MEDULLAがめざす日本発のパーソナライズドシャンプー、その勝算とは

◆English version: Introducing Medulla — Japan’s first personalized shampoo
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日本初のパーソナライズドシャンプーといわれるMEDULLAの誕生背景、販売戦略に迫る。激戦のヘアケア市場で、博報堂出身メンバーが思い描く日本人、そしてアジア人向けのサービス開発とは。

米国ではすでに一大ムーブメントを巻き起こしているパーソナライズドシャンプーのサービスが、日本でも登場した。株式会社Sparty(以下「Sparty」)が2018年5月にリリースした「MEDULLA(メデュラ)」である。Web上で髪質や仕上がり、好みの匂いといった7項目のアンケートに答えると、個別のオーダーメイドシャンプーが届くサービスだ。質問から導き出された組み合わせは100通りを超える。月額6,800円のサブスクリプションモデルを採用し、ユーザー一人一人にあったシャンプーを届けている。日本国内ではおよそ1万点以上のアイテムがあるといわれる激戦のヘアケア市場で、MEDULLAはどう勝負していくのだろうか。

きっかけは妻がもつ髪の悩みから生まれた

代表取締役の深山陽介氏は「妻が髪に悩みを抱え、たくさんのシャンプーを揃えていたことがきっかけ」だと語る。シャンプーなどのヘアケア商品をはじめ、コスメ・化粧品、サプリメントのような美容アイテムは、ユーザーひとりひとり抱える悩みが異なることもあり、パーソナライズに向いているといわれる。

海外ではシャンプーのFunction of BeautyProse、サプリメントではCare/ofなどがすでに登場。それぞれベンチャーキャピタルから資金調達を受けており、成長が期待されている。パーソナライズドという点では、資生堂のOptuneや、パナソニックも「スノービューティミラー&メイクアップシート」を開発しているが、ヘアケア分野でのパーソナライズドアイテムはこのMEDULLAが初といえよう。

MEDULLAの使い方はシンプルで、専用サイトから用意された質問(アンケート)に答えていくと、自分にパーソナライズ(わかりやすさを重視して「オーダーメイド」と呼ばれることもある)されたシャンプーが出来上がり、それが毎月自宅に届く。質問項目は「髪の長さ」「頭皮の状態」「くせ」「髪の太さ」「なりたい髪質」「香り・色」など7項目で、製造可能なシャンプーの種類は100通りを超える。

日本人の髪質は大きく分類しても8種

アメリカでパーソナライズドシャンプーが人気である理由のひとつに、多人種による肌の色や髪質の違いがある。数ある商品の中から自分にピッタリ合うアイテムを探し出すのが大変ということもあり、前述のFunction of Beautyのシャンプーは独自アルゴリズムにより数億通りもの組み合わせが作られ、細かくパーソナライズできるようになっている。その一方で日本人の髪質はそこまでのバリエーションは必要ない、と深山氏は言う。

「MEDULLAのシャンプーは現在、およそ100通りの組み合わせができる。これを1,000まで伸ばすことは技術的には可能だが、日本人の髪質は大きく分類して8種類しかないと言われており、100通りもあればパーソナライズとしては十分だと考えている」。

Spartyではむしろ、パーソナライズ化は単なる手段であり、それよりもWebでのコミュニケーションや購買を含めた体験全体の設計のほうが重要だと考えている。MEDULLAのサイトを覗くと、そのデザインや画像のクオリティの高さが目を引き、シャンプー診断でも、「しっとり」「ふんわり」の文字が書かれたサークルがボールのように動くUIになっているなど、遊び心を感じ取れる。深山氏はじめ、創業メンバーには博報堂出身者が多く、彼らの経験で裏打ちされた緻密な計算がそこにはありそうだ。

MEDULLAのシャンプー診断画面

サイトだけではなく、ボトルや外箱といったプロダクトデザインへのこだわりも強く、シンプルながら洗練されたテイストに仕上げている。シャンプーとトリートメントはピンクやブルーなど鮮やかな色味に着色され、やや先行するFunction of Beautyを彷彿とさせるところはあるが、インスタ映えも意識されている。完成品として届くシャンプーには、ユーザーの名前が記載されたタグが付くことで、パーソナライズされたアイテムだと実感できるところも既製品とは大きく異なる。

パーソナライズドアイテムの製造・マーケティングの難しさ

パーソナライズドアイテムは、既存の大量生産型製品と比べて製造方法もマーケティングも大きく異なると深山氏はいう。

製品化という側面からみれば、シャンプーをOEMで作っている工場は大量生産を前提としているため、個別の配合に対応してくれる工場は極端に少ない。またパーソナライズドアイテムという性質上、それぞれのロットも大きくはできないので製造原価も上がる。原価をいかに下げるかが課題となる大手が、パーソナライズドシャンプーに参入しにくい理由はそこにあると深山氏は分析する。

さらに難しいのは、何かトラブルがあったときの対応だ。ロット単位で製造していれば、たとえば肌が荒れたなどのトラブルが報告された場合、まずはそのロットを調査し改善するという初期対応がとれる。しかし都度オリジナルの配合では、どの成分が問題になっているかを把握するのは難しい。

ただ、シャンプーは製品に使える成分が薬機法で厳しく制限されていることに加え、過去にシャンプーによる大きなトラブルは起きたことがないとう事実もあり、なんとか1社対応してくれるところをみつけ製品化を実現したという。とはいえ、その1社と出会うまでに100社以上の工場を当たることにはなったそうだ。

マーケティング面では、福岡パルコでポップアップショップを開催するなど、消費者とリアルでの接点を増やし、認知を拡大してオンラインでの購入を促進しようとしている。

このポップアップストア施策を継続していきたいというのは、同社の執行役員CMOの横塚まよ氏だ。

「来店いただいたお客様にサンプルを使って商品を説明し、その場で、スタッフがお手伝いしながらECから自分専用のアイテムを作ってもらうことでひとりひとりの課題を解決していただける。香りも含め、特別な体験を提供できるので、すでにMEDULLAを知っているというお客様は少なかったものの、8日間で300名程度が来場し、そのうち79名に購入いただいた」。

また、スタッフも実際に顧客と対話することで、たとえば『パーソナライズ』ではなく『オーダーメイド』と説明したほうが理解してもらいやすい」などの気付きを得る機会になったという。

他にもMEDULLAは消費者との接点拡大として、複数のサロンと提携。ユーザーは提携サロンに行けば無料でMEDULLA製品を体験できる。店頭では、その場でユーザーの髪質に合わせたパーソナライズドシャンプーの提供はできないものの、オーソドックスな組み合わせを用意しておき、ミニマムなカスタマイズは実現できるようになっている。

そのシャンプーが気に入れば、MEDULLAのECサイトを閲覧しながらどんなシャンプーがいいか美容師と相談して決める。シャンプー体験自体のコストは店側の負担になるが、サロン側はMEDULLAをきっかけに美容室を深く知ってもらう足がかりになるとして、導入店舗が増えているという。

Sparty 代表取締役社長 深山 陽介氏

ユーザからのフィードバックでよりパーソナライズ化へ

価格については、シャンプーとトリートメントで1ヶ月合計6,800円と、ヘアケア市場では高価格帯にあたる。とはいえ、深山氏が行ったシャンプー市場調査では「2,000円と8,000円にボリュームゾーンがある」ことがわかっていたことからも十分に勝算はあるとみている。ただし、この高価格帯商品を継続的に使い続けてもらうには、パーソナライズド商品ならではの「髪質が変わった」を実感してもらう必要がありそうだ。

そのための成分へのこだわりはもちろんだが、MEDULLAでは継続率を高める施策として、使用後のユーザーのフィードバックにしっかりと耳を傾けている。月ごとのサブスクリプション形式を採っていることから、毎月1ヶ月分の容量が入ったシャンプー&トリートメントのセットを送付するのだが、その際に「いまより潤いがほしい」などのフィードバックやリクエストを受け付けている。次回送付する際には、その前のバージョンにさらに潤い成分をつけたすなどの細かいアップデートを続けているのだ。

ユーザーフィードバックを取り続けるなかでわかってきたのは、それぞれの要望はかなり細かい、ということだ。たとえば成分は変えたくないが色と香りだけ気分に合わせて変えたい、といったニーズがあることもわかってきた。こうした細かな要望もしっかり拾い、ユーザーの満足度をどれだけ高め続けられるかでパーソナライズドアイテムの継続率が変わってくるはずだ。

とはいえ、MEDULLAは販売後間もないということもあり、現状の顧客に対するフィードバックは完璧ではないという。そこは「常に改善できないか模索している」(深山氏)。しかしサービスインから3ヶ月あまりで、すでにリピート率(2回目の購入率)は80%を超えているといい、顧客満足度は高い。これを近い将来「85%まで持っていく」ことが目標だ。

新商品やファンコミュニティの醸成が次のステップ

MEDULLAは早くも次の展開を見据えている。いわゆるカイゼンによる継続率の上昇やコストダウンはもちろんのこと、ほかにもヘアオイルなどの新商品やブランドの横展開、ファンコミュニティの構築など、結果としてアップセル・クロスセルにつなげる絵を描く。海外進出については、現在のところは台湾を中心としたアジア市場を視野に入れている。初年度の目標として「年商5億円」をかかげるが、販売個数が順調に推移していることから「実現可能な数字」と深山氏は自信をみせる。

深山氏が思い描く将来は、アイテムづくりだけではない。MEDULLAを起点に、パーソナライズドアイテムのOEM基盤を作りたいのだという。MEDULLAを製造するノウハウを活用し、他社や個人へ生産ラインを解放することで、インフルエンサーが在庫リスクなしで自分でカスタマイズしたオリジナルブランドのヘアケア商品を販売できるといったことだ。

いわばBASE(※個人でも気軽にECサイトを立ち上げられるウェブサービス)のものづくりサービスプラットフォームというところだろうか。市場が広がるなら他社の参入も歓迎というSpartyの視野の広いスタンスに期待したい。

Text:納富隼平(Jumpei Notomi)



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