見出し画像

ポーラ APEX劇的リニューアルは20年追い続けたスピードと質、そして共創から誕生

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。お
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

大幅リニューアルを敢行したポーラのパーソナライズコスメブランドAPEX(アペックス)がこの7月から店頭に登場する。前回の記事では、一人ひとりに最適化した処方を割り出す業界初のAIを活用した肌分析技術と、診断結果に顧客の好みを反映させるパーソナルな提案の過程を一足先に体験レポートした。後編となる今回は、新しいアペックス誕生までの舞台裏とファンを巻き込むマーケティングについて検証する。

AIツールで肌分析を店頭で即時に

新生アペックスの最大の改革点は「即時性」にある。つまり、ポーラが蓄積してきた膨大な肌データと独自の動画や静止画像解析技術を掛け合わせた肌分析を店頭で受けると、その場で診断結果が得られて、862万通りの処方パターンから、各自に最適な製品をカスタマイズするところまで一気にできるようにしたところだ。

だが、そこに至る道のりは決して簡単なものではなかった。肌分析の質とスピードの向上を20年間追求してきたAPEXブランドマネジメントチーム ブランドマネージャーの菅千帆子氏は開発を振り返る。

株式会社 ポーラ 
APEXブランドマネジメントチーム
ブランドマネージャーの菅千帆子氏(左)
商品企画部 APEXチーム 大場愛氏(右)

アペックスは誕生以来30年間、顧客の肌の細胞を採取して、それを静岡にある肌分析センターで染色して顕微鏡で確認する「角層解析」をもとに、一人ひとりに最適な商品を提案してきた。パーソナライゼーションの先駆けともいえるこの手法により、ユーザーの支持を得てきたが、一方で診断結果レポートと商品が到着するまでに約1〜2週間を要するため、消費者からは改善を求める声も強かった。そこで、肌のビッグデータと顧客プロファイルをベースに独自の肌解析技術を取り入れることで、即時に分析結果を提示できるシステムの構築に着手したのだ。

高額な分析機器を全国4,000以上ある店舗に導入するハードルの高さや、分析に必要となる肌画像の送受信に、当時の通信回線では膨大な時間を要したことなど、サービス化を目指す道のりは険しく、技術の完成を目前にしながらも、あと一歩で実現にまで至らない日々が続いた。だが、APEXチームは、解析技術のさらなる性能向上とともに、販売現場の誰もが扱いやすい仕様の実現に粘り強く取り組み、ついにこの7月、新生アペックスのデビューが決定したのである。

新生アペックス 画像提供:株式会社 ポーラ

前回の記事でも触れたが、新生アペックスのコンセプトの2つの柱は、客観的で科学的なデータ分析を提供する「センシング」と、データに基づいた適切なケアを提案する「コーチング」である。しかし、これは単純に、テクノロジーによるセンシングと、人間のカウンセラーによるコーチングの2項に分かれるものではない。肌分析においては、実際に機器を取り扱うビューティーディレクターの経験値や観察眼が、顧客プロファイルの作成に重要な意味を持つのであり、未来をも見据えたカウンセリングを支えるのは、AI活用による精度の高い予測と分析だ。

ポーラの販売における重要な資産である「顧客とビューティーディレクターの絆」を活かす発想が、新生アペックスには息づいている。

顧客自身が微調整して完成するパーソナライズ

新生アペックスの大胆な変革の1つには、サンプルの廃止もある。これまで、アペックスは肌チェック後、詳細な診断結果レポートと同時に、各自の肌に最適に調合された全5アイテム1週間分の無料サンプルを届けていた。顧客はこれをテスターとして使用し、気に入れば購入するという仕組みだった。

新しいアペックスではこの方式を改め、肌分析結果に基づき、顧客自身が7アイテム全39種用意されたタッチアップテスター(試供品)を用いて、推奨されたアイテムの実際のつけ心地など、製品のテクスチャーや色を確認できるようにした。たとえば「もっとさらっとしたローションがいい」といった希望があれば、それにあわせて自分好みにカスタマイズができるわけだ。

新生アペックスのタッチアップテスター

そこには、AIがレコメンドしてくるものをそのまま鵜呑みにしたくない、少なくとも与えられたものが本当に自分にあっているのか事前に確かめたい、自分の好みを取り入れたいといった人間の感情への配慮がある。実際、「分析結果を信頼しているけれど、やっぱり自分が好きだと思えるコスメを選びたい」といった多くのユーザーからのフィードバックが、菅氏をはじめ、APEXチームの決心を促した。ユーザーに“選ぶ楽しさ”を味わってもらいたいという、ユーザーの気持ちに寄り添う「顧客志向」をより深めていった。

アペックスファンからの声がブランドを育てる

「顧客志向」はAPEXのマーケティングにおいても重要なキーワードだ。

この新生アペックスに先立ち、クローズドのファンコミュニティ「APEX LOUNGE」を2016年に立ち上げた。ユーザーと直接向き合い生の声を聞くとともに、そのフィードバックを商品サービスの改善に役立てる「共創」の視点を加えて、APEX LOVERSと呼ばれるアペックスに特に強い愛着を持つ顧客を会員として迎え入れる招待制のコミュニティだ。

APEX LOUNGEに集う、購入頻度が高く、かつ独自のアペックス熱狂度テストをクリアしたファンの中のファンであるLOVERS向けに、最新情報の発信やコミュニティサイトを通じたさまざまな交流のほか、APEXチームがLOVERSに「会いに行く」をコンセプトにしたMeetupイベントなどを開催している。

新生アペックスの開発過程で、LOVERSから寄せられた率直な意見や感想は、すでに幾多の場面でインスピレーションの源になっているが、今後のマーケティングにおいても、こうした熱いファンによる口コミをPR活動のベースにする考えだ。

大規模なキャンペーンや広告を展開しないのは、「アペックスは体験あってのブランド。15秒のTVCMやウェブのランディングページでは伝わらない」からだと、菅氏は説明する。まずは既存顧客に、生まれ変わったアペックスを試してもらい、その実体験や評価をネットやリアルな場で語ってもらうことで潜在顧客への認知を広げたいとする。

そもそもLOVERSと呼ばれる顧客がアペックスの熱狂的なファンになった理由は、パーソナライズドされた商品が「自分にマッチしている」という実感に加え、ビューティーディレクターへの絶対的なまでの信頼があるからだという。菅氏は「ビューティーディレクターは、プロではあるが、決して“先生”にならず、常に隣で“伴走”しながら、お客様の背中を押すコーチの役割を大切にしている」と語る。そして、5年後、10年後のために今から高めておくとよい力、未来の肌のポテンシャルの分析が可能になった新生アペックスは、顧客とビューティーディレクターが今まで以上に緊密で長い付き合いを続けることを後押しするだろうと示唆する。

画像提供:株式会社 ポーラ

アペックスでは今回初めてスマホアプリを提供し、分析結果のログを溜められるようにしているが、アプリでユーザー自らが肌解析を行うなど、ビューティーディレクターを介さずに完結させることは考えていない。目指しているのはむしろ、ビューティーディレクターの共感力を高め、顧客に寄り添う姿勢を強化することだ。そのため、店舗のオーナーマネージャーのコーチングスキルを磨くなど、美容関連以外のスキルを高める研修も取り入れている。

簡便かつ高精度に肌の深部の状態を分析できる動画解析など、業界初の技術も投入されている新生アペックスだが、テクノロジーはあくまで、人と人とのつながりを強くし、未来の可能性を広げる手段としての役割を担っているのだ。

取材&Photo: 公文紫都 (Shidu Kumon) Text: 編集部
Top image: Luca Bravo via Unsplash

ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
5

BeautyTech.jp

美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp

国別

BeautyTech.jpの記事を国別にまとめたマガジンです。
2つ のマガジンに含まれています