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大手スーパー・イオンが若い世代と汗を流して生産から取り組むオーガニック

◆ English version: Supermarket chain Aeon leads the path for organic cosmetics in Japan
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前回のマツモトキヨシの取り組みは、ドラッグストア店舗の顧客ニーズからのオーガニックアイテム開発だった。では、同じ生活圏内のスーパーではどのような取り組みが起こっていたのだろうか。
(※ 2/20 18:00 ホールフーズに関する内容を一部修正補足、20:35に再度修正しました)

国内最大のスーパーであるイオンでは、2018年8月にプライベートブランド(以下PB)としてのオーガニック化粧品が発売された。同社のこの取り組みを考えるときに、切り離せないのがオーガニック食品の普及だ。そして、それは米国で起こってきたことを俯瞰してみると理解しやすい。イオンは米国のトレンドをとらえ、小売りという枠を超えて自らも実践することでオーガニックの食と化粧品に深く取り組んでいるといえる。

米国のスーパーにみるオーガニック普及のポイント

オーガニックが広く一般層へも受け入れられている米国では、ホールフーズ・マーケットやトレーダー・ジョーズといった自然食品のスーパーが、特定の地域だけではなく全米単位で展開し、健康的な食についての啓発活動を行ったことがオーガニック・ナチュラル分野の拡大につながった。

1980年、テキサス州オースチンにオープンしたホールフーズ・マーケットは、90年2000年代に数多くの買収を繰り返しながら全米展開をはかった。同時期に自然食品スーパーのトレーダー・ジョーズが安価で高品質な有機農産物の提供で成長し、ホールフーズ・マーケットは約480店舗、トレーダー・ジョーズは、約460店舗を展開するまでに至る。

興味深いのは、彼らは単に自然食品店というだけでなくスーパーとしての評価も高いことだ。2018年のリテール・パフォーマンス・インデックスでは、1位にトレーダー・ジョーズ、10位にホールフーズがランクインしている。トレーダー・ジョーズについては全米で最も1平方フィートあたりの売上が高く、ホールフーズの約2倍を売上げ、また、米国最大のスーパーマーケットチェーンであるクローガーと比較しても約3倍を売り上げていることから、評価を集める理由がわかる。

こういった動きとあわせて、ミレニアル世代の台頭でより健康志向に消費が変わっていったことで、自然食品専門ではないスーパー「ウォルマート」や「コストコ」などがオーガニック食品の品揃えを充実させているというデータもある。こういった一般のスーパーの動きもありアメリカのオーガニック食品売上高は1997年の34億円ドルから、10年後の2017年には450億ドルを超え、15倍近くも成長している

Photo via shutterstock

さて、ホールフーズ・マーケットの店内には、食品だけでなく植物性由来の石鹸やボディクリーム、サプリメントなど、オーガニック・ナチュラル化粧品も揃っている。食品購入のついでにオーガニック化粧品に触れる機会も必然的に多くなり、食品につられるかたちで化粧品の売上が伸びる構造だ。

その動きはさらに広まり、現在ではTargetやセフォラなどもオーガニック化粧品の取扱いを拡大している。買いやすい場所と値段で一般層がオーガニック食品や化粧品を目にすれば、消費者の関心が広がり知識も促される構造だ。

日本のミレニアル世代が求める、安全・安心

日本では、オーガニック食品専門店が東京をはじめ都心部に住む一部の層に支持を得ていたが、一般層に影響を及ぼす規模にまでは至っていなかった。矢野経済研究所の調査データによると、2017年の国内オーガニック食品市場規模は、前年比で102.3%の1,785億円と増加しているが、食品市場の1%を下回るシェア率だ(出典:農林水産省)。アメリカのシェア率が5.3%ということを考えると、5分の1以下にとどまっている。しかし、そんな状況に変化をもたらしたのがイオンだったのである。

イオンリテール株式会社 経営企画本部 広報部の中田真由子氏によると、1993年に、他社に先駆けてPBである『トップバリュ グリーンアイ』を立ち上げ、農産物や水畜産物、加工食品を中心に「安全・安心」で「自然環境に配慮」した商品を発売。さらに顧客の「オーガニック商品をもっと増やしてほしい」という声や期待の高まりに応え、2014年10月に『トップバリュ グリーンアイオーガニック』シリーズを開発し、120品目の販売をスタートした。2016年にはグリーンアイの「オーガニック」に加え、「ナチュラル」「フリーフロム」という明確な基準で分けられた3つのラインナップに拡充、強化している。

トップバリュ グリーンアイの3つのブランド
(参照:トップバリュのサイトより)

2020年の東京オリンピック・パラリンピックも控え、年々増える訪日観光客や今後の消費の中心となるミレニアル世代のニーズからもオーガニックアイテムを求める声は増大している。若いときに阪神淡路大震災や東日本大震災など大きな災害を経験し、社会貢献意識が高いミレニアル世代にとって、体にいいだけではなく環境に配慮したプロダクツであることは購入のモチベーションにもつながりやすい。また、子どもが生まれたタイミングで意識が変化し、より安全・安心なものを求めるようになる傾向もある。米国の例のように、身近に購入できる場所と納得できる価格があれば、日本でもさらなる普及は自然な流れだろう。

そのトレンドをイオンはいち早く捉えたといえる。2016年にはヨーロッパで140店舗以上を展開するフランスのオーガニックスーパー「ビオセボン」とも提携し、東京の麻布十番に第1号店をオープン。その後、中目黒や横浜元町にも進出し、2019年2月の時点で9店舗まで拡大。従来のスーパーと専門店の両面から日本のオーガニックを牽引する存在となっている。

店内にはイートインコーナーも併設され
ている(ビオセボン公式サイトより)

入社倍率がグループで一番高い農産物生産会社

さらにイオンでは、自ら農業法人を設立し、オーガニック農産物の生産も手がけている。農地法が改正された2009年にスタートしたのがイオングループ各店舗に農産物を生産・供給・販売するイオンアグリ創造株式会社だ。

同社のブランディング・広報担当の牧紳太郎氏は、「当時から日本は先進諸国に比べて食料自給率が著しく低く、国内農業は高齢化と後継者不足に直面していた。イオンは全国規模で展開するスーパーという特性上、将来、国内農産物の安定的な調達がかなわなくなるのではという危機感と、ならば自分たちでも作り、日本の農業を盛り上げていこうじゃないかという使命感があった」と振り返る。

そうしたなかで茨城県の牛久市長から「一緒に農業をやってくれないか」との手紙が届く。2.6ヘクタールの耕作放棄地(高齢化や過疎化により過去1年以上耕作されていない農地)を借り受け、社員3人で伐採・伐根するところから始めたという。今では、借地面積350ヘクタールで計20ヵ所の直営農場を構えるまでに成長し、このうち3つの農場が有機JAS認定を取得。この先も順次取得していきたい考えだ。

2017年4月には、“持続可能な調達2020年目標”を策定しており、2020年までにイオンにおけるオーガニック農産物の売上構成比を5%にまで高めるという。2015年度は0.6%、2016年度は0.8%、2017年度は1.5%ということを考えると、かなり大きな目標といえるだろう。

2017年1月に直営農場初の有機JAS
認定を取得した埼玉日高農場

牧氏によれば、他のいわゆる企業参入型農業との大きな違いは、イオンの若い社員たちがみずから実際に畑を耕している点にあるという。先に述べたように深刻化する日本の農業においては、もはや委託生産だけに頼る方法では先細りが目に見えている。同社の平均年齢は29歳で、日本の農業を若者が憧れを抱くような産業に育てたいと従来の農業のイメージとは一線を画す柔軟な働き方にも対応している。

勤務体系は、1920時間の年間変形労働時間制で、年間休日は105日。半年に一度10日間の連続休暇を取得でき、海外旅行に出かける社員も珍しくない。従来の農業では考えにくかった働き方だ。もちろん産前産後休暇や男女問わず育児休暇が取得できる。その結果、新卒採用の入社倍率は、イオングループ350社のなかで一番高く、2015年から4年連続で100倍を超えているという人気ぶりである。

農業を憧れの職業に変えれば、若者の雇用が確保され、農産物全体の安定供給につながると同時に、やがて有機農業をも後押ししていくこととなる。農林水産省のデータでも、有機農業者の平均年齢は農業全体に比べて7歳程若く、新規就農希望者の3割は有機農業を希望していることからも確実に機運は高まっていると言える。

イオングループの“若い世代から農業を活性化”していく仕組みは、単に需要と供給のバランスを整えるだけでなく、オーガニックを持続可能にし、消費者と生産者双方のQOL(quality of life)を高める好循環を生み出している。

オーガニックの良さを生かしやすいオイルから化粧品へ

オーガニック食品が身近になると同時に、イオンにもオーガニック化粧品に関する消費者からの問い合わせが増えていた。そこで、2018年8月に発売されたのが、国際オーガニック認証を取得したイオンのPB化粧品『トップバリュ グリーンアイオーガニック geo organics(以下、ジーオ オーガニクス)』だ。乳液いらずで時短ケアもできる、オイル美容を中心としたラインナップを揃えた(1,500〜2,000円・税別)。

開発を担当したイオントップバリュ株式会社 商品開発本部 H&BC商品部 谷村安里氏は、「オーガニック化粧品に興味はあるものの高価なため手に取ることができない層や、オーガニック・ナチュラルをうたう商品が多くてどれを選んで良いかわからない消費者がいることが調査からわかり、3年程前から開発に着手した」と話す。

オーガニック化粧品ということがひと目でわかるように、認知度が高く世界基準のオーガニック認証であるフランスの「エコサートコスモスオーガニック」を取得することを決め、手に届きやすい価格帯を設定した。洗顔後はブースターとしてオイルをなじませ、ローションで肌を整えるだけというシンプルなオイル美容を提案した。

オイル美容を打ち出した理由について「100%オーガニックが実現できるオイルは、まさにオーガニック化粧品の醍醐味といえるもの。肌悩みにあわせて選べる上に、髪やボディなどマルチに使えるところも商品の魅力として伝えやすい」と谷村氏はいう。

イオントップバリュ株式会社
商品開発本部 H&BC商品部 谷村安里氏

商品開発と同時に、各店舗に配置されているビューティケアアドバイザーによる接客販売に力を入れるべく、マニュアルを作成し、ビューティケアアドバイザーとしての教育を徹底。その成果もあり、従業員もジーオ オーガニクスのファンとなり売場に商品が浸透、視認率の高い棚に並べられるなど、開発と売場が一体となった販売体制を整えることができた。一度使うとその良さに気づく顧客が多く、いかに店頭で手にとってもらうかを重要視している。

初動は好評で、『ピュアオイル(アルガン、ホホバ、アプリコット、マカデミア、ブレンドの5種類各1,800〜2,000円・税別)』の反響がよく、とくにアルガンオイルがエントリー商品になっている。消費者からの問い合わせも多く、関心の高まりを実感しているという。

今後の課題は、いかにしてリピート顧客として継続してもらうかと同時に、デジタルマーケティングによる新規顧客獲得を含むコミュニケーションだ。「オーガニック化粧品市場は全体からみるとまだまだ小さなパイだが、消費者の関心も高く伸張率が高い。ジーオ オーガニクスも顧客ニーズに応えながらじっくり育てていきたい」(谷村氏)。オイルの特性を生かし新たな使い方の啓発や新商品の追加、きめ細やかな情報発信によってさらなる拡大を目指すという。

日本においては、都市部だけでなく地方にも店舗をもつイオンがオーガニック化粧品拡大の旗手となることは間違いない。オーガニックに関心の強いミレニアル世代が企業でも中心的役割を果たし、子育て世代となっていく時代背景を鑑みても、イオンのようなスーパーマーケットからオーガニックの一般層への普及がすすみ、海外のように、オーガニック化粧品が一大トレンドとなっていくのも時間の問題のように思われる。

Text:佐々木彩子(Ayako Sasaki)
Top image via shutterstock

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