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老舗OEMトキワが仕掛けるイノベーション第一弾、初のアクセラレータープログラム

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カラーコスメに強い日本の大手化粧品受託製造(以下、OEM)トキワが、独自のアクセラレータープログラムを2020年7月8日に発表する。その背景には、オープンイノベーションで市場での競争力を確保する意図がある。また、並行してグローバルのクリーンビューティ市場での確固たるポジショニングを狙う。リリースに先駆けて詳しく話を聞いた。

創業70年以上を誇る老舗OEM/ODM企業の株式会社トキワが、オープンイノベーションとグローバル市場での存在感を強める戦略を明確に打ち出している。

カラーコスメや、いわゆる「軸もの」に強く化粧品グローバル大手との取引も多い同社は、2019年3月に米カーライル・グループと戦略的業務資本提携を締結。2020年4月に副社長兼トキワ米国及び中国 CEO として金井博之氏が就任した。P&Gの米国本社などでトレードマーケティングを長く担当し、ヘンケルジャパン株式会社代表取締役などを歴任、グローバル市場の動向を肌で感じてきた金井氏がこの一連の戦略を指揮している。そのいわば第一弾がアクセラレータープログラムである。

海外工場を含め、オープンイノベーションへ舵を切る

「美と感動と喜びを世界に届ける」というミッションを掲げるトキワは、1948年に設立された。国内に5つの工場を保有し、米国、中国、フィリピンに関連子会社や生産拠点を展開している。従業員数は876名(2020年5月末現在)で、カラーコスメに特化した独自のノウハウと知見を誇る傍ら、容器の開発・製造まで完結できる一貫した生産体制を保有しているのが強みだ。製品、製法に関する特許等の権利維持数は国内279件、海外258件に達している。こうした強みを活かし海外で展開するのが狙いだ、と金井氏は語る。

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トキワの東京工場

「2019年に日本のOEMとして初めて米国工場を立ち上げた。日本だけでなく、米国、中国など、世界各地の拠点で “メイドインジャパンクオリティ” の製品を生産し、広げていくことが我々の目標だ。欧米やアジアの競合他社との競争に勝ち、10~20年後も成長できる企業になるためには既存事業の強化に加え、新たな戦略が必要であり、その一環としてオープンイノベーションに積極的に取り組んでいく」(金井氏)

金井氏photo

株式会社トキワ 副社長
兼トキワ米国CEO
金井博之氏

前例のないOEMのアクセラレータープログラム

グローバルでのOEM市場の勢力図も変化するなかで、新たな競争力確保に乗り出しているトキワは、そのひとつの動きとして「トキワビューティアクセラレータープログラム」を2020年7月8日に発表する。

昨今、大手化粧品企業が社名やブランド名を冠にアクセラレータープログラム(以下、アクセラレーター)やインキュベーションプログラムを提供することは、それほど特別なことではなくなった。しかし、OEMメーカーがアクセラレーターを実施・提供することは世界的にも珍しいケースだといえよう。

INFINITE_完成版

トキワビューティアクセラレーター プログラム
スローガンである「infinity」

トキワが、OEM/ODM業界内で先駆けてアクセラレータープログラムを実施する背景として「ビューティ産業を通じて人々を幸せにしたい熱意を持った新規プレイヤーとのパートナーシップを実現する」、また「持続的成長を成し遂げるためのパートナーを外部から募り、新たな価値創造を実現」していく狙いがあると説明する。

最終的には「コントラクトマニュファクチャービジネスモデル」を脱皮し、ビューティブランドとの価値共創を目指す「パートナリングマニュファクチャービジネスモデル」へと進化することが目標だとする。これは言い換えれば、生産を請け負うだけでなく、自社に蓄積されたノウハウを共有し、スタートアップと成長を共にするなかで、新たな価値を獲得していこうというものである。

「このアクセラレーターではビューティもしくはコスメという共通言語はあるが、対象はブランドやプロダクトだけにこだわらない。美容に関するBtoCプラットフォーマー、サービスプロバイダーも含め、可能性のあるスタートアップに門戸を広げていきたい」(金井氏)

トキワのアクセラレーターが対象にするのは「プレシードステージ」(アイディアステージ)、「シードステージ」(事業準備ステージ)、「トドラーステージ」(事業開始直後ステージ)のスタートアップだ。

プレシードステージでは、「研究開発・生産のプロからのアドバイス・コーチング」「事業支援の資金援助」「マネジメントに関するアドバイス・メンタリング」などを提供。シードステージでは「研究開発支援」「試作品製作援助」「フィナンシャルアドバイス」などを行う。最後のトドラーステージでは、「初回の無償生産サポート」「軌道に乗るまでのMOQ(最低発注数)サポート」など手厚い支援を予定している。支援の最高額は1,000万円となる見通しだ。

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処方設計における品質確認

トキワのアクセラレーターが誕生した裏側をもう少し深掘りすると、そこには同社が専門とするカラーコスメにおいては、新興ブランドが大手ブランドと真っ向勝負するのが難しい分野だという前提がある。世界各国の多様な消費者に合った商品を提供するためには、多色化技術を確保する必要があり、SKU数も多大になり、そのぶん必要な資金も多額になる。

昨今の新興ブランドがデジタルマーケティングに強みを持ち、D2Cで販路を確保できるとしても、スキンケアのようなリピート性が低いために、売上予測がたちにくく、成長過程でR&Dや在庫管理のノウハウも必須となってくる。

そこでカラーコスメに強みを持つトキワがパートナーとして協業すれば、課題解決のスピードが早まる。結果、ブランドは成長を維持することができ、生産を担うトキワにも利益が生まれる。このWin-Winのパートナーシップこそ、トキワが築いていこうとするものだ。この意味では、スキンケアにおいてD2Cブランドの製造に特化しているサティス製薬との対比で、「カラーコスメでのD2Cブランドの製造にも強いトキワ」となろうとしている、という言い方もできる。

「弊社はアクセラレーターを通じて、力を秘めたプレイヤーとパートナーシップを構築していく考えだ。日本でこの思想にもとづいた “アクセラレーターのプロトタイプ” をつくり、ゆくゆくは米国やアジアにおいても展開していきたい」(金井氏)

同アクセラレーターの運営メンバーとしては、インターンスタッフを起用した。金井氏は「既存の会社の在り方に新しい風を入れるため」、また「スタートアップ企業など若い世代とミスコミュニケーションが起きないようにするため」と、その理由を説明する。

複数のスタートアップでインターンとして働き、今回、トキワのアクセラレーター運営を担うことになったインターンスタッフ・五十嵐千奈氏は、「立ち上げから生産過程にいたるまで、新たな発想をすることが大事であり、そのアイディアや考えを言語化し共有する高度なコミュニケーションがアクセラレーターの成否を分ける」と感じているという。

オンラインで受注を完結する「ライブラリーシステム」構想

トキワはアクセラレーターの展開とともに、自社のDX(デジタルトランスフォーメーション)にも着手しようとしている。それはデジタルシフトを単に強化する意図というよりも、パートナリングマニュファクチャービジネスモデルを構築するうえで、「透明性」を担保し、「オープンイノベーション」を加速させるための手段になると考えているからだ。

金井氏は「デジタル上でOEM生産の発注が完結するライブラリーシステムという形をまず整える。我々が調達可能な容器と、特許を取得している処方を組み合わせ、レディメイド的な製品生産を完結できるところから始める。そのために、B2B用のカート機能を今年中には実装したうえで、パイロットカスタマーの方々とテストをしていきたい。その後、1年ごとにカスタムメイド、オーダーメイドと移行できれば面白いと考えている」と説明する。

CCBO(クリーンビューティオフィサー)を配置

このように、アクセラレータープログラムや受注・生産のDXなど、業界内でも先鋭的な取り組みを行うトキワは、世界的な美容トレンドをどう見ているのか。金井氏は「新型コロナウイルスの影響で短期的かつ予想が難しい需要の変化はある」としながらも、「中長期的にはサステナビリティを重視する傾向が強まるだろう」と確信を持って答える。

「欧米ではサステナビリティの考え方がすでに定着しており、美容だけでなくファッション分野においても、大手が意識するトレンドになっている。影響力を持ったインフルエンサーたちが(サステナビリティを)強調し始めたことも大きい。そして米国では、サステナビリティをベースにしたクリーンビューティが伸びている。日本に本格上陸するのは3年後くらいと考えていた。だが、新型コロナウイルスの影響で地球環境に対する意識が高まっているため、スピードが早まるかもしれない」(金井氏)

トキワはサステナビリティのトレンドを強く意識し、「クリーンビューティに明確な答えを持ったOEM」を目指すとする。前述の通り、カラーコスメにはダイバーシティが必要だが、その分、SKUや商品生産量が増えるため、環境に配慮した成分を最適に選択していくことが難しい。そこで長年培った研究成果や知見を活用して、ブランドに対して適切な生産方法やパッケージを提案するポジションを築くことが、トキワの重要かつ新たな戦略となる。

「ゴミの廃棄の仕方ひとつとっても、日本はサーマルリカバリー(廃棄物焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用すること)、米国は埋め立て中心、欧州は国ごとに差異はあるが両方のミックス。そうなると生産時の方法やソリューションも異なってくる。我々としては、原材料と容器に対する取り組みを続けるなかで、各国の取引先に最適なクリーンビューティソリューションを提案していく。すでに社内には、最高クリーンビューティオフィサー(CCBO)という役職も置いた。クリーンビューティの定義づけから始まり、我々が用意できるスタンダードな提案、また毎年のステップに対する構想など、あらゆる方向から用意を進めている」(金井氏)

日本においては、新興ブランドがカラーコスメ×クリーンビューティという文脈で注目を集めるのはこれからだ。まだ、消費者にサステナブルな志向が根づいているとは言いがたく、そのため収益性という意味でも算段がしにくい。哲学やストーリー性は良しとされても、資金調達は容易にはいかないだろう。トキワはそこにエコシステムをつくり、クリーンビューティの台頭を実現するための風穴を空けるつもりだ。金井氏はそれを、歴史ある会社の義務と語る。

「社会的意義を踏まえた会社が長期的には勝つが、短期的には難しい。そうジャッジされてしまうスタートアップも少なくないはずだ。我々はアクセラレーターによるパートナーリング、またクリーンビューティに対する答えを蓄積することで一石を投じていきたい。それこそが歴史あるODM/OEMができることであり、やるべきことだ」

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
画像提供: 株式会社トキワ

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