見出し画像

スギ薬局、スギスマホオーダーの次に見据える顧客ID統合とデジタル健康台帳の実現

BeautyTech.jp

◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

DXを積極的に推進する大手ドラックストア株式会社スギ薬局が、商品を事前にアプリで注文し、店頭または車上で受け取ることができるサービス「スギスマホオーダー」の提供および実証実験を開始した。システム開発に採用されたのは、株式会社10Xが運営する小売チェーン向けECプラットフォーム「Stailer」だ。株式会社スギ薬局 取締役 DX戦略本部本部長 兼 社長室室長 森永和也氏と、株式会社10X 事業開発部 角山翔大氏にサービス開発の背景や導入過程について話を聞いた。

スギスマホオーダーで顧客体験と従業員体験向上を同時に実現

スギスマホオーダー」は、スギ薬局の店舗で販売されている医薬品(要指導・第一類医薬品を除く)、化粧品、日用品、食品などの商品注文から受け取り、および店舗の指定、決済までが可能なアプリだ。商品注文と決済を済ませておけば、ユーザーは最短2時間後から店頭もしくは店舗駐車場(車上)で商品を受け取ることができる。

スギスマホオーダー
出典:App Store

2022年6月にローンチされたスギスマホオーダーは埼玉県・川口末広店で実証実験を開始しており、利用可能な店舗を順次拡大していく計画とする。サービス利用料は1注文ごとに税込み220円でクレジットカード決済となる。

株式会社スギ薬局 取締役 DX戦略本部本部長 兼 社長室室長 森永和也氏は、「リリースからまだ間もない段階だが、店舗近隣、もしくは通勤ルートが近い子育て世代の女性など、想定したペルソナに近いお客様の利用が確認できている」とし、スギスマホオーダーをリリースした狙いについて次のように説明する。

「スギスマホオーダーを開発した最大の理由は、店頭の作業を効率化し、スタッフがお客様とスムーズにコミュニケーションを取れる時間や環境をつくることにある。あわせて、お客様が来店しなくても、商品の特徴・値段・在庫などの基本的な情報を、スマートフォンを通じてしっかり把握できるようにしたいという狙いがあった」(森永氏)

株式会社スギ薬局 取締役 DX戦略本部本部長 兼 社長室室長 森永和也氏
プロフィール/流通・小売業の経験が約30年にわたるなかで、主に店舗オペレーションの担当者としてレジ業務の効率化や、機能改修に着手。2010年代にはネット、デジタル分野の責任者を歴任。2020年から「トータルヘルスケア戦略」にもとづくDX戦略を策定。2021年より新設されたDX戦略本部の本部長として、アプリ開発・EC・データ統合・分析基盤の構築などDXを全面的に統括

詳細については後述するが、スギ薬局では2020年後半からDXに注力。2021年にはDX戦略本部を立ち上げトップダウンで改革を進めてきた。店頭やバックエンドの業務、社内情報システム、物流、マーケティングなど、DXに際して部署間の対立や齟齬が発生しないようにDX戦略本部を中心とした組織改革も断行している。リリースされたスギスマホオーダーは、一連のデジタル施策のうちのひとつであり、顧客体験と従業員体験の双方の向上に目標が設定されている。

今回、スギスマホオーダーアプリに採用されたのは、スタートアップ10Xが開発するStailerだ。当初は、自社でアプリおよびシステムを開発することを検討していたスギ薬局だが、情報収集を進める過程で、開発不要かつ小売に特化したアプリを立ち上げることができるStailerの存在を知り導入にいたったという。

スギ薬局が導入したStailer
画像提供:株式会社10X

Stailerは多店舗運営を行う小売・流通事業者のECや、店舗受け取りなどの顧客体験の実現、およびサプライチェーン構築を支援するプラットフォームで、モバイルアプリや店舗スタッフ向けのピック&パック、在庫管理システム、配送業者向けのオペレーティングシステム、分析ツールなどのシステムをフルセットで提供する。導入実績としては、イトーヨーカドー、ライフなどの大手スーパーマーケット、薬王堂などのドラッグストアがある。

OTC医薬品などの特定許可販売を行う事業者がStailerを導入した事例としては、スギ薬局が初めてだ。プラットフォームの基本的な機能はスーパーでもドラッグストアでも滞りなく活用できるが、日用品、生活雑貨、食品とOTC医薬品では商品の特性が異なる。そのため、両社はアプリ上での商品の見せ方についてとくに議論を重ねたという。

株式会社10X 事業開発部 角山翔大氏は、「Stailerのプラットフォームを利用することで、お店に行く前に注文しておいてレジに並ばず購入する、もしくは子供の送り迎えや通勤時にピックアップする、車上で受け取るなど、多種多様な利用法を店舗側から発信できる。通常のECサービスとは異なり、小売事業者の拠点であるオフライン店舗の価値を高めながら、オンラインを併用してもらえるところがStailerの強みだ。事例からは、システム導入により実店舗を利用しているユーザーのオンライン利用頻度が上がる、顧客あたりの単価が上がるなどの実績が確認できており、小売パートナー、エンドユーザーの双方からメリットを感じてもらえている」と説明する。

株式会社10X 事業開発部 角山翔大氏
プロフィール/カカクコムにて事業開発・経営企画に従事したのち、LINE株式会社に入社。 LINEとエムスリーのJVであるLINEヘルスケア社を設立し、事業企画室長として、健康相談やオンライン診療サービスを立ち上げ。2021年12月より10Xに入社
画像提供:株式会社10X

スギ薬局が推進する「働く人のためのDX」は基幹システムからスマホレジまで

スギ薬局では、スギスマホオーダーのリリース以前から、業務効率化、基幹システムの改革、顧客体験の向上、データの利活用など幅広い目的で、さまざまなデジタル施策を推進してきた。たとえば、2022年5月にはスギ薬局の約1,500店舗をつなぐ基幹システムをAWSクラウド上に構築している。これは、店舗数やビジネス規模拡大に際して求められる基幹システムの柔軟な拡張性を担保するためだ。その根底には「働く人のためのDX」という視点がある。

「小売業の作業としてボリュームが大きいのは、レジ、品出し、そして発注だ。現時点までのデジタル施策でもっとも進化を遂げたのはレジで、店舗のスタッフにヒアリングしたところ、とても使いやすくなったと評価を得ている」(森永氏)

顧客に合わせた最適な接点づくりの面でのデジタル施策としては、「スギ薬局アプリ」や健康増進支援アプリ「スギサポシリーズ」などを展開している。

600万以上の会員数を誇るスギ薬局アプリ
出典:App Store

デジタルチラシやポイント、クーポンなどの機能が搭載されたスギ薬局アプリは、2022年8月時点でダウンロード数が約939万回、会員登録数約633万人の巨大な顧客接点だ。一方、スギサポシリーズのなかで、歩数記録アプリ「スギサポwalk」は250万ダウンロードを突破。食事の写真を撮るだけでポイントが貯まる食事記録アプリ「スギサポeats」には、オンライン食事指導サービスやAIを活用した栄養素解析などの機能が実装されている。そのほかにも、管理栄養士が監修した食事を冷凍便で自宅まで届けるミールデリバリーサービス「スギサポdeli」も運営中だ。

スギサポシリーズ

「スギ薬局アプリなどのダウンロード・登録の主な経路は店頭だ。スタッフが丁寧に案内をすることで利用者が確実に増えてきた。60~80代のお客様にも多くアプリを利用いただいているのが特徴だ」(森永氏)

顧客の“入口”となるアプリやサービスを数多く用意してきたスギ薬局だが、2022年4月から、それぞれのアプリのIDを「スギID」として統合を進めており、2022年内の完了を目指していると森永氏は話す。

また現在、スギスマホオーダーの決済機能に加えて、スギ薬局アプリがレジを代替するスマホレジ機能を実装する実験を行っている。実験は順調で、2023年春をめどに、スギ薬局アプリにスマホレジの本格導入を実現したいとする。スギスマホオーダーについては、配送サービスとの連動も検討中で、森永氏は「2022年9~10月頃には配送の実験をスタートさせたい」としている。

ID統合をへて「デジタル健康台帳」で顧客の困りごとに応える体制へ

「2023年度以降には、統合されたIDを利用した『デジタル健康台帳』を開発する構想もある。これは商品購入履歴や健康データから顧客情報を把握し、パーソナライズレコメンドなどを実現していくイメージだ。お客様の困りごとやわからないことを知ることが、顧客接点のスタート。デジタル健康台帳が実現すれば、医薬品の特徴や飲み合わせに対する悩みに、現場がより的確にピンポイントで答えていけるようになるだろう。今後は多様なアプリなどデジタル接点を駆使して顧客体験を向上させつつ、店内作業の効率化も同時に図っていく。そして効率と効果を適切に評価しながら改善を続けていきたい。あわせて、店頭に設置してある接客デバイスの強化も進めていく」(森永氏)

社内の業務や効率化を実現し、スタッフが余裕を持って接客できる時間が生れてこそ、新たな顧客体験を提供できる。単にさまざまなサービスをオフラインからオンラインに置き換えるだけではなく、デジタルによる新たな価値創出を実現することがスギ薬局の目指すDXといえる。

「DXにおいて重要となるのは人材。外部の協力企業とともに多くのプロジェクトを進めてきたが、今後は、現場も含めて社内人材がDXに適応できるよう実証成果にもとづいた施策を着実に広げていきたい」(森永氏)

Text: 河鐘基(Jonggi HA)
Top image & photo: スギホールディングス株式会社

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!
BeautyTech.jp
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディア。最新記事から過去1ヶ月分は無料でお読みいただけます。それ以降の記事は「バックナンバー読み放題プラン」をご利用ください。詳しくはこちらから→ https://goo.gl/7cDpmf