見出し画像

フェムテックは「日常」に。美容、医療とのつながりと実証データ、女性たちのインサイト

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

BuzzFeed JapanとBeautyTech.jpは2019年から共同で、国際女性デー月間の3月、国際ガールズデー月間の10月に、フェムテック関連記事の投稿やイベントを開催してきた。イベントとしては2回目となる今回は資生堂オープンイノベーションプログラムfibonaも加わり、BuzzFeed NewsのTwitterライブとして約1時間で3つのセッションを配信、のべ10万2,000人が視聴した。その内容をレポートする。

BuzzFeed Japan、資生堂fibona、BeautyTech.jpの共催イベント

イベント実施後、2020年10月の国際ガールズデー月間も終わろうとする30日に自民党内で「フェムテック振興議員連盟」が発足し、会長には野田聖子氏が就任した。フェムテックが女性の生きやすさにつながると政治が動いた瞬間だ。

BeautyTech.jpでは、盛り上がる欧米でのフェムテックの現状を2018年ごろからいち早く取り上げてきた。その理由として、フェムテックは、ヘルスケアが主な領域ではあるが、生理周期にあわせて肌のコンディションが変化することなどを考えると、美容と近い領域であり、美容業界こそ目を向けるべきだと考えているからだ。

資生堂fibonaも加わっての今回のタイトルは、「自分らしい『きれい』のために知っておきたいからだのこと〜femtech and beauty〜」。イベント冒頭でBeautyTech.jp編集長 矢野貴久子は、拡大し続けるフェムテック市場について、「女性の身体と心は女性ホルモンに支配されてしまうが、技術の進歩で少しずつ自分たちでコントロールできる時代になってきたことが本当に感慨深い」と述べた。

図1

BuzzFeed Japan 編集長
 小林明子氏(左)
BeautyTech.jp編集長
矢野貴久子(中央)
資生堂 fibonaプロジェクトリーダー
中西裕子氏(右)

◆BuzzFeed Japan×辻愛沙子氏
/法整備とデザインの力で古いタブーを超える

セッション第一部では、株式会社arca CEOでクリエイティブディレクターの辻 愛沙子氏が登壇した。辻氏は2019年春、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマにした記事やデータをWebサイトで無料公開する「Ladyknows」プロジェクトを発足している。聞き手はBuzzFeed Japan 編集長 小林明子氏だ。

辻氏は、日本の社会で女性が性についてオープンに語ることが長年タブー視され、避妊目的の低容量ピルの認可にも開発から50年近くかかるなど、女性のヘルスケアが海外と比較して遅れをとってきた理由を「社会の構造、ルール(法律)の問題が一番大きい」と指摘する。

具体的には、「日本の法律では13歳で性的同意ができるとされているが、実際にはその年頃に十分な性教育はなされておらず、法律と実際の教育現場には解離がある」ことを挙げ、これからの法整備のためには、男女ともに現状の問題を正しく認識し、主体的に行動していく重要性を訴えた。

図1

聞き手の小林氏(左)と辻愛沙子氏(右)

同時に、「性について皆で語り、意識改革をしていこう」という雰囲気作りも重要だと辻氏は話す。辻氏がステートメント、キービジュアル、コピー等のクリエイティブを担当し、今年9月に配信されたABEMAのオリジナル連続ドラマ「17.3 about a sex」は、主人公の女子高生が同級生との初めてのセックスに際して悩むところからはじまる。これまで公に語られなかった「アセクシャル」や「セルフプレジャー」などのキーワードもふんだんに盛り込まれており、視聴者は、「そもそも恋やセックスはしないといけないものなのか」など素朴な疑問について、登場人物と一緒に考えたり、性的マイノリティへの理解を深めていけるストーリーになっている。

図1

17.3 about a sex
タイトルの17.3は女性の
セックス初体験の平均年齢17.3歳から
出典: ABEMA

また辻氏は、「社会課題は、デザインの力で大きく変えていけるのではないか」とも提言する。その一例が、2019年の国際ガールズデーにarcaが開催したLadyknowsフェスだ。女性ヘルスケアについて楽しく学ぶミュージアムのほか、「20代、30代の女性は健康診断・人間ドックの未受診率が高く、特に30代女性は44%が未受診」という実態から、希望者が500円で婦人科検診を受けられる機会を提供した。イベント会場の全体的なビジュアルは、従来の健康診断や人間ドックの堅苦しいイメージを払拭するポップなデザインで統一し、インスタレーションアートやフォトスポットを随所に配して、受け身の学びにとどまらない参加型で「誰かにシェアしたくなる空間」をつくりあげた。

そのほか、持っていることで気分が上がる、おしゃれなパッケージデザインのピルやコンドーム、セルフプレジャーのブランド「Unbound」などの製品が紹介され、デザインによって、「(セクシャリティに関することは)恥ずかしいことではない、女性として当然のこと」という意識改革ができるのではないかと辻氏はセッションを締めくくった。

図1

ミントタブレットのようなケースに
入ったコンドームを紹介する辻氏

◆BeautyTech.jp×ルナルナ
/新知見を活用した福利厚生サービスで、相互理解を深めていく

続いて登場したのは、日本のフェムテックの先駆けとしてアプリ「ルナルナ」を手掛ける株式会社エムティーアイ ルナルナ事業部 副事業部長の那須理紗氏だ。ルナルナは、2000年から生理日管理サービスとしてスタートし、2020年3月時点で1,500万ダウンロードを突破、11月に20周年を迎える元祖フェムテックサービスである。

ルナルナでは、ユーザーの声をもとに機能拡充を行っており、なかでも近年力を入れているのが医療との連携だという。エムティーアイが実施したアンケートによると、「産婦人科のかかりつけ医を持っている女性は半数にも満たない」という結果から、婦人科受診のハードルを下げるために、産婦人科クリニックで診察を受ける際に、ルナルナで記録した基礎体温などのデータを医師にスムーズに提示できる機能「ルナルナメディコ」や、アプリ内から婦人科を検索し予約ができる機能を追加した。

画像5

医師にわかりやすく自分のデータが
示せるルナルナメディコ
出典: エムティーアイニュースリリース

那須氏は、女性の体についての知識は、人によってばらつきがあるとし、「働いている企業内で自分の体のことをオープンにする・しないはその人の自由だが、(その自由も含め)皆で女性の体について正しい知識を身につけ、相互理解が進むよう、困ったときには誰かに相談できるよう、サービスを整備していきたい」とする。

図1

聞き手の矢野(左)と那須理紗氏(右)

エムティーアイでは、生理痛やPMS(月経前症候群)などの症状に悩む、自社の女性従業員を対象に、福利厚生制度として「オンライン診療を活用した婦人科受診と低用量ピル服薬の支援プログラム」を導入し、セッションではその事例も紹介された。

PMS症状などの軽減に効果のある低用量ピルを服用したい社員に向け、ルナルナと、同社グループ会社が提供する、産婦人科向けオンライン診療システム「ルナルナ オンライン診療」にて、診療から薬の処方までを行う。さらに、服用管理を「ルナルナ ピルモード」でサポートし、生理痛やPMSなどの症状について気軽に婦人科に相談できる環境整備と、通院にかかる負担の軽減を図ることで、女性従業員がより安心して活躍できる職場づくりを目指している。

図1

「オンライン診療を活用した婦人科受診と
低用量ピル服薬の支援プログラム」のしくみ
画像提供: エムティーアイ

エムティーアイの社内実証では、実証前は生理に関連した体調不良が月に平均3日あったが、適切に低用量ピルを飲むことで、体調不良の日が平均1日に短縮されるという劇的な結果が得られた。また、あわせて「女性ホルモンの働きが女性にどのような体調の変化をもたらすのか」を学ぶセミナーも社内で実施し、男女問わず参加を募り、好評を得ているという。

那須氏は、「生理関連の悩みは一人で抱え込むケースが多いが、辛さを我慢するのではなく、低用量ピル含め、今は選べる選択肢が多数あることをルナルナを通じて知ってもらいたい」と語った。

◆資生堂のホリスティック研究×ドリコス
/ヘルスケアと美容を融合させ、様々なライフステージの女性に寄り添う

セッション第三部では、ドリコス株式会社デザイナーで、オーダーメイドサプリメントサーバー「Fem サーバー(フェムサーバー)」の開発を担当する井上恵友氏、株式会社資生堂グローバルイノベーションセンター ホリスティック研究グループマネージャーの合津陽子氏が登壇した。聞き手は資生堂fibonaの柳原茜氏だ。

井上氏はリリースに向けて準備中のFem サーバーについて説明するなかで、「女性が毎日基礎体温を測定して記録することがどれくらい手間なのかを、身をもって検証するために、前出のルナルナアプリを使っていたことがある」と告白。そして、「生理情報以外にも、体の痛み、コンタクトレンズの交換日など、細やかに入力ができ、男性の体調管理アプリとしても使えると感じた」としながら、「実際に健康でいるためには、記録をとるだけでなく、バランスの取れた食事や適度な運動など、自らのアクションが必要。それをなるべく簡単にできるように、テクノロジーでサポートしたい」とする。

Fem サーバーは、アプリを通して蓄積する生理周期や生活習慣などの情報と、専用サーバーのセンサーを指で触れることで計測する「自律神経のバランス」をもとに、利用者にあったサプリメントを分析・抽出する。生理の有無、妊娠中かどうか、妊活をしているかなど、幅広いライフステージの選択もでき、専任サポーターとの電話やチャットで栄養面だけにとどまらない多角的な相談も可能となる。

図1

Fem サーバー
出典: Fem サーバー公式サイト

資生堂で長年研究開発に携わってきた合津氏は、資生堂で10年以上前から行っているPMSと肌状態の関連性についての研究をもとに、月経周期にあわせた美容について語った。天然香料をつかってストレス応答力を高めることで、肌トラブル改善につながるという興味深い知見も示された。

合津氏は、「“美しさ”には、たくさんの要素が関連しあっており、心などの内面も大事な要素である。ユーザーを心地よい状態に導く商品により、一人ひとりが美しさに至る道筋を提案していきたい」と語った。また、「男女雇用機会均等法以降に社会人になった女性たちがいま更年期を迎えている‪ 」とし、「更年期に伴う辛さをただ我慢するのではなく、すこしでも快適な暮らしを送るために、美容に貢献できることがあるのではないか」‬‬‬‬と提起し、今後もヘルスケアと美容が融合する領域で、さまざまなライフステージの女性に寄り添っていきたいとの宣言でセッションはしめくくられた。‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬

図1

左から、第三部の聞き手の
資生堂fibona柳原氏、
ドリコス井上氏、資生堂 合津氏

今回のイベントで繰り返し語られたのは、人の美しさは心身の健康と切り離すことができないということだ。しかしその実現には、個人の努力や意識改革だけではなく、企業をはじめ、社会全体の変革が求められている。

Text: 大塚愛(Megumi Otsuka)

ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
9
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp

こちらでもピックアップされています

国と地域
国と地域
  • 441本

BeautyTech.jpの記事を国や地域別にまとめたマガジンです。