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ロレアルは「オンチェーンビューティ」体験へ。各ブランドのDAOやNFTプロジェクトを発表【VivaTech 2022(1)】
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ロレアルは「オンチェーンビューティ」体験へ。各ブランドのDAOやNFTプロジェクトを発表【VivaTech 2022(1)】

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フランスで開催された毎年恒例の「VivaTech 2022」から、美容業界における最新テクノロジーの活用事例を3回に分けて紹介する。第1回めは、“ビューティテックNo.1企業”を目指すロレアルが進めるメタバース、NFT、Web3における取り組みを現地取材にもとづきレポートする。

Web3を大テーマに注目のテクノロジー企業のトップが多数参加

2022年6月15日から18日までの4日間にわたり、フランス・パリで開催された欧州最大のテクノロジー展示会「Viva Technology (VivaTech)」。大手企業、スタートアップ、ビジネスリーダーや投資家などが一堂に会し、先端技術やサービスを発表する機会として年々注目度を増しており、第6回を迎える2022年は、リアルな会場に延べ9万1,000人が訪れ、オンラインからは30万人が参加、SNSを含めると146カ国4億人にリーチし、30億ビューを記録した。

今回のVivaTechでは、Web3が大きなテーマのひとつで、350名以上のスピーカーのなかには、仮想通貨取引所 バイナンス(Binance)の創業者でCEOのチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏、ブロックチェーンプラットフォームと仮装通貨イーサリアム(Ethereum)の創業者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏(リモート参加)、また、ゲーム業界からは、ザ・サンドボックス(The Sandbox)の共同創業者でありCOOのセバスチャン・ボルゲ(Sébastien Borget)氏、ロブロックス(Roblox)のVP タミ・ボーマック(Tami Bhaumik)氏、Epics GamesのVP Unreal Engine Ecosystem担当 マーク・プティ(Marc Petit)氏などが登壇した。それぞれ、メタバース内でオープンに行動できるゲームやゲームエンジン開発企業として知られている。

美容業界からは、今回も業界トップのロレアルや、ラグジュアリー業界を牽引するLVMHグループがともに巨大ブースを出展し、メタバース、NFTプロジェクト、また、先端技術による美容デバイスなどを発表した。

ロレアルとLVMHは、早い段階から3D仮想空間としてのメタバースに着目している。傘下のブランドでは、女性ゲーマー層の拡大を受けてeスポーツをスポンサーとして支援したり、『あつまれ どうぶつの森』や『The Sims』などの仮想空間ゲームや、3Dアバターソーシャルアプリの「ゼペット(ZEPETO)」などで、アバター用バーチャルメイクやアクセサリーを提供するなど、仮想世界のコミュニティとの関係構築を試みている。

パンデミックにより社会全般でデジタル化が急加速した2021年は、Web3元年ともいえるだろう。パブリック型のブロックチェーンを活用した分散型(大手プラットフォーマーではなく、各個人がオンラインプレゼンスやデータの管理をするモデル)インターネットとしてのWeb3への転換が進みつつある現在、VivaTech 2022は、企業が今まさに探求している消費者エンゲージメントを強める新しい手段や試みを披露する場となった。VivaTechレポートの1回目はロレアルが発表したWeb3、メタバース、NFTについて紹介する。

新概念「オンチェーンビューティ」を提唱するロレアル

ビューティテック分野におけるNo. 1企業となることを掲げるロレアルは、会場中央部に325平方メートルの広さのブースを設置し、ラグジュアリーから、一般消費者やプロフェッショナル(美容サロン)向け、皮膚科医推奨のスキンケア製品など、幅広いポートフォリオの傘下ブランドによるイノベーションを展示した。

ロレアルは、1世紀以上にわたり美容業界で培ってきた専門知識を活用し、多様な感覚に働きかける美容体験を生み出すことで、美の未来を創造し続けている。肌診断、遠隔カウンセリング、AR/AIによるバーチャルトライオンなど、いわばWeb2上のビューティの先進技術を開拓してきた同社は、新世代の消費者に届くWeb3美容体験の土台を築こうとしている。

2021年4月に同社のチーフデジタル&マーケティングオフィサー(CDMO)に就任したアスミタ・デュべイ(Asmita Dubey)氏は、VivaTech関連のプレスリリースのなかで「美の未来は、物理的な世界、デジタル、そしてバーチャルにある。ロレアルはWeb2の足場を固めしっかり加速しつつ、斬新な『オンチェーンビューティ(On-chain beauty)』のアプローチでWeb3を模索する」として、「すべての取り組みにおいてデジタルファーストを貫き、O+O(オフライン+オンライン)から、O+O+O(オンライン+オフライン+オンチェーン)へと進化し続けるカスタマージャーニーを、より豊かなものにすることを目指す」と述べている。

ロレアルが唱える「オンチェーンビューティ」とは、消費者とクリエーターが新しいプラットフォームに集結し、新たな美容の経済活動に参加することを意味する。

一例としては、同社は世界最大規模のNFTマーケットプレイスOpenSeaと美容業界では初めてパートナーシップを締結し、ブランド主導の環境下で、ユニークなバーチャル美容体験やコレクティブル(コレクションの収集)をプラットフォーム上で可能にし、コミュニティとのつながりやエンゲージメントを強めながら、Web3の多様なエコシステムの構築を進めていることがあげられる。

VivaTechに登場したロレアルCDMOアスミタ・デュべイ氏
出典:Viva Technology 2022

ブランドDNAや存在意義に沿ったNFTプロジェクト

ロレアルのブースには、まるでメタバース世界に入り込んだかのような空間「NFT ATM」が用意され、クリプト(仮想通貨)を利用したNFTの4プロジェクトが発表された。参加者がタッチパネルに表示された各プロジェクトの説明を受けたあと1つを選ぶと、その場でQRコードが記された「NFTパス」がプリントされる。スマートフォンでQRコードをスキャンすると、NFTを購入または無料で獲得できるサイトにアクセスできる仕組みだ。

ロレアルの会場に設けられた「NFT ATM」

NFT ATMで提案されるのは、NYX Professional Makeup(NYX)、ミュグレー、イヴ・サンローラン(YSL)の3ブランドによる4つのプロジェクトだ。いずれも、現実と仮想世界を連動させつつ、ブランドDNAを表現している。それぞれのプロジェクトを順に紹介していこう。

1. NYX:美容業界初のDAO、3Dクリエーターを支援

1999年に米ロサンゼルスで誕生したプロフェッショナル向けのメイクアップブランドNYX (日本未展開ブランド)は、次世代のクリエーターをエンパワメントし、Web3における史上初のクリエーター向け分散型レコードレーベル(音楽レーベルのようにアート分野における管理運営媒体)となることを目指し、メタバースにおける美の再定義を行うとしている。

NYX はVivaTechの開催にあわせて、3Dアーティストのコミュニティとともにメタバースにおけるメイクアップのあり方をアップデートし、進化・発展させる目的で、美容業界初のDAO(Decentralized Autonomous Organization:自立分散型組織)であるGORJSを発表した。ブロックチェーンで個人のIDを担保する、いわばメタバースコミュニティであるGORJSは、業界を超えた3Dクリエーターの登竜門として、メンバーとコミュニティの成長とイノベーション、デジタルメイクの向上を図ると同時に、参加アーティストのキャリアの成功を目指すものだ。

VivaTech会場では、受け取ったQRコードをスキャンするとOpenSeaにアクセスでき、一覧から「NYX」を選択することでGORJSメンバーが手掛けたデジタルアート作品が購入できる。GORJSにより、3Dアーティスト、アニメーターなどをNFTによって支援することに加え、多様性、包括性、アクセシビリティというブランド価値に関連する“文化的な会話”をリードしていくことを、NYXは目論む。

デュベイ氏は、NYXはDXの推進とともに、世界中で3,000万人以上のファンコミュニティをすでに築いていることから、DAOとの親和性に優れているとし、「メタバースにおいてコミュニティをエンパワメントすることは、NYX のブランドDNAに一致する」と、物理的な世界と仮想世界でのマーケティング戦略に一貫性があることを強調した。

2. NYX:LGBTQIA+コミュニティとアバターでメタ・プライド協賛

また、NYXはもう一件、NFTプロジェクトを実行している。6月のプライド月間(世界各地でLGBTQ+の権利を啓発する活動・イベント)にあわせて、多様性・包括性を重視する米クリエイティブ企業 People of Crypto Lab(POC)が制作したNFTアバターを購入すると、ブロックチェーンゲームのプラットフォーム、ザ・サンドボックスのメタバース「Valley of Belonging」空間内を自由に歩き回り、ダンスフロアで踊るなど、プライドを祝うことができる

NYXは、ザ・サンドボックスに進出した初めての美容ブランドとして、世界中どこからでもつながれる仮想空間に、安全でインクルーシブなWeb3環境を作ったとする。有色およびLGBTQIA+に含まれる人々は世界人口の84.3%を占めることから、NYX のルックから着想した、36以上の肌トーンを揃え、ひとつひとつ異なる8万4,300種類の多様性に富んだNFTアバターコレクションを制作。民族性、性的指向、ジェンダー識別に応えるほか、義肢などの異なる能力やヒジャブのような文化識別の違いも表現できるとしている。

メイクアップには性別は関係なく、その人自身の独自性や自己表現のための素晴らしい方法だとするNYXは、2020年に「Proud Allies for All(すべての人に誇りを)」と銘打ったキャンペーンを開始して以来、ロサンゼルスLGBTセンターと提携し、15万ドル以上を寄付してきた。今回のプライドプロジェクトにおけるアバターNFTの販売収益(5万ドル)の全額も同センターに寄付し、LGBTQIA+コミュニティをエンパワメントする

3. ミュグレー:NFT「3D Angel」でオンチェーン・ロイヤリティーを向上

ミュグレー(MUGLER、日本未展開ブランド)は、アイコニックなフレグランス「Angel」の誕生30周年を祝って、初めてのNFT「3D Angel」プロジェクトを発表。Web3アーティストのマーク・チュディスコ(Marc Tudisco)氏によって30種類のクリプト(NFT)アートが制作され、それぞれ100個限定、合計3,000個が、2022年11月に公開される予定だ。VivaTech会場で配布のQRコードから公式サイトに登録ができ、11月にNFT「3D Angel」に関する情報がメールで通知される。

出典:ミュグレーの公式Instagramアカウント

デュベイ氏は「ミュグレーは1992年にフレグランスAngelを発表。同じ年にメタバースという言葉が(SF小説『スノウ・クラッシュ』から)生まれた」と語り、同ブランドとメタバースとの間にあるストーリーを明かした。「The real world is not enough(現実世界だけでは物足りない)」というブランドのDNAに忠実に、ミュグレーはWeb3に参入し、コレクション性の高いNFTでオンチェーン・ロイヤリティーを高めるとする。

4. YSL:限定1万個の無料NFTゴールデンブロックを提供

YSLは無料の「ゴールデンブロック(Golden Block)」という特典が入手できるプロジェクトを発表した。配布されたQRコードをスキャンし、アプリストアでNFTを受け取るためのウォレット「YSL Beauty's Wallet」をダウンロードすると、このウォレットを通じて1万個限定のNFTゴールデンブロックがドロップ(無料プレゼント)される。

VivaTech初日にInstagramやTwitterのフォロワー、会場を訪れた人に向けて発表され、NFTを所有するYSLのファンコミュニティのみがWeb3のエコシステムに入り、特典を受けられるとしている。

最初の特典は、DJアーティストによるコンサートだ。さまざまなコミュニティにあわせたファントークンを制作・発行するメタバースプラットフォーム「Pools」と提携し、ユーザーは$TREATSと$ETHAGAと名付けられた“ソーシャルトークン“を受け取り、人気DJアーティストのアガタ・ムジン(Agathe Mougin)氏とキトン(Kittens)氏によるコンサートに参加できる。

YSLは、2020年にパートナー間の暴力の予防を促進するプログラム「Aimer sans abuser(暴力は愛じゃない)」を立ち上げ、恋愛や婚姻関係における親しいパートナーからの暴力のサインの認知と正しい理解を広め、2030年までに200万人を教育することを目指している。Poolsのソーシャルトークンは、このキャンペーンと提携しており、ファンが参加することで、同ブランドが2つの非営利団体、米国の「It’s on Us」とフランスの「En avant toute(s)」に、それぞれ1万ユーロを寄付するとする。

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そのほか、NFTゴールデンブロックの所有者は、メタバース内でバーチャルメイクをして写真を撮るなど、今後さまざまな体験ができることが予告されている。

このようにロレアルはアーティストやコミュニティをエンパワメントし、またテックプラットフォームなど多彩な企業とパートナーシップを組みながら、傘下のブランドそれぞれのDNAにもとづいた創造性のあるNFTプロジェクトを推進している。

ロレアルCEOとシェリル・サンドバーグ氏のメタバース議論

さらに、会場ではロレアル CEO ニコラ・イエロニムス氏とMetaのCOO シェリル・サンドバーグ氏(2022年6月1日にCOO退任を発表)が、Metaのシステムを使用して、未来のリモートコラボレーションについて語った。2人は現実世界でそれぞれVRヘッドセットを装着して、メタバース内でアバター同士によるディスカッションの様子を披露。現実の話者の動きがアバターに即時に反映されるほか、背景は高層ビルの立ち並ぶ都会の風景、ビーチサイドなど、あらかじめ用意されたデザインから自由に選択ができる。

My three teenage daughters love L'Oréal, so I got serious mom points when I talked to CEO Nicolas Hieronimus this week....

Posted by Sheryl Sandberg on Wednesday, June 15, 2022

「メタバースはゲームに代表される“楽しい体験”から次のフェーズに入っている。これからは、今までになかった、もっと意味のあるディープな体験ができるようになる」とサンドバーグ氏は語り、エンターテイメントだけでなく、仕事、買い物、遊びなど日常の活動がメタバースで行われるようになり、いつでもどこでも、現実と仮想空間がつながるようになることを示唆した。

両社は2021年に、ロレアル傘下のAI/AR企業ModiFaceとFacebookのARプラットフォームSparkARとのプラットフォーム統合を発表して話題となった。メタバースにおいても協働し、顧客体験をより豊かにするサービスが生み出されることが期待される。

初期段階からメタバース世界の構築へ参入する意味

一部のユーザーは、メタバースでアバターをパーソナライズし、もう一人の自分として動かすことに慣れてきている。だが、多くの消費者にとってメタバースはまだ馴染みのない世界で、たとえば、NFTなどにも興味はあるものの、どうやってマーケットに参加すればいいのかわからないケースも少なくない。とはいえ、かつてのインターネットやスマートフォンの導入・普及と同様に、ユーザーにとっての使いやすさが向上して一般化するのは時間の問題と考えられる。

誰もが現実世界とメタバースを行き来するのが当たり前になったとき、企業が消費者とのエンゲージメントを強めるには、物理的な世界、デジタル、また仮想世界で、それぞれどのような体験を提供し、どのようにコントロールしていくかを熟考し、適切な方法で示していくことが欠かせない。その意味で、近い将来に向けた考察は、メタバース初期段階である今から、すぐに着手すべき課題といえる。

イエロニムス氏は「ロレアルは常にビューティテックを革新する先駆者として大胆に行動してきた。新興のテクノロジーやチャネルを探求することは当社の使命だ。『世界をつき動かすような美の創造』をパーパス(存在意義)として掲げるロレアルは、テクノロジーは当社のビジネスに変革をもたらす存在と考える」と語っている。

次回は、VivaTechで披露されたLVMHグループのメタバース、NFT、Web3の取り組みをレポートする。

<そのほかのVivaTech 2022レポートはこちら>
(2)LVMH、各ブランドにおける顧客ロイヤルティ醸成にNFTプロジェクトを活用
(3)ディオールやランコムのビューティデバイスや、AR/VR顧客体験

Text: 谷 素子(Motoko Tani)
Top image and photo: 著者撮影

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