニコーンになると期待されているのが、YJキャピタルやアイスタイルなども出資する、インドネシア最大の美容化粧品専門ECサイト「Sociolla」を運営するSocial Bellaだ。3人の共同創業者の1人でCMOのクリサンティ・インディアナ(Chrisanti Indiana)氏は、インドネシアで成功した女性起業家としても名が通っている。

Social Bellaは2020年7月はじめ、シリーズEラウンドで5,800万ドル(約61億5,000万円)を調達したと発表。ウィズコロナ・ポストコロナ時代における潜在的成長力を示し、既存投資家から資金を集めた。

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Social Bellaの共同創業者。左から、
ジョン・ラジド(John Rasjid)CEO、
クリサンティ・インディアナCMO、
クリストファー・マディアム
(Christopher Madiam)社長

2015年創業のSocial Bellaは、ECサイト、メディア、そしてリアル店舗を連携して運営するオムニチャネル戦略が成功し、急成長した。今年はこれらのプラットフォーム全体でユーザー数が約3,000万人に達すると予想されている。

同社が創業した当時のインドネシアでは、正規ディストリビューター以外のルートで流通する商品も多く、Social Bellaの広報担当者によると「消費者に有害なのはもちろん、ディストリビューターとブランドにとっても好ましくない状態」だった。そこで消費者を非合法商品の被害から守るため、Sociollaは開設当初からインドネシアの国家食品医薬品監督庁(BPOM)に登録され販売許可を受けた商品だけを扱っている。こうした姿勢が評価され、Sociollaは2019年、インドネシアで「最も信頼される美容専門ECサイト」に選ばれている。

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Social Bellaは、ECサイト、
メディア、リアル店舗(写真)を展開


Social Bellaは現在、ECサイトのSociollaと同名のリアル店舗をインドネシア全土で6店運営するほか、インドネシア最大の美容・パーソナルケア商品口コミサイトの「SO・CO」、ビューティおよびライフスタイル・オンラインメディアの「Beauty Journal」、ブランド向けにエンドツーエンドのディストリビューション・サービスを提供する「Brand Development」の各事業を展開する。直近では妊産婦と子育て中の若い母親をメインターゲットにしたビューティ&パーソナルケア商品ECサイト「Lilla by Sociolla」をオープンし、新しい顧客層の開拓にのりだした。

ユーザーは、ECとメディア、リアル店舗で共通のSO・CO IDを使ってログインする。この独自の包括的O2Oエコシステムによって、ユーザーの嗜好や関心、市場トレンドを把握することで、パーソナライズされたサービスの提供や品揃えの向上、新しい事業機会の創出などにタイムリーに生かせる体制を築いたことが、同社の強みだ。ユーザーは、オンラインとオフラインの双方を通じて優れた顧客体験が期待でき、また適切な情報をもとに、膨大な商品群のなかから自分に適した商品を選ぶことが容易になる。

Social Bellaでは、こうした消費者や市場のインサイトをブランド支援にも役立てることが、結果的に同国の美容業界の成長につながると考えている。

ECユーザーに「特別感」を提供

Social Bella広報担当者によると、同社がターゲットとする消費者は、デジタルに精通し、最新のトレンドや商品に詳しい美容好きだ。Sociollaの場合、顧客の半数以上を15~25歳の若年層が占める。ネットを通じて豊富な知識を持ち、ブランドやリテーラーに対する期待値も高い若い世代のニーズに応えるため、オーガニックからハラル、ローカルあるいはグローバルまで、幅広い商品とブランドを取り揃えているという。

品揃えの面で顧客の要望に応えると同時に、ECを利用する顧客に「特別感」を持ってもらうことにも力を入れる。そのため、プロモーションとしての商品値引きだけでなく、トレンドや時流に沿った商品キュレーション、Sociollaでしか買えない独占的商品や、購買体験を高める「特別ギフト」などを提供している。

たとえば、新型コロナウイルス感染症の流行で大規模な行動制限措置が敷かれてからは、メイクアップやスキンケア商品に加え、液体ソープ、サニタイザー、除菌用スプレーといった感染予防につながる商品など、自宅待機中のユーザーのさまざまなニーズに応える商品を対象に特別キャンペーンを行った。

2020年のインドネシアの美容市場はコロナ禍で減速が予想されるものの、ひとたび経済回復に向かえば、再び成長軌道にのると見込まれる。行動制限下でEC利用者は増えており、同社ではECサイトへのオーガニックトラフィックと顧客あたりの平均バスケットサイズ(一度に購入する平均アイテム数)が過去最高を記録した。

ERHA.DNA、肌情報もDNA情報も解析

消費者ごとに最適の商品の提供を目指すパーソナライゼーションの分野でも、有望なビューティテック系ブランドが生まれている。

皮膚科クリニックの経営、スキンケア商品の開発と製造、製薬と化粧品業界向けサプライチェーン・ソリューションなどを手掛けるArya Nobleは、オンライン問診、肌情報、DNA情報をAIで解析して評価し、個々の顧客の肌タイプや肌状態、ニーズに合った自社スキンケア商品をレコメンドするERHA.DNAプロジェクトを2019年10月に開始した。このプロジェクト用に1,000種類以上の成分の組み合わせから作るオリジナル商品を開発している。

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ERHA.DNA 昼用モイスチャライザー

オンライン問診や肌情報によって商品をレコメンドするサービスはいろいろあるが、これにDNA情報を加えて、3方向すべてからアプローチするサービスの実用化は世界でも珍しいといえるだろう。ERHA.DNAの強みはこうした最新の技術と、Arya Nobleが長年のヘルスケアとスキンケア事業で培ったノウハウやデータを併せ持つ点にある。

Arya Nobleのイノベーション担当責任者で、ERHA.DNAのプロジェクトマネージャーでもあるアンドレアス・アーディカ・アントニヌス(Andreas Ardhika Antoninus)氏によると、ターゲットは「アクティブなライフスタイルを送るアーバン・ミレニアル」だ。

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ERHA.DNAのプロジェクトマネージャー、
アンドレアス・アーディカ・アントニヌス氏

ERHA.DNAのパーソナライズ・サービスはベーシックとアドバンスドの2種類あり、ベーシックではウェブサイトで自分の肌状態を中心に簡単な質問に答えてもらい、それにもとづきオリジナル商品のなかからフェイシャルクレンザー、サンスクリーン、昼用モイスチャライザー、夜用モイスチャライザーの4アイテムをレコメンドする。「母親の顔は実年齢よりも若く見えますか?年相応に見えますか?」といった家族に関する質問もあり、本人の肌タイプの判定に役立てるという。

アドバンスドは、より詳細な解析と高精度のレコメンドを求める人たちを対象とする。オンラインでの質問に加え、専用器具を使って集める肌情報、そしてDNA情報の3つをAIで解析し、ベーシックの4商品にエッセンス(美容液)を加えた合計5商品の組み合わせをはじき出す。皮膚科クリニック経営の経験から、肌状態を改善するには、この5種類のアイテムが最低でも必要との結論に至ったとする。

アドバンスドの希望者は専用のモバイルアプリをスマートフォンにダウンロードし、「Skin Lens」「Moisture Tester」「Skin Test」からなるテストキットを注文、配達の日時と場所を指定する。

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ERHA.DNA テストキットと
スキンケア製品サンプル

Skin Lensとは、スマートフォンのカメラに装着する30倍の拡大鏡だ。これをつけた状態で左右の頬、額、鼻、顎を撮影し、画像をアプリ経由でアップロードする。Moisture Testerは肌の保湿レベルを調べるための器具で、先端部を肌に押し当てて測定し、結果をアプリに入力する。Skin TestはDNAを収集するためのもので、口の中を専用スワブ(綿棒)でこすって細胞を採取する。アプリ経由でスワブのピックアップの日時と場所を予約でき、ユーザーが自分で郵送したり、検査施設に持ち込んだりする必要はない。スワブはDNA解析のためERHA.DNAのラボに送られる。

オンライン問診、肌画像と保湿レベルにもとづく肌情報、DNA情報をAIで解析し、ユーザーに最適の商品と組み合わせを判定する。自社ラボでDNA解析を行い、最大3日、通常1~2日程度で解析が完了。テストキットの注文から、商品レコメンドにもとづき購入した商品をユーザーが受け取るまでの全プロセスは、最速の場合で1週間程度だ。

ERHA.DNAが利用するAIは、シンガポールのベンチャー企業、Bellesomicsが開発した。ERHA.DNAはBellesomicsと提携し、Arya Nobleが20年以上の皮膚科クリニック経営で蓄積した豊富な肌データを使い、インドネシア人の肌用にAIを再訓練したという。

ユーザーにとって、ベーシックと比較したときのアドバンスドの利点は、より多くの情報にもとづいた、自分の肌により一層適した商品提案を受けられることだ。DNA検査によって、ニキビなどの肌トラブルの起こりやすさも分かるため、肌に合ったエッセンスを使うことでトラブル予防策を講じることもできる。

価格はスキンケア商品が10万インドネシアルピア(以下IDR)、約730円から。アドバンスド・サービスだけに含まれるエッセンスは 35万IDR(約2,600円)。アドバンスド用のテストキットは132.5万IDR (約9,700円)で、テストキットとパーソナライズ・スキンケア・セット5アイテム(エッセンスを含む)が合計246万IDR(約1万8,000円)となっている。

スキンケア商品の効果を日々追跡も

Skin LensとMoisture Testerを使って肌の画像と保湿レベルを毎日アプリにアップロードし、購入したスキンケア商品によって期待した効果が得られているかどうかを追跡することもでき、追加料金はかからない。これによってユーザーは「肌の調子がなんとなく良くなった気がする」という自分の感覚に頼るのではなく、AIが算出するスコアで客観的に変化を確認できる。

DNA検査の結果に疑問を持つか、商品を使っても効果を実感できない、あるいは肌トラブルが生じたといった場合には、アプリ経由でERHA.DNAにコンタクトし、ERHAクリニックで皮膚科医師のコンサルテーションを受けることも可能だ。

重症のニキビなど、スキンケア商品だけでは改善が難しいトラブルをAIが自動的に検出し、医療専門家のコンサルテーションを勧めるなどの機能も、将来的に実装を考えているという。

ERHA.DNAはもともとアドバンスド・サービスだけを提供していたが、より幅広く需要を開拓するため7月にベーシックを導入した。現在はユーザーのほとんどがアドバンスドを利用している。

アントニヌス氏によると、ベーシックもアドバンスドもユーザーの評価は上々だ。パーソナライゼーションの精度が高いというだけでなく、オンラインで注文した検査キットや商品を自宅で受け取り、DNAサンプルも自宅でのピックアップを手配できるERHA.DNAのサービスは、コロナ危機のなか、他人との接触を最小限に抑えられるという点でも受け入れられている。

アントニヌス氏は、まずインドネシアでビューティ&パーソナルケア・エコシステムを構築し、いずれはインドネシア発のビューティテック企業として東南アジアのほかの国々や日本、中国への進出の可能性も検討したいと語る。ビューティテック分野の日本のブランドとの提携にも関心があるという。

インドネシアのビューティテック関係者は、同国のテクノロジー業界は急成長し、5年前と比べても大きく変わったと話す。未曽有のコロナ危機は、美容業界のデジタル化をさらに加速させており、ピンチをチャンスに変える施策が始まっている。

Text: 鶏内 智子(Tomoko Kaichi)
Top image: ERHA.DNA
画像提供: Social Bella、ERHA.DNA

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