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「M&A」「バーチャルストアのメタバース化」「ドラッグストアとの共同開発」がキーワード【海外トレンド2021年11-12月】

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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流を紐解く。今回は、2022年以降の展開をにらみ過熱する米国のM&Aと進化するバーチャルストア、また、ドラッグストアとメーカーがコラボした新化粧品ブランドを取り上げる。

ロレアルやP&G、ロクシタン、ジボダンまで、活発なM&A

出典:Global Cosmetics News

★注目ポイント
先進国を中心に経済活動が復調しつつあることを受け、間近になった2022年の展開をにらみ、ビューティ業界でも将来的な成長への投資が促され、買収による規模の拡大やポートフォリオの再構築が始まっている。新興ビューティECプラットフォームによるブランド囲い込みの動きもあり、米国ではM&Aが活況を呈している。

2021年11月、P&Gは米ナチュラルスキンケアD2C「Farmacy Beauty」の買収を発表した。Farmacy Beautyは「farm-to-face skincare(農場から顔へ直送スキンケア)」をうたい、北米ではセフォラが独占販売している。P&Gでは同ブランドの「科学に深くもとづいた処方と天然原料のコンビネーション」というコンセプトを高く評価しており、買収はP&Gが掲げるResponsible Beauty(責任を果たすビューティ)の理念を反映したポートフォリオづくりの一助になるとしている。

加えて12月には、P&Gが、ハリウッドスターらを顧客に持つセレブ・ヘアスタイリストが2015年に立ち上げたヘアケアブランド「OUAI」の買収に向けて動いていることが報じられた。近年急成長しているプレステージ・ヘアケア・セクターに、P&Gが参入を図っている表れとみられる。

同じく11月、ロクシタングループは、通称“お尻クリーム”として知られる「Brazilian Bum Bum Cream」がベストセラーの米ボディケアブランド「Sol de Janeiro」の株式83%を取得すると発表。この取引によりSol de Janeiroの企業評価額は4億5,000万ドル(約508億円)となった。同ブランドはブラジルの美容習慣にインスパイアされたボディポジティブを標榜し、創業者兼CEOは残りの株式を保持して現職を続け、ロクシタン傘下でグローバルでのさらなるブランドの成長を図るとともに、サステナビリティや製品開発の面でロクシタンのノウハウを活かしていくとする。

ロレアルもクリーンビューティブランドの買収に動いた。スーパーフードやコールドプレスした原料、自然由来成分を配合したスキンケアを提案する「Youth To The People」が、ロレアルのリュクス事業本部の傘下に入ることが発表された。米ロサンゼルス発の同ブランドは現在、北米やオーストラリア、ヨーロッパで事業展開しており、2021年の売上高は5,000万ドル(約56億円)を超えるとされている。リュクス事業本部プレジデントは「ヘルシーでヴィーガン、かつ効果効能に優れた製品のYouth To The Peopleは、本事業部のポートフォリオに良い相乗効果を与える」とコメントした。

また、グローバル最大手の香料メーカーであるジボダンは、フレグランス製造企業の米「Custom Essence」の買収を2021年第4四半期内に完了した。Givaudan Fragrance & Beautyのプレジデントは「Custom Essenceは急成長する顧客セグメントの管理と天然香料の配合についての専門知識を擁しており、2025年を目指して我々が進める地方・地域におけるプレゼンスの向上とナチュラルな香水開発に大きく寄与するだろう」と述べている。

カミソリの「Schick」などを持つ、パーソナルケア大手のEdgewell Personal Careも、女性用の高品質シェービングとプレミアムボディケア製品を提供する「Billie」を買収し、シェービングカテゴリーにおける地位の強化を図った。Billieの買収については、かつてP&Gが計画していたが、2020年12月に米連邦取引委員会から中止を求める法的措置を受けて断念した経緯がある。今回の取引は米国独占禁止法をクリアしており、買収総額は3億1,000万ドル(約352億円)とされる。デジタルネイティブなD2Cとして業績を伸ばしたBillieは、2022年初頭に米国内の実店舗での小売販売をスタートし、販路を拡大する予定だ。

米ユタ州を本拠地に化粧品・健康食品の開発製造・販売を行うNu Skin(ニュースキン)は、独自の“ネイルリニューアルシステム”で知られる「Dr. Dana Beauty」を、グローバルブランドプラットフォームRare Beauty Brandsに売却した。その一方で、Nu SkinはソーシャルセリングプラットフォームのMavely買収。2018年リリースのMavelyは、ユーザーやインフルエンサーが投稿やシェア、販売を簡単にできる仕組みを備えており、Nu Skinコミュニティのアフィリエイトを活性化することが期待されている。

出典:Mavely公式サイト

Z世代から絶大な支持を集めるヴィーガン&ジェンダーレスコスメの「Milk Makeup」と、高い臨床効果と科学的なアプローチにより米国の皮膚科医や美容外科医の信頼が厚い「オバジ」を買収したのは、未公開会社の買収を目的とする特別買収目的会社(SPAC)のWaldencast Acquisition Corp.だ。この約12億ドル(約1,365億円)の三者間取引は、Waldencastが目論む、マルチブランドを集積した世界トップクラスのビューティ&ウエルネスプラットフォームの構築に向けた第一歩とみなされている。Waldencastの創業者兼CEOは「次世代のパーパスドリブンなブランドの“ホーム”となることを目指す我々にとって、Milk Makeup、オバジとパートナーシップを結んだことは大きなマイルストーンだ」と語っている。

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