ロレアル、ロクシタン、Nu Skinも導入。英米で注目のソーシャルセリングプラットフォーム
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ロレアル、ロクシタン、Nu Skinも導入。英米で注目のソーシャルセリングプラットフォーム

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パンデミック中に大きな飛躍を遂げた美容ブランドの新たな販売チャネル、ソーシャルセリング。ザ・ボディショップのようにブランド自らがその仕組みを構築するほか、フリーランスの美容部員、あるいは消費者の誰もがマイクロインフルエンサーとして販売、収益を得られるプラットフォームも続々と誕生している。今回は、欧米のソーシャルセリングの新しい動きをまとめて紹介する。

Z世代向けにソーシャルセリングのトライアルを重ねるロレアル

2021年に注目を集めた販売手法であるソーシャルセリング。2021年4月の記事では、「この人から買いたい、という『人』を通して広がる購買体験」と定義して、ザ・ボディショップやロレアルの動きを紹介した。

仏ロレアルは、その後も活発に取り組みを進めている。2020年12月、米国のソーシャルセリングプラットフォーム企業 Replika Softwareに投資したのち、2021年6月には、TikTokがパイロット運用するソーシャルセリングプラットフォーム「TikTok Shopping」の試験的利用に、ロレアルUK・アイルランドの「Garnier」と「NYX Professional Makeup (以下NYX)」の2ブランドで参加すると発表。グローバルビューティブランドの初参加とあって話題になった。

ロレアルUK・アイルランドCMO レックス・ブラッドショー・ザンガー(Lex Bradshaw-Zanger)氏は、ソーシャルコマースは、ライブストリーミング、ライブショッピングに続くネクストフロンティアであり、GarnierとNYXの参加は戦略的なものだと述べた。

また、「GarnierとNYXは、英国ではすでにTikTok内での存在感を示しており、高品質なコンテンツを提供するクリエイターとも良好な関係を築いている。アプリ内で直接買い物ができ、使い方も簡単な機能を付加することで、インフルエンサーとコンテンツ、そして購買をつなぐシームレスな消費者体験を提供するための、次のステップであることは明確だ」との見解を示し、ロレアルはトライアルを重ね世界的なスケールでソーシャルコマースの展開を進めている。

多数の美容ブランドが導入するTikTok Shopping

パンデミックにより、ソーシャルメディア経由でショッピングをする傾向はますます高まっており、なかでもTikTokの勢いが増したことも、TikTok Shoppingが注目を集める理由だ。

UGC(ユーザー生成コンテンツ)の収集や分析ソリューションを提供するBazaarvoice(日本ではDataCurrentと提携)の調査によると、消費者は、パンデミックが始まった2020年から2021年にかけて、ソーシャルメディアの影響を強く受けており、ソーシャルサイトが商品発見の重要な選択肢となっていること、また、約80%がソーシャル経由でショッピングすることがあると回答している。実際、過去1年間のサイト経由での売上を比較すると、Facebookが160%増、Instagramが189%増に対し、TikTokは約3倍となる553%の伸びをみせた。

TikTokは、2021年8月に、世界最大のECプラットフォーム企業のひとつ Shopifyとの提携により、アプリ内ショッピング機能「TikTok Shopping」のテストを英米・カナダで開始すると発表し、「Kylie Cosmetics」のカイリー・ジェンナー氏が早々に参加を表明して話題となった。同年9月には、TikTok For Business初のグローバルオンラインイベント「TikTok World」で、TikTok Shoppingの本格始動を告知。Shopifyに加え、Square、Ecwid、PrestaShopといった大手ECプラットフォームとの提携及び、Wix、SHOPLINE、OpenCart、BASEも加わる予定であることを発表した。

TikTok Shoppingは、商品のアップロード、発送からフルフィルメント、購入履歴までを一元管理するフルコマース機能を備えており、ユーザーは、マーチャントのプロフィールページに追加されたショップのタブ、もしくは投稿にタグ付けされた商品リンクから、特定商品の購入ページへと遷移できる。TikTok Shoppingの実装は、美容業界におけるソーシャルセリングの重要性をさらに位置づけるものとして、米国では、前述のKylie Cosmeticsのほか、「Glow Recipe」「Hero Cosmetics」「Youth To The People」(2021年12月ロレアルにより買収)「Rare Beauty」「Summer Fridays」「Item Beauty」「good light」といった多くの独立系のデジタルネイティブな美容ブランドが導入している。

仏ロクシタンは独自プラットフォームを導入

一方、ブランドが独自のソーシャルセリングプラットフォームを導入する動きもある。

仏ロクシタンは、2021年9月に米国市場で独自のソーシャルセリングプラットフォーム「MyL'OCCITANE(マイ・ロクシタン)」の導入を発表した。MyL’OCCITANEは、サステナブル意識の高いコミュニティを活性化するツールとして位置付けられており、ブランドファンの個人やビジネスに関心のある起業家は、初期投資費用として49ドル(約5,650円)を支払うことで、このWebサイトから誰でもコンサルタントとして登録できる。

MyL’OCCITANEのプラットフォームでは、サステナブル・パッケージやリフィル対応製品を中心に、スキンケア、ボディケア、ヘアケア、プレミアムギフトセットなどの商品を幅広く提供。コンサルタントになると、ビジネス成功のために、個人サイトやマネージメントツール、商品サンプルが提供され、トレーニング、サポートなどを受けることができる。

同社 北米マネージング・ディレクターのヤン・タニー二(Yann Tanini)氏は、「MyL’OCCITANEは、情熱を持った美容起業家がテクノロジーを活用し、私たちの既存チャネルではまだ出会えていない新しい顧客と、持続可能な1対1の関係を構築することを応援する仕組み」としている。

Nu Skinは既存のソーシャルセリングプラットフォームを買収

米ユタ州を本拠地に、グローバルで化粧品・健康食品の開発製造・販売を行うNu Skin(ニュースキン)は、2021年12月にソーシャルセリングプラットフォームの「Mavely(マヴェリー)」を買収した。1984年の創業時から、直接顧客と対面する訪問販売としてソーシャルセリングをビジネスの柱にしてきたNu Skinは、すでにさまざまなカテゴリーで使われているMarvelyを傘下にいれることで、アフィリエイトによるソーシャルセリング活動をより活性化し、企業としてさらに成長することを期待している。

2018年シカゴで創業したMavelyは、ユーザーが簡単にソーシャルセラーとして、美容、ファッション、フード、ドリンク、ウエルネス、ペットなどのカテゴリーの100を超えるブランドから選んだ、好きな商品を販売する自分自身のセレクトショップ「MyStore」を開店・運営できるアプリだ。仕組みはシンプルで、ソーシャルセラーが製品をキュレーションし、フルフィルメントはブランドサイトの方で行い、ソーシャルセラーは決済ごとにコミッションを得る。また、SNS告知用の特定リンクやコミッションなどを一元管理できるツールを備えている。すでに4万人のソーシャルセラーが利用しており、Nu Skinの傘下となってからも、Mavelyアプリはこれまで通り独立して運営される。

出典:Mavely公式サイト

AGORAやFlipなど英米の新興ソーシャルセリングプラットフォーム

そのほか、美容に特化したソーシャルセリングプラットフォームやアプリを提供するスタートアップも続々と登場している。

AGORA(アゴラ)

2019年に設立された英国の「AGORA」は、欧州向けの美容とウエルネスに特化したソーシャルセリングアプリだ。アジアのソーシャル&ライブショッピングの台頭に触発されて開発に至ったという。登録ユーザーは、ソーシャルセラーとして自身が気に入った美容ブランドの製品に直接リンクするビデオコンテンツを作成・共有し、収益化することができる。当初は「Elemental Herbology(エレメンタルハーボロジー )」「LaRoc Cosmetics」ほか700ブランドの1万6,000商品と、100人のセラーを備えてローンチし、2020年12月には、シードラウンドにて約540万ユーロ(約7億円)の資金調達を実施。2021年11月の段階で、すでに36万人の登録ユーザーと5,000人を超えるコンテンツ・クリエイターを抱えており、欧州の美容ソーシャルセリングを牽引する企業として注目される。

出典:AGORA公式サイト

Flip(フリップ)

2019年に米国LAでローンチした美容に特化したソーシャルセリング・プラットフォーム「Flip」は、2021年8月末にシリーズAとして2,800万ドル(約32億2,000万円)を調達。同年9月の段階で、「FEKKAI」「Hourglass Cosmetics」「rms beauty(アールエムエス ビューティー)」「Jason Wu Beauty」ほか、200ブランドを扱っており、毎週新たに約20ブランドが追加される勢いだ。2021年12月現在、「Youth To The People」「Pacifica」「Living Proof」「philosophy」「Supergoop!」といったブランドも加わっている。同年8月からFlipで販売を行なっているFEKKAIのチーフ・コマーシャル・オフィサーのクリスタル・ウッド(Crystal Wood)氏は、Flipを採用した理由として「熱狂的なビューティジャンキーへのアクセスがある」点を挙げている。

出典:Flip

Flipユーザーのショートムービーから特定商品の購入ページへリンクするのはTikTokなどと同様の仕組みだが、TikTokでは、各ブランドがショップを展開し、フルフィルメントも行うのに対し、Flipは、複数のブランドをワンクリックでまとめ買いできるオンライン小売店の役割を担っている。セラーのページには複数ブランドの商品紹介ビデオが並び、ユーザーは、フォローするセラーのビデオのほか、ブランドの公式ページからも購入が可能だ。

送料無料、返品無料、翌日配送といったサービスもあり、Flipは将来的に「美容業界のアマゾン」を目指しているとされる。

また、InstagramやTikTokといったSNSでユーザーがソーシャルセラーとしてお金を稼ぐには、インフルエンサーとしてブランドとの契約が必要になるが、Flipでは、まずは購入商品をFlipでレビュー投稿するところから、すぐにマネタイズが可能だ。オーディエンスの人数でインセンティブが決定することもあり、アプリ内には、商品の良い点を紹介するばかりではなく、否定的な側面にも言及し、信頼感の醸成につとめるセラーのレビューも多く見られる。ショートムービーというフォーマットに加えて、ブランドに忖度しないコンテンツがリアルさを求めるZ世代に響きそうだ。CEOのノア・アハ(Nooruldeen “Noor” Agha)氏は、Flipが「これまでにない真に正直なコマース・プラットフォーム」となることを目指している

Macy'sやウルタなど小売もソーシャルセリング強化へ

一方で、ブランドと消費者の出会いの場を提供してきた小売企業が、一般の消費者を販売員として迎えるソーシャルセリング・プラットフォーム化の動きもみられる。

たとえば、米百貨店大手Macy’sは、「Macy’s Style Crew アンバサダー」という販売員を対象としたアフィリエイトプログラムを展開していたが、2020年8月から、募集枠を一般にも拡大。選ばれたアンバサダーは、Macy’sで扱っている商品のアフィリエイトリンクを自身のソーシャルメディアにリンクしたり、Macy’s Style Crewプラットフォームに販促動画を投稿したりすることができる。Macy’s Style Crewは、ホームグッズ、アクティブウェア、衣服、子ども服、靴、ジュエリーなどを販売しているが、消費者が実際にこのプラットフォームから購入に踏み切るのは、ビューティ分野が一番多いという。

出典:Macy’s Style Crew

美容リテールの大手、ウルタ・ビューティーやセフォラは、アフィリエイトプログラムやインフルエンサーマーケティングなどを通してソーシャルセリングを行なってきたが、ウルタは2021年7月に米国ニューヨークのソーシャルコマーススタートアップ Supergreatと試験的にパートナーシップを締結した。

Supergreatは「ユーザーが自由に自己表現できる、特定のブランドフィルターのないスペース」で「Z世代のQVC(テレビショッピング)」を標榜するライブストリーミング・ショッピングアプリだ。視聴者がライブ動画にコメントし、ライバーがそれに応えるといったかたちで、ブランドやユーザーが美容商品についてやりとりできる活発なコミュニティとなっている。また、アプリ内通貨であるスーパーコインを貯めて限定商品と交換するといったゲーミフィケーションの要素も取り入れ、競合プラットフォームとの差別化を図っている。

Supergreatのコミュニティ&マーケティング主任エニッド・ホワン(Enid Hwang)氏は、「Supergreatのユーザーは、“美容コンテンツを消費する”という明確な目的を持ってログインしているためエンゲージメントが高い。TikTokなどのようにさまざまな理由でユーザーが集まるマルチカテゴリーのプラットフォームでは再現しにくい熱量を持つ」と話している。

出典:Supergreat公式サイト

人気を集めるのは消費者に近いソーシャルセラー、今後はマッチングが課題

このように、パンデミック、そしてさまざまな技術の向上により、ソーシャルセリングは進化している。ブランドの独自プラットフォームから、新たなプラットフォームのローンチや、リテールの参加もあり、市場はさらに拡大していきそうだ。

とくに、ブランドと契約したアンバサダー(販売員)が潜在顧客を開拓、販売するというこれまでのソーシャルセリングから、特定ブランドの代弁者ではなく、一般人に近いソーシャルセラーが複数のブランドのなかから、自分が売りたい商品を選び、オンラインで販売するという、ある意味消費者主導型の販促活動に代わってきているのが特徴だ。

そして、注目される美容ソーシャルセラーは、フォロワーの多い憧れの対象のインフルエンサーというよりも、視聴者に近い体型、肌トーンや肌質、髪質などを持ち、共感を呼び起こすタイプが多い。多様でリアルな一般消費者に限りなく近いマイクロインフルエンサーとなっていくとみられる。この点からも、消費者が自分の好みやなりたい理想像に近いソーシャルセラーを見つけやすい仕組みであることは、これからますます重要になるだろう。

人と製品とが出会っていた小売の時代から、人と人を結びつけるオンラインスペースが主流の時代が始まっている。「現実味のない綺麗な作り物は信じない」特性をもつとされるZ世代にとっては、「信頼する人のおすすめを買う」というこの方法が、むしろリアルなショッピングのスタイルといえる。

Text: 東リカ(Rika Higashi)
Top image: miniwide via shutterstock

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