韓国Zalpha世代の消費行動は美容においても「コスパ」と「ミーニングアウト」がキーワード
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページ|メルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o
今後のビューティ市場において重要な役割を占めるとされるZalpha(ザルファ)世代は、韓国国内でも主要な購買層として浮上し始めている。同世代はコストパフォーマンスを重視し、その主要な購買チャネルとしてのオリーブヤングや韓国ダイソーが注目されている。また、より低価格でバラエティに富み、個性的な製品が多い中国コスメもこの世代の支持を集めている。こういった韓国Zalpha世代の消費動向をレポートする。
2025年に世界人口の47%に。次世代のコア消費者のZalpha世代
韓国では若年層を指してMZ(ミレニアルとZ)世代という言葉が2018年頃から出てきたが、1980年代前半から1990年代半ばに生まれたミレニアル世代が“若者”を卒業しつつあり、1990年代半ばから2010年代前半に生まれた、現在12歳〜28歳前後のZ世代と、2010年代から2024年頃までに生まれたアルファ世代を組み合わせたZalpha(ザルファ)世代という言葉が、グローバルで若者をくくるマーケティング用語として使われ始めている。Zalpha世代は2025年時点で世界人口の47%(Z世代22億人、アルファ世代20億人)を占めるとされる。また、韓国のZalpha世代は約1,276万人で国内人口の24.8%程度だ。
『Zalpha世代が来る:グローバルマーケティングトレンド』の著者であるノースカロライナ大学のファン・ジヨン教授は、実年齢と比べ相対的に大きな消費潜在力とビジネスマインドを備えていることがZalpha世代の特徴と指摘する。実年齢より身体的・精神的に成熟している同世代は「アップエイジング(早熟な)世代」とも呼ばれている。
一方、韓国のハナ金融研究所のレポートによれば、金融や経済に対する興味関心が高い全世界のZ世代の所得は、2030年からミレニアル世代の所得水準を上回ると予測されている。同時にミレニアル世代の親の消費が、教育費など子供であるアルファ世代のための消費に集中する現象も現れてきているという。
Z世代に関しては労働市場への参入がすでに始まっており、所得がまだないアルファ世代も親による消費が見込まれることからブランドに対して影響力・購買力を持ちつつあるといえる。韓国国内では、現在進行形で主要な購買層となりつつあるZalpha世代の消費動向に関心を向ける報道や調査も目立ってきた。
興味が高いのは「ヴィーガン」「パーソナルカラー」
Zalpha世代を含む韓国の各世代のビューティ商品の消費動向を解析した資料のひとつに、韓国の調査会社Opensurveyがまとめた「ビューティトレンドレポート2024」がある。同レポートは全国の15~59歳を対象にモバイルアプリで実施されたアンケート結果をまとめたものだ。
まず、韓国国内の10~20代が最も多く言及したトレンドワードは「ヴィーガン」と「パーソナルカラー」だった。それに対して30~50代では「リフティング」「弾力」「水光(内側から潤いが溢れているようなツヤや濡れ感)」「保湿」など肌質向上に関するワードが上位を占めており、ヴィーガンやパーソナルカラーについてはほとんど言及がなかった。
グローバル市場同様に韓国国内においてもヴィーガンに関連するトレンドは2025年も続くと多くの専門メディアによって分析されているが、同レポート結果をみる限り、そのトレンドを牽引していく中心的な層はZalpha世代となりそうだ。
また同レポートでは、韓国Zalpha世代は、オンライン、オフラインも含めての購買チャネルとしてオリーブヤングを最も活用していることが明らかになった。オリーブヤングでショッピングしていると回答した割合は約72%にのぼる。オリーブヤングに次いで利用が多かった購買チャネルは牙城ダイソー(以下、韓国ダイソー)だった。割合としては10代21.6%、20代11.8%となっている。近年、韓国ダイソーがZalpha世代の主要な購買チャネルとして浮上している理由としては、大きく3つのポイントが挙げられる。
最も大きな理由はコストパフォーマンスだ。韓国ダイソーは500ウォン(55円)~5,000ウォン(550円)の価格帯で商品を販売しており、10代が小遣いを使ってショッピングを楽しむことができる。また小容量の商品を販売することで、気軽にいろいろ試してみたい若い消費者層のニーズを取り込んでいる。
2つめの理由はバラエティ豊かな製品や人気ブランドとの豊富なコラボレーション製品があることだ。アイシャドウ、リップティント、パウダーなど基本的なアイテムに加え、トゥークールフォースクール(too cool for school)、VTコスメティクス、ザ・ラボバイブランドゥ(THE LAB by blanc doux)、トゥエディットバイルナ(twoedit by LUNA)など、10~20代が使ってみたいと思うようなトレンドをいち早く取り入れたブランドとの独自の商品企画を積極的に行っている。ユニークな商品が多く、SNSを通じたバイラル効果も大きい。
人気を集める3つめの理由はオフラインでのアクセス性だ。全国に1,500店舗以上あり、簡単に商品を購入できるのが強みとなっている。
なお、ほかの世代の購買チャネル上位としては、ネイバーショッピング、クーパンなどのEC(30~40代)、大型ショッピングマート、アウトレットモール(50代)が挙げられている。デジタルネイティブであるZalpha世代だが、他世代と比べてオフラインチャネルでの購入傾向が大きいというのも特徴的だ。
韓国Zalpha世代の間で支持が広がるC-Beauty
韓国Zalpha世代のビューティトレンドを分析する際、その勢いを無視することができなくなってきているのが中国発の化粧品ブランド、いわゆるC-beautyの存在だ。
韓国3大紙のひとつ朝鮮日報は「安くて華やかな化粧品…チャイナビューティの逆襲」という特集記事を公開。そのなかで、国内Zalpha世代のC-beauty人気の高まりについて解説している。
同記事が分析するC-beauty人気の理由は、韓国ダイソー人気に通じる部分がある。たとえばインフレが進む経済状況のなか、C-beautyには価格的な優位性があると指摘。3万ウォン(約3,300円)程度の韓国コスメと類似した商品が8,000ウォン(約880円)台、つまり約4分1程度の価格で購入できるとする。また、中国ブランドは華やかでユニークなデザインが多く、10~20代の好奇心を惹きつけることに成功していると解説している。
アリババやテム(TEMU)など中国越境ECの発展もC-beautyのトレンドを後押ししていると同記事は説明している。韓国統計庁の資料によれば、2024第1四半期から第3四半期にかけて、韓国の消費者が中国からオンラインで化粧品を購入した金額規模は前年比60.7%増の1,654億ウォン(約 182億円)に達する。全体的な金額としてはまだ小さいものの、C-beautyのトレンドの急速な高まりは注視すべきだと同記事は説く。
さらに興味深いのは品質に関する指摘だ。中国ブランドは中国国内に拠点を持つ韓国大手OEM/ODMを通じて商品を生産することが少なくない。たとえば、韓国コルマーは、パーフェクトダイアリー、イントゥーユー(INTO U)、フローラシス(花西子)など人気中国ブランドの商品を製造している。韓国Zalpha世代の立場からすれば、国内ブランドと同等の品質でデザインはユニークな商品を割安で購入できるということになる。
とくに韓国Zalpha世代に人気の中国ブランドとしてはフラワーノーズ(FlowerKnows)が挙げられている。
フラワーノーズは、いわゆる“お姫様系コンセプト”を取り入れたカラーメイクブランドで、花やレースをモチーフにした華麗でロマンティックなパッケージデザインと手頃な値段が特徴だ。天使をテーマにしたメイクアップコレクション「リトルエンジェルシリーズ」、バレエと白鳥をモチーフにした「スワンバレエシリーズ」、人魚をテーマにした「月光人魚シリーズ」など多彩なラインナップを展開している。K-beautyブランドでよく見られるメイクアップスタイルや剤型 (液状やクリーム状といった化粧品の中身の状態や外見上の形状)を取り入れ、親しみやすい点も韓国Zalpha世代の支持が厚い理由となっているようだ。
そのほか越境ECサイトで言及が多かった中国コスメ商品としては、イントゥーユー、ヒーローレンジ(HERORANGE)、カカショウ(KAKASHOW)、ノヴォ(NOVO)などがあった。いずれもカラーメイクブランドで、手頃な価格帯、発色の良さ、ユニークな剤形、豊富なカラーバリエーションなどで人気を集めている。
ヴィーガンコスメ市場を牽引する「ミーニングアウト」な消費者
韓国ヴィーガン認証院の統計によれば、韓国国内のヴィーガン化粧品市場規模は2013年の1,600億ウォン(約176億円)から、2022年までに5,700億ウォン(約627億円)と4倍近く成長しており、2025年には1兆ウォン(約1,100億円)規模に迫るものと予測されている。
ヴィーガンコスメの成長の原動力として、ミレニアル世代やZalpha世代の存在を指摘する韓国メディアも多い。同世代は自分たちの価値観や信じるものを積極的にあらわす消費行動を意味する「ミーニングアウト」の実践に重きを置いており、それがヴィーガンコスメの市場成長に影響しているとされる。
韓国Zalpha世代の主要な購買チャネルとして浮上した韓国ダイソーでは、ヴィーガンやその背景にあるコンシャスビューティ(サステナビリティや透明性、インクルーシブ、倫理性にも目を向けてビューティ製品やブランドを判断する消費者意識)のトレンドにも着目。2024年には、ヴィーガンメイクアップブランド「ソン&パク(SON&PARK)」や、ヴィーガンスキンケアブランド「エーソリューション(a.solution)」などの韓国ダイソー限定商品の取り扱いを相次いで開始している。後者に関しては、Zalpha世代の肌悩みとコストパフォーマンス重視をダイレクトに反映した商品設計が特徴だ。
消費者の需要は多様化しているものの、韓国Zalpha世代の消費行動を考える際には、「コストパフォーマンス」と「ミーニングアウト」という2つの視点は欠かすことができない共通項となりそうだ。また、米国のZalpha世代のなかでも、過度な消費を避け、コストパフォーマンスを重視する価値観や消費動向が顕著になってきたとの報道もある。今後、日本をはじめとする各国Zalpha世代の比較や共通点にも注目していきたい。
Text: 河鐘基(Jonggi HA)
Top image: 牙城ダイソー公式サイト