見出し画像

人間を超える成果、AIチャットボットでカスタマーサポートはどこまで進化するか

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

自然言語処理など、人工知能技術の発達とともにさまざまなビジネスに普及しはじめているAIチャットボットは、カスタマーサポート部門でも徐々に導入が開始されている。顧客の問い合わせやクレームを処理する機能を自動化するメリットはどこにあるか。専門家の証言・分析から考察する。

カスタマーサポートに浸透するAIチャットボット

チャットボットやバーチャル・カスタマー・アシスタント(VCA)を駆使して、カスタマーサポート業務の効率化を図ろうという企業の動きが盛んになっている。その普及スピードについて、米調査会社Gartnerは2018年2月、「企業の顧客サービス/サポート業務に関して、エンゲージメント・チャネル全体における仮想顧客アシスタント (VCA)/チャットボット・テクノロジーの統合が、2017年の2%未満から2020年までに25%へ増加する」との予測を発表している。

カスタマーサポートの自動化の流れは、昨今の人工知能(AI)技術のブレイクスルーに支えられている。チャットボットやVCAのテクノロジーの肝は、数字やプログラミング言語ではなく、普段人間が使う言葉から問い合わせの意図を正確に把握して、適切な回答を行う(正確には用意された回答の中から提示する)プロセスにある。

そのため、AIのなかでも自然言語処理などの技術が重要となってくる。Gartnerの発表を行ったマネージング・バイス・プレジデントのジーン・アルバレス氏も、「(チャットボット・VCAを導入する)傾向を増大させているのが、自然言語処理や機械学習、および意図のマッチング能力の向上だ」と指摘している。

Image: Monkey Business Images Via Shutterstock

AI技術がチャットボットに進化をもたらすなか、エスティ ローダーやセフォラといった美容業界各社もカスタマーサポートの自動化に動き出している。直近では、ドクターズコスメの製造販売を行うアンプルールが、公式サイト上でチャットボットによるカスタマーサポートサービスを開始した。

出典:アンプルール

同社のAIチャットボットはアンと名付けられており、24時間いつでも問い合わせや質問に答えてくれる。また、女性向けサプリメントや美容関連アイテムを自社ECサイト上で販売するECスタジオも、カスタマーサポートにチャットボットを導入している。同社では、導入3ヵ月の時点で、問い合わせの4分の1をチャットボットが処理するまでにいたったという。その結果、全体的な問い合わせへの対応スピードが向上する一方、応対ミスや社員の残業が大きく減少したという成果が報告されている。

実コンバージョンはAIチャットボットのほうが高い

ここで、企業がカスタマーサポートを自動化していくメリットを改めて整理してみたい。まっさきに思い浮かぶのは、「コスト削減」「人的リソースの有効活用」「対応品質の向上」などの効果だろう。チャットボットシステムの提供を行うShowTALKの無尽洋平CEOは、7月に開催されたAI企業オルツ主催のカンファレンスで、自社チャットシステムの効果を分析した結果を次のように報告している。

「(企業が)AIチャットボットを導入することで、対応件数が増え、人件費が削減できるようになる。(同社サービスShowTALK+Assistを導入した場合)平均返答時間が80%短縮。1時間あたりの対応数が135%増加。そして月間獲得数が120%増加するという効果を生んでいる。さらに特徴的なのは、獲得効率だ。分析結果では、チャットを開始して実コンバージョンにいたるまでの精度は、人間のスタッフよりAIを搭載したチャットボットの方が高い。この事実は、非常に大きなパラダイムシフトを意味すると考えている」

AIチャットボットには、問い合わせの類型や内容を学習し徐々にスマートになっていくという特徴がある。現在では単に人間がこなしていた作業を代替するだけではなく、的確かつ素早く質問に答えるという能力において人間のスタッフを凌駕しつつある。そして優れた回答機能で顧客満足度を高め、企業価値に寄与しはじめている。

前出のGartnerのレポートにも、「VCAを導入した企業から受けたフィードバックによると、電話や人間が対応するチャット、電子メールによる問い合わせは最大70%減少している。さらにこれらの企業は、“顧客満足度が高まった”“音声によるコミュニケーションが33%削減された”といった効果も明らかにしている」として、AIチャットボットがコスト・時間の削減だけでなく顧客満足度の向上をもたらしているという報告がある。ECスタジオも、チャットボット導入で、問い合わせが35%減り、残業とミスが減ってスタッフが本来すべきサービスに取り組めるようになったという。これが顧客満足度につながっていることは容易に想像できる。

顧客の要望をデータとして集積できるというのも、カスタマーサポートにAIチャットボットを導入する大きなメリットになる。問い合わせや正当なクレームは、企業価値を高めてくれる“宝の山”だ。会話内容を人間のスタッフが恣意的、もしくは何かしらの先入観を持ってパソコンに整理していくよりも、チャット上のテキストデータをそのまま保存した方が、有効に利活用できる。また蓄積されたビックデータをさらにAIツールなどで解析すれば、企業はPDCAサイクルの改善などにおいて、効率的に消費者の行動や思惑、いわゆる顧客インサイトを得ることができるようになる。

Image: rawpixel Via Unsplash

カスタマーサポートの労働環境を改善するチャットボット

AIチャットボットの存在は、カスタマーサポートという職種自体の労働環境や質を変えていく可能性も秘めている。

たとえば、悪質なクレーマーの存在が社会問題化している韓国では、労働環境の改善のため、コールセンターにAIチャットボットを導入する企業が増えているとの報道があった。韓国では電話窓口で暴言を吐いたあと、担当スタッフの名前や連絡先を聞き出そうとしたり、身体的危害を加えると露骨に脅迫してくるケースも少なくないという。スタッフが反論することは許されず、謝り続けなければならない。その厳しい労働環境は、離職率に明確に表れている。韓国では同業種に3年以上勤務するスタッフの数は、18人中わずか1人だ。退職理由は「クレームによる精神的ストレス」がトップである。

日本でも、コールセンターの離職率は高い。資料統計によってバラつきはあるものの、なかには1年間の離職率が9割に達するという分析もある。その主な理由には、韓国同様にクレームによるストレスもあるが、問い合わせの内容をすべて覚えて正確に返答し、かつ数をさばかなければならないという要求の高さもネックになっているという。この労働環境の改善は、経営者やマネジャーにとっても喫緊の課題だ。

AIチャットボットサービスの状況を俯瞰してみると、大きく2つのタイプがあることに気がつく。1つは、問い合わせのほとんどをチャットボット単体で処理させようとするタイプ、もう1つがチャットボットと人間が役割を分担するシステムを持ったタイプである。

技術的に発展途上にある現在、企業に寄せられた問い合わせのすべてをチャットボットが処理するというのはほぼ不可能に近いだろう。なかには、チャットで問い合わせるという行為自体に不慣れ、もしくは好ましくないと思う人々もいる。カスタマーサポートにチャットボットを採用する企業側が、どのような問い合わせをAIに処理させるかなど、事前に業務全体のフローをしっかりとイメージしてつくり込む必要がある。

資生堂では、LINEで美容のプロがチャットで相談にのってくれるが、今後、AIチャットボットから、こういった人との相談にシームレスに振り分けていくといったサービスも必要になってくるはずだ。

Text: 河鐘基 (Jonggi HA )
Top image: Shutterstock

ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
6
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp