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LVMH、各ブランドにおける顧客ロイヤルティ醸成にNFTプロジェクトを活用【VivaTech 2022(2)】
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LVMH、各ブランドにおける顧客ロイヤルティ醸成にNFTプロジェクトを活用【VivaTech 2022(2)】

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2022年6月15日〜18日にフランス・パリで開催された「VivaTech 2022」から、美容・ファッション業界を中心に最新テクノロジーの活用事例を紹介する第2回は、ラグジュアリー業界を牽引するLVMHによるメタバース、NFT、Web3における取り組みを現地レポートする。

メタバースとNFT分野で多くのIT企業、スタートアップと協業するLVMH

前回は、6回目となるViva Technology(VivaTech)2022で発表されたロレアルのWeb3、NFT、メタバースの取り組みについて紹介した。Web3の時代をみすえてますますデジタル変革に焦点が当てられるいま、ラグジュアリーブランドではどんな特別体験で、顧客とのつながりを強めていくのか。

VivaTechレポート第2回は、LVMHグループが発表した真正性と安全性を担保するブロックチェーンや、希少価値の高いNFTアート、そして、メタバースビジネスの展望について紹介する。

会場内に設けられた「LVMHアパートメント」と名付けられた600平方メートルの巨大ブースでは、同グループの16のメゾンと「LVMHイノベーションアワード(LVMH Innovation Award )2022」のファイナリストのスタートアップ21社、2021年度の同アワード受賞スタートアップ5社が、それぞれのプロジェクトや成果を展示した。また、「オープンキッチン」と名付けられたエリアでは、社内起業家プログラム「Dare」や、LVMH傘下のメゾンとスタートアップ企業の協働を促進するプログラム「La Maison des Startups」に参加する企業も展示を行った。

出典:LVMHの公式Instagramアカウント

今回、LVMHはリアル会場に加えて、マイクロバース(メタバース上での小規模コミュニティ)のバーチャル空間を制作し、こちらでもLVMHグループのイノベーションを紹介。LVMHイノベーションアワードのキャンペーンのミューズであり、グループ全体の「イノベーションの新しい顔」と位置づけられるバーチャルアンバサダー(アバター)のリヴィ(Livi)が進行役となり、データ変換、Web3、持続可能性などに対するLVMHのヴィジョンや戦略が語られた。

バーチャル空間でアバターのリヴィとリアルのLVMH社員がディスカッションする様子を会場で放映

NFTプロジェクトによる新しい顧客体験でブランドロイヤルティ醸成

前回紹介したロレアル同様、LVMHグループの美容ブランドもARバーチャルトライオンや、ゲーム業界とのパートナーシップなど、メタバースでの経験を重ねている。

LVMHクリプト&メタバース ディレクターのネリー・メンサ(Nelly Mensah)氏は、「Web3やメタバースは、LVMHのすべてのブランドにとって、未来(=大きなチャンス)と捉えている。仮想世界でデジタル資産の保持が可能になったことで、(ルールが新しくなり)ビジネスの枠組みが変わる」と述べ、実際の製品をデジタルでも保有できるようにすることで、メタバース内で(アバターにメイクや洋服を着せるなど)ユーザーはさらなる自己表現が可能になり、顧客ロイヤリティを高めることにつなげられると示唆。さらに、「メタバースは認知、購入、アフターサービスの過程、店員への質問、チュートリアルなど、消費者とのあらゆるタッチポイントで活用できる」と、多くの可能性を示した。

また、LVMHは2021年に、プラダグループ、カルティエとともに、ブロックチェーン技術企業ConsenSysと、マイクロソフトによって保護されたマルチノーダルのプライベートブロックチェーンであるAuraブロックチェーンコンソーシアム(共同事業体)を設立し、製品の信頼性と真正性を保証。さらに、製品にNFTを紐づけることによって、付加価値のあるコンテンツや特典を提供している。実際にVivaTech会場で披露されたラグジュアリー業界におけるLVMHグループのNFTプロジェクトを紹介しよう。

LVMHブースでの講演に集まった来場者

ゲラン:希少なNFT購入で、自然再生に貢献するREAVERSEプロジェクト

ブランドのコミットメントとして生物多様性の保全やミツバチの保護を掲げるゲランは、2021年にNFTデジタルアートのオークションを開催し、その収益を、ヤン・アルテュス=ベルトラン(Yann Arthus-Bertrand)氏が主催するパリ西部イヴリーヌ地方のミリエール渓谷における自然再生プロジェクトに寄付した。2022年も同氏とコラボレーションし、新たなNFTデジタルアート「クリプトビー」コレクションを販売して、現実世界の自然保護区を再び自然豊かな環境に戻すREAVERSEプロジェクトを実施している。

REAVERSEプロジェクトの柱となるのは、一般販売されるNFT「クリプトビー」だ。ベルトラン氏が活動する28ヘクタールの自然保護区ミリエール渓谷は、ゲランの創業年にちなんで1,828の区画に分けられ、クリプトビーを1つ購入すると、作品に紐づけられた1区画を支援できる仕組みだ。NFTの売上は、すべてこの保護地区の自然再生や生態系回復のための研究に寄付される。

クリプトビーは、ミツバチをモチーフにしたデジタル(NFT)アートで、それぞれの区画に生息する植物がアート作品に反映されている。1,828のアートコレクションは、希少性の高低により4レベルに設定され、各々唯一無二のグラフィックが施されている。

このNFTは、最も持続可能性が高く、消費電力が少ないブロックチェーンの1つTezosの暗号通貨で取引される。クリプトビーを入手するにはTezosと互換性のある仮想通貨ウォレットが必要で、NFTマーケットプレイスobjkt.comで購入できる。最低競売価格は20XTZ(25ユーロに相当)からとなっている。

さらに、VivaTechの開催期間に同NFTを購入すると、クリエーターのロジャー・キリマンジェロ(Roger Kilimanjaro)氏による4種類の「クリプトクイーンビー(CryptoQueenBee)」が、クリプトビーの購入個数に応じてドロップ(無料配布)される特別企画も実施された。

クリプトビーの保持者は、ミリエール渓谷が自然再生していく様子をグーグルアースでモニタリングできるとともに、REAVERSEコミュニティの一員となり、今後発表されるNFTコレクションへの先行プレビューや、自分のクリプトビーの区画に実際に訪問できるなどの特典が得られる。

ゲランは自然保護というある意味物理的な行為に、デジタルの仮想領域を融合することで、どちらにも関心のある意識の高い層を惹きつけ、これまで以上に保護に力を注げるとする。NFTの希少性、収集可能という特性を利用しつつ、自然再生に共感するコミュニティとのつながりをリアルの世界で深めるプロジェクトといえる。

ケンゾー:NFTでファンコミュニティに対してリワード

2021年、NIGO®氏がアーティスティックディレクターに就任したケンゾー(KENZO)は、2022年2月にブランド初のNFTを発表。NIGO®氏のデビューコレクションの製品購入者から抽選で100名にNFTアートワークをドロップした。このドロップは4回にわたり行われ、初回はブランドのアイコニックなBOKE FLOWERコレクションの購入者が対象で、その後1カ月ごとに、タイガーテイル、Denim BOKE FLOWER、ポピーと対象商品をかえ、それぞれ異なるNFTアートを100名に配布した。

出典:ケンゾーの公式Instagramアカウント

加えて、期間内に複数のNFTを集めると、さらなる特典も受けられるようにした。NFTを3つ集めるとコレクションのプレビューに、4つ集めると抽選で1名が2022年6月にパリで開催されたケンゾーのパリコレのランウエイに、それぞれ招待された。

創業者である高田賢三氏のアイコニックなモチーフを使用したNIGO®氏のデビューコレクションに光をあてつつ、ファンコミュニティに向けてNFT企画に参加する体験を創出したこのプロジェクトは、ゲラン同様、NFTの希少性、収集可能性を活用し、顧客ロイヤリティを高めながら、現実世界でも特別体験を届ける試みだ。

ブルガリ①:Web3 ラグジュアリーのメタバース体験、NFTコレクション

伊ローマで創業し140年の歴史を持つブルガリは、高級宝飾ブランドならではのメタバースの世界をVivaTechで初公開し、同時に富裕層向けの腕時計やハイジュエリーにおいてNFTコレクションを発表した。

ブルガリのメタバースは、ローマの象徴的なランドマークに、同ブランドのアイコニックなセルペンティ コレクションのモチーフなどが組み込まれた世界で、同ブランドCEOのジャン・クリストフ・ババン(Jean-Christophe Babin)氏のアバターが登場し、仮想世界を案内。この空間を訪れた人は、未来のブルガリの世界に没入しながら、新しいショッピング体験を楽しむことができるとする。

ブルガリのチーフオペレーション&イノベーション・オフィサーのマッシモ・パローニ(Massimo Paloni)氏は、「ブルガリのアイデンティティを尊重しながらブランドを昇華させ、顧客に驚きを与えるには、NFTとメタバースを理解し、最先端のコンセプトを作ることが重要だ。Web3を活用して、物理的な世界(ジュエリーなどの製作)と同レベルの創造性と高度な技術を駆使し、デジタル体験を創造することが求められる」と述べている。

ブルガリ②:腕時計の真正性や所有者を保証する限定NFTアート

ブルガリの腕時計ラインでNFTを採用したのは、世界一薄い腕時計をうたう「オクト フィニッシモ ウルトラ(Octo Finissimo Ultra)」だ。わずか10本限定で製造され、1本44万ドル(約5,300万円)という価格の、薄さ1.8ミリのこの腕時計には、ラチェットホイール(歯車)部分にQRコードが刻印されている。QRコードは10本それぞれ異なり、スマートフォンで読み込むと、ブロックチェーン技術により真正性とオーナーシップが証明され、NFTアートワークを受け取ることができる。NFT保持者のみがアクセスできる専用サイトでは、「Octo」シリーズの開発背景の解説や、写真や動画などを楽しむことができる。

また、このNFTは独自のブロックチェーンシステムで保護されている。ブルガリは製品の真正性を認定するデジタルパスポートを発行するAuraブロックチェーンと、デジタルアートワークの真正性と透明性を確保するブロックチェーンPolygonとを融合、2つのブロックチェーンを不可分とすることで、NFTがOpenSeaなどのマーケットプラットフォームに出回る二次流通を阻止するとしている。

世界最薄の時計は、NFTアート作品を大切に保管する保管庫にもなり、このクリエイションの8つ目の特許であるBvlgari Singvlarity technologyによって腕時計の所有者に永遠に証書としての保証がされる。

欧州メディアのインタビューに対しパローニ氏は、「この時計は、世界最薄にすることで立体的な次元(3D)は薄れるが、QRコードによってデジタルの次元へと広がり、新しい顧客体験を創出する」と語っている。

また、2022年6月上旬に発表したブルガリのハイジュエリーのNFTカプセルコレクションも披露された。エメラルド(Emerald Glory)、あるいはルビー(Magnifica Ruby Metamorphosis)を配したネックレスに着想を得た2つのNFTデジタルアートワークは、上述の腕時計と同じ特許技術により、実際の製品と紐づけられている。

ルビーのネックレスのNFTアート
出典:ブルガリの公式Instagramアカウント

また、ブルガリのもう一つのNFTコレクションである「Beyond Wonder」はデジタル作品のみで、勢いよく伸びる草花がクリスタルや宝石に変化し、ハイジュエリーをまとう人間のシルエットを形作るアートワークだ。同コレクションは非売品で、ブランドのレガシー(遺産)として管理される。ブルガリは類まれな伝統技術と最先端のデジタルテクノロジーの共演が、NFTによる顧客体験を高めるとする。

Beyond WonderのNFTアート
出典:ブルガリの公式Instagramアカウント

タグ・ホイヤー:NFTアートのディスプレイ機能を備えたスマートウォッチ

1860年創業の高級時計ブランド、タグ・ホイヤーは、スマートウォッチ「タグ・ホイヤー コネクテッド キャリバーE4」の新機能として、所有するNFTアートを文字盤に表示する機能を追加した。

出典:タグ・ホイヤーの公式Instagramアカウント

同ブランドは暗号資産ウォレットを制作するLedgerと提携し、ユーザーが腕時計から、所持するすべてのNFTに安全にアクセスし、時計のディスプレイに表示することを可能にした。この機能により、所有権の証明が確認された状態で、希少で収集性の高いNFTアート=デジタル資産を現実世界に持ち込むことができるとする。NFTコレクターは、いつでもどこでも、さまざまなウォレットに安全に接続して好みのアート作品を文字盤に映し出し、持ち歩くことができる。

また、タグ・ホイヤーは米国のECサイトで仮想通貨による製品購入を可能にした。仮想通貨での決済は、LVMH傘下のブランドでは初めての試みで、今後、ほかのブランドにも広がっていくとみられる。

さらに、毎年VivaTechで有望なスタートアップを表彰する、LVMHイノベーションアワード2022では、3D/バーチャル体験&メタバース部門において、NFTウォレットの制作・販売企業Bitskiが受賞した。2018年創業の米サンフランシスコに拠点を置くBitskiは、ブロックチェーンに触れたことのない人でも比較的簡単にNFT作成ができる技術を企業向けに提供している。

ブランドは、BitskiのシステムをWebサイトやメタバースアプリ、ゲームへ組み込むことで、NFTの作成、販売が行える。また、NFTを購入するユーザーは準拠したウォレットに安全にNFTを保管したり、ウォレットを異なるメタバースと容易に接続することができる。LVMHは今後、Bitskiとの協働により、さらなるNFTプロジェクトを試行していくことが予想される。

ルイ・ヴィトン:3Dリアルタイムテクノロジーでライブストリーミング体験

ルイ・ヴィトンでは、イタリアのクリエイティブ・メディアエージェンシーのOut Thereと、同じくイタリア企業Centounopercentoと共同で、ライブストリーミングエクスペリエンス(LSE)テクノロジーの実演を行った。

グリーンバックを使って背景を透過する合成映像は、映画や動画撮影などですでに実用されている技術だ。ルイ・ヴィトンは3DリアルタイムテクノロジーであるLSE技術をわかりやすく説明するために、ブース内にグリーンバックのミニスタジオを設営。生身の人間がグリーンバックの前に立って話をすると、すぐ横に設置されたモニター画面にパーソナライズされたアバターが映し出され、アバターがリアルタイムで話者と同じ動作をする様子を公開した。バーチャルビジネスショーや、ライブストリーミングショッピング、オンラインカウンセリングなど、さまざまなシーンで新しいコミュニケーションのあり方を提供するイノベーションといえそうだ。

メタバース空間で広がる「ブランドビジネス」の可能性

また、別会場で行われた「メタバース経済」についてのディスカッションでは、LVMHクリプト&メタバース ディレクターのメンサ氏が登壇し、「ソーシャル・ファーストでインタラクティブなメタバース」への関心と可能性の高さを語った。

「若い消費者は、ますます多く時間をオンラインで過ごしている。メタバースはソーシャライズや自己表現、ゲーム体験ができるデジタル空間であり、ブランドにとってはストーリーを伝え、新しい顧客にリーチする素晴らしい機会だ。顧客や消費者を招待して、ブランドの世界を一緒に創り出すこともできる。メタバースを通して、消費者は少しずつブランドを理解してゆき、その結果、現実世界で製品を身につけたくなり、オンライン購入する可能性もある」と、仮想世界の広がりがリアルな商品価値の再発見につながることにも言及した。

また、「InstagramなどSNSが隆盛してきた当初は、ブランドはインフルエンサーと協働することに不安を抱いたが、その後、大きな利点があると理解し、ブランドアンバサダーにも起用している。その経験があることで、Web3への関心も高くより早く適応している」と述べた。加えて「セキュリティが保証された自分のウォレットで、今までにない没入型の3DメタバースとAR体験をシームレスにインターアクションできるのが、私たちの夢である」として、近い将来に実現するであろうサービスに期待を寄せる。

左から、Ledgerのセバスチャン・バドー(Sébastien Badault)氏、LVMHのネリー・メンサ氏、The Sandboxのセバスチャン・ボルゲ(Sébastien Borget)氏、モデレーターのB Smart TVデルフィン・サバチエ(Delphine Sabattier)氏、Epics Games VP Unreal Engine Ecosystem担当 マーク・プティ(Marc Petit)氏
出典:Viva Technology 2022公式サイト

Web3におけるメタバースやNFTのアプローチは、新しい顧客やコミュニティにつながるチャンスであるのはもちろん、ブランドの長期的な価値や顧客ロイヤルティを築くためにも有効で、各ブランドのコアな精神に結びついた多様なプロジェクトがすでに始まっている。ただし、ロレアル、LVMHともに、現在はテスト&ラーニング期間であると口を揃えており、Web3におけるエコシステムの土台を固めるべく、模索が活発に行われている状況といえる。

<そのほかのVivaTech 2022レポートはこちら>
(1)ロレアルは「オンチェーンビューティ」体験へ。各ブランドのDAOやNFTプロジェクトを発表
(3)ディオールやランコムのビューティデバイスや、AR/VR顧客体験

Text & photo: 谷 素子(Motoko Tani)
Top image: Viva Technology 2022公式サイト


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