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丸紅がフェムテック関連事業参入へ。福利厚生に不妊治療など、日本企業の動向

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2021年も3月8日の国際女性デーにちなみ、
フェムテックや女性エンパワメントの
トレンドを積極的に紹介します
(フェムテック過去記事はこちら

2025年までに5兆円規模に成長するといわれるフェムテック市場。日本でも社員の健康経営施策として福利厚生に取り入れたり、企業間連携でフェムテックサービスに新規参入する例が目立ってきた。すでに欧米で成功をおさめた海外企業が日本向けにローカライズした福利厚生サービス展開の例もある。活発化するフェムテック市場参入事例をまとめた。

丸紅はルナルナと組み、新規ビジネス創出と社員の健康管理の双方に取り組む

丸紅株式会社は、「ルナルナ」を運営している株式会社エムティーアイとそのグループ会社の株式会社カラダメディカが提供する「ルナルナ オンライン診療」にもとづく「オンライン診療を活用した婦人科受診と低用量ピル服薬の支援プログラム」の試験導入を開始予定だ。

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提供:株式会社エムティーアイ

丸紅は2020年秋頃に、フェムテック領域での新規ビジネス創出を目指して、20〜50代の女性従業員約10名からなるプロジェクトチームを社内に発足。さまざまな業界と接点をもつ総合商社ならではの視点でフェムテック関連ビジネスの創出を模索しており、今回の試験導入は、その実装の位置づけでもある。

男性社員比率が高い丸紅では、女性特有の健康課題についての理解促進と、悩みを気軽に相談できる社内の雰囲気づくりに課題を感じており、今回、ルナルナが実施する女性のカラダとココロの理解浸透プロジェクト「FEMCATION(フェムケーション)」と連動した知識講座の実施と、低用量ピル服薬支援プログラムの導入を決めたという。

第一弾として、カラダメディカとルナルナが主催で、東京大学医学部附属病院 産婦人科 准教授 甲賀かをり氏による「女性のカラダの知識講座」が開催され、男女あわせて約120名の社員が自主的に参加した。参加者からは、「月経は女性にとってネガティブになりがちなものだが、講座を聞いて前向きに付き合っていけそうと思えた」(女性社員)「知らないことばかりだった。知識を増やすことが大事だと感じた」(男性社員)といった感想が寄せられた。

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オンラインで開催された
「女性のカラダの知識講座」
提供:株式会社エムティーアイ

丸紅株式会社 経営企画部 フェムテックプロジェクトチーム 野村優美氏は、「ビジネス視点のみならず、健康経営目線でフェムテックに注目しており、今回の試験導入もスムーズに決まった。女性社員だけでなく、男性社員も含めて、月経痛やPMS、更年期など女性特有の症状に関する正しい知識を学んで意識向上をはかることで、社員全員が働きやすい職場をつくっていくとともに、ビジネス創出のヒントにしたい」と今後の展望を語った。

卵子凍結のグレイスグループ、ベネフィット・ワン会員に優待価格でサービス提供

株式会社グレイスグループはパソナグループの株式会社ベネフィット・ワンと業務提携し、2021年2月3日より、ベネフィット・ワンの会員(1万892団体、868万人、2020年9月時点)を対象に、グレイスグループが運営する選択的卵子凍結*サービス「Grace Bank(グレイスバンク)」の優待価格での提供を開始した。福利厚生プラットフォームで、選択的卵子凍結サービスを公式メニューとして採用することは国内初となる。また、同年3月23日には、「福利厚生倶楽部」の会員(1万2,600社、735万人、2020年6月時点)をもつ株式会社リロクラブとの業務提携も発表された。

*選択的卵子凍結とは:
医学的に妊孕性(にんようせい)喪失が差し迫っている状況ではない人が、自身の将来のライフプランのために実施する卵子凍結とグレースバンクが定義

両社は、少子化や、高い技術がありながら不妊治療の成功率が低い、女性の社会進出が進まない、といった日本の社会課題の改善・解決には、企業などを巻き込んだ社会全体での取り組みと、最新ソリューションの積極的な活用が不可欠であるとし、業務提携を通じて、多様化する女性のキャリアやライフプランを積極的に支援し、社会全体の利益の創出に取り組むとしている。同時に、ベネフィット・ワンが提供するベネフィット・ステーションの会員向けに、卵子凍結に関するセミナーを開催し、広報・啓発活動も積極的に行っていく考えだ。

そのほか、2021年3月5日に発表となったJapan BeautyTech Awards 2021では、企業向け更年期相談サービス「TRULY チャット相談 for Business」が準大賞を受賞したほか、以前紹介した卵子凍結の「プリンセスバンク」、働く女性の健康支援サービス「スマルナ for Biz」など、企業の健康経営を支援するフェムテックサービスが増えてきている。

SOMPOひまわり生命は京都大学発スタートアップFamileafと新サービスの実証実験

健康応援企業への変革を目指し、保険本来の機能(インシュアランス)に健康を応援する機能(ヘルスケア)を加えた「インシュアヘルス®」を新たな価値として提供しているSOMPOひまわり生命保険株式会社は、京都大学発スタートアップ 株式会社Famileafとの協業を2021年2月に発表した。

Famileafが開発する「hug+u(はぐゆー)」は、妊産婦のスマートフォンから集める健康データ(PHR/Personal Health Record)から健康状態やストレスの分析・測定を行い、妊娠期の体の管理や、一人ひとりの状況に合った個別助言を行うアプリだ。日々のデータは、かかりつけ医などに共有することで、妊娠中の身体的・精神的不調の早期発見につなげることができる。

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出典:株式会社Famileaf

今回の実証実験では、新サービスの研究開発の一環として、SOMPOひまわり生命の従業員、京都大学医学部附属病院、京都府内提携病院の妊婦などを対象に、hug+uを2週間提供し、利用者体験の検証・市場ニーズ調査を行う。その結果をもとに、妊婦とパートナーに寄り添った健康サービス・情報コンテンツを拡充し、2021年4月以降の本リリースに向けてアプリ開発を進め、社会課題とされている妊娠期の合併症やうつ状態の予防および早期発見に貢献することを目指す。

GUはオムロン ヘルスケアとルナルナのデータから商品やコンテンツ開発

2021年3月8日、「ジーユー(GU)」が、女性の健康をサポートする商品開発・販売・情報発信を行う新プロジェクト「ジーユーボディラボ」を発表。第一弾として、吸水ショーツ「トリプルガードショーツ(1490円/税別)」のほか、補正下着、着圧フットウエアなど9商品の販売を開始した。

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出典:株式会社ジーユー

商品開発にあたり、GU、オムロン ヘルスケア、ルナルナの3者で、20~40代の5,000人の女性を対象に意識調査を行ったところ、約87%の女性が月経前後で心や体に変化を感じていたが、その対策として「何もしていない」と回答。その結果を受け、女性特有の悩みに関する知識浸透の重要性がわかり、商品の販売だけにとどまらず、情報発信にも力を入れていく方針になったという。7月には、オムロン ヘルスケアの運営する「オムロン式美人」と、エムティーアイが運営する「ルナルナ」から情報を受け、女性の健康リテラシー向上を目的とした「フィメール ライフスタイル ファクトブック」を、GUのEC内で公開する予定だ。また今後、オムロン ヘルスケアと協業して女性の健康に貢献する商品開発を開始することも発表された。

そのほか、美容企業では、株式会社カネボウ化粧品のブランドで、美しさのリズムに着目してきた「TWANY(トワニー)」がルナルナとコラボレーション。ルナルナアプリ内にタイアップコンテンツを設置したほか、「TWANY×ルナルナ フェムトークライブ」を開催するなど、フェムテック文脈で女性の美に寄り添うプロモーション事例も出てきている。

先行する米国から、不妊治療のための福利厚生サービスを提供するCarrot Fertilityが日本上陸

フェムテックの盛り上がりで一歩先をゆく米国では、企業は「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)」の取組みにおいて、すべての従業員への包括的なサポートとして、妊娠や不妊治療のための福利厚生を追加・拡充している。その内容は、卵子や精子の凍結、体外受精などの助成にとどまらず、LGBTQのカップルが代理出産や養子縁組を通して等しく家族を持つことのサポートも含まれている。

米国Willis Towers Watsonの調査によると、雇用主の約半数が、妊娠・不妊治療の福利厚生を提供しており、2022年には63%まで上昇すると予測している。従業員側も、今後5年以内に妊娠を検討している25〜40歳の米国人1,000人のうち68%が「妊活・不妊治療の福利厚生がある会社に転職したい」と回答しており、ミレニアル世代では70%に達するというデータもある。

こうした流れをうけて、米国では妊娠・不妊治療の支援を企業の福利厚生サービスとして提供する企業が登場しており、なかには、Carrot Fertilityのように日本でサービスを展開している企業もある。

Carrot Fertilityは、Box、Snap、Slack、Pelotonなど200社以上が導入している不妊治療に特化した福利厚生サービスだ。共同創業者のTammy Sun(タミー・サン)氏自身の不妊治療の経験から、「必要とするすべての人が不妊治療を受けられるように」との思いで2016年に創業された。現在、北米、アジア、ヨーロッパ、南米、中東の50カ国で利用可能で、サンフランシスコ、ニューヨーク、シカゴ、東京、中国、ダブリン、ジュネーブにオフィスがあり、サービスのローカライゼーションを進めている。

米国では、ほとんどの人が勤務先の企業を通じて医療保険に加入するが、多くの企業は、不妊治療を受けられる保険に加入していないため、すべて自己負担で治療を行わなければならなかった。そこで企業がCarrot Fertilityと契約することで、従業員は福利厚生の一環として、Carrot Fertilityが提携する病院で費用負担を減らして不妊治療を受けることができる。企業は、従業員の利用率に関わらず、従業員の数とサービスを利用する国の数に応じた金額を、年間契約でCarrot Fertilityに支払うビジネスモデルになっている。

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日本円に変換表示されたアプリ画面
出典:TECHBLITZ

Carrot Fertilityは、2020年6月には、妊娠可能期間を89%の正確度で知らせてくれる排卵トラッキングブレスレット「Ava」と提携して、遠隔で不妊治療を支援するサービスをスタート。コロナ禍の厳しい状況にも素早く対応し、同年8月には、シリーズBで2,400万ドル(約26億1,600万円)の追加調達にも成功した。

サン氏は、「Carrot Fertilityの強みは、シンプルにすぐに使えるサービスを、グローバルで提供している点にある。各国に現地チームを設け、サービスのローカライゼーションを行っている唯一の企業だと自負している。また、どの国の企業であっても、保険でカバーする内容などは、それぞれの企業の希望や必要に応じて柔軟にカスタマイズできる」とインタビューに答えている

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従業員向けに発行される不妊治療用の
デビットカード
対象の医療施設では支払いが不要となる。
出典:Carrot Fertility

3月は、国際女性デー月間にちなんで、さまざまなフェムテックイベントが開催されている。次回はそのなかから、美容企業が今後の事業ポートフォリオを考えるうえで参考にしたいフェムテックの可能性をまとめて紹介する。

Text:小野梨奈(Lina Ono)
Top image: Maria Skrigan via shutterstock

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