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「化粧品大手企業のM&A動向」「美容企業のサステナブルコンソーシアム」がキーワード【海外トレンド 2023年12月-2024年1月】

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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流をひも解く。今回は、2023年12月から2024年1月にかけて活況だった大手化粧品企業によるM&Aと、シャネルが主導し15社が参加するサプライチェーンの透明性を高めるコンソーシアムについてレポートする。


資生堂やユニリーバ、ロレアルほか、ドクターズブランドやバイオテックの買収・投資が活況

★注目ポイント
2023年12月から2024年1月にかけ、グローバル大手によるスタートアップへの投資や買収のニュースが相次いだ。自社のポートフォリオを補完する戦略的な意図に基づき、選ばれる投資先自体はさまざまだが、サイエンスとウエルネスという共通する2つの大きなテーマが浮かび上がり、2024年のビューティがどこへ向かおうとしているのかを占う意味でも興味深い。

資生堂、プーチ、ロクシタンはハイエンドなドクターズブランドを買収

資生堂は、米子会社を通じて、皮膚科医が主導し皮膚科学をベースとしたプレステージスキンケアブランド「Dr. Dennis Gross Skincare(ドクター・デニス・グロス・スキンケア)」を展開するDDG Skincare Holdingsを買収することを2023年12月に発表した。取得価額は4億5,000万ドル(約663億円)とされ、DDG Skincare Holdingsの株式を100%取得する。

2020年にローンチしたDr. Dennis Gross Skincareは、元皮膚がんの研究者で皮膚科医のデニス・グロス博士が立ち上げたスキンケアブランドだ。代表的な製品は毎日使うことを推奨する拭き取りタイプのピーリング「Alpha Beta® Daily Peels」シリーズで、その革新的な処方とシンプルでわかりやすい使用法により、多くのユーザーから支持されている。また、DDG Skincare Holdingsの2023年12月期の売上高は9,400万ドル(約138億円)と見込まれている。

資生堂では、この買収の意義として「既存のポートフォリオの強力な補完」「成長市場である南北アメリカでのビジネス伸長と収益性の促進」「資生堂の強みとの相乗効果を生み出すことによるイノベーションの強化とグローバルビジネスの成長促進」をあげ、Dr. Dennis Gross Skincareをプレステージスキンケアブランドの主力を担うブランドに育てるとしている。

また、スペイン発のラグジュアリーファッション&ビューティコングロマリットのプーチは、ドイツのスキンケアブランド「Dr. Barbara Sturm(ドクター・バーバラ・シュトルム)」の過半数の株式を取得したことを2024年1月に発表した。プーチはこの投資の目的を、プーチ独自のプレミアムケアの提供を強化することに加え、Dr. Barbara Sturmブランドの国際的な成長とスパ事業を支援するためとし、「この新しいパートナーシップは我々のスキンケアセグメントと米国でのプレゼンスを強化するものだ」と、プーチの会長兼CEOのマルク・プーチ(Marc Puig)氏は述べている。

同ブランドを2011年に創設したバーバラ・シュトルム博士は整形外科の専門家で、変形性関節症のような炎症状態のための最先端の治療法を見出したチームの一員として働き、抗炎症のパイオニアとされる。体自身が持つ抗炎症治癒因子の活動を促す、肌に効果的なアンチエイジングブースターとしてのスキンケアラインを開発した。シュトルム博士は少数株式を維持し、最高製品開発責任者およびブランドアンバサダーとしての役割を継続する。

Dr. Barbara Sturmはアンチエイジング治療に加え、ステラ・マッカートニー氏などセレブのファンが多数いることで知られるブランドで、有名人や富裕層の間のクチコミで大きく成長したとされている。2023年には米メディア界の大御所オプラ・ウィンフリー氏から非公開の少額投資を受けて話題となった。人気の製品にはスーパーアンチエイジングシリーズのクレンジングやアイセラム、ボディセラムなどがある。

一方、1983年にパオロ・ヴラニエス(Paolo Vranjes)博士が設立したホームフレグランスブランド「Dr. Vranjes Firenze(ドットール・ヴラニエス・フィレンツェ)」を買収することを明らかにしたのはロクシタンだ。伊フィレンツェに本拠地を構え、職人の技とフレグランス科学のイノベーションを掛け合わせることをうたう同ブランドは、フィレンツェ大聖堂のドーム屋根をイメージしたボトルが特徴で、日本を含む世界75カ国で販売されている。

Dr. Vranjes Firenzeはハイエンドのホームフレグランス市場で13%のシェアをもち、これはオランダのウェルビーイング&ビューティ企業Ritualsに次ぐ占有率第2位にあたり、ブランド価値は約1億5,000万ユーロ(約239億円)と評価されている。

ロクシタングループの会長であるレイノルド・ガイガー(Reinold Geiger)氏は、この買収について「(ロクシタンの)プレミアムビューティとフレグランスブランドの既存のコレクションを補完するもので、各ブランドがそれぞれ強いアイデンティティと(ほかとの)違いを発揮することに寄与する」と述べた。

ユニリーバはバイオテック×ヘアケアに投資

2023年12月、ユニリーバはカルトな人気を誇る米国のプレミアム・バイオテクノロジーヘアケアブランド「K18」を取得すると発表した。ユニリーバ・プレステージのCEOヴァシリキ・ペトロ(Vasiliki Petrou)氏はこの買収を、成長著しいプレミアムかつ文化的なストーリーをもつ消費者向けブランドのポートフォリオを拡充するものと位置付けている。

@k18hair

POV: we're on a speed date with you and ready to win a spot in your #HairRoutine 🤝😂 #k18hair #k18results

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2020年に、スヴェーン・サヒブ(Suveen Sahib)氏とブリッタ・コックス(Britta Cox)氏によって設立されたK18は、バイオテクノロジーを取り入れた初のヘアケアブランドを称する。バイオテクノロジーで使用される配列アナロジーを持つ計算モデルを人間の髪の毛の分子構造に適用することで、新しい分子(独自のアミノ酸配列)である特許取得済み分子「K18PEPTIDE™」を開発。髪の繊維の最も内側の層でK18PEPTIDE™が壊れたポリペプチド鎖と切断されたジスルフィドを再結合することで、一過性ではなく永続的に髪の強度と弾力性を回復するという分子修復技術にのっとった、シャンプー、コンディショナー、ヘアマスクなどの製品を提供する。

K18は設立から18カ月で100カ国2万店舗以上のヘアサロンで採用され、業界に旋風を巻き起こした。その後、セフォラとコラボし「Leave-In Molecular Repair Hair Mask」をローンチしてTikTokでの大型キャンペーン#K18hairflipを展開、現在ではセフォラのベストセラーヘアケアブランドの1つになっている。

ユニリーバは同じく2023年12月、ユニリーバ・ベンチャーズを通して2022年創業のオーストラリアのマイクロバイオーム頭皮ケアブランド「Straand」に投資をした。ユニリーバ・ベンチャーズは、同年2月にもStraandに対し200万ドル(約3億円)のプレシード投資をしており、同ブランドが北米や英国、東南アジアなどグローバルな新市場に進出するためのサポートをしている。

「頭皮の悩みに応えることに注力したマスマーケット向け製品」をスローガンとするStraandは、頭皮のマイクロバイオームに焦点をあて、特許取得のプレバイオテックス成分「Defenscalp™」を配合した製品設計が特徴で、乾燥したかゆみのある肌やフケの予防に効果があるとする。また、シリコン、パラベン、サルフェートは含まず、エコフレンドリーでヴィーガン&クルエルティフリーとしている。

ユニリーバ・ベンシャーズのパートナーであるレイチェル・ハリス(Rachel Harris)氏は、頭皮ケアへの関心は世界的に高まっているとして、Straandの経営チームと1年以上緊密な関係を保っており、今後も支援していくとコメントした。

ロレアルは科学的なアプローチによるウエルネスとビューティの融合促進

ロレアルは、プロバイオティクス(人体に良い影響を与える微生物、またはそれを含む製品)およびマイクロバイオーム研究開発企業であるデンマークのLactobioを2023年12月に買収した。これは、ロレアルが過去20年にわたり進めてきたマイクロバイオーム研究を強化し加速することを狙ったもので、Lactobioの専門知識とポートフォリオを活用して、生きた細菌を使用した安全で新しい化粧品ソリューションを開発する目的がある。

出典:BAK公式サイト

2017年コペンハーゲンで創業のLactobioは、プロバイオティクスとポストバイオティクス(人体に良い影響を与える無生物形態の微生物、または微生物の細胞構成成分を用いた調整物)の独自成分を配合した自社スキンケアブランドBAKも展開している。

ロレアルはまた、2024年1月、傘下のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)であるBOLDが主導した、ヘルシーエイジングをうたうスイスのバイオテックスキンケアブランド「Timeline」のシリーズD資金調達ラウンドにおいて、ネスレとともに総額5,600万スイスフラン(約95億円)の投資を行った。この資金はTimelineの事業成長に加え、科学部門の拡大や、食品、美容、健康分野の新しい市場に参入するのに役立てられる。

Timelineは、細胞の活性化をサポートすることが科学的に実証された、純粋なウロリチンAポストバイオティクスである独自開発成分「Mitopure™」を配合したデイクリームやセラム、サプリメントを展開。細胞レベルに働きかけ、より長くより健康に生きること、すなわち長寿(longevity)を実現するというウエルネスエイジングを提唱するブランドだ。

ロレアルの副CEOであり、リサーチ、イノベーション、テクノロジー部門を担当するバーバラ・ラヴェルノ(Barbara Lavernos)氏は「長寿がビューティにとって何を意味するのか、ロレアルはここ10年間考え続けてきた」として、「長寿は、生物学的マーカーの解読から外部暴露の分析まで、さまざまな科学分野の交差点にある新しい美の定義だ」との見解を示した。

シャネル、クラランスら15社が持続可能な化粧品のためのコンソーシアムを共同設立

出典:クラランスグループ公式サイト

★注目ポイント
美容業界全体のサステナビリティの向上という大きな目標を達成するため、グローバル大手企業が連携しコンソーシアム(共同事業体)結成する事例が出てきている。さまざまな層でたくさんのプレイヤーが関与するサプライチェーンの透明性の強化など、1つの企業だけでは難しい課題を情報を共有することで解決していこうとする連帯の姿勢が広がっている。

シャネルが主導し、クラランス、ロクシタン、資生堂、ロレアル、エスティ ローダーをはじめとする大手化粧品メーカー15社がキープレーヤーとして参画し、持続可能な化粧品のためにサプライチェーンの透明性強化を目的とする新コンソーシアム「Traceability Alliance for Sustainable Cosmetics (TRASCE) 」が設立された。

フランスのビューティ企業連盟であるFEBEAの支援も受け、TRASCEのメンバー企業は、共通のデジタルプラットフォームとしてTransparency-Oneを活用し、バリューチェーン全体にわたるマッピングをしていくとする。Transparency-Oneは、大規模なトレーサビリティアプローチを展開する際に、各サプライヤーが共有するデータの所有権、セキュリティ、機密性を担保しながら、バリューチェーンの透明性を大きく向上させることができ、すでに食品や自動車産業などで使用されている。

TRASCEは、企業が自社のサプライチェーンの隅々まで理解することで、関連する社会的および環境的なリスクを評価し、必要な行動をとることで業界の課題に対応していくことを目指している。

シャネルの購買とパッケージングのイノベーション開発 インターナショナル・ディレクターであるジュリアン・ギャリー(Julien Garry)氏は、巨大なサプライチェーンのマッピングという不可欠ながら手間のかかる困難な作業を通して、遠い層にいる取引先との意思疎通が難しいことを痛感し、すべてのセクターが協力して可能な限り迅速にサプライチェーンを追跡する仕組みづくりを提案したと説明する。

また、エスティ ローダーのレスポンシブル・ソーシングのエグゼクティブ・ディレクター メーガン・ライアン(Meghan Ryan)氏は「(TRASCEの)共有されたデジタルツールと緊密なコラボレーションを通じて透明性を前進させ、人々と環境への潜在的な影響に注意を払いつつ、私たちがより責任ある調達を行う機会になるだろう」と話す。

一方、クラランスグループのレスポンシブル・デベロップメントのディレクター ギヨーム・ラスクレージュ(Guillaume Lascourrèges)氏は「クラランスグループは、事業パートナーに関する知識を深め、エコシステムをコントロールすることに長年取り組んできた。(中略)TRASCEプロジェクトへの我々のコミットメントは、バリューチェーン全体を注意深く管理しパトロールする義務を強化するために必要とされることを、化粧品業界のほかの企業と共有することだ」と述べた

大手化粧品メーカーによる共同の取り組みはこれが初めてではない。2022年には、化粧品業界全体の環境評価と、消費者がブランドをまたいで製品を比較検討する目安となる環境スコアリングシステムを作成するためのThe EcoBeautyScore Consortium(エコビューティスコア・コンソーシアム)を設立しており、2024年1月現在、71社のビューティ関連企業が参加している。

Text: そごうあやこ(Ayako Sogo)
Top image: Vadim L via Unsplash


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