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「ハイブランドの新化粧品ライン」「マイクロバイオーム保護のUV成分」がキーワード【海外トレンド 2023年8月-9月】

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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流をひも解く。今回は、ラグジュアリーファッションブランドが立ち上げる新化粧品ラインとその狙い、また、欧米で定着しつつあるマイクロバイオームにアプローチする技術を活かす日焼け止めについてレポートする。


プラダやマーク ジェイコブスなどが新化粧品ラインを立ち上げ

★注目ポイント
フレグランスカテゴリーへの参入は珍しいことではないグローバルファッションブランドだが、最近では、そのブランド名を冠したメイクアップやスキンケアといった化粧品ラインを立ち上げる事例が目に留まる。その背景には、新しいタイプの顧客を呼び込むために間口を広げたいブランドと、高級品を求める欲求を高めているZ世代やミレニアル世代の思いが一致したことがあるようだ。

ボストン コンサルティング グループとAltagammaによる「True-Luxury Global Consumer Insight 2023」では、2022年にラグジュアリーグッズ市場で約2,000億ユーロ(約31兆5,220億円)を消費したZ世代とミレニアル世代は、2026年にはその額が倍増し、ラグジュアリー品購入者の75%を占めると予測している。さらに、こうした若い世代は、ほかの年齢層に比べて高級品に15%多く費やすとされ、同セクターの伸びに大きく寄与しているのは間違いない。

同時に最近のファッション業界では、モノグラムやロゴで主張するのではなく、控えめな見ためだが高級素材や手の込んだ縫製のアイテムで高級感をさりげなく醸し出す「クワイエット・ラグジュアリー(静かなる贅沢)」がトレンドになっている。洗練されたパッケージや高品質な処方、美しいメイクの仕上がりなどで上質感を出すことをうたう高級ブランド化粧品は、この文脈にマッチする。ハイブランドが化粧品ラインに注目する理由のひとつといえそうだ。

また、古くからいわれている「リップスティック効果」も、まだ有効なのかもしれない。リップスティック効果とは、景気が後退すると、人々は家計に負担とならない範囲で気分を上げたり日常から逃避できる買い物で快感を求める傾向があり、その一例として、手の届く贅沢としての高級ブランド口紅の売上が上がるというマーケティング理論だ。服や靴、バッグの所有は今なお一部の富裕層に限られるイメージの高級ブランドを、化粧品としてなら自分も身につけることができるという点にひかれるZ世代をハイブランドは意識しているとも考えられる。その商品が自分にとって本当に価値があるモノなのかを見極めてから購入を決めるとされるZ世代だからこそ、一度気に入ってもらえればそのLTVも高いはずだ。

2023年8月1日、プラダはスキンケアとメイクアップの2つの美容ライン「Rethinking Beauty」を同ブランドの公式サイトで販売開始し、ビューティ市場に本格参入した。同18日には、英国の高級百貨店ハロッズとセルフリッジズでも販売がスタート。今後はドイツやイタリアなど欧州地域への展開を進め、米国では2024年1月から実店舗でも販売する予定とされる。

製品開発は、2021年にプラダのビューティ事業のライセンスを取得したロレアルが担当。33シェードのファンデーション、26色のマットリップスティック、古典的なプラダのプリント柄に触発された6つのアイシャドウセット、3つのスキンケア製品、10本のブラシとツールで構成されている。また、いずれもリフィル(詰め替え)可能な容器設計としているのも特徴だ。価格帯は、リップスティック50ドル、アイシャドウ80ドル、クリーム390ドルとプレステージな位置づけだ。

あわせて、バーチャルメイクアップトライオンサービス(プラダ カラー エクスプローラー)と、ユーザーの肌を高度に分析する肌診断機(プラダ スキン デコーダー)も実装していくという。

「今回、同時に発表されたスキンケアとメイクアップのコレクションは、ミニマリズムとマキシマリズム、洗練と遊び心、シンプルさと多機能性を掛け合わせて、伝統とテクノロジーの両方から、ラグジュアリーと社会的責任を調和させる処方とパッケージを生み出している」と、プラダ ビューティは声明で述べている。

このプラダのスキンケアとメイクアップのコレクションは、2026年までに同ブランドの売上の約25〜30%を占めるだろうとの予測もあり、同社の収益にかなりの重みを加えることが期待されている。

出典:PRADA BEAUTY公式サイト

同じく2023年8月、コティとマーク ジェイコブスはビューティと香水分野を含めた、長期ライセンス契約の内容拡大と延長に合意した。同ブランドの化粧品部門であるマーク ジェイコブス ビューティはもともと2013年に、LVMH傘下のブランド・インキュベーターKendoとともに立ち上げられたが、2021年には理由を明らかにせず終了している。

コティのCEOであるスー・ナビ(Sue Nabi)氏は「20年目を迎えるマーク ジェイコブスとの契約の拡張は、私たちのパートナーシップの永続的な成功とブランドの無限の可能性の証しであり、マーク ジェイコブスの化粧品ポートフォリオの復活は、世界中の消費者が期待しているものだ。この契約は、主要な美容ポートフォリオを作成するという私たちの野心を共有する、世界的なファッションハウスやブランドの頼りになるパートナーとしてのコティの地位を強化する」と表明している。

マーク ジェイコブスのフレグランスのライセンスについては、過去20年間コティが保持しており、なかでも「デイジー」は、同ブランドで最も売れている製品のひとつとされる。

新しいマーク ジェイコブスのプレステージビューティレンジの開発プロジェクトは現在進行中で、今後2〜3年以内に製品をローンチする見込みという。

同時にコティは、アディダスとの長期ライセンス契約も2023年8月に更新している。両社はパーソナルケア、ウエルネス、スポーツ、スポーティライフスタイルに焦点を当てていくとし、たとえば、フレグランスがスポーツのパフォーマンスに与える影響などの研究も進めているとされる。

また、2022年9月に発売されたアディダス「Active Skin & Mind 」シリーズは、グリセロールとヒアルロン酸の複合体を配合して肌の水分補給レベルを高めることで、アスリートの最適なパフォーマンスと疲労回復をサポートするとうたうデオドラントとシャワー製品が含まれている。加えて、シャワージェルのボトルは再生プラスチック(PCR)99.8%、同じくキャップは48%とした。ヨーロッパでの好調を受け、コティは中国での同シリーズのプレゼンスの拡大にも努めていくとしている。

プーチ傘下のファッションブランドのラバンヌ(旧パコ ラバンヌ)は、ビヨンセやテイラー・スウィフトらが愛用するメタルドレスで知られるが、1966年の設立以来変わらぬアバンギャルドなブランドの世界観を反映したメイクアップラインの販売を、2023年8月21日に公式サイトスタート。続く31日には英国セルフリッジズの店頭でも発売した。

メイクアップアーティストのダイアン・ケンダル(Diane Kendal)氏がビューティクリエイティブディレクターとして監修するこのメイクアップコレクションは、ラバンヌのシグネチャーである“金属感”にこだわり、メタルチューブやカプセルのようなコンパクトなど未来的な容器デザインを採用。リップスティック、クリーム&パウダーアイシャドウ、ファンデーション、グリッタースプレー、そしてメタリック“セラム”で構成されている。

2023年9月にはヨーロッパのセフォラで、また、米国では同10月1日よりウルタ・ビューティ(Ulta Beauty)での取扱いが決まっているといい、こうした小売店の動向は、ラバンヌの提案がZ世代の顧客の興味や関心を引き支持が得られると見込まれていることを意味するものだ。

このほかにも、2022年9月エスティ ローダーは、故ピエール・バルマン氏が創設した仏ファッションブランドのバルマンと提携し、2024年の秋を目標に新しいビューティラインをローンチすることを発表。また、資生堂とのライセンス契約終了に伴い、2022年に香水およびメイクアップ製品の製造、販売、流通の直営管理を行う新会社を設立したドルチェ&ガッバーナは、2023年になって、向こう3年間で美容部門の売上を10億ユーロ(約1576億円)から30億ユーロ(約4728億円)に成長させる計画を明かしている。

他方、ケリングに続き、ファッションやジュエリーのラグジュアリーブランドを擁する企業グループが独立した美容部門を興す動きもある。

ジュエリーと時計ブランドのカルティエ、ヴァン クリーフ&アーペル、ピアジェや、ファッションブランドのクロエ、ダンヒル、モンブランなどを所有するスイスのラグジュアリー企業グループのリシュモンは、2023年9月1日、香水とビューティに特化した部門の創設を発表し、CEOに世界2大香料メーカーのひとつDSM フィルメニッヒの執行役員だったボエ・ブリンクグレーヴ(Boet Brinkgreve)氏を任命した。

化学・香料・フレーバーの業界で長年のキャリアを積み、DSM フィルメニッヒでは成分部門のトップを務めたブリンクグレーヴ氏が率いることより、新たな香水ブランドがリシュモン傘下に加わるとの予測も出ている。また、香水のパートナーとしてモンブランとヴァン クリーフ&アーペルのライセンスを付与されているインター・パルファンの今後についても、株式市場では憶測を呼んでいる。

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