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セフォラやエスティ ローダーに続け。美容業界はもっとチャットボットを活用できる

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さまざまな業界の「チャットボット」熱は、まだまだ冷めることはない気配だ。美容業界は先行する一部の企業をのぞき、これからといったところだろう。とはいえ、美容業界に向けたチャットボット情報のキュレーションサービス「Beauty.bot」が誕生するなど、新たな動きも出てきている。

デジタルマーケティングで活用盛んなチャットボットの仕組みをたとえるなら、「白雪姫の継母である魔女がもっていた鏡」というのがわかりやすいかもしれない。「世界でいちばん美しいのは誰?」という問いかけに対して真実を教えてくれる魔法の道具のように、融通がきかない部分も含め、よく似ている。

Photo by Fikri Rasyid on Unsplash

チャットボットを語義通りに「対話型プログラム」と説明してしまうととっつきにくいが、iPhoneに搭載されている「Siri」や、2018年4月より日本での販売も開始されたAmazonのスマートスピーカーに搭載された「Amazon Alexa」も一種のチャットボットといえる。音声でも文字入力でもいい、友人にLINEでメッセージを送るのと同じ感覚で質問をすれば、ボット(ロボットの略称で、つまりは“AI=機械”)が自動的に応対してくれる。市場に展開されているチャットボットのなかには、カスタマーサービス的な「お問い合わせ」に対する回答から、他愛のないおしゃべり的な対話ができるものまで、さまざまだ。

この手のサービスは英語圏での普及が早いが、日本でも多数リリースされている。まず美容業界以外でよく知られたところでは、個人向け通販サービス「LOHACO」の問い合わせ対応チャットボット「マナミさん」(同社ウェブ上で展開)や、リクルートジョブズが運営するアルバイト情報チャットボット「パンダ一郎」(LINEアカウントで展開)がある。B2Cのサービス提供だけでない。三井住友銀行は行内からの問い合わせに対して回答を返すチャットボットを導入した結果、自己解決率が90%を超えたとして、グループ内各社へと展開する計画を立てているという報道もあった

米国セフォラにみるチャットボット成功例

美容業界において、チャットボットを世界で初めて導入したのは、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン傘下のセフォラだった。

2016年3月、同社はカナダ発のメッセンジャーアプリ「Kik」上でのチャットボットの展開を開始。その内容は、商品についての問い合わせだけでなく、メイクアップのちょっとしたコツやヒントをゲットできるほか、そのままアプリ内で商品購入までできるというものだった。

そもそもKikは、2016年当時からすでに米国のティーンたちに絶大な人気を誇るメッセンジャーアプリである。ガートナーのリサーチによると、米国のミレニアル世代の実に60%がチャットボットを使用したことがあると答えているが、セフォラの試みは、ジェネレーションZに向けたデジタルプロモーションとして期待以上の成果をあげた。

(Facebookメッセンジャーで「Sephora Assistant」に店舗情報を問い合わせ)

セフォラはKikだけでなく、Facebookでもチャットボット「Sephora Assistant」を展開、ユーザーはメッセンジャー上で簡単に「メイクオーバー(変身)セッション」のための来店予約ができる。その結果として、予約獲得率が11%増加したという。さらに、チャットボットを経由して予約・来店した顧客が平均して50ドル(約5,300円)以上の買い物をしており、顧客単価も上がった。チャットボットでのやりとりによりブランドと顧客がより強いエンゲージメントを形成できた成功例といえる。

画像:Vlad Teodor / shutterstock.com

可能性に気づきはじめた美容業界

このように、チャットボットの活用事例は増加し、2017年時点ですでにFacebookメッセンジャー上には業界問わず10万を超えるチャットボットが存在している。

美容まわりのチャットボットの多くはメイクアップそのものや商品選びについての疑問を解決するもので、ユーザーそれぞれの不安や興味に対してどれだけ精度の高い回答を返せるかがキモになっているようだ。エスティ ローダーがModiFaceの技術提供により昨年7月にリリースしたのは、ユーザーに最適なリップ製品をリコメンドするチャットボットで、クイズに答える気分で用途や好みを指定するといくつかの候補が示される。

自分のセルフィーを送ると本当にその口紅を塗ったかのような画像が即座に返信され、バーチャルなお試しも可能だ。Urban DecaySmashboxも同様のARを用いたチャットボットを運営しているほか、ロレアルや米コスメブランドのCoverGirlもそれに続いている。

美容業界におけるチャットボットの導入事例は、他の業界にくらべ、数という点では今のところあまり多くはない。しかし、企業が可能性を感じだし盛り上がりつつある状況に反応するかのように、マーケティング企業も目配せをしはじめた。

カナダを拠点にチャットボットをソリューションとして提供するAutomat社が「Beauty.bot」を立ち上げたのは、2018年2月のこと。同社CEOのアンディ・マウロによると、Beauty.botは美容業界がチャットボットについての知見を得て、シェアするプラットフォームなのだという。リンク先のウェブサイトは意外にあっさりした情報量にみえるが、美容業界関係者が手に入れたいチャットボットに関する情報・ニュースがわかりやすくキュレートされ、業界全体で情報を共有していこうという試みのように見える。

マウロCEOは、英ウェブメディア『Fashion Network』に対して、次のように語っている。「ブランドのみならず、製品の開発者やテクノロジー企業、さらには消費者の知識を高めることが必要とされている。美容向けのボットは急速に成長していて、求めている情報にたどり着くだけでも大変なのだから」

Autmatと同じカナダ企業として美容業界向けのAR技術を牽引してきたModiFaceがロレアルに買収されたこともあり、技術提供会社の勢力図がどう変わっていくかもしばらくは注目したい。

Photo by Andres Urena on Unsplash

チャットボットの導入メリットとその応用

確かにチャットボットのメリットは大きい。

1つはカスタマーサポートの簡略化とコストの削減。想定される問い合わせや質問に対する回答を事前にボットに登録しておけば、簡単に対応ができ、これまで人間が個別に行ってきた業務が大幅に減る。さらにそこから、次の段階として注文受付にもつなげられるだろう。

2つには、ユーザーと企業がダイレクトにつながる機会が増加する。企業のサイトを見ているユーザーが「ちょっと話を聞いてみたい」と思ったときなど、チャットボットなら、フォームに個人情報を入力する手間もなく、LINEなど使い慣れたメッセンジャーアプリの操作ひとつで即時に回答が得られるので、気軽に問い合わせをしてくれる。相手が“人”ではないという心理的な気楽さもあり、従来なら、面倒とか恥ずかしいという理由でコンタクトにまで至らなかった質問を引き出せる可能性もある。

3つめとして、これが一番重要かもしれないが、気取らない友人同士のような1対1の会話を通してユーザーの好みや傾向、本音を正確に把握でき、かつパーソナルな結びつきを深められるという点だ。とくにミレニアル世代やその下のZ世代は、リアルな対面でのコミュニケーションを避ける傾向があり、その世代との結びつきを深めるためのツールとしても期待が持てる。

いずれの特徴も、より効果的なマーケティングに活かせるのに加え、顧客のロイヤリティーを高め関係を強化したいブランドにとっては、またとないツールとなりうる。

振り返れば、2016年は「チャットボット元年」といわれ、2018年は「スマートスピーカー元年」といわれている。音声によるコマンドにAIが応えるという図式は、まさにチャットボットそのものだ。チャットボット分野の啓蒙をうたうBeauty.botがどのくらい支持されるかはまだ未知数だが、この技術が人々の生活にますます浸透していくのは間違いない。

Text: 年吉聡太(Sota Toshiyoshi)


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