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「トラベルリテール復活」「女性サイエンティスト」がキーワード【海外トレンド 2022年6月- 7月】
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「トラベルリテール復活」「女性サイエンティスト」がキーワード【海外トレンド 2022年6月- 7月】

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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流を紐解く。今回は、国境を超えた人の流れが増えてきた状況に、いち早く対応を始めた大手化粧品ブランドのトラベルリテール部門の動向と、女性科学者を表彰し支援するさまざまなアワードを取り上げる。

エスティ ローダーの物流センターなど、活発化するトラベルリテール施策

出典:Estee Lauder Companies公式サイト

★注目ポイント
世界各国で海外渡航の制限が撤廃されつつあり、少しずつながら人流は増えてきている。パンデミック前の水準に達するのは早くとも2024年との予測もあるが、年間で延べ30億人の消費者に接する機会があるとされるトラベルリテールの、将来の復活を視野にした動きがすでに始まっている。

Generation Researchの調査によれば、空港、都心部、航空会社、クルーズ、ボーダーショップなど免税店をカバーするトラベルリテール業界の、2019年の総売上は863億ドル(約9兆4,930億円)にのぼり、なかでも化粧品とフレグランスは、その43%にあたる376億ドル(約4兆1,360億円)と最大の商品カテゴリーとなっていた。それがパンデミックに伴い、2020年前半には世界各地で旅行がほぼ全面的にストップし、大打撃を受けた。徐々にではあるがグローバルでの人の流れが増えつつある今、トラベルリテールの復活に向けていち早く動き始める企業が現れている。

2022年6月、エスティ ローダー カンパニーズ(ELC)は、グローバルなトラベルリテール事業の将来の成長に対応するためと明言し、スイス・チューリッヒ郊外のガルゲネンに最新鋭の物流センターの開設を発表した。この30万平方フィートの広大な敷地を持つ物流センターは、自走式ロボットと人間が同居し、たくさんの箱がベルトコンベアを流れ、箱を積載したトレイを34万枚以上保管でき、取扱量の大幅な増加を実現した。

同時に、同センターはハイレベルな環境設計と再生可能エネルギーへの取り組みを通じて、ELCのグローバルな製造・販売ネットワークとそのサステナビリティをさらに進化させるものだ。建物の設計は、エネルギーと水の消費量を削減するための最新の基準にもとづいており、LED照明、エネルギー効率の高い空調システムを備え、屋上のソーラーパネルはピーク時1,600キロワットの発電が可能だ。さらに、包括的な廃棄物管理システムを導入し、多数のリサイクル品を分別し、電気トラックで廃棄物を撤去する。あわせて、リサイクル事業の一環として、木製廃棄物パレットで再生可能な暖房エネルギーを生成するという。

ELCガルゲネン物流センター
出典:modzaaclub

一方、ドイツのフランクフルト空港は、新進気鋭のブランドが多額の資金をかけずに空港内に店舗を出せる、レンタルショップスペース「ポップアップエリア」を新設した。小規模ブランドでも家主である空港施設運営企業Fraportと直接契約ができ、スピード感のあるビジネス展開ができるとうたう。

ポップアップエリアは、一般客も利用できる旅客ターミナルと、セキュリティとパスポートコントロールを通過した免税エリアの2カ所にあり、ブランドはターゲットとする顧客に応じて場所を選べる仕組みで、必要な装備が全て整った店舗スペースを6カ月間使用できる。Fraportはまた、契約したテナントには、Fraportのデジタルチャネルや、Instagram、WeChatを活用したマーケティングキャンペーンなどのサポートも行うとする。

Fraportによれば、フランクフルト空港の交通量の回復は進んでおり、パンデミック前の水準に戻るにはまだ時間を要するものの、昨年を大幅に上回り、2022年第1四半期の旅客数は730万人に達したという。

フランクフルト空港のポップアップストア
出典:BeautyMatter

また中国では、経済特区に指定され、離島免税制度の対象である「国際観光島」として発展を目指す海南島で、第一回となる免税品ショッピングフェスティバル「Hainan International Outlying Islands Duty Free Shopping Festival」が2022年6月28日にスタートした。このイベントでは、6カ月間にわたり50以上のマーケティング企画が予定されており、夏休みや国慶節、ダブルイレブンなどにあわせた特別イベントのほか、メイクアップフェスティバルといった分野に特化したテーマも用意されている。

海南島海口市の免税店を訪れた買い物客(Photo/IC)
出典:CHINADAILY

海南島でこうした大きなフェスティバルが打ち出された背景には、海外旅行への制限が続く中国で、多くの国内旅行者が免税品ショッピングを求めて海南島を訪れるようになったこと、そして、それを目当てに、ロレアルやエスティ ローダー、資生堂など、大手化粧品企業をはじめとするグローバル・ラグジュアリーブランドが海南島に積極的に進出していることがあげられる。

ロレアル・トラベルリテール・アジアパシフィックのマネージングディレクターは「2021年、海南の好景気により、トラベルリテールは引き続き好調に推移した。カテゴリー別ではプレミアムスキンケアとフレグランスが成長をリードした」とTRBusinessの取材に対し語っている。

前述のELCも、WWCの独占インタビューのなかで、ファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)社長兼CEOが「この島(海南島)を訪れる中国人の数はすでに2019年の国外渡航者を上回っており、とくにコロナ禍の初期には欧米諸国での旅行の落ち込みをほとんど埋め合わせてくれた」と話し、パスポート保持者しか楽しめない海外旅行に対し、国民すべてに開かれている中国国内の免税店が持つポテンシャルに言及している。

このほか、資生堂は「総合レポート2021」のなかで、国際線の大幅減便により旅行者減の影響を受けるなか、同社のトラベルリテール事業が「主要ブランドの海南島での店頭のカウンター数の拡大等によってアジアを中心に力強い成長を実現」したとして、海南島がアジアでの展開に大きく貢献したことを強調。2021年の同部門の売上高は1,205億円で、現地通貨ベースで前年比18.4%増だったことを発表している。

海南島「SHISEIDO」ポップアップストア
出典:資生堂 総合レポート2021

ロレアル、ヘンケル、資生堂、女性科学者を顕彰し支援するアワードを開催

出典:L’Oréal Foundation ロレアル−ユネスコ女性科学賞公式サイト

★注目ポイント
SDGsの17の目標のひとつにも掲げられる「ジェンダー平等の実現」だが、現実社会ではまだまだ女性に十分な機会均等が与えられているとはいえない。こうした状況の改善を目指して、大手化粧品企業が、科学技術分野における女性の参画を促すとともに、女性科学者の功績を正当に評価し、躍進をサポートする賞を設けている。

ロレアル財団とユネスコは、2022年の「International Prize for Women in Science(ロレアル−ユネスコ女性科学賞)」受賞者を発表した。同賞は独立した審査委員会が数百名の候補者のなかから5人の受賞者を選出するもので、生命科学、循環科学、物理学、数学、コンピュータサイエンスの研究者を隔年で表彰する。

受賞者は、5つの主要な大陸、すなわち、アフリカとアラブ諸国、アジア・太平洋地域、ヨーロッパ、ラテンアメリカとカリブ海地域、そして北米から、それぞれ1名ずつが選ばれる。受賞者には研究を推進するための10万ユーロ(約1,370万円)の賞金が贈られるとともに、科学界や一般社会において女性科学者の認知を高めていくためのメディアトレーニングやメディア露出の機会が提供される。

オードリー・アズレイ(Audrey Azoulay)ユネスコ事務局長は「科学の分野で女性にスペースを与えることは、人類の利益となる“平等”のために重要だ。女性科学者の先例は、世界中の少女や女性が科学的な職業に就くことを後押しする」と述べた。

2022年ロレアル−ユネスコ女性科学賞 受賞者
出典:Global Cosmetics News

受賞者のプロフィールは以下の通り

●ラテンアメリカ・カリブ海地域選出 マリア・グアダルーペ・グスマン教授(上記画像上段右)
キューバ・ハバナのペドロ・クーリ熱帯医学研究所(IPK)の研究・診断・レファレンス活動センター長

年間3億9千万人の感染を引き起こし、罹患率と死亡率の点で、世界で最も深刻な病気の1つであるデングウイルスのヒトへの感染に対処する先駆的な業績に対して授与。その研究により、病因や危険因子、デング出血熱のいくつかの流行の起源、診断やモニタリングの開発、新しいワクチンの探索などへの理解が深まっている。

●北米地域選出 カタリン・カリコウ教授(上段中央)
ペンシルバニア大学ペレルマン医学部非常勤教授、BioNTech RNA Pharmaceuticals上級副社長

ウイルスや寄生虫の感染を防ぐ強力なワクチンとして、非炎症性mRNAを開発した業績が評価された。ファイザーとモデルナによるCOVID-19ワクチンの開発にも貢献。最適化されていないmRNAと比較して、ヌクレオシドで修飾されたmRNAは忍容性が高く、より高用量で投与できることを発見した。

●アジア太平洋地域選出 フー・ハイラン教授(上段左)
中国浙江大学医学部教授・神経科学センター長

社会的・感情的神経科学における主要な発見に対して授与された。その研究は、メンタルヘルスの科学的理解に革命をもたらし、うつ病のメカニズムを解読し、革新的な治療戦略や新薬に反映されている。世界の多くの地域でうつ病は診断が進んでおらず、タブー視されており、人々の意識を高め、インパクトのある解決策への道筋を明らかにすることが期待される。

●アフリカ・アラブ諸国選出 アニェス・ビナグワホ教授(下段左)
ルワンダ・キガリのグローバル・ヘルス・エクイティ大学副学長、小児科教授

ルワンダをはじめ、世界各地の最も脆弱なコミュニティにおける公的医療へのアクセス拡大において中心的な役割を果たし、世界的な疾病負担の軽減と生活の向上に貢献したことが評価された。とくにHIV、マラリア、結核などの疾病に苦しむ人々のために、回復力のある医療システムを構築し、医療サービスの質、利用可能性などを向上させることに焦点を当てた活動をしている。

●ヨーロッパ選出 アンジェラ・ニエト教授(下段右)
スペイン、サン・フアン・デ・アリカンテ、神経科学研究所(CSIC-UMH)教授

がんがほかの臓器に転移し、がん関連死の90%以上を引き起こす二次腫瘍を形成する仕組みを理解する道を開いた、胚発生に関する基本的な発見が評価されての受賞。細胞が胚のなかでどのようにアイデンティティを変化させ、拡散し、異なる組織を形成するかを研究。

ヘンケルは、毛髪研究の分野で優れた女性科学者を支援・表彰する新しい研究賞「Martha Schwarzkopf Award for Women in Science(マーサ・シュワルツコフ女性科学賞)」を創設し、3名の女性研究者に賞を授与した。

この賞は、毛髪研究または関連研究のプロジェクトに取り組むヨーロッパの女性科学者が応募の対象で、科学的な業績と専門性が認められた受賞者には、1万ユーロとメンターによるサポートが与えられる。第一回の受賞者として、医学教授のリディア・ルドニカ(Lidia Rudnicka)氏、民間研究機関の最高科学責任者(CSC)兼副社長 マーサ・ベルトリーニ(Marta Bertolini)氏、皮膚科医のアンドリア・コンスタンティノー(Andria Constantinou)氏が、それぞれ1、2、3位に輝いた。

ヘンケルの最高人事責任者シルヴィ・ニコル氏は、ヘンケルにとって男女平等は非常に重要であり、同社の全体的な多様性戦略の大切な要素と述べるとともに、「研究および科学の分野で女性の割合はまだ十分ではない。マーサ・シュワルツコフ女性科学賞によって、科学分野における才能ある女性の成長を促し、研究を支援していきたい」と同賞の意義を語った。

左から、ルドニカ氏、ベルトリーニ氏、コンスタンティノー氏
出典:Henkelプレスリリース

資生堂は2022年6月30日、「資生堂 女性研究者サイエンスグラント」の第15回受賞者10名を、応募総数117名のなかから選出した。「グラント」とは研究助成金の意味で、次世代の指導的役割を担う女性研究者を支援することが科学技術の発展につながるとの考えのもと、2007年に設立された。化粧品関連領域にとどまらない幅広い研究分野を募集対象とし、応募には年齢制限がなく、研究を推進する目的であれば、受賞者に贈呈される各100万円の助成金を出産や育児などライフイベントのサポートなどにも使用できるのが特徴だ。

出典:資生堂ニュースリリース

今回の募集ではとくに、「人々が幸福を実感できるサステナブルな世界の実現を目指した研究活動支援」および「将来指導的立場を目指す女性研究者の育成」をテーマとした。資生堂では、女性の活躍を積極的に推進する企業として、女性の研究者を取り巻く環境に幅広く目を向けながら、受賞者の研究活動と研究リーダーとしてのステップアップを支援していくとする。また、授賞式は2022年7月14日に開催される。

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image: Mickey O’neil via Unsplash

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