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ルイ・ヴィトンの映像バッグやブルガリのIoTなどファッションテック最前線【Viva Technology2019】

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前回に引き続き、パリで開催されたViva Technology(VivaTech)で披露されたLVMHグループのイノベーションを中心にレポート。今回はファッション業界における革新的なプロダクトと顧客体験を紹介する。

まずルイ・ヴィトンの展示では、映像が流れたり色が変わるバッグ、スマートウォッチなどのガジェット、そしてブロックチェーンを活用したトレーサビリティという3つのトピックを紹介したい。

会場で人々の注目を最も集めていたのが、NYで2019年5月に開催されたクルーズコレクションで初披露された、映像が流れるバッグだ。カルフォルニアベースの中国スタートアップRoyole社が開発した、柔軟性のあるフレキシブルディスプレイを使用し、専用アプリでバッグの表面に好きな写真や映像を映し出せる。このスクリーンは薄く自在に曲げられるので、帽子やTシャツにも使用可能だ。

フレキシブルディスプレイを使用した
ルイ・ヴィトンのバッグ
(2020年に発売予定)

また、光ファイバーを使用し、専用アプリで色のパターンや組み合わせを自由自在にカスタマイズできるデジタルバッグとスニーカーも紹介された。こちらは2019年1月に行われたパリの秋冬メンズコレクションで発表され、2019年末に発売予定だという。

パリ・2019年秋冬メンズコレクション。
バッグとスニーカーは10:30ごろから登場

また、すでに発売されているスマートウォッチやワイヤレスイヤホンも紹介された。ルイ・ヴィトンでは、創業当初から「旅」をテーマに商品が作られており、この時計も旅先で必要な情報(飛行機や電車の時刻、ホテル情報、天気など)を文字盤で調べたり、その日の洋服やTPOに合わせて、デザインを自由にカスタマイズできるよう設計されている。ワイヤレスイヤホンは、サングラスのように専用ボックスに入れて持ち運びができる。色やデザインのバリエーションがあり、コーディネートのポイントになるのも魅力だ。

スマートウォッチ(上)とワイヤレスイヤホン(下)

またトレーサビリティとエシカルの観点から、すべてのルイ・ヴィトン製品の生産から購入までの段階にブロックチェーンが導入された。ブロックチェーン企業のConsenSys、マイクロソフト、LVMHのコンソーシアムチェーン「AURA」により、生産から発送、購入まで、改ざんできない形で記録される。

商品購入時に電子証明書が発行され、二次流通した場合も次の持ち主に所有権が譲渡され、記録され続ける。また、シリアル番号を認識して商品が本物か偽物かを即時に判断できるため、偽造品による不利益が増え続けているラグジュアリー業界では重要度が高く、競合のリシュモングループやケリングでも導入が進められている。

AR自販機で若年層に訴求するブルガリ

次に、1884年イタリア・ローマで創業し、2011年にLVMH傘下入りした高級宝飾品ブランド、ブルガリが若い層へのアプローチを狙った3つの顧客体験を紹介する。

1つ目は、ジュエリーを購入できるAR体験つきの自動販売機「Bvlgari Dream Machine」だ。ボックス型のブース内に設置されたタッチスクリーンで、人気シリーズ「B.zero1」のリングなど試したい商品を選び、手をスキャンすると、指のサイズが計測され、バーチャルで指にリングが装着される。手の動きに合わせてリングも動き、実際に自分が身につけているような感覚を体験できる。まだ開発段階とのことだが、クレジットカードで決済可能で、その場で商品も受け取れるという。空港などにポップアップで設置し、旅行者を取り込む狙いだ。2019年中に欧州でサービス開始を目指す。

ジュエリーのバーチャル体験と購入
ができるブルガリのボックス型ブース

リングをつける
バーチャル体験をしている様子

レザーグッズでは、2019年2月に顧客側も販売側も活用できるスマートフォン用アプリ「Bvlgari Touch(Tovch)」のサービスがスタートした。顧客は人気のセルペンティ・フォーエバーのバッグや財布に内蔵されたタグを、アプリでNFCリーダー(世界規格の近距離無線通信技術)を起動して読み取ることにより、商品やキャンペーン情報を得られ、ビデオ、ゲームなどエンターテイメントも楽しめる。一方、販売員側のスマートフォンでは商品詳細や接客アドバイスを確認でき、より迅速でホスピタリティの高いサービスを目指すことができる。ブルガリでは、こういったIoT技術こそラグジュアリー業界のイノベーションのカギだと説明する。

素材や色が豊富な
セルペンティ・フォーエバーのシリーズ

さらに、昨年オープンしたブルガリのローマ本店に隣接したコンセプトストア「New Curiosity Shop」を360度リアルに体感するVR体験もVivaTechに合わせて開発された。ヘッドセットは装着するが、コントローラーを使用しないシンプルな操作で、仮想空間に現れる矢印マークを数秒間見つめることで前に進める。創業ストーリーや限定商品の紹介を読みながら、モダンでデコラティブな店内、130年以上続く老舗ブランドの世界観に触れることができる試みだ。

気鋭のスタートアップによるメガネやスニーカーのAR体験

ファッション分野ではフィッティングのAR体験を提供する企業は複数あるが、LVMH、ケリングなど高級ブランドからの信頼が厚いのがアイウェア専門のARを展開するFittingBoxだ。2006年に創業して以来、14の特許を取得し、繊細なデザインを緻密に、かつ素材の質感をリアルに再現する。アプリなしで8万3,000種以上のメガネをバーチャル体験でき、同社のクライアントはLVMH傘下のアイウェア企業Théliosをはじめ、メーカー、眼鏡店など4,000を超える。

LVMHのCEOベルナール・アルノー氏も
体験を楽しんだ

また、スニーカーのバーチャル試着で注目を集めるWannabyのコーナーは終始、来場者で賑わい、その気軽さと楽しさに歓声があがっていた。同社はジュエリー、マニキュアなどのバーチャル体験も得意とし、AR技術を使った体験でブランドイメージの向上を提案している。

バーチャル体験を楽しむスーパーモデルの
ナタリア・ヴォディアノヴァ。
彼女はLVMHのCEOベルナール・アルノー氏の息子、
アントワーヌ・アルノー氏のパートナーである

フェンディやエミリオ・プッチの店頭やECでの顧客体験

LVMHメゾンのイノベーションはまだまだある。フェンディは、デジタルミラーを使った没入型デジタル体験「Baguette Magic Mirror」を提案した。2018年に高級百貨店のル・ボン・マルシェで展開されたイベントの縮小版で、テーブル上のセンサーに手を当てて、デジタルミラーに現れるフェンディのロゴなどを取り払うと、同ブランドのアイコンバッグ、バゲットが現れるというゲーム感覚の体験だ。来場者はVivaTech限定のフレームでセルフィーをとり、SNSに投稿できるという特典もあった。

フェンディのBaguette Magic Mirrorを
体験する来場者

また、エミリオ・プッチは、インタラクティブな動画体験を披露。現在Station Fの支援プログラムを受けているSmartzerとのコラボレーションだ。彼らは、2017年のLVMH Innovation Awardのファイナリストに選ばれている。

オンラインで購入できるエミリオ・プッチの
2019年春夏コレクションの動画

2019年春夏コレクションのサイトでは、動画の中に現れる「+」マークで、気になる商品をクリックすると、動画が一時停止。商品情報が現れ、そのまま購入もできる。動画は写真よりも洋服をよりリアルに紹介でき、直感的に欲しいと思ったときに即座に購買につなげられるのが利点だ。このSmartzerのインタラクティブ動画技術はECサイト、SNS、タッチスクリーンに導入でき、バレンティノ、アディダスのほか、ゲラン、セフォラ、ブルガリ、ジョー マローン、エスティ ローダーなどの化粧品・香水ブランドも、Smartzerの技術でECサイトでの購買体験の向上を図っている。

ゲランと化粧品オンラインサイト
「Feelunique」のコラボキャンペーン
にてSmartzerの技術を活用

LVMHの期待を担う次世代のイノベーター

VivaTech2日目には、LVMHグループ CEOのベルナルド・アルノー(Bernard Arnault)氏とCDOのイアン・ロジャース(Ian Rogers)氏によって、LVMH Innovation Awardが発表された。

アワードの背景を説明する
CDOのイアン・ロジャース氏

900社以上の応募があり、残った30社のファイナリストのなかから、見事アワードを受賞したのは、ECにおけるサイズ問題を解決するために2016年にシリコンバレーで誕生した3DLOOKだ。スマホで正面・側面の2枚の写真を撮ってボディラインをスキャンし、スリーサイズなどを測定。即時に作られる3Dアバターで洋服や靴などを試着シミュレーションし、そのまま購入できるサービスである。

一番のポイントはこの体験を通して世界中の人々のデータを獲得できることだと開発者は語る。2018年7月のTechCrunchでも彼らのアプリを通して収集される「フィットプロファイル」の可能性について報道されている。現在はH&Mなどで展開中だが、3DLOOKは1年間、LVMHのStation Fの支援プログラムにより同グループのリソースに直接アクセスできる権利を獲得しており、ECなどにおいてのコラボレーションの期待も高まる。

LVMHのCDO、ロジャーズ氏が
案内するLVMH Innovation Award
の様子

日本はリアルとキャッシュが強い独特な市場

また、別会場で行われた「CEOフォーラム」では、各企業のCEOがさまざまなテーマでセッションを行ったが、LVMHの幹部が日本のラグジュアリー分野でのEコマース市場について語っている。

日本在住35年以上で、日本市場を知り尽くすLVMH ジャパンのCEOノルベール・ルレ(Norbert Leuret)氏は、同社CDOイアン・ロジャース氏との対談のなかで、「日本では、ゾゾダウンや楽天などで、比較的安価な日用品や衣服、旅行関連、チケットにおけるネットショッピングは浸透しているものの、ラグジュアリーにおけるオンラインへの移行は遅い」と指摘した。

日本では対面販売や顧客サービスのレベルが極めて高く、人々もそれを重視しているため、オンラインで商品情報を詳しく収集はするが、購入はリアル店舗(オフライン)でする傾向が強いからだという。また、キャッシュ文化が根強いこと、SNSは欧米ではほとんど普及していないLINEが力を持っていること、まだまだテレビや新聞、雑誌といったマスメディアが強い影響力を持つなど、欧米・中国のようなデジタル化が一筋縄ではいかない独特の難しさを語り、会場に集まった業界関係者は熱心に耳を傾けた。

日本市場を語るLVMHジャパンの
CEO ノルベール・ルレ氏と
CDOのイアン・ロジャース氏

リシュモングループもAR体験やブロックチェーンを活用

一方、同じくラグジュアリー業界のリシュモングループでは、高級時計ブランドのジャガー・ルクルトがデジタル・ショーケースを披露した。本物の時計が中に入れられ、画面をタッチしながら360度回転させたり、裏側の精巧な部品をじっくり見たり、特性や技術を学ぶことができる。

また、専用バンドを使って、時計を腕につけた感覚を味わうAR体験も。アプリからダウンロードしたデータを印刷して紙製のバンドを作れば、自宅でも体験可能だという。

そして、2018年にグループが買収したラグジュアリーECサイト「ユークス・ネッタポルテ・グループ(YOOX Net à Porter Group)」は、アバターに洋服を着せて購入できるだけでなく、そのルックをSNSでシェアできるアプリをスタートした。

また、グループ傘下のカルティエ、ピアジェ、IWCは自社サイト以外のECサイトでも販売するとし、市場の変化に合わせて自社サイトだけにこだわらない姿勢をみせている。

また、リシュモングループもLVMH同様、ブロックチェーンの導入を進めており、トレーサビリティと偽造品の増加を防ぐ。高級時計のヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)は、ブロックチェーン企業Arianeeの技術を利用し、デジタル証明書を発行、商品の正真性を証明するとともに、生産から購入まですべての履歴を管理する仕組みを披露した。顧客の購入履歴に合わせて、時計のメンテナンスのタイミングを的確に知らせるなど、ブランドが製品の所有者に対してパーソナライズしたサービスを提供することも可能だ。

QRコードをスキャンして、
デジタル保証書を取得できる

今回のVivaTechでは、ロレアル、LVMHをはじめ、デジタライゼーションに早期に取り組み試行錯誤を重ねてきた企業は、有望なスタートアップと手を組み、常に先をみすえてさらに実験を重ねている印象を受けた。少なくとも、美容とファッションにおけるテクノロジーは、こういったフランス企業が、洗練されたユーザー体験を含め、世界をリードしているといっていいだろう。

近い将来、フランスを中心として欧州がテックおよびスタートアップの中心になっていくのかは、注意深く今後の展開を見ていきたいが「Tech for Good」を掲げて世界中のCEOを巻き込んでいく、そのリーダーシップと勢いに、さまざまな可能性を感じた。

Text&Photos: 谷 素子(Motoko Tani)

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